<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 世界のエネルギー情勢
<小項目> 新しい潮流
<タイトル>
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(5)再生可能燃料および非在来型燃料 (01-07-06-05)

<概要>
 IEAは米国ブッシュ政権が2001年に発表した「国家エネルギー政策」に基づいて米国のエネルギー政策のレビューを実施した。このうち再生可能燃料および非在来型燃料に関するレビュー結果をまとめた。
 米国エネルギー政策では、税額控除を中心とした再生可能エネルギー開発利用推進策が盛り込まれている。また、米国では再生可能エネルギーに対して個別に目標時期を定めた具体的な開発計画が展開されている。目標設定にあたっては他の政策目標との調和を図る必要がある。特に、電力市場の自由化の目標を追求する中で、税額控除による保護政策が再生可能エネルギーの自立を妨げないように配慮が必要である。また、高コストの再生可能エネルギーの利用を促進する手段として、これまで特定技術への税額控除を中心とした経済的優遇策が活用され、風力発電の導入などに貢献してきた。しかし、より中立的な立場から費用対効果の優れた再生可能エネルギーの開発を促進する手段として、再生可能エネルギー利用基準を導入することが望まれる。これにより、一定規模の市場を約束し開発のための安定した競争的環境を確立でき、長期にわたる公的負担を伴わない。
<更新年月>
2002年11月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
米国ブッシュ政権はエネルギー政策を再優先課題の一つに位置付けており、2001年5月に「国家エネルギー政策」(NEP:National Energy Policy)を発表した。このNEPを基に、IAE(国際エネルギー機関)は米国のエネルギー政策のレビューを2002年に実施した。ここでは、IEAのレビュー報告書<参考文献>(1)に基づき、再生可能燃料および非在来型燃料に関するレビューの結果をまとめた。
1.再生可能エネルギーの推進政策
 現在のところ再生可能エネルギーの寄与は小さい(5.4%、その3/4が水力)が、水力以外のエネルギー寄与は1990年代に27%以上増大しており、米国で最も急速に増大しつつあるエネルギー源の一つである。2001年5月の国家エネルギー政策では 表1 に示す取り組みを勧告している。
2.経済面での優遇策
 再生可能エネルギーシステムは連邦、州政府、公益事業者からさまざまな経済面での優遇策を受けている。連邦からは、設備投資税控除制度の下で太陽エネルギー利用機器の投資または購入・設置の際に10%の税額控除、再生可能エネルギーの生産における税額控除制度の下で、バイオマスと風力による電気の販売に対する税額控除などが行われている。多くの州は、所得税、財産税、販売税の控除のほか、資金の貸し付け、補助金、加速償却などの再生可能エネルギー支援策を提供している。10以上の州は、電力の一定比率を再生可能エネルギーで発電することを義務づけている。また、幾つかの公益事業者は、貸し出し、割引、低利または無利子の貸し付け、補助金などの制度を用意して、再生可能エネルギーに関する技術の利用促進を図っている。
3.個別的政策
3.1 風力エネルギー
 「米国風力発電計画」では、風力の利用を劇的に増大させることが謳(うた)われており、2020年までに電力の5%以上を供給する目標の下で、2005年までに5GWe以上、2010年までに10GWe以上の設置を目指している。その支援として、「公益事業者風力資源評価プログラム」では、各事業者の管轄内の風力資源規模を評価し、風力エネルギー開発を喚起している。また、「公益事業者風力タービン性能実証プログラム」は、新技術の試験と評価に係るリスクの低減を通じて、風力発電の商業化を加速することを目指している。少なくとも6MWe規模の新技術による風力発電プラントの建設と運転を予定しており、費用は事業者が分担することになっている。
3.2 太陽エネルギー
 「太陽エネルギープログラム」は太陽エネルギー利用技術の性能改善とコストの低減を目指している。また、「太陽光発電システムプログラム」は、産業界、大学、国立研究所の連携の下で、研究開発の有望な対象技術を選定して光発電システム研究に関する米国の先導性を確立するとともに、2004年までに 表2 に掲げた目標を達成することを目指している。
 「集光型太陽熱発電プログラム」はクリーンで、経済的競争力があり、信頼性の高い技術の開発を目指している。産業界との協力を通じて表2に示す目標を達成することを狙っている。
