<大項目> 海外情勢
<中項目> アフリカ各国
<小項目> 南アフリカ
<タイトル>
南アフリカの原子力開発と原子力施設 (14-09-01-01)

<概要>
 南アフリカでは、2007年以降電力の不足が深刻化している。政府は長期的、総合的、かつ統合的な国家電力資源計画「電力統合資源20ヵ年計画(IRP2010)」を2010年10月に提案している。地球温暖化防止への取り組みの観点からも、環境保護に優れたエネルギー構造への転換を目指し、現在総発電量の9割を占める石炭から、再生可能エネルギー(太陽熱、太陽光、風力)の開発や原子力発電の推進、石炭火力発電設備の低炭素化が盛り込まれた。現在、同国ではフランス製PWRであるクバーグ原子力発電所の2基が1984年と1985年から運転しており、2030年までに6基960万kWの新規原子力発電所の建設が計画され、フランス、米国、日本、韓国、中国、ロシアの企業が関心を示している。1号機は2023年から2024年にかけての運転開始を目指している。
 なお、同国はかつてアパルトヘイト政策(人種差別)を推進した保有国であったが、NPT加盟前の1990年代初頭までに自主的に核を放棄した国である。以降、核不拡散を推進するための外交政策に積極的に取り組んでいる。
<更新年月>
2012年11月   

<本文>
1.原子力発電の現状
 南アフリカ共和国(以降、南アフリカ)の原子力発電所は、アフリカ大陸における唯一の稼働中の原子力発電所で、電力需要の多いケープタウンから北約30kmのクバーグ(Koeberg)に立地している。クバーグ原子力発電所(PWR、2基各94万kW)は1978年に建設を開始、1号機が1984年に、2号機が1985年に運転を開始した(表1参照)。原子炉の設計は米国ウェスチングハウス社が担当したが、当時アパルトヘイト(南アフリカの人種差別政策)に批判的だった米国の経済制裁を受けていたため、フランスのEdF、Framatome(フラマトム、現Areva原子炉部門)社を中心としたフランスのコンソーシアムFRAMATEGが建設を担当した。
 2011年現在、南アフリカの原子力発電電力量は約121億kWh、総発電電力量に占める原子力の割合は5.1%である。設備利用率は、1号機が94.1%、2号機が67.9%で、運転サイクルはともに16ヵ月である。なお、1号機は2011年1月の燃料交換時に低圧タービン・ローターを交換して、出力は97万kWに増加した。国営電力会社エスコム(ESKOM)が原子力発電所を所有・運転している。
 南アフリカは転換、濃縮、燃料成型加工施設を国内に持たないため、クバーグ発電所の原子燃料は世界市場で調達している。また、クバーグ原子力発電所の使用済燃料は発電所内で保管され、低・中レベル放射性廃棄物はケープタウン北方500kmにあるヴァールプッツ(Vaalputs)廃棄物処分場で処分されている。なお、[Uranium2011] によると南アフリカは金の副産物としてウランを産出する。2011年の生産量582tUで、全て輸出用である。ウランの発見資源量は372,100tU(世界8位)、未発見資源量は1,112,900tU(世界3位)である。
2.主な原子力関連機関
 原子力に関する主な政府機関はエネルギー省(DOE)と貿易・工業省(MTI)である。
 エネルギー省(DOE)は、「電力統合資源20ヵ年計画=IRP」、「新規大型発電所建設計画」、「原子力発電計画」等のエネルギー計画を立案し、原子力発電導入に関する法体系や関連組織の整備、エネルギー関連事業の資金調達を行う。また、貿易・工業省(MTI)は原子力発電に関する産業育成や国産化計画等を推進する。なお、1999年に成立した新原子力法(2000年2月発効)により、原子力の開発部門と規制部門が分離され、エネルギー省(DOE)が監督を行う機関として、原子力規制庁(NNR)と原子力公社(NECSA)が設置されている。
2.1 原子力公社(NECSA:Nuclear Energy Corporation Ltd. Of South Africa)
 1999年に原子力公社(AEC:Atomic Energy Corporation)が改組された組織で、平和利用のための原子力研究開発を目的として、医学利用、ウラン化学、放射性廃棄物に関する研究を行う。「2008年原子力エネルギー政策」から政府への原子力政策に関する助言や国際原子力関連機関への対応も行う。首都プレトリア郊外に位置するペリンダバに原子力研究所(PIN)とテクノロジーセンター(PT)の2事業部門を持つ。
(1)ペリンダバ原子力研究所(PIN:Pelindaba Nuclear Institute)
 旧サイクル施設のデコミッショニング、SAFARI-1研究炉(熱出力20MWのスィミングプール型材料試験炉)の運転、原子力技術開発、国際原子力機関(IAEA)保障措置や核拡散防止条約(NPT)などの国際関係の事務局機能を担う。研究炉からの放射性廃棄物はPIN敷地内のサバナ・ヒル(Thabana Hill)サイトで貯蔵・管理されている。
(2)ペリンダバ・テクノロジー(PT:Pelindaba Technology)
