<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本の新エネルギー
<小項目> 再生可能型新エネルギー
<タイトル>
バイオマスエネルギー (01-05-01-06)

<概要>
 日本における廃棄物系バイオマス資源の賦存量は、石油換算で2,600万klと推定され、このうち、エネルギー資源として利用されているのは、バガス、パルプ黒液等ごく僅かに過ぎない。一方、バイオマス資源のエネルギー利用は、二酸化炭素の発生量を増加させないことから、二酸化炭素発生量の削減と廃棄物の有効利用の観点から、バイオマス資源のエネルギー転換技術の開発・実用化が求められている。バイオマス資源の特徴は、発生地域の分散と形状・性状の多種多様性である。
 日本においてもバイオマスが新エネルギーとして正式に認められ、本格的な導入を目指す自治体も増えている。今後、効率的な変換技術の導入と導入促進へ向けての制度面の整備、および森林バイオマスのコスト削減などに取組み、一層の普及を目指すことが重要である。2005年4月には、京都議定書目標達成計画において、2010年度におけるバイオマス発電やバイオマス熱利用の導入目標が設定され、特に輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料については、原油換算50万klという導入目標が明記された。さらに、2006年3月には、「バイオマス・ニッポン総合戦略」が改定され、バイオマスエネルギー、特に輸送用バイオマス由来燃料の推進が位置付けられ、地域ごとの取り組み等を通じて具体的な導入促進が進められている。
<更新年月>
2006年12月   

<本文>
1.バイオマスエネルギーとは
 バイオマスエネルギー(Biomass energy)とは、生物体を構成する有機物を利用するエネルギーで、1970年代から石油代替エネルギー資源として世界的に注目されるようになった。一方、日本ではこれまで大きな注目を集めるに至らなかったが、再生可能エネルギーの見直しにより、バイオマスエネルギーを取り巻く状況は大きく変化しようとしている。
 2001年6月には経済産業省・資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会において、バイオマスを新エネルギーとして位置づけ、新エネルギー導入目標値を設定した(表1−1参照)。資源エネルギー庁では2002年1月、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令(新エネ法)を一部改正し、法的にバイオマスを新エネルギーとした。2002年11月、新エネルギー部会第10回部会において、新エネルギー導入拡大に向けた政策面の取組み、バイオマスエネルギー開発・利用戦略の検討状況を審議し、2002年12月には新エネルギー利用等の促進に関する基本方針を改定し、「第4 その他新エネルギーに関する事項」中でバイオマスの内容、特性等を示している。2002年12月バイオマス・ニッポン総合戦略の策定、2003年4月からのバイオマスを含めた新エネルギーの一定割合の利用・購入を義務づけたRPS法の施行等に続き、2003年8月には、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」が改正され、ガソリンへのエタノールの混合上限が3%と定められた。さらに、2005年4月には、京都議定書目標達成計画において、2010年度におけるバイオマス発電やバイオマス熱利用の導入目標が設定され、特に輸送用燃料におけるバイオマス由来燃料については、原油換算50万klという導入目標が明記された。さらに、2006年3月には、「バイオマス・ニッポン総合戦略」が改定され、バイオマスエネルギー、特に輸送用バイオマス由来燃料の推進が位置付けられ、地域ごとの取り組み等を通じて具体的な導入促進が進められている(表1−2および表1−3)。
2.バイオマスエネルギーの特徴
 人類は、数千年にわたって、薪や木炭、家畜の糞などをバイオマスエネルギーの燃料源として使ってきた。バイオマスエネルギーは、太陽エネルギーが植物により変換され生物体に蓄えられたものであり、化石資源とは異なり、太陽エネルギーを介してバイオマスは循環している。この循環のバランスを崩さない限り再生可能なエネルギーである。日本における主要バイオマスのエネルギー賦存(ポテンシャル)については、資源量種や統計方法により推定値に幅があり、調査が続けられている。 図1−1 に(社)日本エネルギー学会の調査に基づく賦存量と利用可能量および図1−2に主なバイオマス発生量と利用状況の変化を示す。利用可能量とは賦存量からエネルギー以外の利用量を除いたものである。賦存量合計で約1,757PJ/年、利用可能量で約1,327PJ/年である。この大きさは、日本の2000年の1次エネルギー総供給のそれぞれ7.5%、5.7%に相当する。これらを有効利用できれば、日本のエネルギーの5〜10%が供給可能という。利用可能量の内訳は木質系バイオマスが約1/3と量も多く、ついで食品廃棄物、製紙系バイオマスの順となっている。因みに、アジア各国の廃棄物系バイオマスの賦存量と利用可能量を表2に示す。
