<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 地球環境問題
<小項目> 地球環境問題への取り組み
<タイトル>
ラムサール条約 (01-08-04-21)

<概要>
 沼沢地、湿原等の湿地に生息する水鳥の多くは渡り鳥であり、このため、水鳥の保護及び湿地の保全のための国際協力の必要性が認識されはじめ、1971年2月2日、イランのラムサ−ルにおいて開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」で本条約が作成された(1975年12月21日効力発生)。条約は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びその動植物の保全を促進することを目的とし、各締約国領域内にある湿地を指定すること及び湿地及びその動植物の保全のため取るべき措置について規定している。日本は、1980年6月17日に加入書をユネスコに寄託し、同年10月17日に効力を発生した。日本の登録湿地は合計11か所となっている。2002年3月27日に地球環境保全に関する関係閣僚会議で決定された「新・生物多様性国家戦略」に沿って、さまざまな仕組みや手法を有機的に組み合わせて活用していくことにより、「自然と共生する社会」を実現していくこととしている
<更新年月>
2002年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.ラムサール条約
(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約:Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat)
1.1 背景
 沼沢地、湿原等の湿地に生息する水鳥の多くは渡り鳥であり、このため、水鳥の保護及び湿地の保全のための国際協力の必要性が認識されはじめ、1971年2月2日、イランのラムサ−ル(カスピ海沿岸の町)において開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」で本条約が作成された(1975年12月21日効力発生)。
1.2 目的
 本条約は、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びその動植物の保全を促進することを目的とし、(イ)各締約国が自国の領域内にある湿地を指定すること及び(ロ)湿地及びその動植物の保全のため各締約国が取るべき措置にについて規定。
1.3 締約国数等
 1998年4月現在、締約国数106か国、登録湿地数904、登録湿地面積約6,800万ヘクタ−ルとなっている。ほぼ3年に一度締約国会議が開催される。
1.4 日本との関係
 1980年6月17日に加入書を寄託機関たるユネスコに寄託し、同年10月17日に日本について効力発生。条約加入の際に「釧路湿原」を登録して以降、「伊豆沼・内沼」「クッチャロ湖」「ウトナイ湖」が追加登録されたのに加え、1993年6月に釧路で開催された第5回締約国会議を機にさらに5湿地の追加登録が行われた。1996年3月の第6回締約国会議において「佐潟」が登録されている。最近では、1999年5月の第7回締約国会議(於コスタリカ)において、沖縄県の「漫湖」が登録され、日本の登録湿地は合計で11か所となった( 表1 )。
2.日本における自然保護問題への取組
 自然保護問題については、従来から保護か開発かという択一的議論が生じやすい傾向にある。一方、近年の生活・生産様式の変化、人口減少など社会経済の変化に伴い、むしろ自然に対する人為の働きかけが縮小撤退することにより、里地里山等の地域において環境の質が変化し、種の減少ないし生息・生育状況の変化が進行しているという現実もある。
 このため、2002年3月27日に地球環境保全に関する関係閣僚会議で決定された「新・生物多様性国家戦略」では、保護地域等による規制的手法に加え、社会資本整備や生産活動における環境配慮、NPO(Non-Profit Organization:民間非営利組織)活動の支援、地域振興・地域づくり、地域産業との連携、自然再生事業の推進、地域社会における合意形成の仕組みなど、さまざまな仕組みや手法を検討し、それらを有機的に組み合わせて活用していくことにより、「自然と共生する社会」を政府一体となって実現していくことが必要であるとされている
 日本は、国土が南北に長く、地形の起伏に富む上、四季の変化も相まって、多様で豊かな生態系を有している。しかしながら、ここ数十年の間には、経済成長により生活水準の向上が実現された一方で、自然海岸や干潟の減少が進み、かつては身近な存在であった動植物が絶滅危惧種となるなど、日本の生態系は衰弱しつつある(表2表3参照)。
