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<概要>
 平成19年度電力供給計画によれば、2007年度の販売電力量(需要電力量)は、個人消費や設備投資が引き続き増加し、穏やかな景気の回復が継続することが見込まれること等から、9,030億kWh、対前年度伸び率は1.1%増(気温・うるう補正後1.4%増)となる見込みである。2016年度までの年平均伸び率は0.8%(気温補正後0.9%)と予測されている(2016年度:9,634億kWh)。2016年度までの電源開発計画では、基幹電源としての原子力開発を推進するとともに、電源の多様化の観点から、石炭火力、LNG火力、水力(一般および揚水)等についてバランスのとれた開発を計画している。特に、地球環境問題への対応と省エネルギーの推進を図るとしている。2016年度末までの電源開発量は、合計2,858万kW(水力210万kW、火力1,413万kW、原子力1,226万kW、新エネルギー(風力)9万kWが見込まれている。ここでは、主要電力9社の電力供給計画をまとめた。
<更新年月>
2007年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 電力供給計画は、電気事業法第29条第1項に基づき、毎年3月末までに一般事業者10社および卸電気事業者2社から、経済産業大臣に届出が行われる。平成19年度供給計画は、電力各社が至近の需要動向、電力自由化の動向、省エネルギーの進展、電源立地の状況等を考慮して策定されたものである。主要電力9社の2007年度供給計画と電源構成計画の概要にについて以下に述べる。
(1)北海道電力
 2007年度の販売電力量は、民生用では2006年度における自家発電から電力購入への切り替えによる需要増に加え、オール電化住宅の普及拡大により、1.9%の伸びを見込んでいる。産業用では自家発電からの切替え、食料品製造業や鉄鋼業での需要増などにより、3.0%の伸びが見込まれる。全体での耐前年伸び率は2.2%(気候・うるう補正後2.3%)の324億kWhの電力量を見込んでいる。また、中長期的には、2008年度から2016年度までの年平均伸び率は1.0%になると想定している。2005年度から2016年度では1.2%となる見込みである。
 電源計画は、燃料供給の安定性、長期的な価格安定性、環境適合性などに配慮したバランスの取れた電源構成を目指し、効率的な流通設備を形成し、低廉かつ安定的に電気を供給するとしている。泊3号機の導入により、2011年時点での発電電力比は原子力、約37%、石炭火力、約36%、その他として石油火力、水力などとなり電源の多様化が図られる。図1に他社受電分を含む電源構成比(年度末電源設備と発電電力量)を示す。
(2)東北電力
 2007年度の供給計画の主要点は、安全確保を最優先に安定供給、高効率コンバインドサイクル発電設備の導入推進、経年火力の休廃止計画の見直しである。販売電力量については、人口減少や省エネルギーの進展による影響はあるものの、オール電化住宅の普及拡大、高齢化社会の進展に伴う医療・福祉施設の増加等から堅調な伸びを示すものと見込んでいる。産業用需要は経済成長の持続により安定した伸びとなるとしている。販売電力量は825億kWhを見込んでいる。中長期的には、2005年度から2016年度で年平均増加率0.8%(気温補正後0.9%)を見込んでおり、2016年度には873億kWhの電力量となる予定である。
 電源計画では、効率的な設備形成を目指しながら安定供給の確保や地球環境保全への対応を図り、事業環境変化に柔軟に対応できる計画としている。火力設備では仙台4号(44.6万kW、着工2007年12月、運転開始2010年7月)、水力では森吉(1.1万kW、着工2007年8月、運転開始2011年5月)を計画している。原子力では2007年度着工の予定はなく、浪江・小高(82.5万kW、2013年度着工、2018年度運転開始)、東通2号(138.5万kW、着工2013年度以降、運転開始2018年度以降)が計画されている。図2に他社受電分を含む電源構成比(発電電力量)を示す。
