<大項目> 放射線と原子力に関する歴史とトピックス
<中項目> 放射線と原子力に関する発見
<小項目> 放射線の発見
<タイトル>
α線、β線、γ線の発見 (16-02-01-03)

<概要>
 1898年頃、ラザフォードは、ウラントリウムなどの天然の放射性物質から出ている放射線には性質の異なる少なくとも2種類のものがあることを明らかにし、透過力の弱い方を「α線」、透過力のより強い方を「β線」と命名した。この他にβ線よりもさらに透過力が大きい放射線も存在することが分り、それを「γ線」と名付けた。
<更新年月>
1999年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.性質の異なる放射線の発見
 J.J.トムソン(Joseph John Thomson)は、ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所において陰極線の実験を行い、電気の運び手であり全ての物質の基本的構成要素の1つである電子を発見した(1897年)。1895年、このJ.J.トムソンの下にやって来たのは、ニュージーランド生まれの英国移民の子アーネスト・ラザフォード(Ernest Rutherford)であった。ラザフォードはまず、放射能X線が気体の電気伝導に及ぼす効果に興味をもった。放射性物質から放出された高エネルギー粒子(放射線)は、気体中の原子から電子をたたき出し、これが電流の運び手としてはたらくのである。1898年、ラザフォードは、気体の電気伝導に及ぼすX線の効果についてJ.J.トムソンとの共同研究を行った後、X線と放射性物質から放出される放射線は本質的に同じ振る舞いをすることを示した。また、彼は、U(ウラン)やTh(トリウム)などの天然の放射性物質から出ている放射線の物質による吸収の測定から、UやThから放出される放射線には性質の異なる少なくとも2種類のものがあり、1つは電離能力が非常に大きく、そのため物質に吸収されやすく、薄い紙でも止ってしまうが、もう1つは、これよりも電離能力が小さく、透過力が大きいことを明らかにした。ギリシャ語のアルファベットの最初の2文字を用いて、前者をα線、後者をβ線と命名した。この他にβ線よりもさらに透過力が大きい放射線も存在することが分り、それをγ線と名付けた。α線(アルファ線)、β線(ベータ線)、γ線(ガンマ線)の性質の概念を 図1 に示す。またアルファ線は紙一枚で、ベータ線は1mm厚のアルミニウムで、ガンマ線は1.5cm厚の鉛で放射線が遮へいできる( 図2 )。
2.α線の正体
 α線を電気や磁場で曲げることは、電子の場合よりはるかに困難であった。しかし、ラザフォード(当時マギル大学)はこの実験に成功し(1903年)、α線の質量/電荷比を求める端緒を開いた。測定精度を上げる努力を続けた結果、1906年にこの比が水素イオンの値の約2倍であることが分った。原子量が2の元素は存在しないから、水素に次ぐ軽い元素で、電荷が2、原子量が4のヘリウムイオンと考えれば辻褄が合う。こうしてα粒子が正の電荷を持つヘリウム原子核であることが分った。なお、1903年に、ある種の放射性物質からヘリウムが生成されることが見出され(ラムゼーとソディー;マギル大学)、ラザフォードらは、ラジウムの試料から放射されたα粒子を集めてその光スペクトルがヘリウムと同じであることを確認している(1907-1908年)。
3.β線の正体
 ベクレル(Antoine Henri Becquerel)は、「ウランによって放出される放射線の一部(ラザフォードによってβ線と呼ばれた放射線)は、磁場によって曲げられ、その方向は陰極線と同じ向きである」と述べた(1899年)。ラザフォードと独立にF.ギーゼルもこのことを発見している。ベクレルは、トムソンと同じような方法を使って、β線の質量/電荷比を測定し、トムソンの測定した電子の値に近いことを見出した。このように、β線が負の電荷を持つ電子であることは明らかとなった。しかしその速度は陰極線の速度よりはるかに速かったのである。
4.γ線の正体
 γ線は、高い透過性をもち、磁場によって容易に曲げられなかった。この放射線はフランスのP.ヴィラール(Paul Ulrich Villard)が1900年に観測し、ラザフォードが「γ線」と名付けた(1903年) 。ラザフォードは、γ線がX線のように波長の短い光であると考えたが、このことは、γ線を結晶に当てたときの散乱を観測して、これからγ線の波長を測定することによって証明された(1914年、ラザフォード及びE.N.ダコスタ・アンドラード)。
<図/表>
図1 α線、β線、γ線の性質の概念
図2 α線、β線、γ線の放射線遮へい

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<関連タイトル>
電離放射線 (08-01-01-01)
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自然放射能の発見 (16-02-01-04)
人工放射能の発見 (16-02-01-05)

<参考文献>
(1) 山懸登:アトムとラドン−放射能の社会史、全国出版 (1983)
(2) 日本原子力文化振興財団:原子力の基礎講座1、原子力の基礎
(3) 板倉聖宣:元素の発明発見物語、国土社 (1985)
(4) ワインバーグ(本間三郎訳):電子と原子核の発見、日本経済新聞 (1986)
(5) E.N.Jenkins : Radioactivity - A Science in its Historical and Social Context, Wykeham Publications Ltd. London,1979.
(6) S.Mckeever,M.Foote(監・編):Science Encyclopedia,Dorling Kindersley(1994)
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