 こうしたことから、残された生態系の保全の強化に努めることはもちろん、それに加えて、衰弱しつつある生態系を健全なものに蘇らせていくため、失われた自然を積極的に再生・修復することも必要である。
 2001年7月の「21世紀『環の国』づくり会議」の報告では、積極的に自然を再生する自然再生型公共事業の推進が提言された。ここでは、都市と農山漁村のそれぞれにおいて、自然環境の観点に立った事前の十分な調査検討を行い、ハード整備にとどまらずさまざまな主体の参加によって自然を再生していくことが望まれるとされている。また、同年12月の総合規制改革会議の答申においても、自然の消失、劣化が進んだ地域において、多様な主体の参画による自然再生事業を推進すべきことが提言されている。また、自然再生の推進に向けた法的枠組みについても検討が進められている。
 自然再生事業は、人為的改変により損なわれる環境と同種のものを創出する代償措置としてではなく、過去に失われた自然を積極的に取り戻すことを通じて生態系の健全性を回復することを直接の目的とし、その対象としては、河川、湿原、干潟、藻場、里山、森林などさまざまな自然が考えられる。
 これらの具体的取組として、釧路湿原において直線化された河川の再蛇行化等により乾燥化が進む湿原の再生を目指す事業や、埼玉県所沢市くぬぎ山地区において産業廃棄物処理施設の集積等により失われた武蔵野の雑木林の再生を図る事業などが始められている。これらの取組は、緑化産業、土木技術産業等の新しい雇用機会として地域における雇用の促進や観光振興等経済の活性化も期待されている。
3.釧路湿原における自然再生型公共事業
 釧路湿原は、約1万8千haに及ぶ日本最大の湿原であり、そのうちの約5千5百haが1967年に天然記念物に指定され、1980年日本最初のラムサール条約に基づく湿地として登録された。釧路湿原に特有のタンチョウ、キタサンショウウオ、イトウ、カブスゲ群落(ヤチボウズ)などを含む多様で貴重な野生動植物が生息・生育しているほか、保水・浄化機能や遊水地としての洪水調節機能、湿原特有の景観資源、観光資源としての機能を有している。
 しかしながら、近年の流域における経済活動の拡大に伴い、湿原面積は著しく減少し、湿原植生もヨシ−スゲ群落からハンノキ林への急激な変化がみられるなど乾燥化が懸念されている。1947年から1996年までの50年間に湿原面積は約2万5千haから約1万9千haへと2割以上減少した。
 これらの状況から、国土交通省、農林水産省及び環境省では、緊密な連携を図りながら、釧路湿原における自然再生事業に着手することになった。具体的な事業内容としては、直線化された河道の再蛇行化とその周辺での湿原植生の回復、ヨシ原におけるタンチョウの営巣環境の整備、集水域での広葉樹植栽などによる土砂の発生抑制対策などが考えられる(図1参照)。事業の実施に当たっては、調査計画段階から地元自治体、専門家、地域住民、NPO等の参画を得てさらに具体的な検討を進め、湿原の再生状況や動植物の生息・生育状況等をモニタリングしながら、その評価を事業に反映するなど柔軟に事業を推進していくことが重要となる。
 釧路湿原における取組は、多様な主体の参画による自然再生事業の先駆けとなるものであり、いわば自然再生事業の試金石として、ひいては自然と人間との関係を問い直すものとして重要な意味をもつものといえる。
<図/表>
表1 登録湿地内訳
表2 干潟・藻場・サンゴ礁の面積
表3 海岸区分別延長
図1 釧路湿原における河川環境保全のための具体的施策イメージ

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
生物の多様性に関する条約 (01-08-04-16)
オゾン層保護に関する条約 (01-08-04-17)
バーゼル条約 (01-08-04-18)
砂漠化対処条約 (01-08-04-19)
ワシントン条約 (01-08-04-20)
ロッテルダム条約 (01-08-04-22)
南極条約 (13-04-01-13)

<参考文献>
(1)外務省:ラムサール条約、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/rmsl.html
(2)環境庁(編):平成14年版環境白書、株式会社ぎょうせい(2002年5月27日)、pp.58-61
(3)環境法令研究会(編):最新環境キーワード 第3版、経済調査会(2000年8月10日)、pp88−89.
(4)地球環境研究会(編):三訂 地球環境キーワード事典、中央法規出版(2001年2月25日)、pp.84-95
(5)環境省自然環境局生物多様性センター:生物多様性関連の法律・条約、http://www.biodic.go.jp/biolaw/bio_law.html
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