(3)東京電力
 発電設備に関するデータ改ざんや法令手続きの不備などが明らかになったことに対する強い反省にたち、立地地域をはじめ広く社会からの信頼回復を最重要課題と位置付けている。再発防止策の拡充として、意識面(しない風土)の対策、仕組み面(させない仕組み)の対策、仕組み面(言い出す仕組み)の対策、各々について課題を提示している。
 販売電力量では、2005年から2016年度の年平均増加率を1.1%(気温うるう補正後)を見込み、2007年度は前年度比1.4%(気温うるう補正後)として、発電電力量は3,262億kWhになる予定である。電源計画では、安定供給、エネルギーセキュリティの確保を基本に経済性、運用性および環境への適合などを総合的に勘案し、原子力を中心とした電源のベストミックスを推進する。2007年度は、LNG火力の川崎1号系列(150万kW)が運転開始される。原子力では2007年度に運転開始予定はないが、2013年度以降、次の4基の運転開始を予定している:福島第一7号機(138万kW、2013年10月)、同8号機(138万kW、2014年10月)、東通1号機(138.5万kW、2014年12月)、同2号機(138.5万kW、2017年度以降)。図3に他社受電分を含む電源構成比(年度末電源設備量、発電電力量)を示す。
(4)中部電力
 販売電力量は、今回計画の最終年度である2016年度において、1,442億kWhと見込み、2005年度から2016年度までの年平均伸び率は1.0%(気温補正後)と見込んでいる。販売電力量を2006度計画での最終年度である2015年度の時点で比較すると43億kWhの上方修正したことになる。
 電源開発については、効率性とともに、エネルギーセキュリティや地球環境保全などを考慮し、各種電源をバランス良く組み合わせていくとしている。そのため、LNGを燃料とした高効率コンバインドサイクル発電所である新名古屋火力8号系列(145.8万kW、運転開始2008年度)および上越火力1号系列(119万kW、運転開始2012年度)の開発を進めている。上越火力2号系列では、需要増加への対応と二酸化炭素削減対策を目的として、全体の半分の量である59.5万kWを前倒して運転開始を2013年度とする。原子力については、自社開発の計画はないが、2011年度以降、大間原子力発電所(電源開発)や敦賀原子力発電所(日本原子力発電)からの受電を実施する予定である。さらに、地球環境保全や新エネルギーの推進に向けた取り組みのひとつとして、風力発電所5地点(2008年度2地点、2009年度3地点)、水力発電3地点(2008年度、2011年度、2012年度)を自社開発する計画である。図4にの電源構成比(電源設備、発電電力量)を示す。
(5)北陸電力
 北陸電力は、1999年6月の志賀原子力発電所1号機の定期検査中に、原子炉において臨界事故を起こすとともに、国および自治体に報告していなかった。この臨界事故をはじめ、一連の発電設備に関する不祥事により、北陸電力グループは未曾有の困難に直面している。このような事態を踏まえ、2006年12月に策定した「平成19年度(2007年度)経営の重点方針」を見直し、「安全最優先を基本に信頼の回復に取り組む」ため、重点方針として五項目を挙げて、事業運営を進めるとしている。なお、2005年11月に策定した中期経営方針「北陸電力グループの羅針盤(クオ バディス)2010」については、2007年10月末を目途に見直しを図るとしている。
 販売電力量は2007年度、285億kWhを見込み、以後2011年度293億kWh、2016年度299億kWhとしている。2006年度の推定実績は282億kWhである。電源計画では、2016年度まで自社開発の電源計画はない。供給電力は、2006年度推定実績、589万kW、2007年度582万kWを計画している。以降、2010年度、625万kW、2015年度、633万kWとなっている。図5に他社受電分を含む電源構成比(発電電力量)を示す。
(6)関西電力
