<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ロシア
<タイトル>
ビリビノ熱併給原子力発電所 (14-06-01-17)

<概要>
 ロシアの北極圏に位置するチュコトカ自治管区(Chukotka)のビリビノ町(Bilibino)にビリビノ熱併給原子力発電所(1.2万kWを4基)が建設され、1974年から町とビリビノ鉱山に電力と熱の供給を開始した。ここはロシア単一電力系統から非常に遠く離れ、また冬は10ヶ月も続き非常に寒いので、単独で電力および熱を供給する必要があった。原子炉は軽水冷却黒鉛減速チャンネル型炉で、冷却材自然循環によって原子炉から熱を取出し、発電および熱供給を行っているので原子炉の信頼度が高く、運転を簡素化できた。また、運転中の反応度は負で、蒸気および出力の反応度も負であるため、技術的安全性が保証されている。
<更新年月>
2000年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.ビリビノ原子力発電所の建設経緯
 1930年代にモスクワで働いていたロシア人科学者J.A.Bilibin(ビリビン)は、ロシアの北端に金鉱山があると確信していた。それから20年後、ロシアのはるか北東の北極圏内にあるチュコトカ自治管区ビリビノ近くで、金鉱が発見された。1970年代になってから、この地方に多数の人が入植し、科学者ビリビンの名前をとって金鉱の町をビリビノと名付けた。ここには、金鉱および貴金属鉱山(銀、スズ、タングステンなど)があり、もっとも繁栄した時期の人口は16,000人で年産5トンの金を産出したが、1993年にほとんどの鉱山が閉山してから人口は減少し、1998年10月現在、人口はほぼ半減した。チュコトカ自治管区は1992年マガダン(Magadan)州から分離し、面積73.7万平方キロメートル、人口80,000人(1994年)で州都はAnadyr(アナドゥリ、3,000人)、Bilibino(ビリビノ、11,000人)、Pevek(ペベク、9,000人)の3大都市がある。
 マガダン州は、冬が10ヶ月も続き非常に寒く、気温はしばしば零下55℃まで下がるので、電力および熱の供給を必要としていた。マガダン州はロシア単一電力系統から非常に遠く離れているため、ビリビノ・チャウンスク鉱山諸企業に電力を供給し、またビリビノ町の住宅に電力と暖房用の熱を供給するため、ビリビノ町近郊に熱併給原子力発電所(発電端電気出力:1.2万kW×4基、送出熱:15〜25Gcal/h×4基)を建設することなり、1965年に発注して1970年に着工し、1974年から1977年にかけて計4基の原子炉(EGP-6)が運転を開始した。
 ビリビノ原子力発電所が建設された1970年初期時点、ディーゼル油をビリビノに輸送するには余りにも困難で高くついたため、この原子力発電所の電気出力は4.8万kWと出力が小さく、発電原価が割高であったが、ディーゼル式発電所の発電原価より安く約1/4と算出されたので、原子力発電所を建設することになった。
 1999年現在、上記のようにビリビノ地方の経済が衰退して電力需要は減少したため、ビリビノ発電所は定格出力4.8万kWの半分以下の出力で運転しており、発電所近くにあるビリビノ町近郊で働く多国籍の鉱山労働者に電気と住宅暖房用の熱を供給している。
 ビリビノ原子力発電所は、ペベク(Pevek、ビリビノの北東245km)にあるチャンスカヤ熱併給発電所[Chaunskaya、4.25万kW、1949年運転開始]と送電線2回線で連係し、チェルスキー(Chersky、ビリビノの西北西223km)にある2つの発電所(チャウン火力発電所 [Chaun、3.05万kW] とノーザンライツ水上ディーゼル発電所 [Northern lights、2.4万kW、1970年運転開始] )と送電線1回線で連係しており、これら送電線の回線延長合計は約1,000kmである。
  図1 にマガダン州でのビリビノ原子力発電所の位置図を示した。
2.ビリビノ原子力発電所の特徴と技術諸元
 発電所建屋は、凍土を溶かした後、鉄筋コンクリートの土台を打ち、その上に発電所を建設した。原子炉は軽水冷却黒鉛減速チャンネル炉である。 図2 にEGP-6型原子力発電所のシステム図、 表1 にビリビノ原子力発電所の技術諸元、 表2 に1〜4号機の年間平均設備利用率(1990〜1997)、および 表3 に1999年1〜9月における各号機の設備利用率(%)を示す。
 ビリビノ原子力発電所はユニット方式で設計され、4基の原子炉は全部1つの原子炉室に納められており、原子炉1基にタービン発電機が1台設置してある。
 原子炉で発生した熱は、冷却材の自然循環によって取り出し、発電および熱供給を行っている。運転中の反応度は負で、蒸気および出力の反応度も負であるため原子炉の信頼度が高く、技術的安全性が保証されており、運転を簡素化できた。
 原子炉は、飽和蒸気の単一回路方式で蒸気を送り、蒸気がタービンに入る前に中間セパレータで蒸気を乾燥させる。
 タービンで使用した蒸気を水に戻す復水器は、ロシアで一般に使用している冷却塔ではなく、凍っていない水が不足する北極圏の環境に対応して特別の空気熱交換方式を使用し、豊富に入手できる冷たい空気を利用している。すなわち直径3.5mの換気装置(原子炉1基当たり6台の換気装置)を使って、膨大な量の空気を長さ6m、厚さ2.5mのラジエータ(原子炉1基当たり12コラム)に強制通風して蒸気を水に戻している。夏は、この空気熱交換式復水器と冷却機を使用する。
 また、復水はタービン復水器を出て脱塩フィルターを通り、低圧過熱器を経て脱水器に入り、熱供給用の水は、加熱器であらかじめ加熱される。主加熱器は、タービンの制御可能な抽気口からの蒸気を取っている。
 燃料は管状燃料要素を使用している。 図3 にこの燃料要素の概略図を示した。炉室の外壁はアルミパネルでつくられた。コンクリート遮蔽壁がないので、燃料チャンネルの取替には遮蔽された特殊コンテナーを使用し、原子炉から取り出した燃料チャンネルは炉室内にある使用済燃料貯蔵所で貯蔵する。
 発電所で発生した放射性液体廃棄物は、凍らせて固体とし、永久凍結保管している。
 中央制御室には、上記送電線へ送電するための制御盤もある。
3.ロシアおよび外国からの技術支援
 1997年9月、ビリビノ原子力発電所、モスクワにある全ロ原子力発電所運転技術開発研究所(VNIIAES:ロシア語の略称))、米国のハンフォードにあるPacific Northwest National Laboratory (略称:PNNL)、米国のブルックヘブン国立研究所、GSEコンソーシアムが共同で、ビリビノ原子力発電所の運転員を訓練するためのシミュレータを共同開発している。
 また、1998年からビリビノ原子力発電所に乾式使用済燃料貯蔵所を建設する可能性について、ロスエネルゴアトム(ROSENERGOATOM)とカナダ原子力公社(AECL)が契約に基づいて話し合いを進めている。
<図/表>
表1 ビリビノ原子力発電所の技術諸元
表2 1〜4号機の年間平均設備利用率(1990〜1997年)
表3 1999年1〜9月における各号機の平均設備利用率
図1 ビリビノ原子力発電所位置図
図2 EGP−6型原子力発電所システム図
図3 ビリビノ原子力発電所の燃料要素概略図

