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<概要>
 近年、地球環境問題に対する意識の高まりを背景に、クリーンな国産エネルギーとして新エネルギーの開発、導入が進んでいる。新エネルギーは環境負荷、需要地近接、負荷平準化などの点でメリットがあるが、出力が不安定で変動が多い、コストが高い、需要の確保などの課題を抱えている。新エネルギーは、量的に多くを期待できないが、枯渇性のある化石エネルギーの節減に役立ち、より長期にわたり化石エネルギーを活用でき、持続可能なエネルギー需給構造の構築が期待できる。欧米諸国では、新エネルギーを含めた再生可能エネルギーの普及促進が積極的・精力的に取り組まれている。わが国でも、電力会社に一定量以上の電力を新エネルギー発電にすることを義務付ける新エネルギー特別措置法(RPS法)が2003年4月に全面施行された。
<更新年月>
2006年06月   

<本文>
1.新エネルギーとは
 近年、地球環境問題に対する意識の高まりを背景に、クリーンな国産エネルギーとして新エネルギーの導入が進んでいる。資源小国である日本では、エネルギーセキュリティの確保や地球環境問題への対応という観点から、今後導入するエネルギーは、二酸化炭素排出量が少ないこと、国内で自給できること、石油代替エネルギーとして長期安定確保できることなどが条件とされ、以上の観点から、新エネルギーの普及促進の期待は大きい。
 新エネルギーは、1997年4月に施行された「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネルギー法)」で「新エネルギー利用等」として規定されており、「技術的に実用化段階に達しつつあるが、経済性の面での制約から普及が十分でないもので、石油代替エネルギーの導入を図るために特に必要なもの」と定義されている。
 この新エネルギー利用等の対象は、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(施行令1997年6月20日政令第208号)」の第1条で規定され、具体的には(1)太陽光発電、(2)風力発電、(3)太陽熱利用、(4)温度差エネルギー、(5)廃棄物発電、(6)廃棄物熱利用、(7)廃棄物燃料製造、(8)バイオマス発電(*)、(9)バイオマス熱利用(*)、(10)バイオマス燃料製造(*)、(11)雪氷熱利用(*)、(12)クリーンエネルギー自動車、(13)天然ガスコージェネレーション、(14)燃料電池が該当する。(*)は政令改正(2002年1月25日公布・施行)により新たに追加されたものである。実用化段階に達した水力発電や地熱発電、研究開発段階にある波力発電や海洋温度差発電は、自然エネルギーであっても新エネルギーには指定されていない。
 新エネルギーは、エネルギー源の性質により、供給サイドでは、(1)自然エネルギー(再生可能エネルギー)と(2)リサイクル・エネルギーに、需要サイドでは(3)従来型エネルギーの新利用形態の、三種類に分類される。図1に新エネルギーの分類を、表1に新エネルギーの種類とその概要を示す。
 一方、経済産業大臣の諮問機関である「総合資源エネルギー調査会・新エネルギー部会」では、法律に定められた新エネルギーに、既に実用段階にある水力発電、地熱利用を加えて「再生可能エネルギー」として位置付け、2010年までの導入目標値を示している(表2参照)。現在、新エネルギーの供給割合は、エネルギー全体の供給量に対して1.2%(2001年度実績)と1%台で停滞しているが、2001年6月(平成13年)に策定された「総合資源エネルギー調査会・新エネルギー部会/新エネルギー部会報告書」によれば、2010年度での新エネルギー等への依存率は3%程度(1,910万kl)まで高めることを目標にしている。
 ここで「新エネルギー」という用語は日本独自の概念であり、石油代替エネルギーのうち、石炭、天然ガス、原子力、水力、地熱といった従来から普及されているエネルギー以外の新規性があるものについて用いられている。しかし、諸外国においては、一般的に、太陽、風力、バイオマスなどに加え、水力や地熱を含めて再生可能エネルギーとして統計上整理され、必要に応じて政策的支援を講じている場合が多い。この場合「再生可能エネルギー」は、風力や太陽などのように、絶えず資源が補充されて枯渇することのないエネルギーと定義されている(米国DOE/NREL)。これは資源の利用後に「補給や成長の過程により以前の水準まで回復し得る」エネルギーという概念であり、自然エネルギーのみならず、燃焼用バイオマス等についても「Combustionable Renewables」として再生可能エネルギーの範囲に含めている(IEA統計)。