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<概要>
 主要な石油と天然ガス輸出者であるロシアのエネルギー部門は、国の経済的成功に、また世界のエネルギー市場にとって重要である。エネルギー部門が、高いGDP成長率を示している間に国内のエネルギー需要の成長と歩調を合わせ、一方でなお輸出の機会を掴むことができるためには、改革が欠かせない。改革の成功は、安定した競争的投資環境の創生、エネルギー価格の改善、企業の透明度、エネルギー効率の劇的な改良およびエネルギーの生産と使用の増加に起因する有害な環境の影響に対する適切な安全措置に依存する。この調査は、IEA加盟国の分析に使用された方法に従って、長期の投資低迷の後、エネルギー各部門が直面する問題についての観察を示すものである。
<更新年月>
2004年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 2001年10月にロシア政府によって承認された、新しいロシアの2020年へのエネルギー戦略(Energy Strategy of the Russian Federation to 2020、以下では「新戦略2020」と略す)の主要条項(Main Provisions:MP)は、経済のエネルギー需要に対応しようとするもので、2つのシナリオに基づいている:
・ 「楽観的」または「好ましい」シナリオ、
・ 「悲観的」または「好ましくない」シナリオ。
 楽天的シナリオは、ヨーロッパの生活水準に追いつくために、GDP年平均成長率5%〜6%の経済のエネルギー需要に応じるものである。2020年のロシアのGDPは、1998年のそれより3〜3.15倍高い。悲観的なシナリオでは、2020年まで2.5%〜3.5%だけのGDP年成長率を仮定する。いずれの場合も、エネルギー部門が歩調を合わせるために、エネルギー効率の大改善をし、エネルギー価格付けを改善しなければならない。
1.エネルギーの需給
 1999年の全エネルギー供給は、1990年の8億6800万石油換算トン(868Mtoe)より31%低い、603Mtoeに達した。1次エネルギー供給での天然ガスのシェアは、この9年間で42%から52%まで増加した。これは天然ガスのシェアが増加する間、石炭と原子力部門への投資を控えてきたことを反映している。この間、石油のシェアは、30%から21%まで、石炭のシェアは21%から18%まで落ちた。水力発電と原子力のシェアは、比較的一定で、2%と4%〜5%であった(表1)。
 1999年の全最終エネルギー消費は、1990年の657Mtoeより38%低い、410Mtoeに達し、天然ガスのシェアが、この9年間で22%から28%に増加し、石炭、石油及び石油製品のシェアが、それぞれ、8%から5%、24%から21%に低下した。熱と電気のシェアは、それぞれ33%から34%と11%から12%と一定のままであった(表2)。
 部門毎の全最終エネルギー消費(Total final consumption:TFC)は、1990年代にわたってほぼ一定であった。産業部門のシェアは1990年の38%から1999年に33%へと僅かに低下し、民生と輸送部門のシェアは30%から33%、18%から20%へとそれぞれ増加した(表3)。1999年、OECDの民生部門は19%、輸送部門で34%であり、ロシアの傾向はこれと逆である。
2.エネルギー効率の改善
 エネルギーの対GDP原単位は1990年から2000年まで国内経済を反映し16%の増加を示している (表4)。資源の豊富な国ロシアは、経済の下降の間は国内のエネルギー需要の減少に応じていれば良いが、経済成長期には経済のエネルギー効率の改善が社会と経済の進歩の必要条件の1つになる。しかし、エネルギー投資を魅することの困難さと効率の悪いエネルギー使用が組み合わさると、エネルギー部門が経済の回復と成長の減速の原因となる危険を増大させる。エネルギー戦略の主要条項(MP)では、エネルギー需給見通しは、GDP年成長率5%と一致し必要なエネルギー効率改善の多くは自然に起こると仮定している。
 エネルギー需要が現在の割合で成長し続ければ、2020年の1次エネルギー供給は約1867Mtoe、または2670Mtce(石炭換算トン・ロシア統計基準)、ほぼ、2000年の3倍になるであろう。
 経済成長のとき起こる自然の経済的改善によって、サービス産業がGDP中で大きいシェアを獲得すると予測される。エネルギー省は、2020年までに1次エネルギー供給縮小の70%がこのプロセスによると仮定する。残りの30%は、コスト削減と技術的なエネルギー節減対策から生じる。エネルギー部門は、33%の潜在的節減と見積もり、産業・建設部門から生ずる33%の節減、住居とユーティリティ部門からの25%以上、輸送からの6%〜7%及び農業からの3%と評価している。
 エネルギー効率要件の約20%が石炭換算トン(tce)当り15ドルの費用で達成されるとエネルギー省は見積もっている。60ドル/tceを超える、最も高価な対策は、全体の15%と勘定している。残る66%について、15〜60ドル/tceの価格範囲の対策実施には、2000年〜2010年までに70億ドル〜170億ドル必要で、それから2020年までに250億ドル〜500億ドル必要と評価している。MPは、京都議定書共同実施排出権取引を含む柔軟なメカニズムが、これらの目標を達成するに役立つものとして引き合いに出している。
