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<概要>
 (一社)日本原子力産業協会(原産協会、JAIF)の事業と概要を、2014年度事業計画(2014-16中期計画)を中心に述べる。本協会は、原子力基本法が制定された翌1956年(昭31)に、産業界が中心となって、原子力利用の促進に努める目的で発足した「(社)日本原子力産業会議」を基にしている。2009年にはアジア地域の原子力発電の普及に協力するため(一財)原子力国際協力センター(JICC)を設立した。2012年には法改正により「(一社)日本原子力産業協会」として新たな体制となった。
 原産協会の事業は、原子力利用に関する諸情報の発信、資料公開、説明努力等による社会の合意形成、内外の原子力利用状況と技術の調査等の調査研究、原子力利用に関する提言・意見の発表及び行政府への意見具申、原子力関係機関と産業界の協力、人材育成等のための連絡・提携、協会員への情報提供等である。2014-16年度中期計画では、これら事業は、福島第一原発事故災害からの早期復興に関連する事業を含めた「原子力の国民理解の促進に関する事業」、「原子力関連の人材確保・育成に関する事業」、「国際協力に関する事業」、及び「原産協会の会員に関する事業」に大別され推進される。
<更新年月>
2014年12月   

<本文>
1.概要
1.1 日本原子力産業協会の目的、事業と予算
 本協会の目的は、社会の発展と原子力利用の重要性に着目し、原子力の平和利用の可能性が最大限に活用されるよう、日本の原子力産業界と関連する各界が協同し、国際社会との連携と共に国民の観点から原子力の利用促進に努めることである。目的達成のため以下の事業を行う。2014年度の事業費は約7.4億円である。
 (1)原子力利用に関する合意形成(諸情報の発信、資料公開、説明努力など)
 (2)原子力利用に関する調査研究(内外の利用状況と技術の調査など)
 (3)原子力利用に関しての提言、意見の発表及び政府に対する建議(提言・意見の公表など)
 (4)内外の原子力関係諸機関及び産業界との連絡提携(内外事業者協力、人材育成など)
 (5)会員相互の連絡提携など(会員への情報提供など)
1.2 今日までの歴史
 表1に本協会の今日までの歴史の概要を示す。1955年に原子力基本法が成立した翌1956年に(社)日本原子力産業会議が発足した。2006年に改組して(社)日本原子力産業協会と改称し、2012年には公益法人制度改革により(一社)日本原子力産業協会(原産協会、JAIF)となった。2014年には、理事会の下に新たに事務局次長(経営管理職)を置いて本協会全体の管理・統括の効率化を図った。2009年に(一財)原子力国際協力センター(JICC:JAIF International Cooperation Center)を設立し、アジア諸国等における原子力発電の円滑・適切な導入に協力している。
1.3 組織
 図1に2014年の原産協会の組織を示す。原産協会は総会、理事会及び事務局で運営される。理事会は20名以内の理事で構成され、理事の1名は会長、1名は副会長、1名は理事長、3名以内が常務理事(業務執行理事)である。
 協会の事業は業務執行理事(常務理事)の下にある「事務局」が執行する。2014年の組織改正により、経営管理部門と事業部門を合わせ統括する事務局次長(経営管理職)が事務局に置かれた。事務局には5部がある。経営管理は企画総務部が担当し、事業は政策・コミュニケーション部、国際部、地域交流部及び人材育成部の4部が担当する。
1.4 「原子力産業安全憲章」と「経営理念」
(1)原子力産業安全憲章
 原産協会は、原子力利用の大きな有用性とその潜在的な危険性に注目し、その利用に当たっては安全確保が大前提であると考えている。そこで、原子力関係の事業に携わる者すべてが常に心しなければならない理念を検討し、2006年(平成18)に安全・使命・責任、安全性向上、職場環境、情報公開と学習、事業運営等に関する五カ条の「原子力産業安全憲章」を制定した。表2に、その概要を示す。
(2)経営理念
 原産協会は、前述した「目的」と「安全憲章」を基に、以下のような経営理念を表明している。
・協会の使命(Mission):原子力の平和利用を促進し社会の持続的な発展への貢献。
・協会の構想(Vision):1)原子力利用の価値の向上、2)原子力利用による利益の共有、3)原子力利用に対する信頼の確保。
・協会の意義(Value):1)客観性(原子力と社会の諸問題について、第三者の立場から長期的かつ俯瞰視点に立った活動)、2)多様性(多様な会員による異分野・異業種間の相互交流を通して、多様な意見を踏まえた先見性のある活動)、3)国際性(海外関係者・機関との信頼を基に国際的視点での協力)。
1.5 会員
 原産協会の会員には、正会員と賛助会員がある。正会員(社員)は、協会の目的に賛同して入会した日本国内の民間企業、関係団体、研究開発機関、大学、地方自治体など443社(2014年現在)である。賛助会員は事業を賛助するために入会した団体である。会員は年会費を納める。
 社員総会は本協会を主体的に運営する要であり、全ての正会員で構成され、1)会員の入会・退会・除名、2)理事と監事の選任・解任、その報酬の決定など、3)決算の承認、4)基本財産の処分と除外、5)定款の変更、6)解散、などの事項を検討・決定する。
