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<概要>
 省エネルギーは、技術開発・設備投資を伴う効率の向上、エネルギー節約型消費への転換や、製品高付加価値への産業構造の転換等によってもたらされる。二度の石油危機で省エネルギーへの努力が高まったが、その後の石油の価格低下などで意識が薄らいでいるのが現状のようである。しかし、地球温暖化問題をはじめとする環境問題や将来の供給不足に対処するため、世界の主要国では、省エネルギーをエネルギー政策の重要な柱として推進している。
<更新年月>
2004年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 地球温暖化問題をはじめとする環境問題や将来の供給不足に対処するため、世界の主要国では、省エネルギーをエネルギー政策の重要な柱として推進している。以下に、IEA加盟主要国の省エネルギー政策・対策を示す。参考に、主要各国のエネルギー需給状況を表1図1図2図3および図4に示す。
1.米国
(1)エネルギー政策
 2001年5月に国家エネルギー政策(National Energy Policy:NEP)を発表。勧告が105あり、このうち23が省エネルギーに、31が再生型エネルギーに関するものである。
(2)民生部門
 ビルの省エネ、機器の基準設定を行っている。機器の省エネ基準は2000年以来、改訂後順次発効している。自主的行動プログラムとして、アメリカ再建(Rebuild America)、住宅市場エネルギースター(Energy Star for Residential Market)、業務市場エネルギースター(Energy Star for the Commercial Market)及びエネルギースターラベル製品(Energy Star Labelled Products)がある。また、住居用先進技術の開発や利用を促進するための、住居建設先進技術共同事業(Partnership for Advanced Technology in Housing, and Building America:PATH)がある。
(3)産業部門
 未来産業(Industry of the Future:IOF)であるエネルギー集約、廃棄物集約の8産業分野(農業、アルミ、化学、林産物、ガラス、鋳造、鉱業、鉄鋼)は、政府と共同して産業の将来展望と技術の里程表を作成する。プラント技術に関しては、最適技術プログラム(Best Practices Program)がある。産業査定センタープログラム(Industrial Assessment Center Program:IAC)は、26大学の学部と学生チームによる中小企業のエネルギー、生産性、廃棄物について査定するプログラムであり、8000件が査定されている。
(4)公共部門
 1994年3月に連邦施設エネ・節水プログラム(Energy Efficiency and Water Conservation at Federal Facilities)、2001年8月に省エネ・スタンバイ発電機(Energy Efficient Standby Power Devices)が大統領行政命令として発令されている。
(5)輸送部門
 「FreedomCAR」は燃料電池と水素エネルギー開発によって、自動車技術の改善を目指すプログラムであり、共同研究が進められている。クリーン・シティ・プログラム(Clean Cities Program)は代替燃料を使用する共同プログラム、公共輸送・通勤者オプション(Public Transport and Commuter Options)は、輸送、通勤の手段を増やし、選択の柔軟性を増加させるプログラムである。
2.ドイツ
(1)エネルギー政策
 2001年10月に経済・技術省は1998−2002年間の新エネルギー政策(Sustainable Energy Policy to meet the Needs of the Future)を発表した。この報告書の基本は、2つのシナリオから成り立っているが、いずれも原子力の削減を仮定している。
 1999年4月に環境税を創設し、2003年4月には税は増額されている。
(2)民生部門
 住居用ビルの断熱、冷暖房、温水供給で消費するエネルギーを三段階で100kWh/m^2/yearにし、2002年以後は70kWh/m^2/yearにする。
 「新設の政府庁舎」は20〜50%省エネにする。「機器の基準設定とエネルギーラベリング」を実施、「熱消費計測」、「環境適格マーク」、省エネルギー推進プログラムの透明性を高める「情報提供」、融資、税制改訂、再生型エネルギー支援措置等の「財政措置」を実施している。