 エネルギー需要予測が表4に示される。楽観的予測で、2020年にはGDPに対するエネルギー原単位が52%減少し、電力の原単位が37%減少する。熱の原単位は、2020年までに56%減少する。エネルギー省は、このエネルギー効率の劇的な改善を持続的経済成長の主要な前提条件として描き、これなしには非効率なエネルギー需要の増加に見合ったエネルギー部門の無能さによって成長が減速すると予想する。
 エネルギーの効率的利用を奨励する主な政策手段は、確実にコストをカバーするようエネルギー価格を上昇させることである。2020年までのエネルギー価格再編政策の主な目標は以下の通りである:
・効率的な国内の製造業者の競争を考慮に入れた、エネルギー価格の上昇
・天然ガス価格の相当な上昇と他のエネルギー源の熱特性の考慮による価格再編
・原油と燃料油価格間及び電気と熱価格間の不均衡の除去
・輸送コストを反映する、地域毎の価格に差をつけること
・異なる消費者グループ(時刻、季節、消費量、容量)へ配達されるサービス費用の違いを反映するよう、消費者価格(料金)に差をつけること
・相互の助成金を廃止し、特定の消費者への直接支払いに替えること
3.エネルギーの輸出
 1992〜1998年間の正味のエネルギー輸出は、主に天然ガス、原油、石油製品、少量の石炭で、1992年の314Mtoeから1998年の345Mtoeへと10%増加した。輸出は354Mtoeから367Mtoeに増加し、輸入は40Mtoeから22Mtoeまで減少した。天然ガス輸出は約5%増え、原油輸出は7%上昇、ディーゼル燃料の輸出は13Mt(百万トン)から24Mtへと、85%急上昇した。石炭輸出は、部門の再編を反映し40%以上減少した。石炭輸入も同様に低下し、石炭の正味の輸出はほぼ一定となっている。電気の主な輸出目的地であるCIS諸国の経済の落ち込みを反映して、電力輸出は40%減少した。電力輸入は約70%減少し、ネット電気輸出は16GWhから18GWhまで約11%増加した。
 2020年まで、石油、石油製品、石炭の輸出の増加は殆どないという予測(表5)は、現在の輸出増加傾向に従ったものではない。2000年の石炭輸出は35Mt、21%増加した。石炭輸出は急速に増加するとは期待されていない。しかし、輸出価格が国内の市場より高い限り、輸出市場はロシアの石炭生産者にとても魅力的である。原油と石油製品輸出は、高い価格に刺激されて、1999〜2001年間にかなり増加した。旧ソ連からの石油輸出(2001年のロシアからの90%以上)は、1998年の324万バレル/日(3.24mbd)から2000年の4.32mbdへと、そして、2001年の第3四半期に亘って平均4.72mbdに増加した。輸出ルートにある障害が除かれると、輸出の展望は表5で示されるよりもよく、明るいようである。天然ガス輸出の展望は、ヨーロッパの輸入業者との長期契約と一致している。電気輸出の展望は、潜在的な輸出市場の容量需要と同様に大きな投資に依存する。
4.エネルギー供給
 1995年のエネルギー戦略は天然ガスを主要燃料として推進した。少なくとも2010年までの天然ガスの使用は、国内の燃料とエネルギー部門を改善する唯一の現実的な政策とみなされ、全ロシアの経済成長を高めた。エネルギー戦略の優先事項であった。しかし1999年以来、天然ガスへの過度の依存によるエネルギーの安全保障リスクへの懸念が増大し、さらに、ガス資源の開発には膨大な投資の増加が必要であろうが、現在の低い国内ガス価格が続く限り投資を増やせないであろう。
 表6はMPによる2000年から2020年までのエネルギー生産の予測を示している。
(1)原油:1988年に約6億トンでピークに達した原油生産は、1990年代前半に50%急落し、1995年に3億トンで安定した。2020年に生産は3億6000万トンまで成長する。悲観的なシナリオでは2020年3億500万トンで、安い世界石油価格と財政的/法律的改革がないことを仮定している。長期の投資がない場合、石油部門が直面する重大な状況を明白に示すものである。成熟した西シベリア油田からの年約1億トンは、次の7〜10年の間に代替される必要がある。
(2)天然ガス:2020年に700Bcm(Bcm=10億m3)と前より低いガス生産を予測している。生産の76%以上が新ガス田からで、2000年に85%以上が西シベリアのガス田Medvezhye等から来ている。主なガス生産地域は依然として、西シベリアのNadym-Pur-Tazovsky地域で、そのシェアは現在87%であるが、2020年までに60%〜64%までに落ちる。この他にイルクーツク地域の中のKovyktinskoyeガス田、東シベリアと極東でのガス田等がある。
(3)石炭:石炭生産は1988年に425Mtのピークを迎えた。生産は1990年代に減少し、1999年に235Mtまで落ちた。生産減は、需要の減少、設備の非効率、設備投資の不足から生じた。2000年までに、産業は大規模な再編と鉱山の閉鎖を終了させた。MPは2020年に430Mtの生産を予測している。高い石炭生産計画は、短期的なガス生産と原子力発電の減少で起こるエネルギー供給破綻の防止措置となる。