また、太陽エネルギーや風力エネルギーは、英語で「Intermittent renewable(間欠性再生可能)」と呼ばれ、出力が不安定で変動も多いため、水力やバイオマスエネルギーなどと区別されることもある。なお、バイオマスエネルギー(特に輸送燃料用バイオエタノール)に対する期待の高まりなど新エネルギーを巡る最近の情勢変化を考慮し、普及のために支援を必要とする供給側の新エネルギーに中小規模水力、地熱を含めた新しいくくりを「再生可能エネルギー」とし国際的な整合性を図るとともに、需要側の新エネルギーは再生可能エネルギーの普及、エネルギー効率の飛躍的向上、エネルギー源の多様化に資する「革新的エネルギー技術開発利用」とし、また化石原料由来の廃棄物発電・熱利用・燃料製造は省エネルギーの一手法とすることが新エネルギー部会で討議された。
2.新エネルギー導入の現状
2.1 発電分野における供給サイドの新エネルギーの導入状況
 太陽光発電、風力発電、廃棄物発電といった発電分野であって供給サイドの新エネルギー(新エネ)については、国による導入補助や電力会社による余剰電力購入メニューを通じた電力購入などにより導入が促進され、コスト低減が図られている。また、電力会社による「グリーン電力制度」や民間団体による新エネルギー導入に向けた自主的な取組も開始され、新エネ導入の機運が一層高まってきている。
(1)太陽光発電
 住宅用を中心に屋根・建材一体型などの新たな製品も導入され、過去3年間で導入量は約4倍に増加した。住宅用太陽光発電のコストは、過去約20年間の技術開発成果等により、システムの平均価格で6年前の約4分の1以下の1kW当たり90万円程度、トップランナー価格で1kW当たり60万円台程度まで低下している。発電コストも46円/kWh(2004年度)まで低減しているが、さらなるコスト低減に向けた一層の努力が必要である。RPS法認定設備からの電力供給量は、約3.5億kWh(2004年度)であり、財政支援とともに余剰電力の購入が導入を推進している。
(2)風力発電
 最近、特に売電事業用の大規模風力発電施設(ウィンドファーム)等において技術革新や大規模化による設置コストの低減が見られ、導入補助と余剰電力購入長期契約の効果により、一定の事業採算性が認められるまでになった。風況の良い北海道、東北地方を中心に民間企業や地方公共団体による導入が進んでいる。RPS法認定設備からの電力供給量は、約14.4億kWh(2004年度)であり、電力品質確保の観点から系統への連系量の制限が顕在化してきており蓄電池の導入などの対策を着実に実施していくことが期待されている。
(3)廃棄物発電
 地方自治体による一般廃棄物焼却処理施設での発電設備の設置や、RDF(Refuse Derived Fuel:ゴミ固形化燃料)および廃プラ(廃プラスチィック)燃料等による発電設備の設置を中心に導入が進んでいる。発電設備への追加投資、施設の立地に際し環境影響等の問題、地域住民の理解増進などが課題であり、廃棄物処理の大規模化・広域化の動向に留意し、廃棄物・リサイクル政策との整合性を確保しつつ、今後の普及策を検討する必要がある。RPS法認定設備からの電力供給量は、約18.2億kWh(2004年度)である。
(4)バイオマス発電
 木屑、バガス(サトウキビの絞りかす)、汚泥などのバイオマス燃料を利用する発電(バイオマス発電)は、これまで一定の導入が図られてきた。食品廃棄物から得られるメタンの利用など、一層先進的バイオマス燃料の利用促進が望まれる。RPS法認定設備からの電力供給量は、約3.9億kWh(2004年度)である。
2.2 利用分野に係る供給サイドの新エネルギー
 これまで国による導入補助等が行われてきたが、競合する熱源と比較してコストが高いこと等により、その導入が必ずしも十分に進んでいない。
(1)太陽熱利用(太陽熱利用、ソーラシステム)
 第2次石油危機後の1980年代に急増したが、最近では設備の廃棄量が新規導入量を上回り、設備台数は減少傾向にある。設備コストが高いなど経済性が課題である。今後、普及が期待される屋根・建材一体型や太陽光発電とのハイブリッド型等の製品開発、新たな用途の開発が進められている。家庭用の太陽熱温水器については、全国の戸建住宅数の約15%である約400万台が導入されているが、比較的価格で安定している都市ガス、灯油などより割高であり、導入は停滞している。
(2)廃棄物焼却余熱や温度差エネルギー等を利用した熱供給事業等
 資源賦存量やコスト低減において可能性を秘めているが、現段階ではデータがない。
(3)黒液・廃材その他バイオマス等
 最近は、景気低迷等による製紙工場の稼働率低下や古紙利用の拡大等から、黒液・廃材の利用量が減少傾向にある。また、食品廃棄物、農産物系および木質系の副産物・廃棄物などのバイオマス資源を活用した熱利用(バイオマス熱利用)や、積雪地域における雪氷冷熱のエネルギー利用については、近年、新たな導入事例が見られる。
