<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 世界のエネルギー情勢
<小項目> 世界の原子力発電
<タイトル>
世界の原子力発電の動向・中南米(2011年) (01-07-05-19)

<概要>
 2011年1月現在、メキシコ、アルゼンチン、ブラジルの3ヵ国で原子力発電所6基(437万6,000kW)が運転中で、そのほか建設中のものがアルゼンチンに1基(74万5,000kW)、ブラジルに1基(140万5,000kW)ある。
 メキシコでは、ラグナベルデ1号機(BWR、68万2,000kW)が1990年7月に、また、同2号機(同)が1995年4月に、それぞれ営業運転を開始している。アルゼンチンでは、アトーチャ1号機(PHWR、35万7,000kW)とエンバルセ原子力発電所(CANDU、64万8,000kW)の2基が運転中で、アトーチャ2号機(PHWR、74万5,000kW)は一時資金難から建設を中断していたが、2007年から建設を再開している。ブラジルでは、アングラ1号機(PWR、65万7,000kW)と同2号機(PWR、135万kW)が運転中で、同3号機(PWR、140万5,000kW)は建設を中断していたが、2010年6月から建設を再開した。アルゼンチン及びブラジルの経済成長率は年7%〜8%と著しく、中断していた原子力発電所の建設再開や、新規発電所の建設計画が進展している。なお、キューバは1983年にフラグア1号機(VVER、44万kW)の建設を開始したが、1991年のソ連崩壊により、資金面の影響を受け、1992年に工事を中断した。
<更新年月>
2011年11月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 表1に中南米の原子力発電開発の現状、図1に中南米の原子力発電所立地点を示す。また、図2に燃料別発電電力量の推移(メキシコ・アルゼンチン・ブラジル)を示す。
1.メキシコ
 メキシコでは1989年4月13日、国内初の原子力発電所となるゼネラル・エレクトリック(GE)社製のラグナベルデ1号機(LAGUNA VERDE-1、BWR、68万2,000kW)が送電を開始、1990年3月に全出力運転を、同7月29日には営業運転を開始した。2010年の設備利用率は38.72%であった。
 メキシコはかつて、20世紀末まで2,000万kWの原子力発電設備を建設する計画を立て、1976年、1977年にGE社製のラグナベルデ1、2号機の建設を開始し、同3、4号機の入札も1982年に行った。しかし、膨大な対外債務(1987年8月時点で1,035億ドル)と経済不振から、同年中に外貨不足を理由に3、4号機はキャンセルされた。
 ラグナベルデ2号機(LAGUNA VERDE-2、BWR、68万2,000kW)は、1994年8月25日に燃料装荷を完了、同9月6日に初臨界に達し、1995年4月10日、営業運転に入った。2010年の同機の設備利用率は71.78%であった。ラグナベルデ2号機が営業運転を開始したことにより、原子力発電設備容量は136万4,000kWとなった。2010年の原子力発電電力量は55億9,580万kWhで、総発電電力量に占める割合は3.6%である。
 メキシコ連邦電力委員会(CFE)は2006年3月14日、急速に高まる電力需要に対処するため、停滞した原子力発電開発計画を拡大する方針を示した。CFEは年率4%以上で電力需要が推移すると予測し、2020年までに40億ドルを投じ、新規原子力発電所の運転開始を計画している。CFEは現在運転中のラグナベルデ1、2号機に関しても、5,000万ドルを投じて両機の出力増強を計画している。
2.アルゼンチン
 アルゼンチンは、豊富なウラン資源(ウラン確認資源埋蔵量9,930トンU)を背景に天然ウラン重水炉路線を選択している。現在運転中の原子力発電所は、ドイツ・シーメンス社製(KWU)のアトーチャ1号機(ATUCHA-1、PHWR、35万7,000kW)とエンバルセ原子力発電所(EMBALSE、CANDU、64万8,000kW)の2基で、アトーチャ2号機(PHWR、74万5,000kW)が建設中である。同機は1981年に着工したが、1995年に資金難で建設は中断した(進捗率81%)。建設はカナダの協力を得て2007年から再開、2013年の営業運転を目指している。
