<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> カナダ
<タイトル>
カナダの原子力政策・計画 (14-04-02-01)

<概要>
 カナダ連邦政府の原子力政策は、国営のカナダ原子力公社(AECL)による国産重水炉(CANDU炉)の開発、及びカナダ原子力安全委員会CNSC)による規制に基づいている。原子力発電所の大半が立地しているオンタリオ州では、電力市場が自由化された中で、原子力発電が競争力のある電源として見直され、休止中であった原子炉(ピッカリングA(1〜4号機)およびブルースA(1〜4号機))の運転再開が進められた。運転寿命延長を目標とした改修工事費用は当初見積もりの2倍以上を要したため、ピッカリングA-2、3号機は2005年8月、OPG社(オンタリオ発電会社)により閉鎖が決定した。なお、OPG社はダーリントン発電所内に2基(2000MW)の原子炉を新設する計画を進めており、2012年5月には連邦政府により環境影響調査報告書が承認され、原子力安全委員会(CNSC)による「サイト準備許可」が発給される見通しである。炉型選定にはCANDU炉以外の炉型も視野に入れ、(1)フランス・アレヴァ社製 U.S.EPR、(2)AECL製 ACR-1000、(3)ウェスチングハウス社製 AP-1000が候補として挙げられている。
 また、豊富なウラン資源を持つカナダでは、使用済燃料は再処理してリサイクルするより、経済的に有利と判断した直接処分を選定している。そのため、使用済燃料は核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が管理主体となって、当面60年間はサイト貯蔵、集中貯蔵を実施し、最終的には深地層処分を行う適応性のある段階的管理を進める方針である。
<更新年月>
2013年01月   

<本文>
1.はじめに
 カナダは天然資源の豊富な国で、石油、天然ガス、石炭、ウランを産出する世界有数のエネルギー生産国かつ輸出国である。2011年時点のカナダのエネルギー源別生産量と埋蔵量は、世界全体のシェアと可採年数で示すと、石油4.3%(世界第3位)で可採年数100年以上、天然ガス4.9%(世界第3位)で可採年数12.4年、石炭0.9%(世界13位)で可採年数97年、ウラン15%(世界第2位)で可採年数100年以上となっている。表1に一次エネルギー需給バランスを示す。
 カナダ憲法ではエネルギー政策の策定に関する権限は連邦政府と州政府の間で区分されている。天然資源の所有権は州政府にあり、州内のエネルギー部門における資源開発や規制の権限は基本的に州政府にある。他方、連邦政府は国家レベルでのエネルギー政策の策定、ウラン及び原子力発電、フロンティア地域の資源管理・開発、州債及び国際取引を規制管轄としている。また、カナダ憲法では、電気事業規制を主として州の管轄としているため、電気事業は州単位で運営されている。
 カナダの総発電設備容量は、2010年には対前年比1.24%増の1億3054万kWで、電源別内訳は、水力58%、火力30%、原子力10%、その他(風力及び潮力)1%であり、州別の発電設備容量の割合は、ケベック州が最大で32%を占め、オンタリオ州27%、ブリティッシュ・コロンビア州12%、アルバータ州10%と続いている(表2参照)。これら4州でカナダ全体の約80%を占めている。原子力発電設備はオンタリオ州、ケベック州及びニューブラウンズウィック州の3州に、運転中19基、計画中2基、閉鎖した発電用原子炉6基が立地している(図1参照)。なお、オンタリオ州の基幹電源は原子力であり、ニューブラウンズウィック州は火力、ケベック州では水力となっており、原子力発電のおかれている状況は州により大きく異なる。
2.原子力発電に関する各州の原子力政策・計画
2.1 オンタリオ州における原子力発電計画
 カナダ経済の中心地で、同国最大の人口を抱えるオンタリオ州は、カナダ国内の運転中の原子力発電所19基のうち18基を立地している。1990年代に始まった電気事業再編に伴い発送配電事業の機能分離が実施され、90年以上も電気事業の独占体制にあった州営のオンタリオ・ハイドロ(OH)社が1999年4月に同社の発電部門を継承したオンタリオ発電会社(OPG:Ontario Power Generation)社と、送配電部門を継承したオンタリオ・ハイドロ・サービス社に分割された。オンタリオ・ハイドロ・サービス社は2000年5月に持株会社化され、ハイドロ・ワン(Hydro One)社と改称されている。オンタリオ発電会社(OPG)はオンタリオ州の発電電力量の7割を供給する。
