<大項目> 原子力発電
<中項目> 原子力発電所の事故・故障
<小項目> わが国の原子力発電所の事故・故障(総括)
<タイトル>
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)

<概要>
 原子力発電所で起きた事故・故障・トラブルのうち、その主なものを採り上げるにあたっては、共通の物指し(尺度)が必要になる。そのような尺度として、1989年7月に科学技術庁(現文部科学省)が決定した「原子力発電所事故・故障等評価尺度」および1990年に経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)が提案した「国際原子力事象評価尺度(INES)」がある。日本は、1992年8月にINESを採用している。そこで、この時以降に発生した事故等については、INESのレベル1以上のものを、それ以前の事故等については、前者の国内評価尺度のレベル2以上のものを主要な事故・故障・トラブルとしてここに採り上げた。
<更新年月>
2007年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.事故・故障・トラブルの分析統計
 日本原子力発電(株)・敦賀発電所1号機が、日本では初めての沸騰水型軽水炉(BWR)として1970年3月14日に、営業運転を開始した。2005年度末、営業運転している沸騰水型原子力発電所は32基である。トラブル等発生機器の所属システムを図1に、トラブル等の原因を図2に、トラブル等発生時の運転状況を図3に、およびトラブル等の発見方法を図4に示す。またBWRの発電所概要を図5に示す。
2.主な事故・故障・トラブル
 BWRプラントで過去に起きた大きな故障・トラブルとしては、1976−1978年頃に集中したステンレス配管の応力腐食割れ原子炉圧力容器ノズル部の熱疲労割れなどがある。また、つぎの2.1項に述べるような1989年1月に発生した福島第二原子力発電所3号機の再循環ポンプの損傷事故がある。
 主要な事故・故障・トラブルの内容、原因等について以下に述べる。
2.1 東京電力(株)福島第二原子力発電所3号機(110万kW)
発生年月日:1989.1.1(ATOMICAデータ参照)
内容・原因等:
 出力103万kWで運転中、原子炉再循環ポンプ(B)に振動が発生したため、ポンプを停止するとともに原子炉を停止した。同ポンプを分解点検したところ、水中軸受リング部分が軸受本体との接触個所で破損し、羽根車主板上へ脱落、これによって羽根車の一部が欠損、摩耗していた。羽根車等の摩耗によって生じた金属粉等は流出し、原子炉容器内に分散した。
 流出した金属粉等の量は、30-33kgと推定された。国際評価尺度:2相当
2.2 東京電力(株)福島第一原子力発電所3号機(78.4万kW)
発生年月日:1990.9.9(図6参照)
内容・原因等:
 定格出力で運転中、「中性子束高」の信号により原子炉が自動停止した。原因は、4系統ある主蒸気管の各々に2台ずつ設置されている主蒸気隔離弁のうち、1台の弁体と弁棒との接合部に使用している回り止めピンの取付けが不十分であったため、蒸気流の振動により止めビンが疲労破断し、弁体が弁棒より脱落して主蒸気管を閉塞した結果、原子炉圧力が上昇して「中性子束高」に至った。
 本事象は、「中性子束高」の信号により安全保護系が正動作して原子炉が自動停止したものであり、原子炉施設の安全性に影響を与えるものではないが、これに関係する事象なので、INESレベル2と評価された。国際評価尺度:2
2.3 中部電力(株)浜岡原子力発電所3号機(110万kW)
発生年月日:1991.4.4(図7参照)
内容・原因等:
 定格出力で運転中、原子炉給水量が低下し、「原子炉水位低」の信号により原子炉が自動停止した。原因は、2台あるタービン駆動給水ポンプのうち1台の流量を制御するプリント基板に使用されているコンデンサの1つが短絡したことにより誤信号を発信し、当該駆動用タービンの蒸気加減弁が急閉したため、原子炉への給水流量が減少した。
 本事象は、原子炉給水流量が低下した結果、安全保護系が正動作して原子炉が自動停止したものであり、原子炉施設の安全性に影響を与えるものではないが、これに関係する事象なので、レベル2と評価された。国際評価尺度:2
2.4 東京電力(株)福島第一原子力発電所2号機(78.4万kW)
発生年月日:1992.9.29(図8参照)
内容・原因等:
 定格出力で運転中、「原子炉水位低」の信号により原子炉が自動停止したあと、さらに「原子炉水位低低」の信号により主蒸気隔離弁が全閉するとともに、工学的安全施設の一つである「高圧注水系」および原子炉隔離時冷却系が起動した。原因は、待機中の高圧復水ポンプ(C)の電源盤の遮断器の点検作業を行った際復帰作業を誤ったため、同ポンプの運転擬似信号が発信したことにより、高圧復水ポンプおよびタービン駆動原子炉給水ポンプが次々に停止し、終には全台停止し給水喪失となり、原子炉自動停止した。その後もさらに原子炉水位が低下したので、高圧注水系および原子炉隔離時冷却系が自動起動した。