 「ビル用太陽熱技術プログラム」は信頼性があり、設置が容易で、費用対効果の優れた太陽熱利用技術の開発を目指している。具体的には、表2に掲げる目標を設定している。
3.3 地熱エネルギー
 「地熱プログラム」は米国産業界と連携して、地熱を経済的競争力のあるエネルギー源として確立することを目標とするものである。「西部地熱開発(GeoPowering the West)」は西部諸州の地熱開発の促進を目指している。地熱開発に関する技術的、制度的、及び環境面からの障害を克服することを活動の中心としており、次のような具体的目標を設定している。
・2006年までに、地熱発電施設を保有する州の数を8州に倍増する
・2007年までに、地熱発電の耐用年数均等化発電コストを2000年の5〜8セント/kWhから3〜5セント/kWhまで低減する
・2010年までに、米国500万軒の家庭と商業施設に電力または熱エネルギーを供給する
3.4 バイオマスエネルギー
 「バイオエネルギーイニシアティブ」の下で「バイオ発電プログラム」と「バイオ燃料プログラム」が展開されている。「バイオ発電プログラム」はエネルギー作物、農業残滓、木材、木材残滓のような植物資源からの発電と熱供給を対象としている。その目標は、2010年までに新たに3GWeの発電設備を米国内に増設して、合計10GWeにしようというものである。「バイオ燃料プログラム」は、バイオマスのセルロース物質を変換して輸送用液体燃料、特にエタノールを生産する技術の研究開発と実証を支援している。現在は行われていないセルロースからのエタノール生産を、2010年に22億ガロンの規模で実施することを目標に掲げている。
3.5 水素
 プログラムの中心的な課題は、再生可能エネルギー利用技術の実用化に先だって、天然ガスを原料とする水素製造を過渡的に実施すること、天然ガス改質器と一体となった固体高分子型(イオン交換膜型)燃料電池によるコージェネレーションシステムの導入、最も安全な技術を開発し、市場に普及させるための規格、基準の作成、及び将来のエネルギーキャリアとしての水素を製造するための国内資源の活用が含まれている。2010年までの目標は次のとおりである。
・天然ガスとバイオマスから大量生産した加圧水素について、百万Btu当たり12〜15セントの製造コストを達成する
・走行距離350マイルを達成可能な自動車のための、安全で低コストの水素貯蔵技術を開発する
・水素燃料電池の利用で2020年までに二酸化炭素排出量を炭素換算で130万トン、石炭換算で1370万トンを低減する
3.6 水力エネルギー
 「水力エネルギープログラム」は、魚類の死亡率を2000年の30%から2%またはそれ以下に低減できる商用可能な水力タービンを、2010年までに開発することを目標としている。
4.論評
4.1 他の政策目標との調和
 再生可能エネルギーは、技術輸出を通じて直接の経済的利益をもたらすなど、米国のエネルギー政策に重要な役割を果たし得るものであるが、費用対効果及び他の政策目標との整合性を確保するために、政策目標を慎重に設定する必要がある。
 再生可能エネルギーに関する政策は、エネルギー効率改善及び電力産業に関する政策、研究開発政策と密接に関連している。開発利用促進策は、再生可能エネルギーが発電と運輸部門の温室効果ガスの削減、分散型電源の導入による送電設備投資の低減、エネルギーセキュリティの向上などの政策目標に寄与することを踏まえて検討する必要がある。ただし、現在は在来型のエネルギーと比べて高コストであることも踏まえて、上記政策目標に貢献する幾つかの手段の一つであるとの位置付けが妥当である。
 電力部門では市場の自由化が進められていることも、政策目標の設定に際して考慮する必要がある。特定エネルギー源を自由化の枠組みから除外すれば、競争市場に影響を与えるので、このような除外を一時的なものとし、かつコストが最小に維持されるような制度設計を行い、一定の開発期間の後には競争力のある技術が生まれるような政策が必要である。
 米国はエネルギー市場が大きいため、他の諸国では不再生可能な大規模実証プロジェクトを実施できる可能性がある。実証された再生可能エネルギーに関する技術の輸出を通じて、きわめて大きな経済的利益を得ることが可能である。
4.2 特定技術推進のための税額控除
 国家エネルギー政策では、ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車、家庭用太陽光パネル、各種発電技術、バイオマスエネルギーの販売促進などに向けた多くの税額控除制度を提案している。この制度は風力発電の導入にも貢献してきた。今後も、新技術の実証目的での利用において特に大きな役割を果たし得るものと期待される。
4.3 より広範かつ中立的な政策的枠組み