(4)発電:好ましい経済成長シナリオの下で、発電量が2010年に1180TWh、34%増加、2020年に1620TWh、84%増加すると予測している。発電は2010年までに1990年前のレベル(電力消費のピーク、71Mtoe)に回復すると予測している。低成長シナリオでは、2010年に1055TWh、2020年に1240TWhに達する。発電所の天然ガス消費は2005年まで不変で、絶対量は、2020年までの期間を通して、1990年の水準には達しない。代わりに、発電所の石炭消費が、1.5〜2倍に増加すると予測している。火力発電の燃料中、天然ガスのシェアは60.8%から50.8%まで落ち、石炭のシェアは30.6%から44.4%まで上昇する。
(5)原子力発電:原子力発電は2000年に約21GWで発電量の15%を占めるが、1999年から2000年までの電力需要の増加の90%以上を供給した。原子力の容量は、低い成長シナリオの中で、2020年には劇的に35GWに成長すると予測され、高い成長のシナリオでは50GW以上に成長すると予測される。全電力中の原子力のシェアは2000年の15%から、2020年には21%に増加する。原子力発電の優先的地域はヨーロッパ、極東及び極北地域である。また、分散型の自立的エネルギー供給源、特に他の燃料源から遠く離れた孤立した地域に、1MWから50MWまでの低出力の原子力発電所(船舶用も含めて)の建設を予想している。次世代の研究開発、特に、トリウム−ウラン燃料サイクルによる熱中性子炉の開発、高速増殖炉とヘリウム冷却モジュラータイプ高温ガス炉が計画されている
(6)水力発電:ロシアの水力発電は、十分開発すればロシアの全電力を賄うことができる。資源開発に必要な長い準備期間と莫大な投資のため、予測は2000年の160TWhから2010年の170−177TWh、2020年の190−200TWhの控えめな増加のみを示している。新水力発電所の生産コストが3.5〜4cents/kWhを上回らないと仮定している。
5.温室効果ガス
 エネルギー部門は、排出される温室効果ガスの91%以上を生産し、すべての有害な排出の約半分を大気中に放出している。図1に示すように電力部門だけで、1999年に26.8%の有害な排出をしている。石油生産部門の排出は、次に大きく、9%である。エネルギー部門の他の部分は、5%未満の排出である。また、水中に全体の約30%の有害な排出をしている。図2に示すように、電力部門だけで、1999年に15%以上排出し、石炭部門が約6%でこれに次ぐ。
 在来の汚染物質とCO2の全排出は、世界で最高の部類に入る。SOxとCO2排出の対GDP原単位はOECD平均より非常に高い。エネルギー部門からの在来の大気汚染物質の放出は、1993〜1999年で、主に経済の下降によって、かなり減少した。しかし表7に示すように、ある場合には、SOx、NOx、微粒子、COとVOCs揮発性有機化合物)の排出は、それほど減少していない。ある場合には、増加さえした。
 環境保護に関する経済的手段として汚染物質排出抑制のために税を使う。汚染源は、その排出に比例した基本料金を課せられる。最高水準を超えるか、環境の非常事態または災害として指定された特定の条件にある場合、乗率または環境係数が単位の放出に掛けられる。このシステムは1990年代初期には効果的であったが、税が早いインフレのペースに追いつかなくなって、その効力の多くを失っている。
<図/表>
表1 ロシアの1次エネルギー総供給
表1  ロシアの1次エネルギー総供給
表2 燃料別最終エネルギー消費
表2  燃料別最終エネルギー消費
表3 部門別最終エネルギー消費
表3  部門別最終エネルギー消費
表4 エネルギー需要及び各種エネルギーの対GDP原単位
表4  エネルギー需要及び各種エネルギーの対GDP原単位
表5 ロシアのエネルギー輸出(1990−2020)
表5  ロシアのエネルギー輸出(1990−2020)
表6 ロシアの燃料生産予測(2000−2020)
表6  ロシアの燃料生産予測(2000−2020)
表7 ロシアのエネルギー部門からの大気汚染物質への排出
表7  ロシアのエネルギー部門からの大気汚染物質への排出
図1 1999年部門別大気汚染物質排出割合(%)
図1  1999年部門別大気汚染物質排出割合(%)
図2 1999年部門別汚染物質水中排出割合(%)
図2  1999年部門別汚染物質水中排出割合(%)

<関連タイトル>
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(1)政策の概観 (01-07-06-01)
IEAによるカナダのエネルギー政策のレビュー(2000年) (01-07-06-09)
IEAによるフランスのエネルギー政策のレビュー(2000年) (01-07-06-10)
IEAによるスウェーデンのエネルギー政策のレビュー(2000年) (01-07-06-11)

<参考文献>
(1)Russia Energy Survey 2002,OECD/IEA,2002:Russian Federation、publication、Russian Energy Survey,
(2)Russia's Energy Strategy to 2020:
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