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<概要>
 石油に代わる最も有力なエネルギー供給手段としての原子力への期待とは裏腹に、相次いで事件が発生した。1月の衆院予算委員会で、米原潜寄港時の環境放射能の分析を担当していた日本分析研究所が、データを捏造していた事実が発覚し、原子力発電の環境放射能調査にも疑いが持たれた。さらに、9月出力上昇航海へ出た原子力船「むつ」の放射線漏れ事件が起った。中性子線ストリーミングが原因であり、原子力の安全性への不信感が募った。これらの事件を背景に、政府は開発・行政体制の改革を模索し始める。6月に原子力施設整備のための電源開発3法が成立した。海外では、インドは5月、平和利用と称して実験を実施し、これが核拡散防止条約未批准国への原子力機器の輸出規制へと波及した。米国では10月、エネルギー機構を改革し、エネルギー研究開発局と原子力規制委員会が独立することになった。また国際エネルギー機関が発足した。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1974年
(昭和49年)
1/6 原産招請のソ連原子力視察団来日  
1/10 原研(高崎研)で食品照射施設の本格的運転開始  
1/11 電事連、社長会でフランスからの濃縮ウラン購入を決定(1980年から向こう10年間を対象に毎年1000トン)  
1/29 衆院予算委員会、米原潜寄港時の放射線放射能測定データの捏造を指摘  
1/31   米で高温ガス冷却炉型Fort St.Vrain炉臨界(熱出力84万1700kW、電気出力33万kW)
2/1 海外ウラン資源開発会社、ニジェールでのウラン資源開発探鉱で新会社設立が合意に達し基本契約が締結されたと発表  
2/8 政府、電源開発促進税法案など閣議決定。3/4国会提出  
2/12 科技庁(現文科省)、分析化研の処分などを行うための放射能監視対策推進本部を設置  
2/14   タンプリン(米)ら、Puの許容量低減を勧告(ホットパーティクル論争起る)
2/20   西独、核拡散防止条約を批准
2月   ユーロディフ(欧州気体拡散ウラン濃縮事業)、濃縮工場の仏トリカッサン建設を決定
2月   イスラエル原子力委、60万kW原発建設の意向を表明
3/2   英ドーンレイ高速炉原型炉PFR臨界
3/4 榛南5漁協組、中部電力との浜岡2号機増設にともなう漁業補償協定に調印  
3月   EDF、フラマトム社に100万kW級PWR12基を発注
3/14 関西電力高浜1号機臨界(PWR、82万6000kW)  
3/29 中国電力島根原発が営業運転開始  
4月   米ルイジアナ電力、GGA社にHTGR2基を発注
4/17 東京電力柏崎刈羽原発建設にともなう漁業補償交渉が総額40億5000万円で妥結し仮調印  
4/19 学術会議、環境放射能調査で見解発表  
4/22 科技庁、原電敦賀被曝問題で調査委を設置  
4/30 東京電力福島第二原発1号炉設置許可  
5/1 日本分析センター(宗像英二理事長)発足  
5/8 衆院科技特、山崎原研(現日本原子力研究開発機構)理事らを参考人に招き放射能調査問題を審議  
5/17   インド、ラジャスタン州で初の核実験(6番目の核保有国に)
5/18   インド政府、地下核実験が平和目的であることを強調。カナダ政府はインドヘの原子力援助停止を発表
5/20 科学技術庁(現文部科学省)、放射性アイソトープ使用事業所など総点検実施  
5月   AEC、濃縮ウラン供給逼迫は1986年との見通しを発表
5/31 温水養魚協、車エビを初出荷  
6/6 電源関発3法公布(発電用施設周辺地域整備法・電源開発促進税法・電源開発促進対策特別会計法)  
6/14   米AEC、放射性物質輸送規制を改訂
6/18 米AEC、放射性物質輸送規制を改訂辞任了承  
6/20 電事連の濃縮・再処理準備会が発足(会長一本松珠上@)  
6/20 中部電力浜岡1号臨界(BWR、54万kW)  
6/28 東京電力福島第二原発1号機の設置許可に対し、行政訴訟起こされる  
6/29 川内市議会、九州電力川内原発建設を可決  
7/4 電源開発調整審議会(現総合資源エネルギー調査会電源開発分科会)、東京電力、柏崎刈羽1号及び九州電力、玄海2号を認可(2年ぶり認可)  
7/10   英、次期原発炉型としてSGHWRを選定
7月   高速増殖炉建設のための仏、西独、伊3国共同のコンソーシアム「NERSA」発足
7/17 関西電力美浜1号の蒸気発生器で冷却水もれ発生。運転停止  
7/18 エネルギー調査会原子力部会が答申、昭和60年原子力6000万kW開発へ  
7/18 東京電力福島第一原発2号機が営業運転開始  
8/20 発電用施設周辺地域整備法施行 米AEC、ラスムッセン報告草案(WASH−1400)を公表
8/26 原子力船「むつ」、出力上昇試験のため出港。8/28ゼロ出力試験に成功  
8/28 九州電力、玄海2号増設許可申請  
9/1 原子力船「むつ」出力上昇試験中に放射線漏れ、むつ事件の発端となる  
9/6 東京電力福島第一原発3号臨界(BWR、78万4000kW)  
9/6 科技庁、関西電力に蒸気発生器伝熱管損傷で抜本策検討を指示  
9/20 科技庁、稼働中のBWR対象に再循環バイパス配管の総点検を指示  
9/21   米AEC、一次冷却水配管亀裂調査で電力各社に点検を命令
9月   会見で原発許認可の促進強調
 フォード米大統領
9月   米でタンプリン勧告の反論リポート(WASH−1320)発表
10/6   米議会、退役海軍少将ラロックの証言(9/10)を発表(米艦は日本などに寄港する際、核を外すことはない)
10/11 首相、東京電力福島第二原発1号機の異議申立てを棄却 米エネルギー機構改革法案成立。エネルギー研究開発局と原子力規制委員会が独立
10/12 政府、電源開発3法施行に伴なう地域整備指定地点を告示  
10/14 「むつ」問題の処理に関する自民党、県、市及び漁連4者間の協定締結  
10/14 阪大グループ、レーザーによる同位体分離に成功と発表(N−15とN−14)  
10/16 自民党、原子力行政の根本的見直し方針決定  
10/23 通産省と科技庁、福島と浜岡両BWRで再循環系バイパス配管に亀裂の疑いと発表  
11/5 日立、東芝、三菱重工が遠心分離機開発で共同開発会議を設置  
11/13   カレン・シルクウッド事件(米カーマギー社のプルトニウム管理を告発)
11/14 関西電力高浜1号、営業運転開始  
11/18   国際エネルギー機関(IEA)が正式発足。11/18日本参加
11/18   米AEC、BWR総点検で異常認めずと発表
11/29 政府、電源立地促進対策交付金交付規定を告示  
11/29 動燃事業団(現日本原子力研究開発機構)と茨城県漁連が再処理施設設置に伴う漁業補償協定に調印  
12/20 関西電力高浜2号臨界(PWR、82万6000kW)  
12/26 茨城県など7自治体が県下の各原子力事業所と安全協定書に調印  
12/28   米AEC、軽水炉の非常用炉心冷却装置(ECCS)で新基準を発表
12月   米環境保護団体、AECのラスムッセン報告に反論
12月   仏の高速原型炉フェニックスが送電を開始
12月   ユーラトム、英AEAカラム研に核融合研究のためのJET共同設計チームを結成


