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<概要>
 国全体として電力の安定供給を図るため、電源立地交付金によるメリットを電源地域地元に還元して、発電所の建設が促進されるよう、1974年から電源地域に対して電源三法「電源開発促進税法」、「特別会計に関する法律(旧電源開発促進対策特別会計法」」および「発電用施設周辺地域整備法」による施策を講じている。
 電源三法による施策としては、電源立地交付金によって、道路、港湾、教育文化施設、産業振興施設等の公共用施設の整備による生活・産業基盤の整備、地元への企業導入、産業近代化による産業振興、さらには、地元の長期的かつ自立的な振興の為の企業おこし、あるいは、情報面等のソフト面からの支援などさまざまな施策が講じられている。また、2003 年には、電源地域にとって一層使いやすく、効率的、有効性の高い制度となるよう交付金を一本化するとともに、交付金の使途を従来の公共用施設の整備に加え、地場産業振興、福祉サービス提供事業、人材育成等のソフト事業へも拡充する制度改正を行っている。
 原子力発電施設などの立地地域および周辺地域の産業、生活環境の整備を図るため、10年間の時限立法で、新たに「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」が2001年4月から施行された。
<更新年月>
2010年08月   

<本文>
1.電源三法の概要
 電力の安定供給は国民生活と経済活動にとって不可欠である。昭和40年代後半から電源開発が円滑に進まず、電力供給力が不足する事態が生じかねない状態となった。このため、発電用施設周辺地域において公共用施設の整備を促進し地域住民の福祉向上を図ることなどによって、発電用施設の立地を促進しようとして成立したのが、「発電用施設周辺地域整備法」、「電源開発促進税法」および「特別会計に関する法律(旧電源開発促進対策特別会計法)」のいわゆる電源三法である(図1参照)。この電源三法による交付金によって、電源立地の実施にともない電源地域の生活・産業基盤の整備、地域産業の振興などが行なわれ、原子力発電所と地域社会との共存が進められている。
(1)発電用施設周辺地域整備法
 この法律は、電気の安定供給の確保が国民生活と経済活動にとってきわめて重要であることを踏まえ、発電用施設の周辺地域における公共施設の整備を促進して地域住民の福祉の向上を図り、これによって発電用施設を円滑に設置、運転していくことを目的としており、1974年6月に公布された。
1) 発電用施設
 この法律における「発電用施設」は、「一般電気事業者、卸電気事業者、特定規模電気事業者、卸供給事業者、日本原子力研究開発機構が設置する一定規模以上の原子力、水力、地熱、火力(沖縄県に設置されるものに限る)の電源」、および再処理施設など「原子力発電と密接に関連する施設」と定められている。
2) 地点の指定
 この法律が適用される地点の指定にあたっては、主務大臣(文部科学大臣、経済産業大臣)が、予定されている地点のうち、定められた要件に該当するものについて関係する行政機関の長と協議のうえ指定し、公示する。
3) 公共用施設整備計画、利便性向上等事業計画の作成と承認
 都道府県知事は指定された地点の周辺地域について、対象地域、対象施設、対象事業などを盛り込んだ公共用施設整備計画、利便性向上等事業計画を作成し、主務大臣と協議し、同意を求めることができる。主務大臣はその計画が適当なものと認められる時は、関係行政機関の長らと協議のうえ同意する。
4) 電源立地地域対策交付金の交付
 国は、地方公共団体に対し、公共用施設整備計画、利便性向上等事業計画に基づく事業の経費にあてるために電源立地地域対策交付金(電源立地促進対策交付金相当部分)を交付することができる。交付金の限度額や交付期間は規則によって定められている。なお、電源立地地域対策交付金は、電源立地促進対策交付金、電源立地特別交付金など、主要な交付金等を統合し、2003年10月に創設されたもので、統合された各交付金等の使途を従来の公共用施設の整備に加え、新たに地域活性化事業が交付対象事業に追加され、地場産業振興、福祉サービス提供事業、人材育成等のソフト事業へも拡充されて幅広い事業が実施可能となっている。
(2)電源開発促進税法
 この法律は、原子力発電施設、水力発電施設、地熱発電所などの設置を促進したり、発電施設の利用の促進および安全の確保ならびに電気の供給の円滑化を図る等のために必要な費用の財源として、一般電気事業者から電源開発促進税を徴収することを目的としており、1974年6月に公布された。課税と納付のしくみは、以下のようになっている。
1) 課税される物件
 一般電気事業者の販売電気(他からの需要に応じ供給した電気および自ら使用した電気)が課税物件とされている。
※融通供給、振替供給のための電気や一般電気事業者が発電のために直接使用する電気は非課税。
2) 課税標準
 販売電気の電力量を課税標準とする従量税。
※定額料金制の販売電気の電力量は、需要設備の電力容量、用途、場所などの事情を考慮し、別に定められた算定方法により計算する。
3) 税率
 販売電気1,000kWhにつき375円。
4) 税額の申告と納付
