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<概要>
 世界の原子力発電所の基数は、2006年12月31日現在、運転中429基(出力合計3億8,705万kW)、建設中35基(同2,940万kW)、計画中47基(同5,217万kW)で、総計511基(同4億6,863万kW)であった。これらの数値を2004年末の時点と比較すると、運転中の発電所は5基減少したが、約784万kWの出力増となった。建設中の発電所は2基増加し、約135万kWの出力増となった。計画中の発電所は9基増加し、出力は約1,245万kW増加した。総計では、基数が6基増加し、出力は約2,164万kW増加した。
 2006年には新たに2基(日本とウクライナで各1基)の原子力発電所が営業運転を開始し、また2基(中国とロシアで各1基)が送電を開始した。新たに、2基が発注着工されたが、一方、欧州で8基の原子力発電所が閉鎖された。
<更新年月>
2007年10月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 日本原子力産業協会(原産)は、世界の原子力発電所の動向を「世界の原子力発電開発の動向」として毎年取りまとめている。2006年次報告では、原産が世界の電力会社等から得たアンケートの回答などに基づき、2006年末時点のデータを集計している。この報告によると、運転中の原子力発電所が429基、3億8,705万kW(グロス電気出力、以下同じ)、建設中が35基、2,940万kW、計画中が47基、5,217万kWであり、合計は511基、4億6,863万kWになっている。なお、グロス電気出力とは発電設備容量を発電機出力で表したものであり、発生した電力の一部を発電所内で消費するため、発電所外に供給される電気出力(ネット電気出力、または送電端出力とも呼ぶ)はこれよりやや小さくなる。
 国・地域別の原子力発電の開発状況を表1に示す。2006年末時点で、運転中の原子力発電所を所有しているのは31か国・地域であり、2004年末以降変わっていない。規模が大きいトップテンは、米国、フランス、日本、ロシア、ドイツ、韓国、カナダ、ウクライナ、英国、スウェーデンであり、このうちスウェーデン以外の9か国では発電設備容量が1,000万kWを超えている。英国では老朽化した小型のガス冷却炉(GCR)を順次閉鎖して原子力発電設備容量が減少しつつあるため、2004年末の7位から9位となった。図1は各国・地域の原子力発電設備容量を運転中の発電所の設備容量の順で示したものである。建設中、計画中の発電所は日本、韓国、中国、インド等のアジア諸国で多いことが示されている。また、図2は運転中の原子力発電所の設備容量の年次推移を示す。世界全体の設備容量は1990年代後半に減少した時期もあったが、最近では徐々に増加してきている。
 炉型別の原子力発電設備容量を表2−1(運転中)、表2−2(建設中)、表2−3(計画中)に示した。どのカテゴリでも加圧水型軽水炉(PWR)が圧倒的に多く、運転中では65%、建設中では63%、計画中では62%を占めている。次いで、沸騰水型軽水炉(BWR)が多いが、運転中、計画中がそれぞれ23%、建設中では14%である。なお、日本の場合には、運転中の発電所の61%がBWR、39%がPWRであり、世界全体の傾向とは逆にBWRの比率が大きい。
 発電電力量全体に占める原子力の比率を図3に示した。フランスとリトアニアでは7割を超え、また、スロバキアとベルギーでは5割を超えている。さらに、スウェーデンのほか、ウクライナ、ブルガリアなど幾つかの東欧諸国で4割を超えている。米国は、原子力発電設備容量は約1億kWと大きいが、発電電力量全体に占める原子力の比率は20%弱である。なお、中国、インドでは原子力発電を積極的に利用する政策を進めているが、まだ原子力発電の比率は3%以下であり、きわめて小さい。
 世界の原子力発電所の基数を送電開始からの経過年数別に示したのが図4である。1980年代に建設され、20年〜27年経過したものが最も多く、次いで1970年代に建設され29年〜36年経過したものが多い。1990年以降は世界的に建設ペースが低下したため、経過年数17年未満の発電所は数が少ない。
 以下に2006年における主な動きをまとめる。(表3参照)
1.営業運転開始および新規着工