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1974年
(昭和49年)
1/5 日中貿易協定調印  
1/11 閣議、家庭用灯油・液化天然ガスを国民生活安定緊急措置法に基づく指定物資とし標準価格設定を決定(灯油は6/1指定解除)。1/25トイレットペーパー・ちり紙を指定(5/21解除)  
1/18   [イスラエル・エジプト停戦]
1/29 富士通、読取り時間60ナノ秒のMOS ICメモリーを関発  
2/11   石油消費国会議、日・米と西欧の13カ国参加。米佛対立
3/18   OAPEC石油担当相会議、対米石油禁輸解除。シリアとリビアは拒否
5/21 通産省、電力料金値上げ認可(産業用74%、家庭用29%)6/1実施。  
5/31 国際協力事業団(JAICA)設置、開発途上国に対する経済協力の窓口を一本化  
6/26 国土庁設置(長官西村英一)  
8/8   ニクソン米大統領辞任。8/9フォード副大統領、38代大統領に就任
8/31 政府、石油需給適正化法に基づく緊急事態宣言を解除  
10/3 通産省(経産省)、石油備蓄増強5か年計画大綱を発表(備蓄量90日分を目標)  
12/18 三菱石油水島製油所で重油流出事故  



<関連タイトル>
原子力船「むつ」開発の概要 (07-04-01-01)
原子力船「むつ」の概要 (07-04-01-02)
環境放射線モニタリング (09-04-08-02)


<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)

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