<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 国際条約・協定等
<小項目> 二国間協定・取決め
<タイトル>
日米原子力協定 (13-04-02-01)

<概要>
 新日米原子力協定は、1982年以来の16回にわたる交渉を経て、1988年7月に発効している。この協定では、再処理の際の事前同意権や核物質に関する供給国政府の規制権等を個別のケースごとに行使するのではなく、予め一定の条件を定め、その枠内で一括して承認するという包括同意方式が導入されている。この協定の発効により、日本としても核燃料サイクル計画を長期的な見通しの下で安定的に運用することが可能になった。
 本協定は、(1) 平和利用のための両国政府間の協力を行っていく上の条件を定めた本協定、(2) 包括同意の実施取極め、および(3) 包括同意に関する施設リストや回収プルトニウムの国際輸送のための指針を記した付属書から構成されている。
<更新年月>
2003年03月   

<本文>
1.締結までの経緯
 日米両国間で、1968年に旧原子力平和利用協定が締結(1973年一部改正)[旧協定]されていたが、わが国は原子燃料のウラン濃縮のほとんどを米国に依存していたことから、このような燃料の再処理をわが国および国外で行う際に必要な米国の同意を円滑に取得することに多大の関心を有していた。
 1964年の中国の核実験により世界的に核拡散への懸念が高まり、1968年には核兵器の不拡散に関する条約(NPT)が署名された。その後、1974年のインドの核実験により世界的に核拡散への懸念が再び強まってきた。1977年4月に、米国のカーター政権が商業用再処理とプルトニウム軽水炉への利用の無期限延期、高速増殖炉商業化の延期、INFCE(国際核燃料サイクル評価)の実施を内容とした核不拡散政策を発表した。またカーター政権は翌年3月に1978年核不拡散法を発効させ、これに基づき各国との原子力協定の再交渉を求めてきた。この頃にカナダ、オーストラリアの二大ウラン資源国がウラン輸出政策で核不拡散の動きを強化してきた。
 このような情勢のなかで、カーター元大統領の呼びかけに端を発し、1977年10月から1980年2月までの2年余にわたって開催されたINFCEにおいては、エネルギー供給及び平和目的の原子力開発を阻害することなく核拡散の危険性を最少化する効果的な措置をとることは可能であり、また、必要であるとし「原子力の平和利用と核不拡散とは両立しうる」との結論が得られた。
 この結論をうけ、原子力平和利用と核不拡散に係る国際秩序を確立するための二国間および多国間の協議が開始された。1982年8月から1987年1月までの16回にわたる交渉を経て、1987年1月に協定の内容について実質合意が得られた。その後、日米両国における必要な国内手続を終えたあと、1987年11月4日、東京において日本側倉成外務大臣と米国マンスフィールド大使との間で署名が行われた。この協定は1988年7月17日に発効した。
2.協定の意義
(1)日米原子力協力関係の長期安定化
 旧協定のもとでの再処理の共同決定、管轄外移転の事前同意は個別審査方式であるため、その時々の米国の原子力政策上の主観的判断の関与により、わが国の原子力計画の円滑な運用が左右される惧(おそ)れがあったが、協定の改正により包括的同意方式とすることにより、わが国の核燃料サイクル計画について長期的な見通しのもとでの安定的運用が可能になった。
(2)日米間の対等性・規制権の双務性の充実
 旧協定は、米国から日本への一方的な原子力資機材、核燃料の供給を前提としており、そのため再処理再処理の事前同意権等について米国による一方的規制となっていたが、協定改正により規制権は双務的規定となり、わが国の原子力対外協力上の平和利用確保がなされることになった。 
(3)核不拡散努力の強化
 日米という原子力利用分野での先進国が共通の核不拡散政策に立脚した協定を結ぶことにより、世界の核不拡散体制の強化に資することができる。
3.旧協定との主な相違点
(1)事前同意権の拡大と包括合意
 現行協定では旧協定と比べて事前同意が必要な活動および対象が米国の核不拡散法に合致するように拡大されたが、わが国の原子力平和利用に必要な事前同意は実施取極めにおいて一定の条件の下で包括的に与えられている。これにより、米国による個別審査が必要でなくなるため、わが国の核燃料サイクルが長期的な見通しの中で安定的に運用できることとなった。事前同意権の新旧比較は次のとおりである
イ.再処理
 旧協定では移転された物質のみが再処理の事前同意権の対象であったが、現行協定では、派生物(例えば、米国から移転された原子炉において使用されたり生産されたり、生産された核物質)も再処理の事前同意の対象になっている。
ロ.貯蔵、形状・内容の変更
 旧協定で「貯蔵」については、国際原子力機関(IAEA)の保障措置がわが国に適用されなくなった時にのみ、形状・内容の変更については、照射後の燃料についてのみ米国の規制権が規定された。現行協定では、これらの場合に限らず一般的にこれらの活動に関する事前同意権が明記されている。
ハ.高濃縮
 現行協定では旧協定には規定されていないウランの濃縮(20%以上)について事前同意権が規定されている。
ニ.管轄外移転
 事前同意権が規定されていることは旧協定と同様であるが、現行協定では派生物について事前同意権が明記されている。
(2)双務性の確保
 旧協定では濃縮ウラン等について米国から日本への一方的な供給のみを想定し、再処理の事前同意権は米国のみの権利となっていた。現行協定ではこのように片務的性格の強い旧協定と比べ、協定全体の双務性が充実することとなっている。
(3)現行協定で新たに設けられた規定
 現行協定では核物質防護措置、協定終了後における規制存続権など核不拡散体制強化の観点からの規定、協力の前提としてのIAEAによる保障措置の適用および協議・仲裁に関する規定が新たに設けられている。 
4.包括同意方式とは
