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<概要>
 わが国の原子力もかなり実力をつけ、国産技術の開発も成果を挙げ始めた。原電東海炉の設置については、1月末に耐震設計案が発表されたが、耐震性が問題視され、再々変更の末10月に蜂の巣型の剛構造に決定し、12月に設置許可が下りた。一方、1月に原研(現日本原子力研究開発機構)国産1号炉JRR-3が着工、3月には、米から導入予定の動力試験炉 JPDRがPWRかBWRか論議されたが、BWR型に決定した。原子燃料公社は、3月に金属ウランを試作し、9月までに国産1号炉用金属ウラン300kgを生産した。また、7月に国産ウラン鉱石からイエローケーキ(精鉱)の製造に成功した。神戸製鋼は、原子炉用ジルコニウム合金の国産化に、原研はプルトニウムの分離に成功する。原子力施設周辺地帯の整備にも目が向けられ始めた。海外では、米最初の実用規模のBWR型ドレスデン発電炉及び英ドーンレイ実験高速炉がそれぞれ臨界になった。米原子力商船及びソ連原子力砕氷船も進水する。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1959年
(昭和34年)
1/14 原子力委、小型教育用原子炉の試作に対し助成することを決定。7/23国産2基(東芝、日立)に補助金交付  
1/14 原研(現日本原子力研究開発機構)、国産1号炉(JRR−3)着工  
1/16 原研・日立・住友金属3者共同開発による原子炉用棒状ウラン燃料の試作に成功  
1/17   米原子力ロケット計画の高濃縮ウラン黒鉛減速水素ガス冷却型原子炉Kiwi−A臨界(出力7万kW)6/20地上噴射実験
1月   AEC、「原子炉政策とその計画」についてのタマロ−スマイス報告発表(米の指導的地位を確保すること及び原子力発電が友好国で7〜8年以内に、また米国内では10年以内に採算がとれるようにし、さらに20〜30年で大幅なコスト低下をもたらすことなど目標にするように指摘)
1月 原電、東海炉耐震設計案とし「鳥カゴ式」発表(黒鉛の熱膨張に耐える)。
5月 黒鉛の中性子照射による収縮を考慮し「たまねぎ型」に変更。
10月 「蜂の巣」型の剛構造に再々度変更
 