 バイオマスは、元来、大気中の二酸化炭素が固定されたものであり、燃焼させても、光合成によって常に新たなバイオマスが生産されるため、二酸化炭素のバランスを崩さない(カーボンニュートラル(CO2+H2O⇔CH2O+O2))という特徴を有した、大気中の二酸化炭素濃度を増やさないエネルギーとして期待されている。
 3.バイオマスの利用技術
3.1 バイオマスの種類
 バイオマスはその用途や資源の種類観点から様々な形で分類される。 表3 にバイオマス資源の分類の一例を示す。エネルギー資源利用を前提とした分類では、農産バイオマス(稲わら、もみ殻、麦わらなど)、木質バイオマス(低利用広葉樹材、間伐材などの木材、廃材、薪、木炭など)、畜産バイオマス(家畜の糞尿)、水生バイオマス(ジャイアントケルプ、ウキクサ、ホテイアオイなど)、栽培バイオマス(油ヤシ、落花生、菜種、ヒマワリ、サトウキビ、キャッサバなど)、生活廃棄物バイオマス(都市ゴミ、し尿、下水汚泥など)などに分かれる。
3.2 バイオマス資源のエネルギーへの変換技術
 バイオマスの利用方法はエネルギー変換技術により、主に熱化学的変換と生物化学的変換にわかれる(図2参照)。バイオマスのエネルギー変換方法は様々であり、得られるエネルギー形態も(電気、熱、気体燃料、液体燃料など)様々で、実用化レベルも異なる。直接燃料→発電やCHP(Combined Heat and Power)、糖質やデンプンを原料とするアルコール発酵などは実用化レベルであるが、バイオマス発電、ガス化メタノール合成、熱分解・ガス化技術は、生物化学的技術に比べて発展途上の技術であり、前処理技術(脱水、乾燥、破砕)の効率化やタール分の少ない低温ガス化炉方式の開発等の課題がある。しかし、大きなエネルギーが得られるため、期待は大きい。
 バイオマスのエネルギー変換技術のうち、現在、利用あるいは研究されている主な技術を表4に示す。このうち、既に実用レベルまたは可能性が高いものについて、以下に現状・課題等を示す。
(1) 熱化学的変換
・燃焼発電については、欧米では、他の有機性廃棄物と一緒にして、25−75MW級の発電所が多数稼働。日本では廃棄物発電が稼働。小規模では製材工場残渣の利用による工場内発電があるものの発電効率は低い(発電効率10%前後)。原料バイオマスの大量安定供給が課題である。
・ガス化発電では、IGCC(複合発電)などのより高効率のプロセスが開発中。スウェーデンなどでは実用化前提の実証プラントが稼働。タール除去やガスの精製が課題である。
 ガス化間接液化では、日本には企業主体の小型実証プラントがある。液体燃料は長距離輸送に有利なため、今後有望と目されている。
・熱分解では、EUで研究促進。得られたオイルは低品質で、用途開発が課題である。
・高圧プロセスのうち、スラリー化では、スラリー燃料は発電用ボイラに利用可。直接液化は下水汚泥等の廃棄物処理に応用可。いずれも企業主体の実証プラント有。
・亜・超臨界ガス化では、一段階でクリーンな燃料製造の可能性有。有望だが、高圧装置の開発や装置の材質、原料導入部システム、金属触媒の耐性などの課題も多い。
(2) 生物学的変換
・エタノール発酵では、サトウキビ(ブラジル)やトウモロコシ(米国)から製造したエタノールをガソリンに添加して使用している。糖化に関しては、酸加水分解法、酵素法等が検証中である。 図3にメタン発酵によるエネルギー化プロセスを示す。
・メタン発酵では、中国、インド等の地方農村において、家畜糞尿からメタンガスをとり、家庭内燃料として用いる低品位小規模分散エネルギーとして利用されている。デンマーク等でも集約型プラント稼働。京都や地方各地で小規模プラントが稼働している。
(3) その他
・バイオディーゼル製造では、アブラナ、パーム椰子など原料選定は国の農業政策による。日本では小規模ながら回収天ぷら油をエステル化してバスの動力に用いる自治体が有る。原料の収集が課題である。
4.国内における導入状況
 バイオマスシステムを導入する際には、(1)変換されたエネルギーが十分な市場価値をもつ、(2)一定量のバイオマスが確保でき処理サイトへの運搬が可能である、(3)バイオマス消化液、残渣および原料(バイオマス)の環境への負荷を低減させ、地域住民の理解が得られる、等、技術的にも社会的にもシステム全体の整合性が重要である。
