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<概要>
 平成18年度電力供給計画によれば、2006年度の販売電力量(需要電力量)は、個人消費や設備投資の増加によって緩やかな経済の回復が見込まれるものの、前年度の低温の影響により対前年度比0.1%減(気温補正後0.8%増)の8,697億kWhとなる見通しである。2015年度まで年平均伸び率は0.9%(気温補正後)と予測されている。2015年度までの電源開発計画では、合計2,829億kWh(水力212億kWh、火力1,391億kWh、原子力1,226億kWh)が見込まれている。ここでは、主要電力9社の電力供給の概要と電源構成計画をまとめた。
<更新年月>
2006年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 電力供給計画は、電気事業法第29条に基づき、毎年3月末までに一般事業者10社および卸電気事業者2社から、経済産業大臣に届出が行われる。主要電力9社の2006年度供給計画と電源構成計画について以下に述べる。
(1)北海道電力
 2006年度(平成18年度)の販売電力量は、民生用では商業施設での需要増などにより堅調な伸びが見込まれている。産業用では2005年度同様、鉄工業での生産増が見込まれるものの、化学工業の一部における生産減などにより前年度実績を下回ると見込まれ、全体では対前年度伸び率0.3%(気温補正後0.6%)の307億kWhと想定されている。中長期的にも同様の傾向が見られると想定し、2004年度から2015年度までの年平均伸び率は、1.1%とされている。
 電源計画は、燃料供給の安定性、長期的な価格安定性、環境適合性などに配慮したバランスの取れた電源構成を目指し、効率的な流通設備を形成し、低廉かつ安定的に電気を供給するとしている。揚水発電の京極発電所は2015年10月、一般水力の新忠別発電所は2006年10月、泊原子力発電所3号機は2009年12月に各々、運転開始を目指している。電源計画を図1に示す。
(2)東北電力
 販売電力量では、至近の経済動向や政府の経済見通し、省エネルギーの中長期的進展などを勘案して、2004年度から2015年度までの年平均伸び率を0.8%(気温補正後0.8%)としている。電灯や業務用電力については、家電機器の普及拡大、医療・福祉施設の増加などにより堅調な伸びが、産業用需要については今後の経済見通しや省エネルギーの進展により低位な伸びが想定されている。
 電源計画では、安定供給を確保しながら競争の進展、環境規制の強化、事業環境変化への柔軟性を確保し、効率的な設備構成を目指している。水力発電では、摺上川発電所、森吉発電所が運転開始を各々、2007年3月と2011年5月としている。火力発電では、2015年度までに4基が運転開始される計画である(東新潟4号系列(半量分は運転開始済、2006年12月)仙台4号機(2010年7月)新仙台3号系列(2013年7月および2015年7月))。原子力発電では浪江・小高発電所が2012年度着工、2017年度運転開始を計画している。図2に東北電力の電源構成(発電電力量)を示す。
(3)東京電力
 2006年度の販売電力量は、景気の緩やかな回復傾向を背景に民生用・産業用ともに安定した伸びが見込まれるため、気象補正後の値で1.4%増の2871億kWhとなる見通しである。中長期的には1%台半ばの経済成長が見込まれるが、他エネルギー産業との競合激化や省エネルギーの進展などを加味して、2004年度から2015年度までの年平均伸び率を1.0%(気温補正後)と見込んでいる。
 電源計画では、安定供給、エネルギーセキュリティの確保を基本に経済性、運用性および環境への適合などを総合的に勘案し、原子力を中心とした電源のベストミックスを推進する。2015年度までに運転開始予定の主要な発電所は、原子力3基(福島第一7号機(2012年10月)、同8号機(2013年10月)、東通1号機(2014年度)、石炭火力1基(広野6号機(2010年度))、LNG火力6基(富津4号系列(2008年7月、2009年7月、2010年7月)、川崎1号系列(2007年7月、2008年7月、2009年7月))、揚水式水力1基(神通川(2010年7月)である。図3に東京電力の電源計画を示す。
(4)中部電力
 販売電力量は、今回計画の最終年度である2015年度において、1,388億kWhと見込み、2004年度から2015年度までの年平均伸び率は0.9%(気温補正後)と見込んでいる。販売電力量を、2005度計画での最終年度である2014年度の時点で比較すると、4億kWh下方修正したことになる。
