<大項目> 原子力発電
<中項目> 実用原子力発電所
<小項目> 実用原子力発電所の概要
<タイトル>
沸騰水型原子炉(BWR) (02-01-01-01)

<概要>
 沸騰水型原子炉(BWR)は、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材とし、この軽水を炉心で沸騰させて蒸気を発生させ直接タービン発電機に導き電気を得る発電用原子炉である。BWRでは原子炉冷却材の沸騰により生じた蒸気ボイドが負の反応度効果を有しており、この働きによって正の反応度が加えられても出力の上昇を安定に抑制できる。原子炉の出力制御は原子炉冷却材流量を変える再循環流量制御(方式)と制御棒操作(駆動機構)によってなされる。現在運転中のBWRの炉型は大別するとBWRとABWR(改良型BWR)である。最近SBWR(単純化BWR)を大型炉に発展させたESBWR(革新的SBWR)が開発され、米国内で建設・運転一括許認可の申請が予定されている。これらの炉はGE社フループが開発を進めてきた。一方BWR90+はABB−Atom社が開発中で、安全性と経済性の向上を目指した発展型BWRである。
<更新年月>
2007年09月   

<本文>
 沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)は米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社が開発した発電用原子炉で、1960年7月に運転開始したDresden1号(20万kWe)が最初である。その後もGE社が多く供給しており、欧州ではSiemens(KWU)社(ドイツ)とABB−Atom社(スイス/スウェーデン)が、日本では東芝と日立が供給している。第1章で従来型の沸騰水型原子炉(BWR)を用いてBWRの特徴を説明し、第2章で最近の開発状況を含む炉型について述べる。
1.BWRの特徴
1.1 BWRの基本構成
 沸騰水型(BWR)原子力発電所主要系統概要を図1に示す。現在のBWRは原子炉容器内で軽水を沸騰させて直接蒸気を発生させタービン発電機に導き発電する発電用原子炉である。タービンを回した後は復水器で水に戻され(日本では海水で冷却)、給水ポンプで原子炉容器に送られるが、この水の一部は炉容器外部にある再循環ポンプで昇圧されて炉容器内部に送り返され、ジェットポンプにより炉容器内底部から炉心に送られる。
1.2 原子炉容器内の構造
 110万kW級BWRの原子炉容器内の主な構造(図2)を説明する。原子炉容器内には燃料集合体と制御棒よりなる炉心を中心にして、炉心上部には気水分離器・蒸気乾燥器などタービン発電機用蒸気をつくるための設備、炉心下部には制御棒ガイド・制御棒駆動ハウジングなど原子炉出力制御のための設備、炉心周囲には炉心を収納し冷却材流路を構成している炉心シュラウド、ジェットポンプなどがある。
 BWRの燃料集合体(図3)は、例えば62本の燃料棒と1本のスペーサ保持用ウォータロッドと1本のウォータロッドの計64本を8×8(現在まで6×6から9×9まである)の正方格子に配列し、周囲をジルカロイ製のチャネル・ボックスで囲ったものである。燃料棒は、ジルカロイの被覆管内に二酸化ウランペレット、プレナムスプリング等を装填してヘリウムを加圧封入し、両端を端栓で溶接密封した構造となっている。この燃料プレナムは燃焼にともない燃料ペレットから放出される核分裂生成ガスを収容し燃料棒の内圧が過大にならないように設けた空間である。
 BWRの制御棒(図4)は4体の燃料集合体で形成される間隙部を移動するため十字形のブレードを有している。制御棒には中性子吸収材としてボロンカーバイド(B4C)またはハフニウム(Hf)またはこれらを組合せて用いるタイプがある。制御棒の下部には制御棒落下事故時の落下速度を緩和するため傘型の構造をもった落下速度リミッタがある。また、制御棒駆動機構と結合するためのソケットが設けてある。
 制御棒駆動機構には水圧駆動式と電動駆動式とがある。両方式とも制御棒の急速挿入時にはアキュムレーターに蓄えた窒素ガス圧を動力として利用する。原子炉に異常が発生するか、あるいは発生のおそれがある場合には、全制御棒が一斉に炉心下部から炉心に急速挿入され、原子炉は停止する(原子炉がスクラムしたという)。制御棒が挿入できないで原子炉の低温停止ができない場合には、炉心に中性子吸収材を注入して原子炉を停止するホウ酸水注入系が設けられている(図1参照)。
1.3 原子炉の出力制御