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<関連タイトル>
黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉(RBMK) (02-01-01-04)
ロシアの原子力発電開発 (14-06-01-02)

<参考文献>
(1) 伊藤 弘、篠原 慶邦(訳):ソ連の原子力開発のすべて、A.M.ペトロシャンツ、日本原子力産業会議、p.117-121(1981年)
(2) The Institute of Physics and Power Engineering,p.7,8(IPPEの研究内容を紹介するパンフレット)
(3) State Scientific Center of Russian Federation Institute of Physics and Power Engineering,p.9(IPPEの研究内容を紹介するパンフレット)
(4) Directory of Russian Nuclear Power Plants,edited by International Business Relations Corporation (IBR),1996,Moscow,p.73-84
(5) inside WANO(日本語版)1998年台9号「2000年問題と原子力 8:ビリビノ」、p.6、7、13 (http://www.uilondon.org/coreissues/1999/no1/focus/index.htm)
(6) IPPEホームページ(http://www.ippe.rssi.ru/rnpp/bilibino_eng.html)、Bilibino Nuclear Power and District Heating and EPG Nuclear Power Plant)
(7) 日本原子力産業会議「燃料エネルギー・コンプレックスにおける原子力エネルギー論」に関するハバロフスク科学技術国際会議参加原産代表団報告書、(1991年7月) p.8、9、33、34
(8) アラスカ大学のホームページ(http://www.gi.alaska.edu/ScienceForum/ASF13/
1364.html) ,A Little Useful Technical Transfer, Alaska Science Forum Alaska Science Forum, November 20, 1997, Article #1364, by Carla Helfferich
(9) 藤井 晴雄、森島 淳好(編著):Directory of Nuclear Power Plants in the World 1994, 日本原子力情報センター刊、p.97、700、771
(10) Operating Experience of Nuclear Power Plants in the Member States 1997, IAEA p.475, 477, 479, 481
(11) Nucleonics Week, Vol. 40, No. 49, Dec. 9, p16
(12) ロシア、独立国家共同体、およびバルト諸国における発電所の技術諸元(ロシア語)、ロシア連邦経済省ミクロ経済研究所地図情報センター、 (1998年)
(13) World Aeronautical Charts ONC C-7
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