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<概要>
 第1次石油危機直後の1974年にサンシャイン計画(新エネルギー技術開発計画)がスタートし、1978年からのムーンライト計画(省エネルギー技術開発計画)と地球環境技術開発計画を統合して、1993年からニューサンシャイン計画として再出発した。
 2020年までの必要費用総額1.55兆円と見込まれるエネルギー・環境領域総合技術開発推進計画で、持続的成長とエネルギー・環境問題の同時解決を目指した革新的技術開発を重点とした通商産業省工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)のプロジェクトである。この計画実施のための新エネルギー技術開発機関として新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が設立されている。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.計画の経過と体系
 通商産業省工業技術院(現独立行政法人産業技術総合研究所)は、第1次石油危機翌年の1974年に新エネルギー技術について「サンシャイン計画」を、1978年に省エネルギー技術について「ムーンライト計画」をそれぞれ発足させ、長期的な視点の下にエネルギー関連技術の研究開発を産官学の連携の下で推進し、さらに、1989年から地球環境技術に係る研究開発制度を発足させている。1992年までにサンシャイン計画に4400億円、ムーンライト計画に1400億円、地球環境技術開発に150億円を投じ、各プロジェクトにおいて基本的な技術の確立、成果の実用化などに成果をあげている。
 工業技術院は、1993年に上記の3つの計画・体制を一体化し「ニューサンシャイン計画」を発足させた。この計画の実行に必要な研究開発費は、1993年から2020年の間で総額1兆5500億円(1年当たり平均約550億円)と見込まれている。本計画による最大限の努力を織り込んだ場合の技術ポテンシャルとして、2030年の日本のエネルギー消費量の1/3、二酸化炭素排出量の1/2の緩和に貢献することが期待されるとしている。
2.サンシャイン計画の内容と成果
 サンシャイン計画はその基本方針に「エネルギーの長期的な安定供給の確保が国民生活と経済活動にとって重要であることに鑑み、国民経済上その実用化が緊要な新エネルギー技術について、1974年から2000年までの長期間にわたり総合的、組織的かつ効率的に研究開発を推進することにより、数十年後のエネルギー需要の相当部分をまかないうるクリーンなエネルギーを供給することを目標とする」と規定し、太陽、地熱、石炭、水素エネルギー技術の4つの重点技術の研究開発を進めるものである。
 第2次石油危機後の1980年に「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」に基づき、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が設立され、(イ)石炭液化技術開発、(ロ)大規模深部地熱開発のための探査・掘削技術開発、(ハ)太陽光発電技術開発が重点プロジェクトとして推進された。
 サンシャイン計画の主な成果を表1に示す。
3.ムーンライト計画の内容と成果
 サンシャイン計画より4年遅れて発足し、エネルギー転換効率の向上、未利用エネルギーの回収、エネルギー供給システムの安定化によるエネルギー利用効率の向上等のエネルギーの有効利用を図る技術の研究開発を行うもので、大型省エネルギー技術を初めとして、先導的、基盤的省エネルギー技術開発、民間の省エネルギー技術開発の助成、国際研究協力事業、省エネルギー技術の総合的効果把握手法の確立調査、及び省エネルギー標準化を推進するものである。燃料電池発電技術、ヒートポンプ技術、超電導電力応用技術、セラミックガスタービン等のプロジェクトを推進し、終了プロジェクトとして、廃熱利用技術システム、電磁流体発電、高効率ガスタービン及び汎用スターリングエンジンのプロジェクトがある。1998年度は触媒の多元的機能に関する研究等6テーマについて研究を行う。