 BWRでは、軽水を炉心で沸騰させ圧力約6.9MPa[gage](70kg/cm2G)の蒸気を発生させ、また沸騰によって生じる蒸気泡(ボイド)の量を再循環ポンプ(速度可変のポンプ)で調節することによって核反応(出力)の制御をしている(再循環流量制御方式という)。制御棒が引き抜かれると、反応度が増加し出力(発熱)が増加するので蒸気ボイドが増え、減速材密度が小さくなりウランの核分裂する割合が小さくなって反応度が低下し、バランスしたところの原子炉出力(反応度)で安定する。制御棒が挿入されると、反応度が減少し出力(発熱)が低下するので蒸気ボイドが減少して、減速材密度が大きくなりウランの核分裂する割合が大きくなって反応度が増加し、バランスしたところの原子炉出力で安定する。このようにBWRには蒸気ボイド量の変動に起因する原子炉出力の自己制御性がある。
 燃料棒に発生した熱は原子炉冷却材に伝達される。伝熱面と冷却材の温度差に応じて流れる熱流束の大きさは多くの実験で求められており、沸騰が激しくなる遷移沸騰領域では熱伝達が低下し燃料被覆を焼損するおそれがあるので、BWRでは沸騰領域における熱伝達を利用している。このため通常運転中及び運転時の異常な過渡変化時には遷移沸騰領域に至らないよう原子炉運転上に制限を課している。
 BWRでは、負荷変動があると制御棒の引き抜き・挿入または再循環流量の増減調節でまず原子炉出力(反応度)を調整する。この状態でなお原子炉出力と負荷が食違った場合は原子炉圧力の増減となって現れるので、原子炉圧力をタービン蒸気加減弁の開度を調整することによって圧力一定に制御する。この方式を「リアクタ・マスター/タービン・スレイブ(原子炉優先方式)」と呼んでいる。なお、タービンが異常停止したときには、蒸気の流れが遮断され原子炉圧力が上昇するのでタービンバイパス弁が開き、蒸気が主復水器に導かれ原子炉圧力の上昇が抑えられる。
1.4 工学的安全系
 上記のように原子炉の異常時には原子炉停止系(安全保護系の一部)の作動により確実に原子炉が停止される。原子炉冷却系の配管等に破断事故が発生し炉心から原子炉冷却材が喪失する場合(冷却材喪失事故)に備えて、非常用炉心冷却系(ECCS:図5−1および図5−2)が設けられている。この系は高圧炉心スプレイ系、自動減圧系、低圧炉心スプレイ系及び低圧注水系より構成されている。
 万一燃料破損が生じた場合には、炉心から流出した高温高圧の原子炉冷却材に放射性物質が含まれているので、この放射性物質を外部に流出させないよう原子炉格納容器が設置されている。BWRの原子炉格納容器はすべて圧力抑制(サプレッションプール)式であり、格納容器内に流出した蒸気は圧力抑制室の水プールへ導かれ冷却・凝縮され、その結果格納容器内の圧力上昇が抑えられる。また、事故後は燃料の崩壊熱により長期にわたって格納容器内の温度・圧力が上昇するので格納容器内を冷却する必要がある。さらに格納容器内に浮遊しているヨウ素のような放射性物質を除去する必要もある。これらのため、格納容器内に格納容器スプレイ系が設けられている(ドライウェルスプレイ、圧力抑制室スプレイ;図1参照)。さらに格納容器外へ放射性物質が漏洩した場合に備えて非常用ガス処理系が原子炉建屋に設置されている。
 なお、冷却材喪失事故にともない燃料被覆の温度が上昇し水−金属反応により水素が発生するので、水素燃焼により格納容器の健全性を損なう可能性がある。このようなことを防止するため、BWRにおいては通常運転時に原子炉格納容器内に窒素を封入しており(窒素封入不要の設計であるMark−III型格納容器はわが国では採用していない)、また発生した水素を酸素と再結合させ水素燃焼を防止するための可燃性ガス濃度制御系が設けられている。
2.BWRの炉型
 BWR炉心の主要パラメータを表1に、国内におけるBWR燃料の改良と経緯を表2に、およびBWR原子炉格納容器の変遷を図6に示す。既に運転中のBWRの炉型は、大別するとBWR改良の系列(仮に従来型BWRとよぶ)とABWR(改良型BWR)とがある。米国で初めて商用発電炉として建設されたのがDresden1号機(1960年7月全出力運転)でBWR−I型である。このBWR−I型はPWRのような二重サイクルでかつ乾式原子炉格納容器を採用していた。BWR−II型以降は、炉心は出力密度を下げ小型に、蒸気ドラムは原子炉容器内に格納し単純化されて直接サイクルに、非常用炉心冷却設備(ECCS)は多重化され、格納容器はサプレッションプール型となって小型化され、ほぼ現在のBWR炉型となった。
 従来型BWRとABWRとの大きな相違は(表3)、原子炉冷却系ポンプが再循環ポンプとジェットポンプとの組合せからインターナルポンプ(炉容器内装型ポンプ)になったこと(図7)、制御棒駆動装置が水圧駆動から電動駆動と水圧駆動との組合せになったこと(図8)および鉄筋コンクリート型原子炉格納容器(図9参照)になったことである。なお、ABWRの建設・営業運転は日本が世界で初めてである。現在、東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6、7号(1996年、1997年)、中部電力(株)浜岡原子力発電所5号(2005年)および北陸電力(株)志賀原子力発電所2号(2006年)が営業運転を行っている。
