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<概要>
 昭和54年1月以降、昭和56年3月末までに発生した放射性同位元素に係る紛失、被ばく等の事故等は、紛失4件、被ばく1件、汚染3件、その他1件であり、昭和54年1月から昭和55年3月末までに6件、昭和55年度が3件であった。なお、いずれの事故についても周辺公衆への影響はなかった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 昭和54年1月以降、昭和56年3月末までに発生した放射性同位元素に係る紛失、被ばく等の事故等は、紛失4件、被ばく1件、汚染3件、その他2件であり、発生した事故(放射線障害防止法令に基づき科学技術庁(現文部科学省)に報告のあったもの)等の概要は次のとおりである。
 なお、いずれの事象についても、周辺公衆への影響はなかった。

(1)昭和54年1月国立松山病院においてラジウム226、2ミリキュリー(74MBq)の針が1本紛失していることが判明した。針はその後、捜索を続けているが発見されるにいたっていない。

(2)昭和54年3月(財)倉敷中央病院においてラジウム226、管、10キュリー(370GBq)2本が紛失していることが判明した。管は、その後、倉敷市清掃センター焼却炉等で2本とも発見された。

(3)昭和54年5月、日立造船非破壊検査(株)大阪事業所桜島作業所において、非破壊検査装置の線源ホルダーがワイヤーからはずれ、コバルト60線源〔10キュリー(370GBq)〕が収納されていないことを知らずに従業員等が照射室に立入り、従業員1人が局部に被ばく〔全身吸収線量約12ラド(0.12グレイ)相当〕。本件に関し科学技術庁(現文部科学省)長官は、15日間の使用停止を命じた。

(4)昭和54年8月、尾張分析技術センター機器分析室におかれていたニッケル63、10ミリキュリー(370MBq)ガスクロマトグラフ装置が所在不明になっていることが判明。同装置は債権者の1人が移動したものであり、その後返還され、装置に異常のないことが確認された。

(5)昭和55年3月、文部省高エネルギー物理学研究所で測定器校正用線源ストロンチウム90、1ミリキュリー(37MBq)が紛失、翌日筑波町ゴミ捨場で発見された。

(6)昭和55年3月、通商産業商工業技術院電子技術総合研究所田無分室において、ラジウム226、10ミリグラム密封線源1本が所在不明となっていることが判明。その後の調査で、廃棄のため日本アイソトープ協会に引き渡していることが確認された。

(7)昭和55年5月、東京大学原子核研究所において密封容器に封入して使用すべきカリホルニウム252を実験室で開封して取扱ったため、その際同室にあった紙類、床等が汚染された。
 汚染物は回収隔離され、その汚染物中のカリホルニウム252の量の測定結果等から汚染物の研究所外への持出し及び排出のおそれはないものと判断された。

(8)昭和55年6月、京都大学工学部において、非密封の放射性同位元素を使用していた室を廃止した際の汚染除去が不徹底であったこと等のため管理区域外の室で放射性同位元素による汚染があることが判明した。この汚染からの教職員、学生等の被ばく線量は、人体の影響のあるようなものではないと判断された。

(9)昭和55年10月、日本アイソトープ照射協同組合において、線源貯蔵プールの水が汚染され、排出基準を超える濃度の汚染水が排水口を通じて近くの河川に放出されたことが判明した。原因は、照射用のコバルト60の線源が落下の衝撃等により破損したことによるものである。事業所付近の土壌及び下流の河川水のサンプリング測定の結果、周辺住民への影響はないものと判断されている。

<関連タイトル>
放射性同位元素等取扱事業所における事故等の年度推移(1998年度まで) (03-05-04-01)
放射性同位元素 (08-01-03-03)
放射性同位元素等取扱施設からの放射線(能) (09-01-02-07)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会(編):「昭和54、55年度の放射性同位元素取扱施設の事故・故障(放射線障害防止法に基づき報告があったもの)」、昭和56年度版 原子力安全白書、209-211、397?398.(1981)
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