 省エネルギー技術の総合的効果把握手法の確立調査は、省エネルギー可能量、経済性、環境へのインパクト等を定量的に分析し、中長期の省エネルギー技術開発課題を発掘するとともに、研究開発の最適手順確立の調査である。現在の化石燃料利用システムについても、需要温度レベルごとに段階的(カスケード)にエネルギーを利用するシステムの調査研究を実施している。標準化による省エネルギーとは、日本工業規格(JIS)を制定又は改訂することにより省エネルギーを促進しようとするものである。
 地球環境技術研究開発においては、人工光合成等による二酸化炭素の固定に関する研究、二酸化炭素の分離技術の研究、生分解性化学物質の研究を実施している。
 ムーンライト計画の主な成果を表2に示す。
4.ニューサンシャイン計画
 従来独立に推進されていた、新エネルギー、省エネルギー、及び地球環境技術の3分野の技術開発を総合的な観点から推進するため、1993年に発足した。
 ニューサンシャイン計画は、次の3つの技術体系により構成される。(イ)「地球温暖化防止計画」の実現をねらいとした革新技術開発、(ロ)「地球再生計画」の推進をねらいとした国際大型共同研究プログラム、(ハ)近隣途上国のエネルギー・環境制約の緩和の支援をねらいとした適正技術共同研究で、2020年までに1兆5,500億円の投下を見込んである。ニューサンシャイン計画を表3-1および表3-2に示す。
 (ロ)の「地球再生計画」とは、地球温暖化による地球環境の荒廃を防止し今後100年かけて再生することを目指し、世界各国が協調して温室効果ガスの排出抑制及び消滅のための総合的かつ長期的な行動を進めることを内容として、「地球環境保全に関する関係閣僚会議(1990年)」において申し合わされ、同年7月のヒューストンサミットで提唱されたものである。その内容は、世界的な省エネルギーの推進、クリーンエネルギーの大幅導入、革新的な環境技術−二酸化炭素固定化・有効利用技術や環境調和型生産プロセス−の開発、二酸化炭素吸収源の拡大−砂漠緑化等、次世代を担う革新的エネルギー関連技術−核融合・マグマ発電・宇宙太陽光発電等−の開発、である。
 ニューサンシャイン計画の体系に関する概念を図1に示す。革新技術開発が主にわが国の地球温暖化防止行動計画に寄与し、適正技術共同研究が近隣途上国に対する寄与として働き、これらと国際大型共同研究が相俟って地球再生計画が着実に推進されることが期待される。
 地球再生計画の長期的な目標を図2に示し、各プロジェクト(自動車等用電池、エコ・エネ都市、セラミックガスタービン、超電導発電、燃料電池、太陽電池、地熱、石炭液化、希薄燃焼脱硝触媒、国際水素ネット(WE-NET)、CO2固定化貯蔵など)の地球環境保全に対する貢献のイメージを図3に示している。図4には、国内のエネルギー需給緩和への貢献率およびCO2制約緩和への貢献率のイメージを示している。
 ニューサンシャイン計画の成果を表4-1および表4-2に示す。
 ニューサンシャイン計画の実施は、中長期的なエネルギー・環境制約克服に対して技術的な貢献を果たすだけでなく、環境調和型のエネルギー技術を機軸とする新たな技術体系構築の必要性及び可能性を内外に提示することにより、「エネルギー多消費文明やライフスタイルの転換」という課題に対し、次に挙げるような具体的な転換規範やその可能性を示唆・啓発し、持続的経済社会発展に必要な価値観の形成を促す効果も期待できる。文明・ライフスタイルの転換規範の例としては、エネルギー高度循環利用規範(廃熱の再利用等エネルギーの高効率利用)、地球的課題に対する地球大での取り組み規範(例:水素利用国際クリーンエネルギーネットワークシステム)、エネルギー栽培型文明規範(例:太陽・風力等再生可能エネルギー革新技術)、などが考えられる。
 地球温暖化を初めとする地球環境問題に対し、経済成長、エネルギー、環境保全を三位一体とした総合的視点からのバランスのとれた対策を進める上で、革新的技術開発は重要な課題として位置づけられる。人間の経済・社会活動により調和を乱された物質やエネルギーの循環を再び地球環境に調和したものに戻すには、人間活動と自然環境の調和を可能とする新しい文明の創造を構築すべく、抜本的な対策を可能ならしめる技術によるブレークスルーに取り組むことが重要である。ニューサンシャイン計画は、このようなエネルギー・環境問題に大きく貢献する総合的な技術開発推進計画として位置づけられる。