(3)産業部門
・省エネルギー自主行動協定:1996年3月の地球温暖化防止の宣言の中で、産業部門は自主行動協定の更新を約束し、2005年までに、特定のCO2排出を1990年水準の20%減少させる。この協定は、産業のエネルギー消費の70%、公共電力の99%をカバーする。また、研究機関による評価とモニタリングも実施する。
・電力の消費者に対する需要側管理(Demand side Management Service:DSM)を計画し、消費者にサービスしようとしている。
・「小規模火力プラント法改訂」で熱損失の規制を厳しくした。
・2001年、複合型地域暖房プラント法(CHP/DH)が成立し、報奨金制度がスタートした。
(4)公共部門
 幾つかの州で、公共ビルの第三者資金による運営プロジェクトが進められている。
(5)輸送部門
「自動車の燃料消費の抑制」−25%から33%に、鉄道・水路輸送への投資増加。
3.フランス
(1)エネルギー政策
・1998年にエネルギー2010−2020報告が発効している。電力とガス市場の自由化、輸送部門の問題、原子力を維持しての電力の置換、エネルギー税の問題を扱っている。
・省エネルギー政策の評価は、閣僚会議で行われ、環境省エネルギー局が実施する。
(2)民生部門
・新住居用ビルの熱規制:新熱規制(Termal Regulations:RT2000)が発効。2001年6月、住居用ビルのエネルギー規制を更新し、前より15%節約になる。
・新業務用ビルの熱規制もRT2000にしたがって更新され、40%の省エネになる。現存ビルの大規模なバックフィットのための25の活動を準備中。
・エネルギーコスト評価の規準は、2000年4月改訂され、「機器の基準設定とラベリング」、「地域の省エネルギー情報センター」が2001年9月から活動開始。
・現存家屋の省エネ化を支援する税の軽減、融資等の財政支援。
(3)産業部門
・省エネルギー投資、エネルギー管理に対する資金援助。
・エネルギー多消費産業と自主的行動協定の協議を続け、つぎの6業種と協定締結。アルミ、セメント工業、石灰製造、鉄鋼、ガラス容器製造及び大型通信販売会社。
(4)公共部門
 公共ビルの第三者資金による運営プロジェクト、地方レベルの断熱改善が進められている。
(5)輸送部門
 1995年1月から車両の安全性検査が4年以上古い車両で2年毎に実施されている。汚染物質試験に落ちた車両には強制的な修理が要求される。自動車産業は自主的行動をとっている。
4.イギリス
(1)エネルギー政策
 2003年2月にエネルギー白書が出版された。過去20年間で初めての包括的、前向きのエネルギー政策である。主要テーマは低炭素経済を目指すこと及び省エネルギーである。
(2)民生部門
・家庭・業務部門では新しい規制の草案が2000年6月に出版され、2001年10月に承認、2002年4月発効した。新住宅の断熱、暖房、照明基準が変更された。また、炭素指標−標準評価方法(Standard Assessment Procedure:SAP)に基づく承認も必要となる。
・「省エネ基準」及び「家電製品の省エネルギーラベル」を実施。
・省エネルギートラスト(EST)は、家庭と中小企業部門がパートナーとしてエネルギーの有効利用を推進する非営利組織であり、政府はこのトラストに資金を提供している。政府資金によるESTプログラムで1996−2002年間に4000GWhのエネルギーの節約をした。
(3)産業部門
・カーボントラスト(Carbon Trust)はイギリスの気候変動プログラムの中心であり、資金を提供する。気候変動税(Climate Change Levy:CCL)は2001年4月から発効した。エネルギー集約事業は自主的気候変動協定に加盟していると税の80%が軽減される。
・自主的気候変動協定(Voluntary Climate Change Agreement)は、厳しい目標を掲げて、環境目標を達成しようとするもの。参加する企業は5500社、施設数は13000になる。成果は報告され、イギリスの排出取引スキームで管理される。企業はこのスキームを利用して、排出目標達成に使用することができる。この協定は製造業が使用するエネルギーの60%をカバーし、排出取引で重要な役割を果たしている。
 省エネルギー最適技術プログラム(Energy Efficiency Best Practice Programme:EEBPP)は省エネルギー情報、助言、研究プログラムである。このアプローチはオーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、ニュージーランドで採用され、最近ECでもこの考えを取り入れた。