2.3 需要サイドの新エネルギーの導入状況
 需要サイドでの新エネについては、国による導入補助や規制・制度面の環境整備の推進等により導入が促進され、一定の導入量の伸びが見られる。
(1)クリーンエネルギー自動車
 電気自動車、ハイブリッド自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ディーゼル代替LPガス自動車(クリーンエネルギー自動車)の導入実績は、過去3年間で約5倍以上に増加した。ハイブリッド自動車と天然ガス自動車は、比較的順調に導入量が増加している。しかし、一般自動車の価格と比較して割高で、ハイブリッド自動車以外は走行距離などの性能や燃料供給のインフラ整備に課題がある。
(2)天然ガスコージェネレーション
 導入実績は過去3年間で約1.5倍で、比較的順調に進展している。これは、排熱利用メリットも考慮した結果、経済性が成り立つことが主な理由である。
(3)燃料電池
 りん酸形燃料電池は技術的には実用化段階にあるが、経済性や耐久性等性能面に課題があるので、廃棄量が新規導入量を上回り、稼動中の設備能力は減少してきている。
 一方、小型化・高効率化が可能な固体高分子形燃料電池は、燃料電池自動車や家庭用分散型コージェネレーション機器として導入が期待され、実用化と普及に向けて内外の企業による開発競争が本格化している。また、国による技術開発や標準化等の普及のための環境整備の取組が開始され、今後大規模な導入が期待される。この他、固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池は、主として中小分散型電源としての研究開発が進められている。
3.新エネルギーの課題
 新エネは環境負荷、需要地近接、負荷平準化などメリットを持つ反面、経済性や自然条件適応性、需要の確保が課題である(表3参照)。新エネは発電量の変動幅が大きく、原子力や火力など主力電源設備を補完する電源として位置付けるけられ、それぞれの特徴を生かした小規模分散型電源としての活用が期待されている。
 新エネの自立化のために必要不可欠な要素は経済性の向上である。総合資源エネルギー調査会・新エネルギー部会の試算例では、住宅用太陽光発電の発電コストは家庭用電灯料金の約3倍、風力発電は火力発電単価の約1.4〜3倍である(表4参照)。従来型エネルギーの発電単価は、1kWhあたり水力13.6円、石油火力10.2円、石炭火力6.5円、LNG火力6.4円、原子力発電5.9円で、太陽光発電、風力発電、波力発電、海洋温度差発電などの普及には、より一層の単価低減が必要である(表5参照)。
 経済性を克服するには需要拡大が不可欠であるが、再生可能エネルギーは地域共生型であることが多いため、日本独自の促進方策を考える必要がある。再生可能エネルギーの普及促進は、欧米諸国でも積極的・精力的に取り組んでおり、2002年「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグサミット)において、再生可能エネルギーの利用拡大がうたわれている。新エネルギーを含めた再生可能エネルギーには量的に多くを期待できないが、枯渇性のある化石エネルギーの節減に役立ち、より長期にわたり化石エネルギーを活用でき、持続可能なエネルギー需給構造を構築できる可能性がある。欧米諸国での再生可能エネルギーが一次エネルギー総供給量に占める割合は、2000年度実績で米国5.0%、EU6.0%、日本約4.8%で、2010年度の目標値は米国6.9%、EU12.0%、日本7.0%程度である。多くの先進国ではエネルギー市場自由化を進める中で、再生可能エネルギーに高い導入目標を設定し、目標達成のため様々な政策的措置を講じている。米国、デンマーク、英国などでは、再生可能エネルギーを含む特定電源から固定価格で全量購入を義務付ける制度から、最近では電力会社や最終消費者の再生可能エネルギーの導入量に一定の枠を設定し、取引可能なグリーン証書やクレジットを導入する制度(欧州ではクオータ制、米国では:Renewable Portfolio Standard)に移行する検討が進み、再生可能エネルギー間での市場メカニズムの導入により、コスト低減を図る試みがある。欧米諸国の主な政策手段の概要を表6に、RPSの仕組みを図2に示す。
4.今後の動向