(1)いわゆる包括同意とは、再処理の際の事前同意など核物質に関する供給国政府の規制権を個別のケースごとに行使するのではなく、あらかじめ一定の条件(それらの活動を実際に行う施設名をあらかじめ指定しておくこと等)を定め、その枠内であれば再処理等の諸活動を一括して承認し、一つ一つ個別に規制権を行使しないこととす方式である。
(2)包括同意の対象となる活動
 わが国における通常の商業用原子力発電に係る以下の諸点について附属書1〜3に同意施設を明記する形で米国の包括同意を得ている。
イ.国内での再処理、形状・内容の変更、貯蔵(例えば東海再処理工場)
ロ.使用済燃料の英仏への移転
ハ.英仏からの返還(米・ユーラトム原子力平和利用協力協定上必要な米国の同意をユーラトムに与えることを本協定で約束、ただしプルトニウムはガイドラインに従うことが条件)
5.協定の概要
 この協定は、各種規制権(両当事国の事前同意)等を規定する原子力協力協定(以下「本協定」)および付属書ならびにその事前合意を予め包括的に行う本協定11条の実施取極および付属書からなっている。それらの主要な内容な次のとおりである( 表1−1 および 表1−2 ならびに 図1 参照)。
(1) 本協定
1)原子力の平和的利用のための両国政府間の協力(第2条)
 両国政府は、専門家および情報の交換、核物質等の供給ならびに役務の提供につき協力することを規定している。
2)貯蔵(第3条)、管轄外移転(第4条)、再処理・形状内容の変更(第5条)および濃縮(第6条)
 この協定にもとづいて受領された核物質等を貯蔵、管轄外移転、再処理・形状内容の変更または濃縮(20%以上)する際には、両国政府の事前の合意を要することを規定している。
3)核物質防護(第7条)
 本協定にもとづいて受理された核物質等については、適切な防護の措置がとられなければならない。
4)平和的利用の規定と保障措置(第8条、第9条)
 本協定にもとづく協力は、平和的目的に限って行われ、本協定にもとづいて受理された核物質等は、いかなる核爆発装置の研究または開発のためにも、また、いかなる軍事的目的のためにも使用してはならないことを規定している。
 さらに、このため、両国政府は本協定にもとづいて受領された核物質等に関し、両国政府がそれぞれ国際原子力機関と締結した保障措置協定にもとづく保障措置等が適用されることが規定されている。
5)包括同意取極(第11条)
 第3条、第4条および第5条により規律される活動に関し、右活動を長期、安定的な基礎の上に行うため、個別の取極を作成することが規定されている。
(2) 実施取極(本協定第11条に基づく)
1)本協定第3条(貯蔵)、第4条(管轄外移転)、および第5条(再処理・形状内容の変更)の活動に関する包括同意(第1条)
(a) 両国が付属書に記載されている施設での再処理・形状内容の変更、貯蔵、付属書に規定されている施設間の使用済燃料の管轄外移転に合意すること
(b) 両国が文書により指定された第三国への原料物資および低濃縮ウランの移転に合意すること
(c) 両国は、第三国に当該第三国の施設が、付属書に記載されていることを通告し、必要な場合には両国が第三国に再処理・形状内容の変更、貯蔵、照射および関連核物質の返還(回収プルトニウムの場合には、付属書に規定された指針に従うことが必要)に同意を与えることが規定されている。
2)付属書
 付属書1には、再処理・形状内容の変更、貯蔵に係わる施設、付属書2にはプルトニウムが存する施設、付属書3には実施取極第1条に関するその他の施設、付属書4には計画中、または建設中の施設で付属書1、2、または3に追加されることが予定される施設、付属書5には回収プルトニウムの国際輸送のための指針が記されている。
3)回収プルトニウム海上輸送指針
 この協定では、英仏において、再処理により回収されたプルトニウムをわが国に返還する国際輸送について、この協定実施取極付属書5に示された指針にそって行われる航空輸送のみが包括同意の対象にされ、それ以外の方法による輸送(例えば海上輸送)については、米国の個別合意が必要とされていた。
 しかしながら、その後、海上輸送についても包括同意の対象とし、回収プルトニウムの返還を安定的に行う可能性について検討していくことが有意義であるという点で、日米間の認識が一致し、このような認識のもとに日米間で交渉が行われた結果、1988年10月18日、この協定実施取極付属書5が修正され、同付属書にそった海上輸送についても、包括合意のもとで行い得ることとなった。
<図/表>
表1−1 日米原子力協定での規定事項(2000年5月)(1/2)
表1−2 日米原子力協定での規定事項(2000年5月)(2/2)
図1 新日米原子力協定の概要

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<関連タイトル>
日本の原子力に関する国際協力 (13-03-03-01)

<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力年鑑 平成4年版(1992年11月)
(2) 外務省原子力課(監修):原子力国際条約集、(社)日本原子力産業会議(1993年6月10日)、p.6−11
(3) 科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック 1994年版、(社)日本原子力産業会議(1994年3月)
(4) 原子力委員会(編):原子力白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1993年12月)
(5) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成5年版、大蔵省印刷局(1994年3月)
(6) (社)日本原子力産業会議(編集発行):原子力平和利用に関するニ国間協力、第11章国際協力の推進、原子力ポケットブック2002年版(2002年11月8日)、p.382−387
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