 同州では1999年4月に発効したエネルギー競争法に従って州内電気事業の自由化が進められ、2002年5月に電力市場(卸市場、小売市場)の自由化を開始した。エネルギー競争法は、オンタリオ発電会社(OPG)に対して、2010年までに市場占有率を州内全需要量の35%以下に減らすことを求めたため、2001年5月、同社のブルース発電所(A:1〜4号機 各CANDU、出力90.4万kWとB:5〜8号機 各CANDU、出力84.0万kW)をブルース・パワー(BP)社に対してリースする契約を締結した。BP社は英国のブリティッシュ・エナジー社(80%)、カナダ・ウラン鉱山会社Cameco社(15%)などが出資する会社であったが、2002年12月、経営難からブリティッシュ・エナジー社が撤退したことで、カナダのコンソーシアムに売却され、Cameco社、TransCanada社及びBPC Generation Infrastructure Trust社が各31.6%ずつ株式を保有する会社である。
 ブルース発電所のBP社へのリースが決定した当時、ブルースA(1〜4号機)及びOPG社のピッカリングA(1〜4号機)の合計8基は、管理費が増大し、設備利用率が低下したことから経済性が失われ、さらにピッカリングA(1〜4号機)に関しては旧原子力管理委員会(AECB)が原子炉停止系の性能強化を求めたため、1995年〜1998年にかけて休止状態に追い込まれていた。しかし、エネルギー競争法により、休止状態の原子力発電所を改修工事することで、競争力のある電源として運転を再開する方針が打ち出された。OPG社は1999年8月、ピッカリングA(1〜4号機)を総額11億ドルの予算で改修工事を行い、2002年12月までに運転を再開させることを決定した結果、4号機を2003年9月に、1号機を2005年9月に運転を再開させた。しかし、改修工事費用は当初見積もりの2倍以上を要したため、OPG社は2005年8月、2号機と3号機の閉鎖を決定した。その他のピッカリング合計6基は2020年まで運転を延長する予定で、改修工事を順次進めている。
 一方、BP社も積極的に投資を進め、ブルース発電所のアップグレードとタービンの交換を行い、ブルースA-4号機は2003年10月に、3号機は2004年1月に運転を再開した。ブルースA-1、2号機に関しては全面改修工事(燃料チャンネルとカランドリア管(480本/基)、約半数の出入口管(約500本/基)、蒸気発生器(8台/基)を取替え、運転寿命を25年間延長)を行い、2012年9月と10月に運転を再開した。
 オンタリオ州政府は2006年6月、オンタリオ州の電源開発の基本方針を示した指令文書を発表した。2007年8月にはオンタリオ州電力庁(OPA)が2027年までの20年間にわたる電源開発の実施計画「総合電力供給計画」を発表した。同計画では(1)省エネルギーによる需要の抑制、(2)再生可能エネルギー電源(水力、風力、バイオマスなど)の開発、(3)既存炉の改修または新設により原子力発電をベース電源として利用する、(4)ピークロード及び高効率電源としてガス火力を建設し、(5)2014年までに石炭火力(6434MW)を廃止する、(6)送電線の増強、などを規定している。2027年のオンタリオ州の電力供給予測は、原子力47%、再生可能エネルギー30%、省エネルギー15%、ガス火力8%となり、温室効果ガスの排出量は60%以上削減されるとしている。
 一方、新規建設に関しては、BP社はブルース発電所内に4基(4000MW)までの「サイト準備許可」を2006年8月に、OPG社はダーリントン発電所内に4基(4800MW)までの「サイト準備許可」を2006年9月に申請した。2009年、BP社とOPG社、州電力庁はブルースB(1〜4号機)及びダーリントン(1〜4号機)の改修工事とダーリントン発電所内に2基(2000MW)の原子炉を新設することで合意した。2012年5月には連邦政府により環境影響調査報告書が承認され、原子力安全委員会(CNSC)による「サイト準備許可」が発給される見通しである。炉型は(1)フランス・アレヴァ社製U.S.EPR、(2)AECL製ACR-1000、(3)ウェスチングハウス社製AP-1000が候補として挙げられている。
2.2 ニューブランズウィック州における原子力発電計画
 CANDU-6型(600MW級標準設計CANDU炉)のポイント・ルプロー(Point Lepreau)は2008年4月から全ての燃料チャンネル(380体)、カランドリア管(380本)及び出入口管(760本)の交換を行い、25MW出力増強、寿命延長改修工事を行った。改修工事費用は当初の14億ドルから24億ドルへ増加し、改修期間も3倍の54ヶ月を要したが、2012年10月から送電を再開している。
