<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本の新エネルギー
<小項目> 再生可能型新エネルギー
<タイトル>
波力発電 (01-05-01-08)

<概要>
 波力は、自然エネルギー中ではエネルギー密度が高く、有望なエネルギー資源であり、日本を含む各国で研究開発が進められているが、波力発電システムには、大別すると波の上下振動、水平振動、遡上波を利用して用水池に海水を貯水し水車を回転させるシステムの3方式や、波の上下振動と水平振動を併用する方法がある。わが国では、航路標識用の発電装置や実験用として10を越える発電装置が作られているが、ほとんどは、波の上下動を利用した水柱形である。ヨーロッパでは、フランス、英国、ノルウェーなどで研究が行われ、ECではジュール2計画として波力発電開発研究が進められている。波力発電装置は、設備の耐久性や経済性の問題点があり、更に改良が必要である。また、海上や海岸で発電した場合に、電力需要地までの送電が必要となるなどのコスト面での問題があるが、地域振興策に組み入れて、活用しようとする考え方がある。
<更新年月>
2004年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.波力発電のしくみ
 波力の起源は太陽エネルギーであるが、太陽エネルギーが風力に変わり、これがさらに波力に変わる際に、エネルギーの空間密度が高められる。単位が異なるので直接の比較はできないが、1平方メートルの地表に入射する太陽エネルギーは約1kW(日本付近の快晴時)であるのに対して、1m幅の波の持つエネルギーは日本付近では7kW(沿岸)〜20kW(外洋)と推定されている。(なお、電気への変換効率は太陽光発電が10〜20%程度、波力発電は先進的技術で30%程度とされている。)
 四方を海に囲まれている日本は、波エネルギー資源に恵まれていて、沿岸部に打ち寄せる年平均の波エネルギーの賦存量は、独立行政法人港湾空港技術研究所の試算によれば、3,600万kWにも達する。図1に港湾空港技術研究所が推定した日本沿岸の波浪パワーW(kW/m)を示す。
 波力発電システムには幾つかの方式があるが、大別すると、
(1)波の上下振動を利用、
(2)波の水平振動を利用、
(3)遡上波を利用して用水池に海水を貯水し水車を回転、
の3方式がある。
 波の上下振動で作った圧搾空気を送風してタービンを作動させる(1)の方式は、構造が単純で耐久性に優れているため各研究機関で研究され、現在は主流になっている(図2参照)。この方式はタービン方式、振動水柱形とも呼ばれる。
 浮体振動では、コイルを磁場中で上下させるなどの単純な方法もあるが、主流はポンプを動かすものである。また、(2)の波の水平振動を利用する振り子式のものもある(図3参照)。
2.波力発電の開発状況
 わが国では、航路標識用の電力に浮体式水柱形の発電装置が実用化されている他に実験用として10を越える発電装置が作られたが、殆どは波の上下運動を利用した水柱形である。
 ヨーロッパでも波力発電の歴史は古く、フランスでは200年前に特許申請がなされ、今世紀の初めにボルドーの海岸で1kW発電所が作られた。1970年代から英国、ノルウェーなどで研究が行われ、また、1993年からはヨーロッパ委員会(EC)のジュール2計画として波力発電開発研究が開始された。この計画では、1994〜1995年を空気タービン方式の発電テストを行う第1段階、1995〜1998年に沖合波力発電所の実海域テストを行う第2段階として、幾つかの発電方式の研究が進められている。
2.1 浮体式波力発電装置「海明」
 文部科学省の海洋科学技術センターが、国際エネルギー機関IEA)の協同研究として、米国、英国、アイルランド、ノルウェー、スウェーデンの参加を得て、浮体式波力発電装置「海明」(設備定格1,000kW)の研究開発を行った。「海明」は、振動水柱型空気タービン方式で波エネルギーを電気エネルギーに変換する。これは、底の無い箱を水面に伏せ、その上部に開孔を設けてそこに空気タービンを取り付けたもので(図2)、波が発生すると箱の中の水面が上下して開孔部を出入りする高速空気流が発生し、それにより空気タービンを回転させるというものである。「海明」は、このような空気室が長手方向に13室並んだ全長80m、幅12mの大型の波力発電ブイである。1977年から1982年にかけて第一期の研究開発に取り組み、山形県鶴岡市由良沖で実海域実験を実施、多種類の発電方式、各種の空気タービンを使って、過酷な荒波の中における安全性およびエネルギー変換装置としての性能を確認した。さらに、第一期に続き、1983年から1987年にかけて実海域実験を含む第2期の研究開発に取り組んだ。その成果として、以下の成果を得ている。