 PT社はNECSAの非規制業務として、フッ素系化学製品の製造や、SAFARI-1炉を利用したRIの生産と輸出市場開拓といった商業活動を担当し、将来的には民営化される方針である。
2.2 原子力規制局(NNR:National Nuclear Regulator)
 1999年の法令第47号「国家原子力規制法」により設置された。政府省庁から独立した機関で、原子力ならびに放射線安全に関する安全規制を担当する。各種原子力施設の許認可の発給は、原子力公社(AEC)の一部局であった原子力安全評議会(CNS:Council for Nuclear Safety)が担当していたが、原子力活動の実施機関と規制機関が同じ組織内にあったため、AECの改組に合わせて、独立した組織となった。
3.原子力発電開発の歴史
 米ソ冷戦体制の開始により米国と英国が核兵器製造に必要なウランの供給源を国際的に求めたことで、1950年代初頭から南アフリカのウラン採掘活動は開始した。ピーク時の1980〜84年には年間6000〜7000トンの酸化ウランが生産されている。鉱山大臣の許可を得た金鉱山会社によってウランの採掘や抽出が行われ、ウランは「原子力法(Atomic Energy Act、1948年制定)」のもとで国家の管理下に置かれた。また、英米とのウラン売買契約の窓口として原子力委員会(AEB:Atomic Energy Board)が設置された。1960年代に入るとAEBは原子力発電所建設の中心的な機関となった。1985年には、政府系企業の原子力開発公社(NUCOR:Nuclear Development Corporation)とウラン濃縮公社(UCOR:Uranium Enrichment Corporation、1970年設立)を吸収して原子力公社(AEC:Atomic Energy Corporation)となった。また、1963年の原子力施設法(Nuclear Installations Act)で許認可手続きが規定された。1982年の原子力法(Nuclear Energy Act)により、AECは濃縮を含む全ての原子力に係わる事項に責任を負うことになった。
 1980年代のAECの主な役割は、発電炉への燃料ならびに核兵器向けの核物質の供給を目的とした燃料サイクルの開発であった。しかし、1990年代になると、アパルトヘイトの撤廃や国際社会からの南アフリカへの制裁措置が解除され、社会情勢が一変した。それに伴ってAECの性格は戦略的なものから商業的なものに大きく転換されることになった。その結果、採算性の悪い小規模な燃料サイクル施設は次々に閉鎖。1999年末の転換施設閉鎖によって南アフリカは燃料サイクル事業から完全に撤退した。
 また、南アフリカはかつて核保有国であったが、自主的に核を放棄した国である。1970年代にウラン濃縮施設がペリンダバ(Pelindaba)に建設され、1975年4月に試験装置Yプラントで濃縮(Helikon vortex法)に成功した。濃縮施設はクバーグ発電所向けの燃料を精製するとされていたが、実際には核兵器開発に必要な高濃縮ウランを製造した。南アフリカは国際的な査察を受けることなく、1989年まで原爆を製造した。しかし、アパルトヘイトの撤廃や国際社会からの南アフリカへの制裁措置の解除により社会情勢が一変したことで原爆を放棄。関連施設も1990年代初頭までに自発的に解体・廃棄された。1993年に「南アフリカはかつて核兵器を保有していたが、すべて廃棄した」とデ・クラーク大統領が公表したことから、IAEAは特定査察を行い、1995年に核兵器が完全に廃棄されたことを宣言した。以降、南アフリカは核不拡散を推進するための外交政策に積極的に取り組んでいる(表2参照)。
4.原子力発電所建設計画
4.1 軽水炉の導入計画
 アパルトヘイト政策を廃止して国際社会に復帰して以降、豊富な鉱物資源を有する南アフリカは、世界的な資源需要の高まりに伴う海外資本の流入や活発化した国内消費を背景に、2000年代に高い経済成長率を記録した。ただし、新規の電力投資が行われなかったため、電力の供給不足が生じ、2007年以降電力の不足が深刻化している。
 このようななか、国営電力エスコム社(ESKOM)は2007年初め、2025年までの発電倍増計画を発表し、2010年頃から4GWの原子力発電所を建設し、2016年に1号機を運転する計画を立てた。2007年5月には、エネルギー省に対して5ヵ所(北部の南大西洋に面したBrazilとSchulpfonten、クーバーグ原子力発電所に隣接したDuynefontein、南部の南ケープ海岸に位置したBantamsklip、南部の東ケープ海岸に位置したThyspunt)の建設サイト候補地の初期段階の環境影響評価書を提出した(図1参照)。エネルギー省はこれに対し、2008年11月、BrazilとSchulpfontenを除く3ヵ所の建設サイト候補地を承認した。その後、発注企業の選定が開始されたが、リーマンショック(2008年9月)に端を発した世界的な金融恐慌から資金確保が困難になり、エスコム社は2008年12月に原子力発電所建設の延期を発表した。建設サイトに関しては環境影響評価が継続され、2010年3月に送電線網の整備状況、電力需要等の観点からThyspuntを建設サイト候補地として推薦した。
