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<概要>
 電源開発調整審議会(電調審)は、電源開発促進法に基づき、電源開発基本計画等の電源開発に伴う諸事項を調査審議するための機関として総理府に設置され、電源立地点の選定手続きの円滑な推進を担ってきた。しかし、2000年6月に制定された「中央省庁等改革に伴い関係政令等を廃止する政令」によって電源開発調整審議会令が廃止され、また、2001年1月の電源開発促進法の改正、さらに経済産業省の審議会の再編成があり、電調審は電源開発分科会として、新たに設置された総合資源エネルギー調査会に組み込まれるとともに、国が定める電源計画については、経済産業省が毎年度「電源開発基本計画」を決定することとなった。その後、2003年10月に電源開発促進法が廃止され、これを根拠としていた電源開発基本計画も廃止された。そこで、2004年10月に「電源開発に係る地点の指定について」が閣議了解され、重要な電源開発に係る地点については、経済産業大臣が「重要電源開発地点」の指定を行い、地元合意形成や関係省庁における許認可の円滑化を図ることとなった。
<更新年月>
2009年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 電源開発の促進は電力を安定的に供給する上で不可欠の課題であり、これを円滑に進めるために電源開発促進法が1952年(昭和27年)7月に公布され、同法に基づき電源開発基本計画等の電源開発に伴う諸事項を調査審議するための機関として、同年8月に電源開発調整審議会(電調審)が総理府(当時)に設置され、経済企画庁(当時)が主務省庁となった。以下に、法律上の電調審の所掌、および電源立地点の選定から電源開発基本計画の作成の段階で果してきた役割を解説するとともに、電調審および電源開発促進法が廃止された後の立地点の指定手続きについてまとめる。
1.電源開発促進法での所掌業務
 電調審の所掌事務は、1)電源開発基本計画に関する調査審議、2)電源開発に要する資金の調達、配分に関する調査審議、3)電源開発を行う者の決定に関する調査審議、4)電源開発規模、方式等に関する調査審議、5)電源開発のための水および立地に関する権利の調整ならびに電源開発等により生ずる損失の補償に関する調査審議、6)国または地方公共団体が電源開発を行う者に対して公共事業(河川、湖沼、道路に関して国、地方公共団体が施工する工事)の施工を委託し、または当該工事と密接な関連を有する電源開発等の委託を受ける場合の費用の負担方法、割合の基準の作成に関すること、7)電源開発株式会社の発電施設、送電、変電施設の貸付、譲渡に関する相手方、価額等についての認可基準の作成ならびに同貸付、譲渡および同料金認可について通商産業大臣(当時)から意見を求められた場合の同事項に関する調査審議、8)電源開発の促進、総合調整に関して必要な事項の調査審議を行うことと規定された。
 また、都市部を中心に電力需要が急速に増大する一方で、年々電源開発は困難になってきており、深刻な電力供給不足が発生するおそれが出てきたため、平成5年3月には電源立地部会が設置され、電源立地を促進するため、その重要な地点について状況把握を行うとともに、電源立地の促進のために必要な事項について調査審議が進められた。
2.電源立地点の選定と電源開発基本計画の作成
 一般に、電源開発を行うに当たっては、かんがい、漁業、治水、発電等による水利権の調整、家屋の水没に対する損失補償、漁業補償等の複雑な問題がある。こうした問題に関して、関係省庁間の調整、第1次公開ヒアリング(原子力発電所のみ)、環境審査、用地取得・漁業補償、立地都道府県知事の同意を得た後に、電調審に上程して電源開発基本計画への組み込みを決定する。なお、原子力発電所を設置する場合には、環境審査、第1次公開ヒアリング、電調審決定、原子炉設置許可申請とそれに伴う第2次公開ヒアリング・電気工作物変更許可申請といった流れを経て、設置許可が得られる仕組みになっている。
 このように電源開発促進法の下では、各年度の新規電源立地計画は、1)地元都道府県の同意を得ること、2)基本的に関係漁協の同意が得られていること、3)関係省庁の合意を得ることなどの要件を満たした上で、電調審に付議し、電調審は国土の総合的な開発利用および保全、電力の需給その他電源開発の円滑な実施をはかるため必要な事項を考慮し、電源開発基本計画を決定することとなっていた。
3.電調審および電源開発促進法廃止後の措置
 電調審は長年にわたって電源立地点の選定手続きの円滑な推進と電源開発基本計画の決定に重要な役割を担ってきた。しかし、2000年6月に制定された「中央省庁等改革に伴い関係政令等を廃止する政令」によって電源開発調整審議会令が廃止された。また、2001年1月の電源開発促進法の改正、および中央省庁等改革基本法第30条及び中央省庁等改革に係る大綱を踏まえ、経済産業省に設置されていた審議会の再編成が行われ、総合資源エネルギー調査会が新たに設置された。電源開発調整審議会は、電源開発分科会と改称して総合資源エネルギー調査会の分科会の一つとなった。これに伴い、国が定める電源計画については、改正された電源開発促進法に基づいて、経済産業省が毎年度「電源開発基本計画」を決定することとなった。
 その後、電源開発株式会社の民営化のため、電源開発促進法が2003年(平成15年)10月に廃止され、これを根拠としていた電源開発基本計画も廃止された。そこで、電源開発基本計画が担ってきた役割を継承するため、2004年(平成16年)10月に「電源開発に係る地点の指定について」が閣議了解され(表1)、それまでの「法律上の根拠」に替えて、新たに「閣議了解による根拠」によって、推進することが特に重要な電源開発に係る地点については、電気事業者の申請に基づき、経済産業大臣が「重要電源開発地点」の指定を行い、地元合意形成や関係省庁における許認可の円滑化を図ることとなった(図1)。これに基づき、2005年(平成17年)2月に「重要電源開発地点の指定に関する規程」が経済産業省により告示され、2006年度(平成18年度)以降、従来の電源開発基本計画に代わって、重要電源開発地点の指定が行われている。
<図/表>
表1 電源開発に係る地点の指定に関する閣議了解
表1  電源開発に係る地点の指定に関する閣議了解
図1 「重要な電源開発に係る地点の指定」の概要
図1  「重要な電源開発に係る地点の指定」の概要

<関連タイトル>
各種電源の特徴と位置づけ(1995年度末) (01-04-01-02)
経済産業省と原子力行政 (10-04-06-01)
総合資源エネルギー調査会 (10-04-06-02)

<参考文献>
(1)経済産業省報道発表資料:電源開発に係る地点の指定について(平成16年9月10日)
(2)経済産業省資源エネルギー庁(編):電源立地制度の概要(平成20年3月)、(財)電源地域振興センターホームページ、http://www2.dengen.or.jp/html/leaf/seido/files/richigaiyo-200803.pdf
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