 アルゼンチンでは、国営企業の非効率な運営によって負債が増大しているとの考えから、1950年代末から1960年代初めにかけて、一部の国営企業の民営化が実施された。こうした民営化の動きが本格化したのは1992年で、電気事業でも一部の国営企業が分割民営化され、原子力については、研究開発を担当する原子力委員会(CNEA)、規制を担当する原子力規制庁(ARN)、そして、アトーチャ1号機とエンバルセ発電所の運転及びアトーチャ2号機の建設を担当する国営のアルゼンチン原子力発電会社(NASA)に分割された。なお、放射性廃棄物の管理や既設の原子力発電所の廃炉措置に対する責任は従来どおり政府が担当する。また、政府はNASA社の民営化後も、継続して新規の原子力発電所の建設に関する決定権を有している。
 2010年の原子力発電電力量は66億9,160万kWhで、発電所別にみるとアトーチャ1号機が27億8,274万kWh、エンバルセが39億869万kWh、設備利用率はそれぞれ94.64%と74.19%であった。総発電電力量に占める原子力の割合は5.9%であった。
 アルゼンチン政府はエネルギー危機に直面したことから、長期エネルギー戦略の一環としてアトーチャ2号機の建設再開やウラン濃縮活動の再開を盛り込んだ原子力開発計画を2006年8月に発表した。同年5月には、既にNASAとCNEAは、カナダ原子力公社(AECL)との間で、CANDU炉エンバルセ発電所の緊急的改修(バックフィット)、乾式使用済燃料貯蔵施設などの支援、CANDU燃料サイクルの構想、重水供給や、新規CANDU炉建設に向けたフィジビリィティ・スタディー等の実施を盛り込んだ原子力協定拡大の覚書を交わしている。また、2007年7月には、NASAとAECLとの間でフィジビリィティ・スタディーを完了したCANDU-6(74万kW*2基)の新規建設に向けた契約交渉の開始が明記された覚書を締結した。技術移転、資機材・燃料の調達、建設・運転の技術協力等が協議されている。ウラン採掘から濃縮、燃料加工、重水製造など核燃料サイクルに関しては、既に国産化が完了しており、輸出に向けた生産拡大に着手している。
 なお、アルゼンチンは、ほぼ全ての中南米諸国及び米国、カナダ、リビア、インド、スペイン、ユーゴスラビア、中国、アルジェリアなどと原子力協力協定を結んでいる。アルゼンチンにおけるCANDU炉の輸入は、1994年6月のカナダとの原子力協力協定の締結及び1995年2月のNPT加盟により可能となった。
3.ブラジル
 ブラジルでは、米ウェスチングハウス(WH)社製のアングラ1号機(ANGRA-1、PWR、65万7,000kW)とドイツ・シーメンス(KWU)社製の同2号機(ANGRA-2、PWR、135万kW)の2基が運転中で、同じサイトの3号機(ANGRA-3、PWR、140万5,000kW)は、資金不足のため、1991年に建設を中断していた(進捗率約70%)が、2010年6月から建設を再開している。2010年の原子力発電電力量は145億4,381万kWhで、総発電電力量に占める原子力の割合は3.1%、設備利用率はそれぞれ76.0%と86.9%であった。ブラジルは経済成長率が年7.5%と急成長をとげ、深刻なエネルギー危機を抱える。電力供給の主力は水力発電(2008年:総発電電力量の約80%)であるが、原子力は需要の増加と安定供給に向けて注目されている。
 アングラ1号機は、1971年にWH社がターンキー方式で建設を開始、1982年3月に初臨界を達成したものの、多くの技術的トラブルにみまわれ、運転開始は1985年1月にずれ込んだ。運転開始後も、緊急計画をめぐる裁判や財政難、さらには主要機器のトラブルなどから、運転・休止を繰り返し、1994年12月に運転を再開した。アングラ2号機は1976年に着工、当初の予定では1983年に運転を開始することになっていたが、環境団体の反対と資金調達問題のために建設作業が大幅に遅れ、1996年に建設工事が再開された。同基は2000年7月に初臨界に達し、2001年2月1日に営業運転を開始した。アングラ3号機については、サイト準備工事が行われ、1986年に作業が中断するまでに機器の約7割程度が輸入され、これまでに調達済みの資材も含めて、総額約10億ドルが投じられたが、資金難のため建設中断を余儀なくされていた。2008年12月、エレクトロニュークリア社(Eletrobras Termonuclear S.A.)とフランス・アレバ社が協力協定を締結したことで、2009年3月、ブラジル環境・再生可能天然資源省(IBAMA)が環境認可を発給、2010年6月、建設を再開、2016年の営業運転を目指している。また、ブラジル北東部と南東部の2サイトで、各2基づつ、アレバ社の協力を得て建設し、2020年から2028年にかけて営業運転を開始する計画である。