 1)水槽実験と海域実験との相似則の確認
 2)世界最初の大出力波力発電の実証(年間190MWh)
 3)小規模陸上送電の成功
 4)最適浮体形状の決定
 5)日本海側で発電コスト63.2円/kWh(1987年価格)を達成
2.2 沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」
「マイティーホエール」は、波エネルギーを吸収し、利用可能なエネルギーに変換するとともに、装置の背後に静穏海域を創成し、波が荒く利用が不可能であった海域を海洋牧場やレクリエーションの場として利用可能とするなど、海洋空間の総合利用を目指した多目的の機能をもった装置で、1998(平成10)年から科学技術庁(現、文部科学省)の海洋科学技術センターで研究開発を行い、1998年には三重県度会郡南西町の五ケ所湾沖に係留し、装置の安全性・耐久性および経済性を実証するための実海域実験を行っている。1998年8月から2000年12月までの実験期間中、保守点検及び故障で装置を停止した日を除くと運転日数は701日で稼働日数は約79%になる。この間の一時間当りの平均発電量は6.04kWhであった。
 この装置の構造は、複数の空気室と浮力室から成る浮体式で、空気室の底部は、波の来る方向に開いており、まるで「くじら」が大きな口を開き波エネルギーを飲みこむような形状をしている。このため、マイティーホエール(図4参照)と呼ばれる。波エネルギーは、空気室で高速の空気流に変換され、空気室の上部に置かれた空気タービンを回転させることにより、電力や圧縮空気を得ることができ、目的に応してさまざまな形態のクリーンエネルギーとして周辺の施設などに供給される。波エネルギーは、これまで、多方面の利用が可能な電力に変換して利用されてきたが、この装置では、発電機をコンプレッサーに変えることにより圧縮空気を作り、この圧縮空気を海底に設置した貯気槽に蓄えて、利用することも考えている。たとえば、エアレーションによる海水混合、深層水の導水などによる海域環境の改善、魚群制御など、幅広い利用がある。わが国の水深50m以浅の沿岸域の総面積は、国土面積の22%に相当し、そのうち約80%が未利用となっているが、この装置の高い消波機能は、背後に広大な静穏海域を創成し、今まで波が荒く利用不可能であった海域に海洋牧場、海洋レジャーなどの海洋空間の有効利用の可能性を開く。また、この装置の上面は、多目的利用スペースとしてレジャー用、プラント用など目的に応じて利用が可能である。さらに、この装置は浮体式なので、海底設置式と異なり、海水の交換を妨げず、水質、生態系に悪影響を及ぼさないことに加えて、デザインは、周囲の景観を損なわないことを条件として行うので、自然との調和に配慮した装置となっている。
2.3 波力発電防波堤
 独立行政法人港湾空港技術研究所においては、1982年度よリ波エネルギー利用防波堤についての研究を開始し、現在ではケーソンおよび発電装置の設計がほぼ可能となっている。この防波堤は、波エネルギーを空気流に変換するための空気室と発電装置などを装備する機械室を持つ特殊な形状のケーソン防波堤(図5参照)である。その成果を受け、運輸省(現、国土交通省)第一港湾建設局管内の酒田港において、波エネルギー利用システムの実用化への最終段階として、1989年度にケーソンを設置した後、波エネルギー利用防波堤の設計法の検証などの現地実証試験(定格60kW)を実施している。この防波堤に用いられる特殊な形状をした波力発電ケーソンは、空気室と呼ばれる中空の箱の部分と、それを支持する通常のケーソンの部分からなる。空気室の前壁はカーテンウォールとなっており、波が空気室に侵入できるよう開口部を有し、波の作用によって空気室の水位が変動し、空気室内の空気を圧縮膨張させ、波のパワーを空気のパワーに変換する。この空気流をタービンによって回転力に変え、発電機を回転させて電力を得ようとするものである。なお、波力発電ケーソン防波堤は、単に機能の優秀さだけでなく、波力発電電気の利用方策、利用施設計画があって初めて実用化に至ることとなる。したがって、今後は利用方策を含めた幅広い検討を併せて実施していく必要がある。また、1996年8月に原町火力発電所(福島県原町市)の南防波堤突端部に水弁集約式(防波堤)波力発電システムである実証試験設備(定格130kW)を完成し、運転研究を始めた(図6参照)。実働中の波力発電としては単機出力で日本最大であるとともに、世界最大の規模である。
3.波力発電の将来
 波浪エネルギーは直接には風力、元をたどれば太陽をエネルギーの源にしており、そのエネルギー集積度は太陽光の20〜30倍、風カエネルギーの5倍と言わる。しかし、絶対的なエネルギー密度は低く、変動性も高い。