2.日本原子力産業協会の事業の概要(中期計画、2014〜2016年度)
 原産協会は、本協会の目的に沿い年度毎に事業計画を立てそれを遂行するが、当該期間は福島第一原発事故の早期復興に向けた支援を継続するとともに、日本の原子力利用の再生に向けて、国民の理解促進、人材の確保と育成、国際協力の推進などに重点を置いた事業に取組む。また、会員の満足度向上による会員増加を図る。
2.1 国民の理解促進に関する事業(表3
 大きな課題は、福島第一原発事故の被災者の支援と被災地域の復興である。このため、関係機関と連携し、自治体支援活動と地域との連帯活動を行う。
 また、
 ・年次大会やシンポジウム等を通して、原子力の必要性、重要性を社会へ広く発信する、
 ・発信力のあるオピニオンリーダーへの働きかけを強化するため、情報発信先データベースを構築し、効果的に情報を発信する、
 ・将来を担う若い世代や女性のエネルギー、環境問題への認識を高め、理解層の拡大を図る、
 ・多様なネットワーク等を通じた活動を行う、
 ・原産新聞、ホームページ等の情報発信ツールの改善を行い、速報性を高めるとともに、メッセージ性の高い情報を発信する、
等の事業を行う。
2.2 人材確保・育成に関する事業(表4
 戦略的に人材育成を進めるため、原子力人材育成ロードマップを策定し、わが国の人材育成の中核となる組織設立の検討を行う。また、国際的な視野を持ち世界で活躍する人材の育成に向け、海外の有識者等との交流や、海外派遣等の事業に取組む。
2.3 国際協力推進に関する事業(表5
 東アジア原子力フォーラムの定着化と、二国間・多国間での情報交換・人的交流を推進する。また、会員企業に海外関係国・地域の情報を提供するとともに、在日大使館と連携したビジネス交流イベント等を実施し国際展開に資する。
 さらに、(一財)原子力国際協力センター(JICC)を利用し、原子力関係各方面と連携して、アジア諸国の原子力発電導入に必要な人材の育成、知識の普及、法制度整備等に協力するワークショップや研修会の開催、専門家の派遣、関係者の招聘等の活動を行う(図2)。
2.4 会員サービスに関する事業(表6
 原産協会の会員は、広範なネットワークを形成している。このネットワークを通じ原産協会は、原子力事業運営に役立つ諸情報を提供し事業者の理解促進・社会合意の形成、規制対応・基盤整備を促し、会員の満足度の向上と国際協力・国際展開及び会員連携により活動基盤の強化を図る。
(前回更新:2006年6月)
<図/表>
表1 日本原子力産業協会の歴史概要
表1  日本原子力産業協会の歴史概要
表2 日本原子力産業協会、「原子力産業安全憲章」の概要
表2  日本原子力産業協会、「原子力産業安全憲章」の概要
表3 国民の理解促進に関する事業(2014-16年度)
表3  国民の理解促進に関する事業(2014-16年度)
表4 人材確保・育成に関する事業(2014-16年度)
表4  人材確保・育成に関する事業(2014-16年度)
表5 国際協力・国際展開の支援に関する事業(2014-16年度)
表5  国際協力・国際展開の支援に関する事業(2014-16年度)
表6 会員サービスに関する事業(2014-16年度)
表6  会員サービスに関する事業(2014-16年度)
図1 日本原子力産業協会の組織
図1  日本原子力産業協会の組織
図2 原子力導入計画国と日本行政府・関係機関とJICCの役割
図2  原子力導入計画国と日本行政府・関係機関とJICCの役割

<関連タイトル>
日本原子力産業協会の活動 (13-02-02-06)
環太平洋原子力協議会(1998年バンフ会議まで) (13-01-03-09)
アジア原子力協力フォーラム(FNCA) (13-01-03-22)
日本政府のアジア地域協力 (13-03-02-04)
日本の原子力に関する国際協力 (13-03-03-01)
アジアにおけるエネルギー動向 (01-07-02-10)

<参考文献>
(1)(一社)日本原子力産業協会 概要、http://www.jaif.or.jp/about/overview/
(2)(一社)日本原子力産業協会 定款、http://www.jaif.or.jp/about/articles/
(3)(一社)日本原子力産業協会 原子力産業安全憲章、http://www.jaif.or.jp/about/charter/
(4)(一社)日本原子力産業協会 経営理念、http://www.jaif.or.jp/about/philosophy/
(5)(一社)日本原子力産業協会 協会のあゆみ、http://www.jaif.or.jp/about/history/
(6)(一社)原子力国際協力センター 事業概要、http://www.jaif-icc.com/activities.html
(7)(一社)日本原子力産業協会 2014年度事業計画と予算、
http://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/about/2014jigyo_keikaku.pdf
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