 外部性(*)を価格に反映させることは経済の広範囲にわたる改革を推進する効率的かつ有効な手段であり、再生可能エネルギーもその恩恵を受ける。しかし、この手段を採り得ないとすれば、最も費用対効果の優れた再生可能エネルギーが開発されるような政策が必要である。
 再生可能エネルギー利用基準(renewable portfolio standards)[ RPS、再生可能エネルギー基準、再生型エネルギー利用基準ともいう。]は、最も費用対効果の優れた再生可能エネルギー技術が選択されることを保証する中立的な手段として、すでに米国内でも活発に議論されている。利用基準を通じて市場の一部が再生可能エネルギーのために確保されるので、再生可能エネルギーを開発するための安定した競争的環境が保証され、長期にわたって公的負担を伴わずに再生可能エネルギーを推進できる。製造業者、その他の市場指向の取り組みを支援するプログラムと組み合わせれば、真に競争力があり、環境に優しい技術を開発する道筋を確立できる。ただし、保護された市場の下で自立できる商業技術を育成することは困難であると考えられるので、商業指向のアプローチを支援するための組織、技術の革新も不可欠である。
5.勧告
 合衆国政府に対して以下を勧告する。
・再生可能エネルギー源の発電に対する税額控除の代わりに、連邦再生可能エネルギー利用基準を設定することの考慮
・競争的電力市場の運営と整合する形で再生可能エネルギーの利用を促進するための、標準化されたアプローチの作成
・商業指向で、自立可能な再生可能エネルギー供給部門の発展を助長すること:競争力の強化に向けての再生可能エネルギー市場参加者の事業提携のような、革新的な事業運営の進展を支援すること

[用語解説]
(*)「外部性」とは、ある経済主体(企業、政府、消費者など)の行動が、他の経済主体に影響を及ぼすことをいう。他の経済主体にプラスの影響を与えるときは外部経済といい、マイナスの影響を与えるときは外部不経済という。[出所]内閣府(国民生活局物価調整課):公共料金の窓(用語解説:外部経済・不経済)http://www5.cao.go.jp/seikatsu/koukyou/explain/ex05.html
<図/表>
表1 米国エネルギー政策における再生可能エネルギー開発利用の推進策
表2 太陽エネルギー開発利用の推進プログラムが掲げる具体的目標

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(1)政策の概観 (01-07-06-01)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(2)エネルギーと環境 (01-07-06-02)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(3)エネルギー効率 (01-07-06-03)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(4)電力 (01-07-06-04)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(6)原子力 (01-07-06-06)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(7)石油、ガスおよび石炭 (01-07-06-07)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(8)エネルギー研究開発 (01-07-06-08)
アメリカの原子力政策および計画(2001年、ブッシュ政権) (14-04-01-28)
原子力損害賠償に関する国際条約と諸外国の国内制度 (10-06-04-02)

<参考文献>
(1) Energy Policy of IEA Countries−The United States− 2002 Review,OECD/IEA,2002
(2) Strategic Plan,Office of Energy Efficiency and Renewable Energy,USDOE,http://www.eren.doe.gov/eere/fy02_strategic_plan.pdf
(3) A National Vision of America's Transition to a Hydrogen Economy − To 2030 and Beyond,USDOE,February 2002,http://www.eren.doe.gov/hydrogen/national_h2_roadmap.pdf
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