 エレクトロニュークリア社は、1997年6月、国営電力会社であるフルナス社(Furnas)の原子力発電部門と、原子力発電所の設計・建設管理・機器調達を行う国営のアーキテクト・エンジニアリング企業であるニュークレン社(Nuclen)を統合させた国営企業で、アングラ1、2号機の運転のほか、建設中の3号機のプロジェクトを引き継いでいる。なお、ブラジルの原子力関係機関としては、電源開発計画の調整及び資金調達を行う国営電力の持株会社であるエレクトロブラス(Electorbras)社、原子力規制機関である原子力委員会(CNEN)、商業用燃料サイクル会社(採鉱、製錬、燃料製造等)であるブラジル原子力工業会社(INB)、原子力発電所に必要なあらゆる重機器を供給するニュークレップ(Nuclep)社及び複数の民間のエンジニアリング、機械、電機会社がある。アングラ1、2号機の燃料供給に関しては、海外輸出も視野に入れたレゼンデ・ウラン濃縮工場(120トンSWU/年)が2006年5月から操業を開始している。
4.キューバ
 キューバは1976年に旧ソ連との間で結ばれた協定に従い、キューバ初の原子力発電所であるフラグア1号機(VVER、44万kW)が1983年に、2号機(VVER、44万kW)が1985年に建設工事を開始した。しかし、1991年のソ連崩壊の影響を受け、資金、技術援助が停止されたため、1992年9月に工事が中断された。ロシアは工事の大半を請け負っており、進捗状況はプロジェクト全体の75%で、機器の据付けも20%程度完成していた。しかし、フラグア発電所は、安全性に問題があると指摘されているVVER型炉(旧ソ連加圧水型軽水炉)を採用していることなどもあり、地理的に近い米国から懸念の声があがっていた。キューバとロシアは建設再開に向け、1999年5月には合弁会社(ジョイント・ベンチャー)を設立することで合意したが、資金難で工事は中断したままであった。結局、2001年12月にロシアのプーチン大統領がキューバを公式訪問した際、同発電所を完成させる意向のないことがキューバ側から示されたため、フラグア発電所の建設中止が決定的となった。
<図/表>
表1 中南米の原子力発電開発の現状
図1 中南米の原子力発電所立地点
図2 燃料別発電電力量の推移(メキシコ・アルゼンチン・ブラジル)

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<関連タイトル>
世界の原子力発電の動向(2005年) (01-07-05-01)
メキシコの原子力発電開発 (14-08-01-02)
アルゼンチンの原子力発電開発 (14-08-02-02)
ブラジルの原子力発電開発 (14-08-03-02)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、20011年次報告(2011年5月)
(2)(社)日本原子力産業会議:世界の原子力発電開発の動向、2004年次報告(2005年5月)p.41-42、2001年次報告(2002年5月)p.38-39
(3)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2011年版(2010年10月)p.190-197
(4)IAEA PRIS発電炉情報システムホームページ:http://www.iaea.org/dbpage/
(5)世界原子力協会(WNA):World Nuclear Power Reactors 2009-11 and Uranium Requirements, http://www.world-nuclear.org/info/reactors.html 及び Nuclear share figures 2000-2010, http://www.world-nuclear.org/info/nshare.htm
(6)国際エネルギー機関(IEA):Electricity generation by fuel
(メキシコ、http://www.iea.org/stats/pdf_graphs/MXELEC.pdf)、
(アルゼンチン、http://www.iea.org/stats/pdf_graphs/AZELEC.pdf)及び
(ブラジル、http://www.iea.org/stats/pdf_graphs/BRELEC.pdf)
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