 電源開発については、効率性とともに、エネルギーセキュリティや地球環境保全などを考慮し、各種電源をバランス良く組み合わせていくとしている。そのため、LNGを燃料とした高効率コンバインドサイクル発電所である新名古屋火力8号系列(運転開始2008年度)および上越火力発電所(運転開始2012年度)の開発を進めている。また、2011年度以降、大間原子力発電所(電源開発)や敦賀原子力発電所(日本原子力発電)からの受電を実施する予定である。さらに、地球環境保全や新エネルギーの推進に向けた取り組みのひとつとして、2008年度に風力発電所3地点を自社開発する計画である。なお、川浦水力発電所および武豊火力発電所5号機の計画は中止された。図4に中部電力の電源計画を示す。
(5)北陸電力
 販売電力量は2006年度、272億kWhを見込み、以後2015年度までの年平均伸び率を0.7%(気温補正後)とし、2015年度、288億kWhとしている。2005年度の推定実績は274億kWhであるので、2006年度の販売電力量は前年度より0.7%の減少を見込んでいる。
 電源計画では、エネルギーセキュリティ、経済性、環境特性等を勘案し、電源多様化を推進するとともに、基幹系統を強化するなど、需給の安定と効率的な設備運用に努めるとしている。また、安定供給の確保と地球温暖化防止の観点から、志賀原子力発電所の安全・安定運転の徹底を図っていく。志賀原子力発電所2号機の営業運転開始以降、原子力を中心とした発電電力量構成となる一方、風力や木質バイオマスなど新エネルギーの導入を促進する。図5に北陸電力の発電電力量構成比を示す。
(6)関西電力
 供給計画では、エネルギーセキュリティの確保と地球環境保全の確立に努め、電力の安全・安定供給の確保を大前提とした設備形成や設備運用の最適化により競争力強化を図る。今後の電力需要は、人口の減少、省エネルギーのさらなる進展、電力多消費型から寡消費型への産業構造の転換に加えてエネルギー・電力市場における競争の激化等が予測されるが、アメニティ志向の高まりや情報化の進展、さらには販売活動の強化等プラス要因も多く、電力需要は民生分野を中心に緩やかに増加していくものと見込まれる。販売電力量については、2004年度から2015年度までの年平均伸び率を0.7%(気温補正後)と想定している。2006年度の販売電力量は1,439億kWhを見込み、2010年度に1,479億kWh、2015年度に1,531億kWhと予測している。
 電源計画では、エネルギーセキュリティ、環境負荷特性、経済性を総合勘案し、引き続き原子力を基軸として各電源をバランスよく組み合わせ、効率的な設備形成を図る。新規電源の開発については、燃料の多様化を図る観点から、舞鶴発電所(石炭、2010年8月、運転開始予定)等の開発を進める。また、堺港発電所については、さらなる環境負荷の低減ならびにより低廉な電力供給を目的として、コンバインドサイクル発電方式への設備更新を進める。また、日本原子力発電の敦賀3号機(運転開始予定、2014年3月)、4号機(同、2015年3月)から受電する。図6に関西電力の電源計画を示す。
(7)中国電力
  中国地方の電力需要は、中長期的には、省エネルギーの進展や人口の減少などの要因はあるものの、経済の持続的な成長が見込まれる中、情報化・高齢化の進展、快適性志向の高まりや電化住宅の普及拡大などに伴うエネルギーの電力シフトにより、緩やかながら着実に増加するものと予想される。一方、産業用需要は素材型の生産の伸び悩みなどから、ほぼ横ばいで推移すると考えられる。この結果、2006年度の電力販売量は585億kWhでほぼ前年度並み、以後592億kWh(気温補正後、2007年度)、603億kWh(2010年度)、621億kWh(2015年度)と見込まれ、2004年度から2015年度までの年平均伸び率は0.7%(気温補正後)と予測される。
 電源計画では、アジアを中心としたエネルギー需要の増大などによる石油・ガス等燃料の需給逼迫や地球温暖化など環境問題への対応も強く求められ、電力の安定的かつ効率的な供給を果たすため、合理的な設備形成を進める。特に、長期的なエネルギーの安定供給確保や地球環境問題などへの対応に優れた原子力発電の開発に取り組み、多様な電源構成の実現を目指す。水力発電では、新帝釈川発電所(運転開始、2006年6月)、川平第2(同、2006年9月)、火力発電では、水島3号(石油)と水島1号(石炭)をLNG転換(各々、2006年4月、2009年4月)、原子力発電では、島根3号と上関1号の営業運転(各々、2011年12月、2014年度)を見込んでいる。他社受電では、電源開発大間原子力発電所からの受電を開始する。図7に中国電力の電源計画を示す。