 その後GE社グループは、重力落下式ECCS(GDCS、図10参照)・受動的格納容器冷却系(PCCS)等の受動的安全設計と自然循環冷却炉心を組み合わせたSBWR(単純化BWR)を開発し、さらにこの設計思想を大型炉に発展させたESBWR(革新的SBWR)を開発した。現在米国内で3基の建設・運転一括許認可の申請が予定されている。また、ABB−Atom社が開発中のBWR90+(150万kWe;原子炉格納容器については図11参照)は安全性(冷却材喪失事故時炉心冠水、コアキャッチャ、フィルタベンドなど採用)と経済性の向上を目指した発展型BWRである。
(前回更新:2001年1月)
<図/表>
表1 BWR炉心の主要パラメータ
表2 国内におけるBWR燃料の改良と経緯
表3 ABWRと従来型BWRの主要仕様比較
図1 沸騰水型(BWR)原子力発電所主要系統概要
図2 BWR原子炉容器内構造図
図3 BWR燃料集合体構造図
図4 BWRの制御棒および制御棒駆動機構断面図
図5−1 BWRのECCS概略(1/2)
図5−2 BWRのECCS概略(2/2)
図6 BWR原子炉格納容器の変遷
図7 原子炉冷却系ポンプの従来型BWRとABWRとの比較
図8 制御棒駆動装置の従来型BWRとABWRとの比較
図9 原子炉格納容器の従来型BWRとABWRとの比較
図10 ESBWRで採用の重力落下式ECCS(GDCS)
図11 BWR90+の原子炉格納容器

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<関連タイトル>
原子力発電技術の開発経緯(BWR) (02-03-01-01)
BWRの炉心設計 (02-03-02-01)
BWRの放射線遮へい (02-03-02-02)
BWRの工学的安全施設 (02-03-04-01)
原子力発電プラント(BWR)の制御 (02-03-06-01)
BWRの原子炉保護設備 (02-03-07-01)
改良型BWR(ABWR) (02-08-02-03)
SBWR (02-08-03-03)
原子力発電拡大を目指す米国の動き (14-04-01-36)

<参考文献>
(1)日本電気協会新聞部(編):原子力ポケットブック2006年版(2006年7月)
(2)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし(改訂版)(平成4年10月)
(3)田畑広明、吉岡譲:大型単純化BWRの技術的特徴、火力原子力発電(1995年2月)、p.46−54
(4)東京電力:改良型BWRの概要(1993年8月)
(5)日本原子力産業協会:米国の新規原子力発電所プロジェクトの状況(2006−12現在)、http://www.jaif.or.jp/ja/joho/press−kit_2−3.pdf(as of Aug.2007)
(6)GEエナジー:ESBWR(革新型単純化沸騰水型原子炉)について、
http://www.gejapan.com/corporate/news/2007/pdf/infra_may1.pdf(as of Aug.2007)
(7)GE Energy:ESBWR,http://www.gepower.com/prod_serv/products/nuclear_
energy/en/new_reactors/esbwr.htm(as of Aug.2007)
(8)J.Alan Beard(Sept.15,2006):ESBWR Overview,米国エネルギー省HP,
http://www.ne.doe.gov/np2010/pdfs/esbwrOverview.pdf(as of Aug.2007)
(9)資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課(編):原子力発電便覧1999年版、電力新報社(1999年10月)
(10)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい(第4版)(1998年7月)、p.80
(11)資源エネルギー庁原子力発電課(編):原子力発電便覧1997年版、電力新報社(1997)、p.299
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