 本事象は、運転員の誤操作に起因して原子炉給水が喪失した結果、安全保護系が正動作して原子炉が自動停止するとともに、非常用炉心冷却系(ECCS)が作動して炉心に冷却水が注入されたものであり、レベル0+とされるところであるが、品質保証計画に欠陥が認められたので、INESレベル1と評価された。国際評価尺度:1
2.5 東京電力(株)福島第一原子力発電所2号機(78.4万kW)
発生年月日:1992.11.9(図9参照)
内容・原因等:
 発電再開に向けて、原子炉を起動し、原子炉圧力7Okg/平方センチで原子炉高圧注水系の起動試験を実施したところ、高圧注水系駆動用のタービン入口弁が全開せず、また入口弁駆動用モータの故障を示す警報が発信した。このため原子炉を手動停止した。調査の結果、入口弁駆動用モータの起動トルクが設計上必要とされる値より小さかったため、弁の開操作時にモータが回転せず、過大な電流がモータに流れ、焼損した。
 本事象は、安全上の機能を有する機器である高圧注水系ポンプのタービン入口弁駆動用モータの不具合であり、レベル0+とされるところであるが、品質保証計画に欠陥が認められたので、INESレベル1と評価された。国際評価尺度:1
2.6 東北電力(株)女川原子力発電所2号機(82.5万kW)
発牛年月日:1994.12.11(図10参照)
内容・原因等:
 臨界後の試運転中、原子炉核計装系の起動領域モニタの定期試験を手順書にしたがい行ったところ、安全保護系が動作して原子炉が自動停止した。原因は、起動領域モニタの定期試験手順書の一部に不備があり、本試験実施中、「起動領域モニタ計数率高高」の信号が発信している状態で、「トリップA3バイパスSW」を「使用」の位置にしたため、原子炉自動停止に至る信号を発生させた。
 このトラブルは、原子炉施設の安全性に影響を与え得る事象であるので、0+とされるところであるが、当該試験の手順書に不適切が認められたので、INESレベル1と評価された。国際評価尺度:1
2.7 中国電力(株)島根原子力発電所2号機(82万kW)
発生年月日:1995.1.30(図11参照)
内容・原因等:
 定格出力で運転中、「スクラム排出容器水位異常高」の発信により、原子炉が自動停止した。原因は、廃棄物処理建物において、復水スラッジ分離水を床ドレンタンクヘ移送する際、トーラス水受入れタンク出口切替弁の1つが閉状態のままであったため、この分離水が機器ドレンタンクに接続しているスクラム排出容器ドレン配管を通じてスクラム排出容器内に逆流し、スクラム排出容器の水位が上昇した。
 このトラブルは、「スクラム排出容器水位異常高」が発信し、安全保護系が正動作して原子炉が自動停止したものであり、原子炉施設の安全性に関係しうる事象であるので、レベル0−とされるところであるが、この操作に係る手順書に不備があったので、INESレベル1と評価された。国際評価尺度:1
2.8 日本原子力発電(株)敦賀発電所1号機(35.7万kW)
発生年月日:1997.10.24(図12参照)
 定格出力で運転中、制御棒駆動系の定期試験において、制御棒73本のうち1本が挿入動作しないことが確認されたため、原子炉を手動停止した。原因は、制御棒に膨れが発生し、燃料集合体と接触、挿入動作しなかったため。
(1)当該制御棒の製造工程時にブレード上端部付近に局部的な加工ひずみ等が生じ、原子炉の運転に伴う中性子照射誘起応力腐食割れ(IASCC)が発生し、同割れから炉水が浸入した。
(2)炉水とボロンカーバイト等の反応により水素が発生し、ハフニウムの水素化・膨張を誘発、当該ブレード表面に引張り応力が生じてIASCCが発生し、これらの割れを通じて原子炉停止後炉水が更に浸入した。
(3)炉水とボロンカーバイト等が反応して生成した化合物が原子炉再起動後の温度上昇に伴い固化、充てん孔を閉塞した。
(4)炉水の気化等の発生により内圧が上昇、充てん孔間のリガメントが破断し膨れが発生。国際評価尺度:1
2.9 東京電力(株)福島第二原子力発電所1号機(110万kW)
発生年月日:1997.12.5(図13参照)
 制御棒パターン調整を行っていたところ、制御棒の引抜き操作において、1本の制御棒の動作不調が確認されたため、原子炉を手動停止した。原因は、2.8と同様である。国際評価尺度:1
2.10 中部電力(株)浜岡原子力発電所1号機(54万kW)
発生年月日:2001.11.7(図14参照)
 非常用炉心冷却系の一つである高圧注入系の定期手動起動試験を実施したところ、同系統の駆動蒸気配管から分岐する余熱除去系配管(外径約165mm、肉厚約11mm)が破断し、放射性物質を含む蒸気(約2トン、8×108Bqと推定)が漏えいした。水の放射線分解によって生じた水素が配管内に蓄積し、この水素が急速に燃焼し、配管内部の圧力が過大に上昇した結果、配管が破断した可能性が高いと推定されている。国際評価尺度(暫定評価):1
2.11 東京電力(株)福島第一原子力発電所6号機(110万kW)
発生年月日:2006.2.1(図15参照)
内容・原因等:
 2005年12月21日より定期検査中のところ、1月9日、制御棒の動作確認の準備作業中、ハフニウム板型制御棒1本の表面にひびらしきものを確認した。同型の制御棒(全17本)について外観調査を行い、9本の制御棒のシース部およびタイロッド部にひび(うち1本はめくれ)を確認した。2月1日、本事象が法律に基づく報告対象に該当するとの報告があった。