 現在、バイオマスは、都市廃棄物や産業廃棄物の焼却で得られるエネルギーとして利用されている。廃棄物系バイオマスは、製紙業等の過程で排出される産業廃棄物(黒液、チップ廃材)、農林・畜産業の過程で排出される廃棄物・副産物(モミ殻、間伐材、牛糞等)、一般廃棄物(ゴミ、廃食油等)等を燃焼させることによって得られ、電力・熱を利用している。 図4に将来型生ゴミのメタン発酵を利用した燃料電池プラントを示す。
 畜糞や食品廃棄物からのメタンガス回収技術は確立されているものの、経済的観点から相当量の廃棄物の確保が必要になり、回収方法などの問題から十分な普及には至っていない。しかしながら、利用可能量の大きさを考慮すると、他の再生型エネルギーと同様、技術開発によって、原料の回収コストの低減化、環境への負荷の最小化、各地域のインフラの実状にあったバイオマスの導入を図り、推進していくことが重要である。
 研究開発の分野では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で予算規模20億円のバイオマスエネルギー高効率転換技術開発が開始され、2002年3月に委託先が決定した(表5図5参照)ほか、実証試験調査事業件数は39件、実証試験事業件数は18件に達している(表6参照)。
5.海外における利用状況
 欧米では、バイオマスエネルギーは積極的に導入されている。今後エネルギー需要の増大が見込まれるアジアにおいてもその重要性が高まるものと思われる(合成液体燃料開発の世界動向 (01−05−02−21)参照)。
5.1 アジアにおける利用状況
 アジアのASEAN加盟9か国のバイオマス利用(木材燃料)は、総エネルギー消費の約40%を占め、バイオマスエネルギーの潜在的ポテンシャルは高いが、近代的利用法は未だ充分に開発されていない(表2参照)。しかし、東南アジアでは自動車エンジン燃料としてパームヤシ油が導入され、中国ではバイオマス、村落のハイブリッド電化システム、バガス(*1)・コージェネレーションなど「再生可能エネルギーの商用化を促すための5ヵ年計画」が策定されて(1998年)、プロジェクトが推進している。
(*1)バガス:Bagasse、さとうきびからジュースを絞った後の繊維質のかす。パルプの原料など非木材原料として利用されている。
5.2 欧米における利用状況
 EUは、再生可能エネルギーに関する「グリーンペーパー」(1996年11月)および「ホワイトペーパー」(1997年11月)において、総エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を1995年の5.4%から2010年には11.5%まで高め(石油2000万トン分を節約)、4分の3をバイオマスで確保するとしている(表1−1および表1−3参照)。
 バイオマス燃料は、フィンランド、スウェーデン、デンマークといった北欧諸国において積極的な取組みがみられる。また、ドイツでは、自動車燃料(バイオディーゼル;化石燃料80:菜種20)が普及している。スウェーデンでは、1980年の国民投票により脱原発を決定したため、バイオマスによる地域熱供給を強化している。2回にわたる税制変更(1991年:炭素税・硫黄税・環境負荷金、1992年:NOx課徴金)により、一次エネルギーの約20%が木質バイオマスエネルギーにより供給されている。
 米国では、1999年8月の大統領令「バイオ製品とバイオエネルギーの開発と促進」により、2010年までにバイオマス資源の利用量を3倍に引上げようとしている(表1−1、表1−2および1−3参照)。現在、燃料用木材や製材工場などから出た廃材等を利用したバイオマス発電所が約550ヵ所で稼動しており、平均出力は20MWと小さいものの、全体で約7,000MW、米国全電力の1%を占めている。また、ブラジルでは1979年の全国アルコール計画や1992年のエネルギー政策法により、輸送用燃料需要の約40%がエタノールとなっている(表1−3参照)。
 バイオマス発電を導入した実証例としては、スウェーデン・ベルナモに建設されたIGCCプラント(バイオマスガス化発電:木質燃料を20気圧でガス化、ガスタービン4MWe、蒸気タービン2MWeの複合発電、9MWの熱供給システム)、フィンランド・フォルサン市熱併給システム(CHP:木質バイオマス燃料40万m3/年、発電規模17.2MWe、熱供給48MWt)、スウェーデン・ブリスタ発電所(CHP:バイオマス燃料、発電規模44MWe、熱供給75MWt)がある。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1−1 日本におけるバイオマスエネルギーの導入目標