2/4   英・ユーラトム原子力協定調印
2/14 日本原子力学会設立(会長茅誠司)  
3/13 原研、動力試験炉としてBWR型(米GE社)を決定  
3/14 第1回原子炉主任技術者試験実施  
3/15   米BNLの医学研究用原子炉MRR臨界(1000kW)、脳腫瘍などの治療に使用
3/16 原電、東海発電所の原子炉設置申請及び電気事業許可申請  
3/18 原燃東海製錬所、最初の金属ウランを製造。9/10国産1号炉用金属ウラン300kg生産  
3/23   ヨーロッパ12か国、高温気体冷却型発電実験炉「ドラゴン」共同計画に調印(建設費3800万ドル中ユーラトムが1200万ドルを、イギリスが残りを負担)
3/31 原研、国産1号炉建設のため、日立(炉本体)・三菱原子力工業(水ガス系)・東芝(計測系)・石川島(計測系)と契約締結(9億8600万円)  
4/3 原研、東海研究所に原子炉研修所開設  
4/16 原電、コールダホール改良型発電炉の概要を公表(発電原価:4円98銭/kWh)  
4/22   仏マルクールG3発電炉送電開始(4万kW)
4月 理研、遠心法によるウラン濃縮の基礎研究を開始  
6/8 東海村議会、原電の原子炉設置延期を要望  
6/17 原研労組初めての24時間スト(給与改善、研究体制の確立等を要求)6/22第2波24時間スト  
6月 原燃、人形峠で含ウラン鉱を発見  
6月 神戸製鋼、原子炉用ジルコニウム合金の国産化に成功  
7/1 放射線医学総合研究所開所(千葉市黒砂町)  
7/2 日・加原子力協定調印  
7/3 日本、IAEA理事国に決定  
7/10 原子力委、原電東海炉の安全審査中間報告発表(緊急冷却装置の設置、中空燃料の使用前性能テスト、完工後の耐震試験などを条件として安全性を認める)  
7/16   ICRP 第8回総会、放射線許容量についての新勧告を採択(aslow as practicable を強調、最大許容線量限度の引き下げ、集団に対する許容被曝線量を規定)
7/20 昭和電工、原子炉級黒鉛540kgを佛原子力庁向け輸出  
7/21   米原子力貨客船サバンナ号進水
7/25 原燃、国産ウラン鉱石から最初のイエローケーキ1.5kgの製造  
7/29   米ナトリウム冷却黒鉛減速実験炉SRE、ナトリウム回路の故障で燃料体溶融事故発生
7/31 原子力委、コールダホール改良型炉の安全性で公聴会開催(原電側の事故解析及び平常運転時の放射能拡散対策に対して疑問出される)。8/22学術会議、コールダホール改良型炉の安全性に関する討論会開催  
8/3 原発、原子力災害補償体制の早期確立を要望  
8/8 原子力委原子力施設周辺地帯整備懇談会、初会合(座長:石川一郎原子力委員)  
8/11   米AEC、放射性廃棄物の海中投棄認める
8/12 原研、日本初のプルトニウムの分離に成功  
8/20 三菱原子力工業研究所開所  
8/21   ソ連、高速中性子炉(5000kW)建設中と伝えられる
9/15   ソ連原子力砕氷船レーニン号、試運転。12/19就役
9/22 駒形作次原研理事長辞任、後任に菊池正士原子力委員(東大核研究所長)決定  
9/23 原子力委、武蔵工大炉(トリガ型原子炉)の安全性を確認。設置許可を答申。12/14起工  
9月   米SNAP(宇宙用原子力補助電源)計画のSNAP−2原子炉完成(濃縮ウラン・ナトリウム冷却均質炉。熱出力50kW。電力出力3kW)
10/7 日本放射性同位元素協会、廃棄物処理事業開始と発表  
10/15   米ドレスデン発電炉臨界(最初の実用規模BWR型発電炉熱出力70万kW。電気出力20万kW)
10/16   米アイダホのアルコ燃料化学処理工場で高濃縮ウランが臨界超過事故
10/27 原電、東海炉の建設計画発表  
10/29 社会党、米軍射爆場の存在を理由に原電東海炉の設置に反対  
11/4 第一原子力グループ放射線研究所発足(横須賀市武山)  
11/6 通産省(現経済産業省、以下同じ)、「原電東海炉は十分採算がとれる」と発表  
11/9 原子力委原子炉安全審査専門部会、原電東海炉は安全と答申。12/14設置許可  
11/14   英AEAのドーンレイ実験高速炉DFR臨界(電気出力1万4000kW)
12/8   英運輸省、原子力タンカー用原子炉の入札募集を発表(炉型はBWRまたは有機物減速炉、タンカーの排水量は6万5000トン)
12/12 原子力委原子力災害補償専門部会が答申(設置者の責任賠償額は50億円まで、それを超えた分は国家負担)  
12/18 住友原子力工業(株)発足  
12/19 原産、茨城原子力開発協議会発足  
12/22 原電、GECと東海炉(コールダホール改良型発電炉)の購入契約に正式調印  


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1959年
(昭和34年)
1/1   ヨーロッパ共同市場EEC発足
1/2   ソ連ルーニク1号打上げ、人工惑星となる
1/8   ドゴール、仏大統領に就任
2/28   米、人工衛星ディスカバラー第1号打ち上げ。3/3 パイオニア4号打上げ
4月 東海道新幹線起工  
5/1 通産省1959年度電力需給計画は戦後初めて供給力に余力ありと発表  
5/15 茨城県那珂湊沖合で、漁船200隻米艦を包囲、爆撃訓練を阻止  
9/1 八幡製鉄戸畑工場1500トン高炉稼働(日本最大の高炉)  
9/12   ソ連月ロケット打ち上げ。9/14月への到着に成功
9/25   アイゼンハワー・フルシチョフ会談(キャンプ・デービッド会談)開く(平和的手段による国際問題の解決で合意)
9/30   フルシチョフソ連首相、中国訪問(10.3共同声明なく、中ソの意見対立激化)
10/4   ソ連惑星間ステーション打上げ、月の裏側の撮影に成功
10/12 日本、国連総会で経済社会理事国に当選  



<関連タイトル>
原子力発電技術の開発経緯(PWR) (02-04-01-01)
高速増殖炉 (03-01-01-01)
JRR-3(JRR-3M) (03-04-02-02)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)
イギリスの原子力政策および計画 (14-05-01-01)
イギリスの原子力発電開発 (14-05-01-02)

<参考文献>
(1)森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(2)原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
(3)原子力開発十年史編纂委員会編:原子力開発十年史、日本原子力産業会議(昭和40年10月26日)
(4)森 一久編:原子力は、いま(上巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
(5)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)
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