 一般電気事業者は、顧客から料金の支払を受ける権利が確定した月および自ら使用した月の翌月末までに、毎月その販売電気の電力量と電源開発促進税額などを記載した申告書を所轄税務署長に提出し、同時に電源開発促進税を納付しなければならない。
(3)特別会計に関する法律(旧電源開発促進対策特別会計法)
 電源開発促進対策特別会計法は、電源開発促進税の収入を財源として行う電源開発促進対策に関する政府の経理を明確にするために、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理することを目的としており、1974年6月に公布された。特別会計改革により全ての特別会計に適用される法律が2008年通常国会において審議され、特別会計に関する法律が成立した。この法律の成立に伴い全ての特別会計法は廃止された。なお、電源開発促進対策特別会計は、2008年度から石炭並びに石油およびエネルギー需給構造高度化対策特別会計と統合され、新たにエネルギー対策特別会計となった。
 電源開発促進対策として、この法律により定められた特別会計から資金を支出できるのは、電源立地対策および電源利用対策に限定されている。その範囲は次の通りである。
1) 電源立地対策
 公共用施設整備計画および利便性向上等事業計画に基づく電源立地地域対策交付金の交付、発電の用に供する施設の設置および運転の円滑化に資するための財政上の措置で政令で定めるもの等。
2) 電源利用対策
 発電用施設の利用の促進および安全の確保ならびに発電用施設による電気の供給の円滑化を図るための措置で政令に定めるもの等。
2.交付金制度の概要
 電源三法に基づく交付金は、電源立地地域対策交付金等として、その地域(立地所在市町村、周辺市町村、都道府県)にもたらされる。
 平成22年度の電源三法に基づく交付金の概要を表1に示す。そのうち電源立地地域対策交付金は1,097億円で、交付金の対象措置は、表2に示す通りである。
 電源立地によって電源地域に予想されるメリットについて、出力135万kWの原子力発電所を立地した場合の財政効果を試算した例を表3に示す。試算数値の約1,215億円等は参考的なもので、具体的な地域の状況、スケジュールによって変動する。ここで、表4に原子力発電施設の電源立地地域対策交付金の概要、表5に電源立地等推進対策交付金の概要を示す。
3.原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法
 原子力発電施設などの立地地域および周辺地域の産業、生活環境の整備を図るため、10年間の時限立法で「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」が2001年4月から施行された。
 原子力発電施設などがある都道府県知事が立案した振興計画を「原子力立地会議」(議長:内閣総理大臣、委員:財務、文部科学、経済産業、国土交通および環境の各大臣)の審議により決定し、そのうち道路や港湾、義務教育施設といった住民生活の安全確保に役立つものとして緊急に整備が必要と政令が定めたものに対する国の負担の割合を、通常よりおおむね5%を特例として増額する。振興事業のうち特別措置を受けるものについては、財源のために起こした地方債の元利償還に対する経費を地方交付税額の算定に用いる基準財政需要額に算入するなどが主な特徴である。
 立地地域活性化計画の例を、図2および図3に示す。
 (前回更新:2001年3月)
<図/表>
表1 電源三法に基づいた交付金等の概要(平成22年度予算額)
表1  電源三法に基づいた交付金等の概要(平成22年度予算額)
表2 電源立地地域対策交付金の交付対象措置
表2  電源立地地域対策交付金の交付対象措置
表3 電源三法交付金による財源効果の試算(出力135万kWの原子力発電所の立地)
表3  電源三法交付金による財源効果の試算(出力135万kWの原子力発電所の立地)
表4 原子力発電施設の電源立地地域対策交付金の概要
表4  原子力発電施設の電源立地地域対策交付金の概要
表5 電源立地等推進対策交付金の概要
表5  電源立地等推進対策交付金の概要
図1 電源三法制度の概要
図1  電源三法制度の概要
図2 立地地域活性化(福井県の例)
図2  立地地域活性化(福井県の例)
図3 立地地域活性化(九州シンクロトン光研究センターの例)
図3  立地地域活性化(九州シンクロトン光研究センターの例)

<関連タイトル>
原子力施設立地と地域共生 (02-02-01-05)

<参考文献>
(1) 立地地域振興特措法が成立、原産新聞、2000年12月7日
(2)電気事業連合会:「原子力・エネルギー」図面集2010、 p.9-5
(3)電気事業者連合ホームページ:電気事業法平成15年改正の概要、http://www.fepc.or.jp/library/data/infobase/pdf/info_j.pdf
(4) 経済産業省資源エネルギー庁パンフレット:電源立地制度の概要、地域の夢を大きく育てる
(5)原子力委員会:成長に向けての原子力戦略 添付資料(3)成長に向けての原子力戦略参考図、p.13〜p.14 (平成22年5月25日)、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/kettei/kettei100525.pdf
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