 制度面や市場メカニズムの活用など種々の方策を利用しながら、現状においては価格競合的に不利な再生可能エネルギーの普及導入を促進するには、何らかの恒常的な公共的資金が必要になる。地球環境に関する一連の動向で浮上してきた環境税は、CO2やNOxなどの排出を抑制するための経済的手法の一つで、CO2排出権の国際取引市場創設を議論する過程で炭素税が導入された場合は、再生可能エネルギーの普及促進の追い風となる。また、わが国では、電力会社に対し一定量以上の電力を新エネルギー発電にすることを義務付ける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(新エネルギー特別措置法、略称でRPS法ともいう。)が2003年4月に全面施行され、利用義務量の全国合計値は、2003年度で32.8億kWh(販売電力量の約0.4%)、2010年度で122.0億kWh(販売電力量の1.35%)となった。一方、バイオマスエネルギーに対する期待から、2003年にガソリンへのエタノール混合上限を3.0%ととし、2005年にバイオマス由来燃料50万kl目標(2010年)を設定した。なお、米国は「2005年包括エネルギー政策法」により、再生可能燃料(主にエタノール)の使用を義務付け、使用量を2012年までに年間75億ガロン(約2,839万kl)まで拡大し、欧州は、バイオ燃料の導入目標を2010年に5.75%に設定した。
<図/表>
表1 新エネルギーの種類とその概要
表1  新エネルギーの種類とその概要
表2 新エネルギーの導入実績と見通し
表2  新エネルギーの導入実績と見通し
表3 新エネルギーの評価
表3  新エネルギーの評価
表4 代表的な新エネルギーの経済性試算例
表4  代表的な新エネルギーの経済性試算例
表5 新エネルギーの発電単価
表5  新エネルギーの発電単価
表6 欧米諸国の主な政策手段の概要
表6  欧米諸国の主な政策手段の概要
図1 新エネルギーの分類
図1  新エネルギーの分類
図2 RPSにおけるクレジット売買スキーム
図2  RPSにおけるクレジット売買スキーム

<関連タイトル>
太陽光発電システム (01-05-01-01)
太陽熱発電システム (01-05-01-02)
風力発電 (01-05-01-05)
バイオマスエネルギー (01-05-01-06)
海洋エネルギーによる発電 (01-05-01-07)
波力発電 (01-05-01-08)
IEAによる米国エネルギー政策のレビュー(2002年)(5)再生可能燃料および非在来型燃料 (01-07-06-05)
日本の新エネルギー導入政策 (01-09-07-01)
新エネルギーと省エネルギーの技術開発 (01-09-07-02)
石油代替エネルギーの供給目標と新エネルギーの利用 (01-09-09-02)

<参考文献>
(1)茅陽一(監修):新エネルギー大事典、(株)工業調査会発行(2002年2月)、p.3−11、p.30−40
(2)資源エネルギー庁:新エネルギー導入のための国の施策と課題、原子力eye、46(1)、日刊工業出版プロダクション(2001年1月)、p.76−77
(3)エネルギー(ENERGY):エネルギー展望 −現状と課題 2002 新エネルギー、日工フォーラム社(2002年4月)、p.31−39
(4)エネルギー(ENERGY):新エネ特集 太陽光発電、日工フォーラム社(2002年6月)、p.43−69
(5)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構:http://www.nedo.go.jp/index.html
(6)総合資源エネルギー調査会・新エネルギー部会:新エネルギー部会報告書?今後の新エネルギー対策のあり方について?(2001年6月);参考資料
(7)経済産業省:原子力のページ
(8)資源エネルギー庁(編):エネルギー2003、(株)エネルギーフォーラム(2002年11月30日)、p.69−90、p.93−94、p.128−163、p.170−176、p.182−190、p.192−207
(9)(財)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編):図解エネルギー・経済データの読み方入門、(財)省エネルギーセンター(2001年2月23日)、p.258−300
(10)経済産業省:平成16年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書)
(11)総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会:RPS法評価検討小委員会・報告書(案)(平成18年4月)
(12)総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会:中間報告(案)(平成18年5月26日)
(13)電気事業連合会:原子力・エネルギー図面集、第3章「エネルギー」、2/8
(14)教育出版:高校社会、授業に役立つ新しい話題−公民・地理の視点−(2001年号)、新エネルギー事情を考える
(15)(財)新エネルギー財団:What’s新エネ?、新エネルギーとは
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