 2007年度は、中長期計画の初年度として、取組方針に沿った事業活動を展開するが、美浜発電所3号機事故の教訓と反省を忘れることなく、事業活動の根幹である安全確保を徹底していくとしている。具体的には三つのアクションプランを推進する:安全最優先の組織風土の醸成、グループの総合力による顧客価値の創造、一人ひとりの成長を支える仕組み整備。
 販売電力量については、2007年度、1,478億kWh(気温うる補正後)を想定し、2016年度には1,555億kWhを見込んでいる。2005年度から2016年度までの年平均伸び率を0.7%(気温うるう補正後)と想定している。
 電源計画では、新規電源の開発について、燃料の多様化を図る観点から、舞鶴2号(石炭、90万kW、2010年8月運転開始予定)等の開発を進める。また、堺港1〜5号(LNG、200万kW、運転開始2009年4月〜2010年10月)が工事中である。和歌山発電所(LNG、370万kW、運転開始2017年度以降)が着工準備中、2007年度中に長期計画停止中の赤穂発電所1号機を再稼働する。また、日本原子力発電の敦賀3号機(運転開始予定、2016年3月)、4号機(同、2017年3月)から受電する。図6に他社受電分を含む電源構成比(年度末電源設備、発電電力量)を示す。
(7)中国電力
 中国地方の電力需要は、中長期的には、省エネルギーの進展や人口の減少などの要因はあるものの、経済の持続的な成長が見込まれる中、情報化・高齢化の進展、快適性指向の高まりや電化住宅の普及拡大などに伴うエネルギーの電力シフトにより、緩やかながら着実に増加するものと予想される。一方、アジアを中心としたエネルギー需要の増加に伴うエネルギー資源獲得の活発化などエネルギーセキュリティの確保や地球温暖化対策をはじめとする環境問題への対応も強く求められている。このような状況を踏まえ、特に、長期的なエネルギーの安定供給確保や地球環境問題などへの対応に優れた原子力発電の開発に全力で取り組み、バランスのとれた電源構成の実現を図るとしている。
 2007年度の販売電力量は612億kWh(気温等補正後)と見込みんでいる(2006年度推定実績606億kWh)。2016年度の販売電力量は635億kWh、2005年度から2016年度までの年平均伸び率は0.7%(気温等補正後)と想定している。電源計画では、電力需要動向に対応した安定供給の確保および効率的な設備形成を基本に、電源多様化の推進、地球環境問題への対応などを総合的に勘案している。2007年度に運転開始される発電設備計画はないが、水島1号(石炭、15.2万kW)のLNG転換(28.5万kW)を実施(運転開始予定2009年4月)、原子力発電では、島根3号(137.5万kW、運転開始予定2011年12月)および上関1号(137.3万kW、運転開始予定2014年度)を見込んでいる。他社受電では、電源開発大間原子力発電所からの受電を2011年度末に計画している。図7に他社受電分を含む電源構成比(年度末電源設備、発電電力量)を示す。
(8)四国電力
 日本経済の設備投資や輸出が堅調に推移するなど、景気が穏やかに回復を続けているとし、四国地方の電力需要は、経済状況を反映して大口電力を中心に堅調に推移、中長期的にも穏やかに増加すると見込んでいる。2007年度の販売電力量は285億kWhを見込み、2016年度は301億kWhと想定している。2005年度からの年平均伸び率は0.8%(気温補正後)を想定している。電源計画では、二酸化炭素排出量の低減や経年化した既設火力発電所の更新などの観点から、LNG導入に向けた準備を進めている。坂出1号のLNGコンバインドサイクルへのリプレース(29.6万kW、運転開始予定2010年8月)、坂出4号のLNGへの燃料転換(35万kW、運転開始予定2010年3月)、加枝水力発電所の出力増(運転開始2007年4月)などを見込んでいる。図8に他社受電分を含む電源構成比(年度末電源設備、発電電力量)を示す。
(9)九州電力
 2007年度については、民生用、産業用ともに引き続き堅調に推移することが予想されるものの、自家発電から買電への切替えによる影響の一巡などにより、販売電力量は855億kWh、対前年伸び率1.9%(気温うるう補正後)を見込んでいる。長期的には、人口の減少や省エネルギーの進展などはあるものの、安定的な経済成長や快適性指向の高まり、オール電化住宅の普及拡大などにより、民生用を中心に緩やかながらも着実な増加が予想されることから、2005年度から2016年度までの年平均伸び率は0.9%(気温補正後)を見込んでいる。