 発電コスト(\/kWh)の推定を火力発電などに用いられている方法で行うと、エネルギー種別による各種コストの試算(推定)は表1のようである。自然エネルギーの発電コストは、いずれの種でも火力や原子力に比べてかなり高価であるという評価となった(文献9)。波力発電の発電コストは、離島の防波堤に付設し商用電力の補助電力として利用した場合、25〜40円/kWという報告もある。離島の電力供給はディーゼル発電機による小型火力発電所に頼るのが普通であるが、その発電コストは、130〜200円/kWと言われている。したがって、離島の電力供給として波浪発電が経済的である可能性は高い。
 波力発電の開発上の問題点としては、波力発電装置は、激しく変化する海洋気象のために極端に大きな負荷に耐えなければならず、また、耐食性の良い材料を使用する必要がある。さらに、海上や海岸で発電した場合には、電力需要地までの送電が必要になるなどコスト面での問題が多い。波力発電の実用化を進めるためには、海域特性に合わせた小規模分散型装置の構築、装置及び取得エネルギー使用の多目的化、太陽光や風カ、海洋温度差などの自然エネルギーとの組み合わせによりそれぞれの欠点を補完する複合システムの構築による稼働率の向上、要素技術としての活用などの検討が必要不可欠である。
 また、航路標識などの特殊な場所を除けば、単純な発電設備としての波力発電では採算があわないが、波力発電を地域振興政策に組み入れて、活用しようとする考え方もある。すなわち、波をせき止めるエネルギー吸収装置は、消波ブロックとしての機能があり、結果的に背後に静かな海を造り出すことになり、この海域をレクリエーションや海洋牧場などに幅広く使うことが考えられている。このように、離島やリゾート地、あるいは、漁業地域などにおけるクリーンなローカルエネルギーとして利用する場合には、地域振興と関連させて開発するなどの二次的な効果もある。
 1999年末に、イギリスのスコットランドのアイレー島で世界最初の商業沿岸固定式波浪発電装置(LIMPET:Land-Installed Marine-Powered Energy Transformer、定格500kW)の運転が電力会社と15年の供給契約を締結し開始され、波浪発電装置として航路標識ブイ以来の実用化が果たせるか期待されている。また最近では、火力発電などの従来の発電方式も含めて、人間の健康、生態系や環境への損害をコストに評価するアプローチも試みられている。この評価によれば、波浪発電を含めた再生可能エネルギーの利用が拡大される可能性も期待される。
 上述の「マイティーホエール」の研究成果は、浮体式波浪発電装置としてだけでなく、電力以外のエネルギー利用、海域環境浄化などの付加価値をもったシステムや、他の自然エネルギーとの複合発電システムとしての設計のノウハウとして役立つものと考えられている。
<図/表>
表1 エネルギー種別による各種コスト
図1 沿岸の波浪パワーの分布
図2 波力発電のしくみとタービン
図3 室蘭工業大学、振り子式波力発電装置の原理
図4 マイティーホエール
図5 発電防波堤機械室概念図
図6 波力発電装置の全景

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<関連タイトル>
海洋エネルギーによる発電 (01-05-01-07)

<参考文献>
(1)科学技術庁科学技術政策局(監修):日本のエネルギー開発、日本科学技術振興協会 出版部(1997年10月)、p.94-99
(2)上原:海洋エネルギー、日本機械学会誌、Vol.93 No.866(1990)
(3)渡部 富治:日本の波力発電、エネルギーレビュー、1994年8月号、(株)エネルギーレビューセンター
(4)益田 善雄:ヨーロッパの波力発電、エネルギーレビュー、1994年8月号、(株)エネルギーレビューセンター
(5)資源エネルギー庁(編):新エネルギー便覧 平成10年度版、(財)通商産業調査会(1999年3月) p.71
(6)海洋科学技術センター:沖合浮体式波力装置 マイティーホエールの開発 (1998/9)
(7)鷲尾 幸久:沖合浮体式波力装置「マイティーホエール」実海域実験について、日本造船学会誌、第836号(1999年2月)、p.80-86
(8)海洋科学技術センター:http://www.jamstec.go.jp
(9)近藤 俶郎:波浪発電システム最近の進歩、火力原子力発電、50(6),p.636-645(1999.6)
(10)牧野 朝昭:波力発電、火力原子力発電、49(10),p.1269-1275(1998.10)
(11)緒方 輝久:波力発電の現状と将来、エネルギー・資源、Vol.23 No.2(2002)、p.50-54
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