・環境管理・査定計画(Eco Management and Audit Scheme:EMAS)はヨーロッパの自発的登録スキームで、公衆に活動と成果を認知してもらう計画。省エネルギー遂行プログラム(Energy Efficiency Commitment)は2002年4月に以前のEESOP(Energy Efficiency Standards of Performance)に代わるものとして、電気・ガス供給者が省エネルギー対策を進めるためのものである。
(4)公共部門
 政府ビルは2000年3月までに17%の省エネをした。省エネ教育は10%の省エネを期待している。1995年の家庭省エネルギー法(Home Energy Conservation Act:HECA)は、2000年3月までの4年間に家庭部門で6%の省エネに役立っている。省エネルギートラスト(Energy Saving Trust)は地方政府をサポートして、基盤的な援助、資金援助、支援活動の先導等をしている。
(5)輸送部門
 ヨーロッパ自主行動計画(European Voluntary Agreements with European, Japanese and Korean vehicle manufacturers)は2008年までに、新車のCO2排出を25%、140gCO2/kmまで減少させる。燃費の良い車を買うような税制を導入している。
5.カナダ
(1)エネルギー政策
 天然資源省がエネルギー政策を主管している。
(2)民生部門
・新しい居住・業務用ビルのエネルギー基準は住居用とビル用に分かれている。天然資源省はソフトウェア、訓練、モデル基準の適用を支援する実施用資料も用意している。これらは、省エネ実施の際の相談で大変役に立つ。
・自発的R-2000家庭プログラム(Voluntary R-2000 Home Program);R-2000基準適格住宅は、現在の基準で立てられる住宅より50%エネルギー効率がよい。R-2000基準はカナダ中で手に入り、住宅建設協会との契約で配達される。建設技術は充分開発されている。
・カナダのエネルギー効率法は効率の悪い機器を市場から駆逐する。今日まで、住居用を含めて30製品の規制が決定されている。
・基準の改訂の加速計画が進められ、2001年6月からエネルギースター推進が始まっている。エネルギーラベリングも始まっている。住居に対しては1998年4月にラベリングと適格証明が開始された。
(3)産業部門
 自主行動計画はまだ、未熟なように見える。部門ごとの計画も明確でない。
(4)公共部門
 政府ビルの省エネルギー計画が進行中である。
(5)輸送部門
・新しい燃料効率基準を自主的に策定するよう、自動車産業、米国と協議中である。「Fleet Wise」プログラムは1995年に始まった、連邦政府の車両のエネルギー使用を減らし、他の燃料を使うもの。
・「代替燃料研究開発」は水素、燃料電池、電気、ハイブリッド、アルコール等を使うものである。
<図/表>
表1 主要国のエネルギー等の輸入依存度(2001年)
表1  主要国のエネルギー等の輸入依存度(2001年)
図1 主要国の一次エネルギー供給量とエネルギー源別構成比
図1  主要国の一次エネルギー供給量とエネルギー源別構成比
図2 主要国の最終エネルギー消費量と部門別構成比
図2  主要国の最終エネルギー消費量と部門別構成比
図3 主要国の総発電電力量と電源別構成比
図3  主要国の総発電電力量と電源別構成比
図4 主要国のエネルギー消費の対GDP原単位
図4  主要国のエネルギー消費の対GDP原単位

<参考文献>
(1)IEA Energy Efficiency Update − Canada,
(2)IEA Energy Efficiency Update − France,
(3)IEA Energy Efficiency Update − Germany,
(4)IEA Energy Efficiency Update − United Kingdom,
(5)IEA Energy Efficiency Update − United States,
(6)(財)省エネルギーセンター(編):省エネルギー便覧(2003年版)、(財)省エネルギーセンター(2003年12月)
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