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<概要>
 世界全体のエネルギー消費の中で、日本以外のアジア地域のシェアが徐々に高まってきている。アジア通貨危機は、1999年までにほぼ解消され、経済はおおむね成長軌道に戻っている。アジア太平洋エネルギー研究センターの予測によれば、APEC参加国・地域のエネルギー需要は、1999年〜2020年間に、年率2.1%でほぼ60%増加する。電力需要は開発途上国の収入の増加と増大する電化傾向のため、年率3.2%で上昇する。石油の需要は依然として年率2.1%で増加するが、域内の生産量の増加は年率0.5%に過ぎず、需要増をカバーできるとは考えられない。このため、輸入依存度は現在の36%から、2020年には、55%になるものと予想される。エネルギー供給リスクも増加すると考えられる。日本としても、対応を考えなくてはならない。
<更新年月>
2004年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.IEAによる世界のエネルギー需給の見通し(2002年)(表1-1表1-2
 2002年9月、IEA(国際エネルギー機関)は、2030年までの世界のエネルギー需給の見通しを発表した。主なポイントは以下のとおり。
(1)世界のエネルギー需要は、2030年には2000年比で66%伸びる見込み。また、世界の一次エネルギー供給に占める化石燃料のシェアは2030年までに90%に達し、これに伴いCO2排出量は70%増大する見込み。
(2)途上国での経済成長、工業化の進展、人口の増加等により、世界の総エネルギー需要のうち、途上国のシェアは現在の30%から2030年には40%以上に上昇し、OECD諸国のシェアは54%から44%に減少する。
(3)石油需要は、主にOECD諸国の運輸部門の伸びを中心に増加する見込みだが、1次エネルギー供給に占める石油のシェアは2030年で38%と2000年比横這い。天然ガス需要は、発電部門の伸びを中心に増加し、シェアは23%から28%に増加する見込み。石炭需要は、中国やインドにおける発電部門での需要の増加はあるものの、主にOECD諸国における発電燃料の石炭から天然ガスヘのシフトにより減少し、シェアは26%から24%に低下する見込み。原子力のシェアは7%から5%に低下し、再生可能エネルギーは、他のどのエネルギー源よりも急速な増加が見込まれるが、もともと絶対量が少ないため、シェアの増加は1.6%から4.4%に留まる見込み。
(4)石油は、OECD諸国やアジア諸国を中心に、OPEC諸国への輸入依存度が高まる。天然ガスは、ヨーロッパ、東アジア、中国、インド、中南米等を中心に需要が増加し、輸入依存度が高まる。
2.APEC(アジア太平洋経済協力会議:Asia Pacific Economic Cooperation Conference)
 1989年1月、ホーク豪州首相(当時)が、世界の成長センターたるアジア太平洋地域の協力のための公式の政府間組織の可能性について言及しつつ、アジア太平洋地域の大臣会合を提唱した。具体的には、(1)ウルグアイ・ラウンドの推進成功の可能性拡大、(2)地域内の貿易障壁の削減に関する検討の場の提供、(3)本地域の国々に共通の広範な経済的利益の明確化、の3分野を協力対象として指摘した。これを受け、次第にAPEC構想への認識が高まり、関係国のコンセンサスが得られ、APECが誕生することとなった。
 参加メンバーは2003年現在、ASEAN 7か国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)、中国、香港、台湾、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、メキシコ、パプアニューギニア、チリ、ロシア、ペルー、日本の21か国・地域。1989年以来、毎年各メンバーの経済担当大臣等が一同に会し、閣僚会合を開催するとともに、高級事務レベル会合、11分野のワーキンググループ等の活動が展開されている。また、1993年以来、首脳レベルによる対話が始まり、1995年11月には大阪で首脳会合が開催された。
(1)APECエネルギー協力
 1989年の第1回APEC閣僚会合において、アジア太平洋地域のエネルギー問題の重要性が取り上げられ、エネルギーについて専門的に議論を行う場として、1990年5月に「APECエネルギー・ワーキング・グループ(EWG)」が設立された。EWGは、エネルギー分野がアジア太平洋地域の発展に貢献するべく、域内共通のエネルギー問題全般について、各メンバーのエネルギー政策担当者が集い、検討を行う場である。EWGの下には以下の5つの専門家会合が設けられ、各分野のエキスパートによって、情報交換、人材育成をはじめとする様々な協力活動が行われている。
・エネルギーデータ分析専門家会合
 域内エネルギーデータベースの構築を進めているほか、わが国のイニシアティブで1996年7月に「アジア太平洋エネルギー研究センター(APERC)」を設立し、域内エネルギー需給見通し作成等の諸活動を実施している。
・クリーン化石燃料専門家会合
・省エネルギー・効率向上専門家会合
・新・再生可能エネルギー専門家会合
・鉱物エネルギー探鉱開発専門家会合
(2)APECエネルギー行動計画
 EWGは、3Eイニシアティブ(エネルギー・セキュリティ、環境保全及び経済成長を同時に達成する)及びAPEC地域の経済協力の強化というボゴール宣言の趣旨を踏まえ、今後のエネルギー分野でのAPECの具体的行動計画となるエネルギー・アクション・プログラムの検討を行ってきた。本プログラムは、1995年のAPEC大阪会合にて、APEC全体が進むべき方向を示す行動議題の一部としてAPEC首脳によって承認されたものである。
「エネルギー・アクション・プログラム」