2.3 ケベック州における原子力発電計画
 ケベック州政府は2012年9月、原子力の使用及びシェールガスの開発を行わないと決定したことで、州唯一の1983年より稼働していたジェンティリー2号機(GENTILLY)は2012年12月28日に運転を終了し、廃止措置へ移行することになった。発電所を所有するハイドロ・ケベック社(HYDRO QUEBEC)により30年のライセンス更新手続きが行われていたが、同発電所は2012年7月末に故障を起こして運転を停止した。再稼働を行うには改修工事が必要な状況となっていた。
3.使用済燃料に関する政策
 カナダ連邦政府は1996年に、使用済燃料を含むすべての放射性廃棄物の処分に対する基本原則となる政策の枠組みを決定しており、廃棄物の処分に関する施設については、廃棄物の発生者と所有者が、資金の拠出、組織運営、管理、操業に対する責任を負うことを決めている。また、2002年11月、高レベル放射性廃棄物管理の枠組みを定めた核燃料廃棄物法(NFWA)が施工され、同法に基づき、処分の実施主体となる核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立した。
 CANDU炉が実証段階に入った1960年代に、カナダは使用済燃料は再処理して有用物質を回収・再利用し、残りの高レベル放射性廃棄物を深地層に処分するという、リサイクル路線を基本政策として掲げていた。しかし、豊富なウラン資源を持つカナダでは、使用済燃料は再処理してリサイクルするより、直接高レベル放射性廃棄物として深地層処分した方が経済性に有利であった。そのため、商業用CANDU炉が営業運転を開始し、原子力発電時代が幕を開けた1970年代には、連邦政府は再処理路線を棚上げし、使用済燃料の長期貯蔵技術を開発し、再処理せずに深地層に直接埋設処分することを新たな基本政策として採用した(詳細はATOMICAタイトル・カナダの放射性廃棄物管理<14-04-02-07>参照)。現在に至るまで、カナダでは使用済燃料の再処理は行われておらず、原子力発電所から発生した使用済燃料は、当面60年間はサイト貯蔵、集中貯蔵を実施し、最終的には地層処分する適応性のある段階的管理を行う方針である。
(前回更新:2003年1月)
<図/表>
表1 カナダの一次エネルギー需給バランス
表2 カナダの燃料別・州別発電設備
図1 カナダにおける原子炉所在地

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<関連タイトル>
カナダ型重水炉(CANDU炉) (02-01-01-05)
カナダの原子力発電開発 (14-04-02-02)
カナダの原子力開発体制 (14-04-02-03)
カナダの核燃料サイクル (14-04-02-05)
カナダの電気事業および原子力産業 (14-04-02-06)
カナダの放射性廃棄物管理 (14-04-02-07)

<参考文献>
(1)(一社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2012年版、(2012年5月)
(2)IAEA:動力炉情報システム(PRIS)カナダ、http://www.iaea.org/pris/CountryStatistics/CountryDetails.aspx?current=CA
(3)Statistics Canada:Table 127-0009(Installed generating capacity, by class of electricity producer)、http://www5.statcan.gc.ca/cansim/a26?lang=eng&retrLang=eng&id=1270009&tabMode=dataTable&srchLan=-1&p1=-1&p2=9
(4)国際エネルギー機関(IEA):エネルギーバランス、http://www.iea.org/stats/balancetable.asp?COUNTRY_CODE=CA および エネルギー生産量、http://www.iea.org/stats/pdf_graphs/CAPROD.pdf
(5)オタワ低レベル放射性廃棄物管理局:カナダの放射性廃棄物目録(2012年3月)、http://www.radiationsafety.ca/wp-content/uploads/2012/07/Inventory-Report-2012_EN.pdf
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