表1−2 新たなバイオマス・ニッポン総合戦略(平成18年3月策定)
表1−3 輸送用バイオマス由来燃料の導入
表2 廃棄物系バイオマスの潜在的および利用可能ポテンシャル推計
表3 バイオマス資源の分類例
表4 バイオマスを原料とする主なエネルギー変換技術
表5 バイオマスエネルギー高効率転換技術開発プロジェクト
表6 バイオマス等未活用エネルギー実証設置事業(2001−2002年度)
図1−1 日本のバイオマス賦存量と利用可能量
図1−2 主なバイオマスの発生量と利用状況の変化
図2 バイオマスのエネルギー変換の体系図
図3 メタン発酵によるエネルギー化プロセス
図4 メタン発酵を利用した生ゴミ燃料電池発電プラント
図5 バイオマスエネルギー高効率転換技術開発

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<関連タイトル>
新エネルギーの導入と動向 (01-05-01-09)
サンシャイン/ニューサンシャイン計画 (01-05-02-01)
合成液体燃料開発の現状 (01-05-02-20)
合成液体燃料開発の世界動向 (01-05-02-21)
木質バイオマス発電事業の一例 (01-05-03-03)
省エネルギ−技術の開発推進 (01-06-03-01)

<参考文献>
(1)新エネルギー・産業技術総合開発機構 地球環境産業技術研究機構委託:バイオマスエネルギー技術の体系的整理とプロジェクト化に関する調査(2002年3月)
(2)清水幸丸:エネルギー新技術−バイオマス、応用物理、63(8)(1994),p.787,p.790
(3)National Renewable Energy Laboratory:http://www.nrel.gov/energy_resources/
(4)資源エネルギー庁(編):エネルギー2002、エネルギーフォーラム(2001.12)p.144−146
(5)バイオマス産業社会ネットワーク:http://www.jbnacla.net/bin/kanrenzyouhou.htm
(6)美濃輪智朗、横山伸也:新エネ特集 動き出したバイオマスエネルギー、エネルギー(2002.6)p.70?92
(7)石油産業活性化センター:欧米及びアジアにおける石油代替としてのバイオ燃料の導入について(2001年)、http://www.pecj.or.jp/chosa−report/report−pdf/01cho3.pdf
(8)KAJIMA CORPORATION:メタクレス有機性廃棄物資源化システム、http://www.kajima.co.jp/tech/env_eng/haiki/hs06.shtml
(9)地球環境産業技術研究機構:バイオマス資源を原料とするエネルギー変換技術に関する調査、http://www.rite.or.jp/Japanese/kicho/kikaku/now/now35/35_19.pdf
(10)省エネルギー総覧編集委員会(編):省エネルギー総覧2004/2005、通産資料出版会(2004年1月)、p.155−197
(11)新エネルギー・産業技術総合開発機構:データベース>新エネデータ>fy14>バイオマスエネルギー、http://www.nedo.go.jp/nedata/14fy/06/0006alst.htm
(12)小木 知子:バイオマスエネルギー:変換技術の現状と将来展望,Biomass Power Generation Vol.xx(2003)、p.42−50
(13)山地 憲治:エネルギー資源としてのバイオマスの基本的意義,Energy Review 2003.10、p.6−7
(14)経済産業省:新エネルギー部会第10回配布資料、http://www.meti.go.jp/kohosys/committee/summary/0001241/0001.html
(15) 農林水産省ホームページ:「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成18年3月31日策定)、http://www.maff.go.jp/biomass/pdf/h18_point.pdf
(16) 総合エネルギー調査会新エネルギー部会(第18回)配布資料1「総合エネルギー調査会新エネルギー部会中間報告(案)」(平成18年5月26日)、http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g60613d02j.pdf
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