(8)四国電力
 四国地方の電力需要は、経済状況を反映して大口電力を中心に堅調に推移しているが、中長期的には、人口の減少や省エネルギーの進展により、低い伸びに止まると想定されている。また、地球温暖化問題、新たな競争環境の整備などを受けて、経営全般の効率化を進める。このような状況に対応して、販売電力量は2006年度、278億kWh、以後、285億kWh(2010年度)、296億kWh(2015年度)と見込まれ、2004年度から2015年度までの年平均伸び率は0.9%(気温補正後)と予測されている。
 電源計画では、坂出1号のLNGコンバインドサイクルへのリプレース(2010年11月)、坂出4号のLNGへの燃料転換(2010年3月)、加枝水力発電所の出力増(2007年4月)などを見込んでいる。図8に四国電力の電源計画を示す。
(9)九州電力
 販売電力量については、長期的には人口減少や省エネルギーの進展があるものの、安定的な経済成長やアメニティ志向、オール電化住宅の普及拡大などにより、民生用を中心に穏やかながら着実な増加が見込まれる。2004年度から2015年度までの年平均伸び率は0.8%(気温補正後)と予測されている。2006年度については、民生用、産業用ともに堅調に推移することが予想されるものの、前年夏季の気温が高めに推移した影響により、対前年度比マイナス0.5%となると見込んでいる。
 電源計画では、エネルギーセキュリティの確保、経済性および環境への適合を総合勘案して、原子力を中核としてバランスのとれた電源開発を推進する。原子力ではベース電源の中核として、川内原子力発電所地点において2010年代後半の開発を目指して環境調査を行う。水力発電では、小丸川発電所4基(運転開始、2007年7月、2008年7月、2010年7月、2011年7月)、着工準備中の尾鈴発電所と嘉瀬川発電所(運転開始、各々2008年7月、2011年度)、内燃力発電では竜郷6号(運転開始、2006年6月)等が計画されている。なお、石油発電所である大分1、2号、唐津2、3号、苅田新2号は計画停止された。なお、玄海原子力発電所3号機では2010年度までを目途にプルサーマルを実施する計画である。図9に九州電力の電源計画を示す。
<図/表>
図1 北海道電力の電源計画
図1  北海道電力の電源計画
図2 東北電力の電源構成(発電電力量)
図2  東北電力の電源構成(発電電力量)
図3 東京電力の電源計画
図3  東京電力の電源計画
図4 中部電力の電源計画
図4  中部電力の電源計画
図5 北陸電力の発電電力量構成比
図5  北陸電力の発電電力量構成比
図6 関西電力の電源計画
図6  関西電力の電源計画
図7 中国電力の電源計画(他社受電分を含む)
図7  中国電力の電源計画(他社受電分を含む)
図8 四国電力の電源計画
図8  四国電力の電源計画
図9 九州電力の電源計画(他社受電分を含む)
図9  九州電力の電源計画(他社受電分を含む)

<関連タイトル>
電力各社の電源別構成比(平成17年度計画) (01-03-04-09)
平成18年度電力供給計画 (01-09-05-23)

<参考文献>
(1)北海道電力株式会社:2006年度経営計画について(要約版)(2006年3月29日)
(2)東北電力株式会社:平成18年度経営計画(2006年3月)
(3)東京電力株式会社:平成18年度経営計画の概要(2006年3月)
(4)中部電力株式会社:平成18年度「電力供給計画」概要(2006年3月28日)、http://www.chuden.co.jp/corpo/publicity/interview2006/0328_1_2.html
(5)北陸電力株式会社:平成18年度経営計画の概要−北陸電力グループの羅針盤(クオ バディス)2010−(2006年3月)
(6)関西電力株式会社:平成18年度関西電力グループ経営計画(2006年3月)
(7)中国電力株式会社:平成18年度電力供給計画の概要(2006年3月)
(8)四国電力株式会社:平成18年度供給計画の概要(2006年3月)
(9)九州電力株式会社:平成18年度経営計画の概要(2006年3月)、http://www1.kyuden.co.jp/library/pdf/press/2006/h060330-2.pdf
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