 一方、政府は公共投資を通じた経済刺激策や雇用創出策を柱に、産業政策行動計画(IPAP)、新成長戦略、電力統合資源20ヵ年計画(IRP2010)などの経済成長戦略を相次いで発表している。IRP2010(2010年10月発表、2011年3月内閣承認済)に従い、エネルギー省は6基960万kWの原子力発電所建設計画の検討を開始した(表3参照)。建設許可の申請は発注企業が決まり次第、安全規制当局へ提出される予定である。2023年から2024年の1号機運転開始を目指している。建設にはフランス、米国、日本、韓国、中国、ロシアの企業が関心を示している。また、貿易・工業省(MTI)はこのプロジェクトで、国内原子力産業の育成及び技術の国産化を計画している。最初の2基の建設でコストベースの約30%を国内産業から調達する意向である。
4.2 ペブルベッドモジュール型高温ガス炉の導入計画
 南アフリカは新しい原子炉の技術開発としてペブルベッドモジュール型高温ガス炉(PBMR:Pebble Bed Modular Reactor)の開発に取り組んだ。PBMRは高温ガス炉の一種で、直径0.5〜0.6mmのUO2粒子を燃料核として、表面を炭素と炭化珪素で多層被覆したものを黒鉛粉末と混合し、直径60mmの球状(ぺブル)に圧縮成型したものを燃料とする。非常に高温になるため熱をエネルギーに転換する際に無駄が少ないことや、ペブルの使用で従来よりも小型化できること、継続的な電力供給が可能であること、燃料棒よりも処理が容易であることなどが利点である(図2参照)。
 PBMR炉はドイツの高温ガス炉(ユーリッヒ高温ガス実験炉(AVR)とトリウム高温原子炉(THTR))の技術をベースとするもので、エスコム社によって12万kWの実証炉をケープタウン近郊に建設する計画が具体化した。2005年には最終設計が固められ、2007年建設開始、2009年には最初の燃料を装荷、2011年の運転開始を目指していた。エスコム社は実証炉に引き続き10数基のPBMR建設を計画していたが、2008年からの世界的金融危機等の影響を受け、2010年9月に計画中止を発表した。
(前回更新:2006年2月)
<図/表>
表1 南アフリカの原子力発電所一覧表
表2 南アフリカの原子力関係の国際枠組み加盟状況
表3 南アフリカの電源供給計画
図1 南アフリカの原子力発電所サイトと新規サイト候補地
図2 PBMR断面図と設計主要

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<関連タイトル>
海外における高温ガス炉の研究開発 (03-03-07-01)
ペブルベッドモジュール炉(PBMR) (03-03-07-03)
南アフリカの国情およびエネルギー事情、電力事情 (14-09-01-02)

<参考文献>
(1)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向、2012年次報告(2012年5月)、p.132-133
(2)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業、第2編、2010年(2010年3月)、南アフリカ共和国
(3)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑、2012年版(2011年10月)、p.284-286
(4)(独)日本原子力研究開発機構:原子力海外ニューストピックス2011年第5号(2011年11月)、南アフリカの電力政策と原子力発電、http://www.jaea.go.jp/03/senryaku/topics/t11-5.pdf
(5)PBMR社:“Pebble Bed Modular Reactor”(パンフレット)
(6)(一社)日本原子力産業協会:南アフリカ共和国、http://www.jaif.or.jp/ja/asia/southafrica/southafrica_data.pdf
(7)OECD・NEA/IAEA:Uranium 2011 Resources, Production and Demand(2012)、http://wwweth.cern.ch/~dittmar/thoiry/U2011.pdf
(8)国営電力会社ESKOM:Koeberg power station、http://www.eskom.co.za/c/article/12/koeberg/
(9)南アフリカエネルギー省:IRP 2010 : Electricity: Promulgated、http://www.doe-irp.co.za/content/IRP2010_promulgated.pdf
(10)オーム社:原子力ハンドブック(2007年11月)、p.512
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