<大項目> 原子力基礎データ(略語、元素周期表、諸単位など)
<中項目> 諸単位
<小項目> 放射能、放射線
<タイトル>
線量に関する単位 (18-04-02-02)

<概要>
 放射線の強さ(量)には、(1)放射線自体の強さを表すもの、及び(2)放射線を照射された物体が受ける作用の大きさを表すものがある。(1)の放射線自体の強さや量よりも(2)の放射線を浴びた物体等(人の場合は被ばくと云う)が受ける作用の大きさが問題とされる場合が多い。確率的影響が問題となる低レベル被ばくにおいては、ガン(白血病を含む)および遺伝的影響に着目した(3)障害の大きさを表す線量が用いられる。従来なじみのあったレントゲン、ラドレムなどの単位は、SI単位系導入後のしばらくの間は暫定的に併用が許されていたが、ICRP1990年勧告の法令への取り入れ、度量衡法の改正により、2001年3月31日をもって廃止され、それぞれクーロン/kg、グレイ(Gy)、シーベルト(Sv)に変更された。また線量当量が線量と変更されるなど、多くの用語の名称も変更された。
<更新年月>
2006年01月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
(1)放射線自体の強さを表す線量
  放射線自体の強さは、エネルギー フルエンスとして表すことができる。粒子放射線については粒子フルエンスとして個数でも表すこともできる。しかし、これらが用いられるのは多くの場合、専門分野においてであって、放射線を浴びた物質への作用量には直接に結びつかないので、放射線自体の強さ(量)はほとんど用いられない。
(2)放射線の作用の強さを表す線量
  通常、放射線の強さとして用いられるのは、放射線の作用量である。照射された物体への作用量としては、物体の質量当たりの吸収エネルギーが取られ、吸収線量: absorbed dose,記号:D,単位:(J/kg)が基本的な表し方で、グレイ(Gy)という名称が与えられている。旧単位のラドとは1Gy=100ラドの関係にある。電離放射線についての表し方の一つとして1928年以降用いられてきた、空気の電離量から定義された照射線量:exposureの単位、レントゲン:RはSI単位系への移行により、次元がC/kg(C:クーロン)に変更された。特別な名称はまだ与えられていない。1C/kg=3876Rである。放射線関係のSI単位系の諸量を表1に示す。
(3)障害の大きさを表す線量
 放射線防護の分野では、人体に生じる障害の大きさを考慮して、被ばく限度、作業基準等を決めることが便利である。放射線を被ばくした場合に発生する障害の種類は多い。これらの障害の大きさは被ばく線量に依存するが、放射線の種類・エネルギー、線量率などにより異なる。また、被ばく部位の放射線感受性等によっても異なる。
 高レベル被ばくにおいては、細胞の壊死、器官の機能損傷等による諸障害が問題になる。障害の程度には被ばく線量以外にもいろいろな事項が関与している。しかし、線量―障害関係に関与する諸要因についての定量的評価はまだできていない。このため、急性障害が問題となるような高レベル被ばくにおいては、障害の大きさを表す線量はまだ設定されてなく、現在は原則として吸収線量:Gyで表している。
 急性障害が発生しないような低レベル被ばくでは、確率的影響:stochastic effectsと云われるガン(白血病を含む)および子孫への遺伝的影響の二つが問題となる。原爆被爆者等の調査では、ガンについては95%信頼度でおよそ200mSv以上の被ばくで有意な増加が見られる。しかし、より低い被ばく線量では発生しないとの確証もないために従来から用いられている「どのような低レベルの被ばくであっても線量に比例してガン、遺伝的影響は発生する」との考え(仮定)を引き続き用いて障害を評価している。出現する(かも知れない)これらの障害の発生率は、上述のように「線量に比例する」と考えるが、吸収エネルギーの数値が同じであっても、放射線の種類・エネルギー(線エネルギー付与:LET:の差異)、線量率、被ばく部位などによって大きく異なる。放射線防護という実用的な分野では、その実用性から障害を過小評価にならないように事柄をある程度簡略化して評価される。吸収線量に放射線の種類・エネルギーについての障害の起こし易さの係数、放射線荷重係数:WR(radiation weighting factor)を乗じた値が被ばくした器官・組織の障害の大きさを表す線量であり、これを等価線量:HT(equivalent dose)(旧称:線量当量:dose equivalent)と称する。すなわち、HT=D・WRである。同じ器官が複数の種類の放射線を被ばくする場合には、それぞれの放射線の吸収線量にそれぞれの放射線荷重係数を乗じ、全体を合計してその器官の等価線量とする。
 身体の一部の器官・組織のみが被ばくする場合、より一般的に身体が不均等に被ばくする場合には、被ばくした個々の器官・組織の等価線量を論ずるよりも全身が均等に被ばくした場合の障害の大きさに換算して論ずる方が実用的である。このため、被ばくした器官・組織の等価線量にその器官・組織の放射線感受性の係数、組織荷重係数:WT(tissue weighting factor)を乗じて全身が均等に被ばくした場合の障害の大きさを表す線量に換算する。この換算された線量を実効線量:E(effective dose)と云う(旧称:実効線量当量)。実効線量は、身体のすべての器官・組織の荷重された等価線量の和であり、E=WT・HTで表される。等価線量、実効線量とも、シーベルト:Svで表される。「器官○○の被ばくは△△Sv」と器官名が出てくる場合は等価線量、単に「被ばくは××Sv」と器官名が出てこない場合は実効線量と考えて良い。被ばくは通常は低レベルであり、単位はシーベルトの1/1000のミリシーベルト:mSvで表されることが多い。
 上記のほかに、環境放射線モニタリングでは周辺等価線量:H(d)、個人線量モニタリングでは透過性個人線量: Hp(d)、表層部個人線量:Hs(d)、集団の線量では集団等価線量:ST、集団実効線量:Sなどがある。放射線防護で用いられる放射線に関する諸量を表2に、SI単位系の概略を表3−1表3−2に示す。
 吸入・飲食により、体内に放射性物質を取り込むことによる内部被ばくに関しては線量預託:dose commitmentの考えが採用されており、関連して預託等価線量:HT(τ)、預託実効線量:E(τ)などが定義される。
 わが国では、諸法令のSI単位系への移行に伴ってCGS 系の単位は2001年3月31日を持って廃止された。放射線・放射能関係では、従来用いられた単位で現在使用が認められている単位は放射能のキュリー:Ciだけであって、3.700×1010Bq=1Ciとして、必要な場合Bq 単位に併記することが許されている。ただし、Ci単位単独の使用は認められない。
<図/表>
表1 一般に使用される放射線関係の量と単位
表2 放射線防護で用いられる量と単位
表3−1 SI単位の仕組みの概略(放射線関係に重点をおいたもの)
表3−2 SI単位の仕組みの概略(放射線関係に重点をおいたもの)

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<関連タイトル>
国際放射線単位測定委員会(ICRU) (13-01-03-11)
放射能と放射線の単位 (18-04-02-01)
照射線量に関する単位 (18-04-02-03)
吸収線量に関する単位 (18-04-02-04)
カーマ(Kerma) (18-04-02-05)

<参考文献>
(1)新ラジオアイソトープ 講義と実習(日本アイソトープ協会編)
(2)放射線のやさしい知識(飯田ほかオーム社)
(3)ICRU Report 33(1980),39(1985),43(1988)
(4)日本アイソトープ協会:ICRP Publication 60 国際放射線防護委員会の1990年勧告、丸善(1991)
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