5.省エネルギー技術開発の新たな展開
 経済産業省では、2001年1月の中央省庁再編成を契機に、国際競争力のある産業技術研究開発を進めるため、関連組織を再編成するとともに、研究開発を総合的・効率的な「研究開発プログラム方式」で実施することとした。これにより、従来の「ニューサンシャイン計画」にある研究開発テーマは、この新たな方式に引き継がれることとなり,ニューサンシャイン計画の名称はなくなった。
 今後の技術開発プロジェクトは、大型化かっ多様化するため、開発リスクの増大等が予測される。そこで、省エネルギーをさらに推進するため、環境保全の観点も踏まえつつ、国際協力・産学官の一層の連携等を図ることが重要な課題となっている。
 省エネルギー技術の研究開発は、産業界、学会、関係省庁、関連機関・団体等の意見を国(経済産業省)がプログラムに反映させ、これに基づき産業技術総合研究所等の国の研究機関、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの関係機関、大学、学会、産業界等で、事業助成、委託、補助金などの制度で実施されている。
 これまでニューサンシャイン計画において進められてきた省エネルギーに関する技術研究開発で、2001年度以降も推進すべきテーマについては、新たに研究開発プロジェクトに含めることとなった。
 NEDOでは、2002年6月にとりまとめられた「省エネルギー技術戦略」に沿って、産業、民生(家庭・業務)、運輸の各部門において、基盤研究から実用化研究、実証研究に至るまで、需要側の課題を克服し得る省エネルギー技術開発を戦略的に行っている。ちなみに、国が推進する主なエネルギー技術開発プロジェクトは、以下のものである。
A 燃料電池技術開発
B 太陽光発電技術開発
C バイオマスエネルギー技術開発
D 省エネ型インバータ用デバイスの技術開発(Sicデバイスの技術開発)
E 自動車軽量化のためのアルミニウム合金高度加工・形成技術
F 天然ガス液体燃料化(dTL)技術開発
G DME燃料実用化技術開発
H メタンハイドレート開発促進
I 原子力技術開発
<図/表>
表1 サンシャイン計画の主な成果
表1  サンシャイン計画の主な成果
表2 ムーンライト計画の主な成果
表2  ムーンライト計画の主な成果
表3-1 ニューサンシャイン計画(1/2)
表3-1  ニューサンシャイン計画(1/2)
表3-2 ニューサンシャイン計画(2/2)
表3-2  ニューサンシャイン計画(2/2)
表4-1 ニューサンシャイン計画の成果(1/2)
表4-1  ニューサンシャイン計画の成果(1/2)
表4-2 ニューサンシャイン計画の成果(2/2)
表4-2  ニューサンシャイン計画の成果(2/2)
図1 ニューサンシャイン計画の体系
図1  ニューサンシャイン計画の体系
図2 地球再生計画の長期的目標
図2  地球再生計画の長期的目標
図3 地球再生計画の貢献のイメージ
図3  地球再生計画の貢献のイメージ
図4 エネルギー需給・CO
図4  エネルギー需給・CO

<関連タイトル>
ムーンライト計画 (01-05-02-06)
未利用エネルギーの導入 (01-05-03-01)
日本のエネルギー政策の基本的な考え方 (01-09-01-02)
新エネルギーと省エネルギーの技術開発 (01-09-07-02)
省エネルギー政策の基本理念 (01-09-08-01)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(監修):資源エネルギー年鑑 1999/2000年版、通産資料調査会(1999年1月)p.640−653
(2)資源エネルギー庁(編):新エネルギー便覧 平成10年度版、通商産業調査会(1999年3月)
(3)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)
(4)省エネルギー総覧編集委員会(編):省エネルギー総覧2004/2005、通産資料出版会(2004年1月)
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