 2006年に営業運転を開始した原子力発電所は、日本の志賀2号機(ABWR)とウクライナのロブノ4号機(PWR)の2基である。同じく2006年に送電開始した原子力発電所は、中国の田湾1号機(PWR)とインドのタラブール3号機(PHWR)の2基、また、新規の着工は中国秦山II期3号機(PWR)とロシアのカリーニン4号機(PWR)の2基であった。
2.閉鎖および運転休止
 2006年に閉鎖された原子力発電所は英国のダンジネスA1号機とA2号機、サイズウェルA1号機とA2号機(いずれもGCR)、ブルガリアのコズドロイ3号機と4号機(いずれもPWR)、スロバキアのボフニチェ1号機(PWR)、及びスペインのホセカブレラ(PWR)の8基(合計出力255万kW)であった。
3.原子力発電の動向の概要
 2006年には老朽化した小型炉8基が閉鎖され、また実質的に発電用として機能していない4基(いずれもロシア)を集計外としたため、運転中の基数は昨年度より減少したが、日本とウクライナの大型発電所2基の運転開始により、運転中発電所の合計出力は昨年度を上回り過去最高となった。また、昨年度に比べると計画中が増大し、世界的に新規の建設計画が拡大している状況が明確になった。新たに計画入りしたのは、ロシア4基(410万kW)、トルコ3基(500万kW)、ベトナム2基(200万kW)の合計9基である。特に、ロシアは積極的な原子力推進政策の下で、既存の計画に加えて2009年以降2015年までに年間2基程度のペースで建設を進めていくことを計画している。また、米国でも「原子力ルネサンス」と呼ばれる状況の中で、多くの新規プロジェクトが公表されており、早ければ2007年中にも最初の建設・運転一体認可(COL)の申請が行われる可能性がある。さらに、カナダでも新規プロジェクトが浮上している他、英国でも2006年7月に公表したエネルギー政策の基本方針の中で、原子力発電所の新規建設も含む現実的な政策を打ち出している。
<図/表>
表1 世界の原子力発電開発の現状
表1  世界の原子力発電開発の現状
表2−1 炉型別の原子力発電設備容量(運転中)
表2−1  炉型別の原子力発電設備容量(運転中)
表2−2 炉型別の原子力発電設備容量(建設中)
表2−2  炉型別の原子力発電設備容量(建設中)
表2−3 炉型別の原子力発電設備容量(計画中)
表2−3  炉型別の原子力発電設備容量(計画中)
表3 原子力発電所をめぐる2006年の主な動き
表3  原子力発電所をめぐる2006年の主な動き
図1 世界の原子力発電設備容量
図1  世界の原子力発電設備容量
図2 世界の運転中原子力発電所の設備容量推移
図2  世界の運転中原子力発電所の設備容量推移
図3 発電電力量全体に占める原子力の比率(2006年)
図3  発電電力量全体に占める原子力の比率(2006年)
図4 世界の原子力発電所の送電開始からの経過年数別基数
図4  世界の原子力発電所の送電開始からの経過年数別基数

<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向(2005年) (01-07-05-01)
世界の原子力発電の動向・アジア(2005年) (01-07-05-02)
世界の原子力発電の動向・中東(2005年) (01-07-05-03)
世界の原子力発電の動向・北米(2005年) (01-07-05-04)
世界の原子力発電開発の動向・CIS(2005年) (01-07-05-05)
世界の原子力発電の動向・中南米(2005年) (01-07-05-06)
世界の原子力発電の動向・西欧州(2005年) (01-07-05-07)
海外の原子力発電所の現状(2000年) (02-06-01-04)
海外の原子力発電所の現状(2004年) (02-06-01-05)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業協会(編集発行):世界の原子力発電開発の動向 2006年次報告(2007年4月)
(2)国際原子力機関IAEAホームページ:Power Reactor Information System、http://www.iaea.org/programmes/a2/
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