 APEC地域は、3Eの同時達成を目指し、持続可能なエネルギー共同社会(sustainable energy community)として発展していくために、以下の4分野について優先的に取り組む。
・域内エネルギー問題に係る共通認識の醸成
・エネルギー分野における投資促進
・エネルギー分野における環境負荷低減
・エネルギー基準の調和の推進
3.APERC域内の需給見通し(表2図1図2
 APERCの予測によれば、APEC全域のエネルギー需要は、1999年〜2020年間に、年率2.1%でほぼ60%増加する。電力需要は、開発途上国の収入の増加と増大する電力化傾向のため、年率3.2%で上昇する。石油の需要は依然として年率2.1%で増加するが、域内の生産量の増加は年率0.5%に過ぎず、需要増をカバーできるとは考えられない。このため、輸入依存度は、現在の36%から2020年には55%になるものと予想される。
 アジアと北米の強いエネルギー需要の成長は、エネルギー輸出経済圏の地域的・政治的不安定とエネルギー資源を市場に搬入する社会基盤構造の制約が、エネルギー価格を上昇させる強い圧力となっている。エネルギーの安全の懸念がAPECの上にのしかかっている。適正な価格でエネルギー供給の安全を確保するには、境界を越えた協力によって技術革新を強化し、エネルギー資源の配分の効率を改善することが必要である。
・石油需要は1999年の2023Mtoeから、年率2.1%の伸び率で2020年には、3107Mtoeになると予測される。石油は1次エネルギー総需要の中で最高のシェア(約36%)を保持すると予測される。輸送部門は石油需要を主導して、1999年〜2020年間の石油需要増の72%を占める。オセアニアを含めたAPEC経済にとって、石油の輸入依存度は1999年の60%から、2020年には80%に上昇するであろう。APECアジアは石油供給の破綻に対して、非常に脆弱となるであろう。
・石炭需要の増加の大部分は中国からで、増加分の83%を占める。2020年にも、中国は石炭の主要消費者でありつづけるであろう。これは他の燃料より、石炭が安いことと、入手し易いことによる。APEC域の石炭生産は、ロシア、米国、中国、オーストラリア、カナダ、インドネシアの6か国である。この6か国で、APEC全石炭資源量と生産量の99%になる。石炭需要は最近増加しているが、生産の増加はこれに対応している。しかし、2020年ごろには、輸入に転じるかもしれない。
・天然ガスは予測の期間中に20%から22%に増加すると予測され、1次総需要中三番目に大きいシェアを持つ。需要は期間の前半では年率2.8%で、後半では2.4%で増加する。北東アジアを含むアジア、南東アジア及び中国は、年率4.6%の需要増加と予測される。アジアの1次エネルギー総供給中の天然ガスのシェアは現在、北米(24%)、ラテンアメリカ(19%)、オセアニア(18%)と比較して8%と低い。使い易さと一人あたりの収入増加の相乗が需要拡大の鍵となるであろう。将来、技術開発と環境問題が天然ガス消費に大きい影響をもつであろう。将来の天然ガス需要増加に応ずるためには、供給のインフラ(パイプラインによるLNGとしての輸送及び産業と、民生部門が使用のための流通ネットワーク)への大規模な投資が重要である。
・新エネルギー及び再生型エネルギー(NRE)は、バイオマス、太陽、風力、波力を含むが、APEC地域では農村の民生部門での厨房・暖房に用いるバイオマスが大部分を占める。NREの増加は、1次エネルギー総需要の伸びよりは緩やかに、2020年までに年率1.1%で増加すると予測される。社会・経済的発展の結果、バイオマスの商用燃料へのシフトが進んでNREのシェアは1999年の8.4%から2020年には6.8%に落ちると考えられる。
・1次エネルギー総需要中の原子力エネルギーのシェアは1999年の6.7%から2020年の6.1%へと、少し減少する。成長率では年率1.7%で成長する。北東アジア(日本、韓国、台湾)が、電力需要の増加に応じるために、この期間の原子力エネルギー増加が70%の寄与をすると思われる。対照的に、北米は、現在の原子炉が退役するため年率0.3%で減少すると見られている。
水力発電は2.7%と最も大きい成長率を示すと予測される。しかし、そのシェアは低く、全期間を通じて2%に満たない。最大の消費者と考えられる中国では年率6.9%で成長し、需要増はこの期間の水力エネルギー増加の70%になる。
<図/表>
表1-1 世界のエネルギー需給見通し(1/2)
表1-1  世界のエネルギー需給見通し(1/2)
表1-2 世界のエネルギー需給見通し(2/2)
表1-2  世界のエネルギー需給見通し(2/2)
表2 APEC地域の1次エネルギー需要
表2  APEC地域の1次エネルギー需要
図1 APEC地域の1次エネルギー需要
図1  APEC地域の1次エネルギー需要
図2 APEC地域の電力需要予測
図2  APEC地域の電力需要予測

<関連タイトル>
長期エネルギー需給見通し(2001年7月・総合資源エネルギー調査会) (01-09-09-06)
アジアにおけるエネルギー動向 (01-07-02-10)

<参考文献>
(1)Asia Pacific Energy Research Centre (APERC):,APEC Energy Outlook and Security Issues(2004年6月10日)
(2)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、(株)エネルギーフォーラム(2004年1月21日)、p.31
(3)EIA:Forecasts,International energy outlook 2004、http://www.eia.doe.gov/oiaf/ieo/index.html,World Energy and Economic Outlook
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