 電源計画では、エネルギーセキュリティの確保、経済性および環境への適合を総合勘案して、原子力を中核としてバランスのとれた電源開発を推進する。原子力ではベース電源の中核として、川内原子力発電所地点において2010年代後半の開発を目指して環境調査を実施している。水力発電では、小丸川発電所4基=運転開始予定、2007年7月、2008年7月、2010年7月、2011年7月)、建設中の尾鈴発電所と着工準備中の嘉瀬川発電所(運転開始予定、各々2008年年7月、2011年度)等が計画されている。玄海原子力発電所3号機では2010年度までを目途にプルサーマルを実施する計画である。図9に他社受電分を含む電源構成比(電源設備、発電電力量)を示す。
<図/表>
図1 北海道電力の電源計画(年度末電源設備と発電電力量)
図1  北海道電力の電源計画(年度末電源設備と発電電力量)
図2 東北電力の電源構成(発電電力量)
図2  東北電力の電源構成(発電電力量)
図3 東京電力の電源計画(年度末電源設備と発電電力量)
図3  東京電力の電源計画(年度末電源設備と発電電力量)
図4 中部電力の電源計画(電源設備構成と発電電力量構成)
図4  中部電力の電源計画(電源設備構成と発電電力量構成)
図5 北陸電力の発電電力量構成比
図5  北陸電力の発電電力量構成比
図6 関西電力の電源計画(年度末設備構成比と発電電力量)
図6  関西電力の電源計画(年度末設備構成比と発電電力量)
図7 中国電力の電源計画(年度末設備構成比と発電電力量構成比)
図7  中国電力の電源計画(年度末設備構成比と発電電力量構成比)
図8 四国電力の電源計画(年度末設備構成比率と発受電電力量構成比率)
図8  四国電力の電源計画(年度末設備構成比率と発受電電力量構成比率)
図9 九州電力の電源計画(電源設備量と発電電力量)
図9  九州電力の電源計画(電源設備量と発電電力量)

<関連タイトル>
電力各社の電源別構成比(平成17年度計画) (01-03-04-09)
電力各社の電源別構成比(平成18年度計画) (01-03-04-10)
平成18年度電力供給計画 (01-09-05-23)
平成19年度電力供給計画 (01-09-05-24)

<参考文献>
(1)北海道電力株式会社:2007年度経営計画について(2007年3月28日)
(2)東北電力株式会社:平成19年度 経営計画の概要(平成19年3月)
(3)東京電力株式会社:「平成19年度経営計画」について(平成19年3月28日)、http://www.tepco.co.jp/cc/press/07032801-j.html
(4)中部電力株式会社:3月度 定例記者会見(平成19年3月27日)、http://www.chuden.co.jp/corpo/publicity/interview2007/0327_1.html
(5)北陸電力株式会社:平成19年度 経営計画の概要(平成19年6月)、http://www.rikuden.co.jp/press/attach/07060101.pdf、データで見る北陸電力・FACT BOOK 2007、http://www.rikuden.co.jp/fact/attach/kyoukyuu.pdf
(6)関西電力株式会社:平成19年度 関西電力グループ経営計画(平成19年3月)
(7)中国電力株式会社:平成19年度電力供給計画の概要(平成19年3月)
(8)四国電力株式会社:平成19年度 経営計画の概要(平成19年3月)
(9)九州電力株式会社:平成19年度 経営計画の概要(平成19年3月)、http://www1.kyuden.co.jp/library/pdf/press/2007/h070329-2.pdf
(10)経済産業省資源エネルギー庁:平成19年度 電力供給計画の概要について(平成19年3月30日)
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