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<概要>
 日本国内の清涼飲料用の自動販売機は227万0000台で56人に1台という割合である。自動販売機による年間消費電力は国内年間総発電量の約0.6%であるが、改良を行うことにより、2001年には缶飲料自販機1台当たりの年間消費電力量を1992年の時点の約半分とすることができている。また、夏場のピークカットのためのエコベンダーなども開発されている。
<更新年月>
2007年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.自動販売機の現状
1.1 台数
 台数については、ほぼ毎年、日本自動販売機工業会が報告している。日本では平成18年末の調査で427万4200台の自動販売機が稼動している。コインを入れてサービスを受けるものが全て自動販売機というわけではなく、コインロッカーや両替機、パーキングメーター等は自動サービス機と呼ばれ、これは124万1500台稼動している。
 自動販売機の中では、飲料が最も多く、265万8200台稼動している。更にその中でも清涼飲料の自動販売機は227万0000台で自動販売機全体の53.1%を占めている。
 この調査では、対比としてアメリカの調査も掲載しており、2005年の調査で783万台が稼動している。清涼飲料という区分はないが、該当すると考えられる区分[ホットドリンク、コールドドリンク(カップ、容器入り)、ミルク]で389万9900台が稼動している(全体の49.8%)。
 日本の人口は1億2770万人なので、一人当り約0.018台(56人に1台)の清涼飲料用の自動販売機を使用しているということになる。アメリカでは人口が2億8100万人(2000年の統計)なので、一人当り約0.013台(72人に1台)の清涼飲料用の自動販売機を使用しているということになる。清涼飲料の自動販売機の台数はアメリカの方が1.8倍多いが、一人当りの台数となると、日本がアメリカの約1.3倍となる。
 もし、日本の比率で世界中に清涼飲料の自動販売機があったとしたら、1億1660万台が地球上にあり、陸地面積1.3平方kmにつき1台があることになる(世界の人口として65億6000万人を使用)。
1.2 消費電力
 日本自動販売機工業会のホームページによれば、「市場で稼働している自販機の年間総消費電力量(2005年)は約66億kWhであるとされ、国内年間総発電量(1兆1579億)の0.6%」とされている。これは、600Wのドライヤーを国民全員が毎日10分間使用した時の消費量に相当する。
 飲料の自動販売機は他の自動販売機と違い、商品を保温若しくは保冷する必要がある。そのため、他の自動販売機より電力の消費が大きいと考えられる。
 例えば、清涼飲料自動販売機のモーター消費電力を500W、モーターの稼動時間を12時間、蛍光灯30W×3本で24時間稼動と仮定した場合、一日の消費電力は8.16kWhとなる(年間では2980kWh)。これに清涼飲料自動販売機の台数をかけると年間約68億kWhとなる。
 また、全ての自動販売機の最大消費電力が600Wと仮定し、全国の清涼飲料自動販売機が最大消費電力で稼動したとすると、1時間当り、136万kWhを消費する。普段はもちろん、夏の電気消費が最大になる時期にも電力を無駄に電力を消費しないように、様々な機能が清涼飲料自動販売機につけられている。
1.3 意識
 2003年に全国の20代〜50代の計500人を対象に「清涼飲料自動販売機に関する意識と利用実態」調査を実施した結果では、清涼飲料自販機を便利だと「思う」人が99.6%おり、「清涼飲料自販機は生活に必要なものか」という問に対しては、82.8%の人が必要であると考えている。清涼飲料自動販売機の必要性は、社会的に認知されていると言っても良いであろう。
 一方、「清涼飲料自販機は、どの程度エネルギーを消費していると思うか」という質問に対しては、「それほど消費していると思わない」(26.0%)と、「大量消費していると思う」(26.0%)に意見が二つに分かれている。尚、以下で取り上げるエコベンダーを知っていたのは6.2%であった。
2.自動販売機のエネルギー対策
2.1 自動販売機の構造
 清涼飲料の自動販売機は、おおまかに、「商品を保管するラック」「商品を加熱冷却する装置」「金銭を処理する装置」「商品を出す場所」に分けられる。
 業者はラックに商品を定期的に補充し、収益金の回収および釣銭の補充を行う。補充された商品は加熱冷却され、利用者はいつでも適温の商品を購入できる。
 自動販売機のエネルギー対策としては、断熱強化、気密性強化の他、夏の電力消費ピーク時には電力消費を減らすエコベンダー、商品の一部しか冷却しないゾーンクーリング、その機能を支援する販売予測機能などがある。また、自販機には周囲の明るさを感知するセンサーが搭載され、自動的に昼は蛍光灯を消灯、夜は点灯させる等も行われている。
2.2 エコベンダー
 エコベンダーは、夏の間(7月1日〜9月30日の3か月間)、午後1時〜4時まで冷凍機を止め、夏の電力使用量のピーク時の節電を行っている。この装置は午前10時〜午後1時までの3時間は冷やし込み(運転停止に先立って、飲料水の温度を通常より3〜5℃低い0℃近くまでさげる)を始め、午後4時〜午前10時までは通常の運転を行っている。このため午後1時〜4時までの消費電力の90%近くをカットすることができる。上記の計算でいけば、約120万kWの電力がピーク時にカットされていることになる。
 従来の発想であれば、自動販売機に蓄熱槽を設けるのが普通であるが、蓄熱槽を設置するにはコストが余計にかかる上、従来の売上を維持するには自動販売機を大型化しなければならない。エコベンダーは商品自体(水分)を蓄熱材として活用することにより、コストやスペースの問題を解決していった。更に、断熱材(硬質発泡ウレタン、真空断熱材)も強化して3時間の使用に耐えられるようにしている。また冷却の無駄を省くために、自販機内部の断熱材で仕切られた部屋に1台ずつ冷却ユニットを設置し、冷却効率を上げている。
 冷却が必要になるのは、通常運転で温度が上がった時の他に、商品を補充した時がある。エコベンダーはその対策として、内扉が3分以上開放されたとき、通常運転に復帰するように制御している。
 尚、冷やし込み運転を行っても商品の味や品質には影響がない。
2.3 ゾーンクーリング、販売予測機能
 製品があまり売れない時に、庫内全体の製品を冷やすのではなく出口に近い商品のみを冷やすことをゾーンクーリングという。ゾーンクーリングを行っている時に、一度に多量の商品を販売すると、商品温度が適温から外れてしまい、商品温度復帰のために冷凍機の運転率が上昇してしまうことがある。販売予測機能とは、過去の平均販売量および直近の販売量から今後の販売量を予測し、、最適な温度制御を行うシステムである。
 庫内ファン制御によりラックのどの部分まで(出口近くだけか、ラック全体か)温度調整するかを制御するシステムは従来からあったが、庫内ファンを細かく制御する機能および販売予測機能を搭載することにより、効率的に行う事ができるようになった。
2.4 省エネルギーの効果
 1992年から省エネルギー開発を進めた結果、2001年には缶飲料自販機1台当たりの年間消費電力量を1992年の時点の約半分とすることができている。
<関連タイトル>
省エネルギー推進のための普及、広報活動 (01-06-04-01)

<参考文献>
(1)日本自動販売機工業会:http://www.jvma.or.jp/
(2)東京電力株式会社 営業開発部:省エネ型清涼飲料用自動販売機(ピークカット機能付き)『エコ・ベンダー』の普及について、電気協会雑誌、平成8年5月号、p.19-21
(3)滝口浩司、久保山公道:自動販売機の省エネルギー取組み、冷凍2004年、79巻、7-12(2004)
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