 点検調査として、熱中性子照射量を含む関連パラメータとの相関整理、製造履歴・運転履歴調査、モックアップ試験、オンサイト試験、ひびが確認された制御棒から切り出した試料を用いた照射後試験施設における調査(外観観察、破面観察、断面観察、硬さ測定、化学成分分析、腐食生成物分析他)およびひびの進展解析調査等を実施した。これらの結果、シース部およびタイロッド部のひびは、以下の通り、発生・進展したものと推定される。
 ハフニウム板型制御棒においては、その使用によって、シースとハフニウム板間、およびシースとタイロッド間において腐食生成物が堆積してすき間環境になりやすく、そこでひびの起点となりうる粒界腐食が発生した。また、コマ溶接部およびスポット溶接部の溶接残留応力が存在する部分において微小なひびが発生した。さらに、これら要因により発生したひびや粒界腐食が、シースとハフニウムの間の摺動抵抗の増加とハフニウム板の照射成長との複合要因により発生した応力下で、IASCCにより進展した。本トラブルは、ハフニウム板型制御棒に固有の問題と結論付けられる。なお、発電所外および発電所内における放射性物質の影響はなかった。国際評価尺度:1
2.12 東京電力(株)福島第一原子力発電所3号機(78.4万kW)
発生年月日:2006.3.3
内容・原因等:
 原子炉冷却材再循環ポンプ(B)軸封部の取替のために停止した3号機において、ハフニウム板型制御棒(全18本)の点検を開始したところ、3月3日、うち1本のシース部にひびが確認され、また、他の1本にタイロッドおよびシースにひびが確認されるとともにシースの一部が破損し欠損部があることが確認された。その後、点検を進めたところ、その他3本のシースにひびが確認された。
 点検調査等の結果は、上記の6号機の場合と同様である。国際評価尺度:1
(前回更新:2003年12月)
<図/表>
図1 BWRにおけるトラブル発生機器の所属システム
図2 BWRにおけるトラブルの原因
図3 BWRにおけるトラブル発生時の運転状況
図4 BWRにおけるトラブルの発見方法
図5 沸騰水型(BWR)原子力発電所概要図
図6 福島第一原子力発電所3号機・主蒸気系統概略図
図7 浜岡原子力発電所3号機・原子炉給水制御系統図
図8 福島第一原子力発電所2号機・系統概略図
図9 福島第一原子力発電所2号機・系統概略図
図10 女川原子力発電所2号機・原子炉保護系インターロック図
図11 島根原子力発電所2号機・トラブル状態の概略図
図12 敦賀発電所1号機制御棒概観状況図
図13 福島第ニ原子力発電所1号機制御棒概観点検図
図14 浜岡原子力発電所1号機・トラブル状態の概略図
図15 ハフニウム板型制御棒の外観図(福島第一原子力発電所6号機制御棒の外観点検結果の例)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
わが国においてECCSが作動した事故・故障 (02-07-02-01)
福島第二原子力発電所3号炉の原子炉再循環ポンプ損傷事象について (02-07-02-08)
軽水炉における応力腐食割れ (02-07-02-15)
浜岡原子力発電所1号機余熱除去系配管破断事故 (02-07-02-19)
原子力施設の故障・トラブル・事故の国際評価尺度 (11-01-04-01)

<参考文献>
(1)経済産業省 原子力・安全保安院 原子力保安管理課(編):原子力発電所運転管理年報 平成14年版(平成13年度実績)、火力原子力発電技術協会(2002年9月)
(2)原子力安全委員会(編):原子力安全白書、http://www.nsc.go.jp/hakusyo/hakusyo_kensaku_f.htm
(3)(財)原子力工学試験センター原子力発電安全情報研究センター:平成2年度の我が国の原子力発電所における故障・トラブル等について(1991年11月)、p.19-20
(4)(財)原子力発電技術機構安全情報研究センター:平成3年度の我が国の原子力発電所における故障・トラブル等について(1992年11月)、p.13-14
(5)(財)原子力発電技術機構安全情報研究センター:平成4年度の我が国の原子力発電所における故障・トラブル等について(1993年11月)、p.27-28、p.31-32
(6)(財)原子力発電技術機構安全情報研究センター:平成6年度の我が国の原子力発電所におけるトラブルについて(1995年10月)、p.27-28、p.35-36
(7)通商産業省資源エネルギー庁(編):原子力発電所のトラブルの国際評価尺度−トラブルの大きさをみんなが理解できるように−、原子力発電技術機構(1996年3月)、p.12
(8)(独)原子力安全基盤機構:JNES−トラブル等情報データベース、http://www2.jnes.go.jp/atom-db/jp/index.html
(9)(独)原子力安全基盤機構(編集発行):原子力施設運転管理年報 平成18年版(平成17年度実績)(2006年9月)、p.464-465、p.641
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