<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 世界のエネルギー情勢
<小項目> 世界の原子力発電
<タイトル>
原子力産業の国際動向 (01-07-05-13)

<概要>
 近年、エネルギー安全保障と地球環境問題の同時解決が喫緊の課題となっており、その解決のために原子力への期待が高まっている。今後、原子力発電所の新規建設の市場はグローバル化すると予測され、巨額の初期投資など事業面でのリスク核不拡散への対応から、原子力エネルギー政策の国際的な協調が必要となってきており、アレバ・三菱重工(仏−日本)、WH・東芝、(米−日本)、GE・日立(米ー日本)と国際的に提携するなど原子力エネルギーを巡る産業界の構造に変化が見られる。
<更新年月>
2007年12月   

<本文>
1.原子力への期待
 インド、中国等のエネルギー需要の急激な増大から、世界は激しい資源獲得競争の時代に入っている。2030年には、世界の人口は、80億人(現在の1.3倍)、GDPは現在の2.5〜3倍に増大すると予測されており、図1に示すように、一次エネルギーは1.5倍(基準)に増加し、しかもその80%は化石燃料である。特に、インド、中国は倍増と予測されており、安価で安定したエネルギー供給が課題となっている。エネルギー資源価格の急速な高騰、著しい需要増や中東原油の供給不安など、需給逼迫が予見される状況があり、原油が投機の対象になったからである(図2)。また、異常気象の頻発など温暖化の影響が顕在化しており、図3のように、2100年には、1.8℃から4.0℃気温が上昇し、海面が22から45cm上昇すると予測されている。図4に示すように、米国、中国、インド、ロシアなど世界各国で、原子力発電所の新規建設計画が発表されている。なお、米国では、2007年9月にNRGエナジー社がサウス・テキサス・プロジェクトに2基(ABWR)、同年10月にはTVA社がベルフォント地点(アラバマ州)に2基(AP1000)、同年12月にはドミニオン社がノースアナ(ヴァージニア州)に1基(ESBWR)の原子力発電プラントの建設・運転一括認可(COL)を原子力規制委員会(NRC)に申請している。
2.原子力プラントメーカーの動向
 図5に示すように、原子力発電所の新規建設市場のグローバル化が予測されることから、原子力エネルギーを巡る産業界の構造には変化がみられる。原子力発電所の新規建設の市場が一部の国に集中していた1980年代には、原子力プラントメーカーは国ごとに独立しており、米国では、WH(ウェスティングハウス社)、GE(ゼネラル・エレクトリック社)、コンバッションエンジニアリング、バブコック&ウィルコックスの4社、欧州では、ブラウン・ボベリー、アセア、フラマトム、シーメンスの4社、日本では、三菱重工、日立、東芝の3社であった。
 原子力発電所の新規建設には、巨額の初期投資など事業面でのリスクや核不拡散への対応から、原子力エネルギー政策における国際的な協調が必要となってきており、アレバ・三菱重工(仏−日本)、WH・東芝、(米−日本)、GE・日立(米−日本)と国際的に提携が図られている。
(1)アレバ−三菱重工
 2007年9月、三菱重工とアレバは、第3世代の中型原子炉開発・販売に向けた新会社「ATMEA」(アトメア)の設立を発表した。三菱重工とアレバは、原子力分野での協調で合意した2006年10月以降、電気出力110万kWの第3世代加圧水型軽水炉(PWR)であるATMEA1の概念設計を共同で進めてきた。このATMEA1は、第3世代原子炉にふさわしい安全性を備えるだけでなく、電力会社の効率的な投資回収と収益力の向上に大きく貢献するとしている。
 また、三菱重工業は2007年11月、米国エネルギー省(DOE)と、国際原子力エネルギー・パートナーシップ(Global Nuclear Energy Partnership:GNEP)計画に参画するための契約をアレバ、日本原燃などと共同で締結した。2007年7月、三菱重工業がAREVA、日本原燃などと共同で行ったGNEP計画に対する技術的提案が認められ、DOEの契約交渉先に選定されたことを受けたものである。
 なお、2007年3月、三菱重工が米国向けに市場投入を進めている世界最大級(170万kW)の加圧水型(PWR)原子力発電設備であるUS−APWRが、米国テキサス電力(TXU)の計画中の新規プラント建設で採用されることが決定した。今回採用が決定したUS-APWRのうち、2基はコマンチェピーク原子力発電所の増設用となる予定で、設計認証(DC)、建設運転一括許可(COL)申請に向けた準備が進められている。
(2)WH−東芝
 2006年10月、東芝はWHの株式77%の買収手続きを完了(買収総額は41億6千万ドル、米エンジニアリング大手のショーグループが残りの20%、10億8千万ドル分の株式を取得、また石川島播磨重工業が3%、1億6千万ドル分の株式を取得)し、WHは東芝の子会社となった。
 2007年7月、東芝子会社のWHが中国浙江省の三門発電所2基と、広東省の陽江発電所2基の契約が成立したと発表している。100万キロワット級の改良型加圧水型炉(APWR)「AP1000」である。
(3)GE−日立
 2007年6月、前年11月の原子力事業における世界的な戦略的提携に関する合意に基づき、世界の新規原子炉プロジェクトの受注に向け、グローバル事業を担う新会社「GE−日立ニュークリア・エナジー」(GEが60%、日立が40%の株式を保有)を設立した。また、2007年7月、日本においては、「日立GEニュークリア・エナジー」(日立が80.01%、GEが19.99%の株式を保有)を設立した。
<図/表>
図1 世界のエネルギー消費量
図2 エネルギー資源価格の高騰
図3 深刻な地球温暖化予測
図4 世界の原子力の動向
図5 原子力エネルギーを巡る原子力産業の構造変化

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
中国の原子力開発体制 (14-02-03-07)
インドの原子力開発と原子力施設 (14-02-11-02)
原子力発電拡大を目指す米国の動き (14-04-01-36)

<参考文献>
(1)JAEA:第2回 原子力機構報告会、エネルギー安全保障と地球温暖化防止に向けて(2007年10月)、http://www.jaea.go.jp/02/news2007/071029/02.pdf
(2)三菱重工:ニュースリリース、「第3世代原子炉のための新会社ATMEAをフランスに設立」http://www.mhi.co.jp/news/story/200709030038.html、「三菱重工業は米国エネルギー省(DOE)と原子力GNEP計画の契約を締結」http://www.mhi.co.jp/news/story/200711214650.html、「US−APWR原子力発電設備2基米国テキサス電力で採用決定」http://www.mhi.co.jp/news/sec1/200703144561.html
(3)東芝:プレスレリース、「ウェスチングハウス社株式取得の完了について」http://www.toshiba.co.jp/about/press/2006_10/pr_j1702.htm、「ウェスチングハウス社の中国での原子力発電プラント建設に関する契約の締結について」http://www.toshiba.co.jp/about/press/2007_07/pr_j2403.htm
(4)日立:ニュースレリース、「GEと日立、原子力事業における提携関係を構築−新規原子炉建設プロジェクトならびにプラント・サービス拡大に向け競争力を強化−」http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2007/06/0605b.html
(5)資源エネルギー庁ホームページ:原子力政策5つの基本方針、7.我が国原子力産業の国際展開支援、http://www.enecho.meti.go.jp/policy/nuclear/pptfiles/0602−7.pdf
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