<大項目> 原子力安全規制
<中項目> 原子力施設の安全規制
<小項目> 放射性廃棄物処理・処分の安全規制
<タイトル>
旧ソ連による放射性廃棄物の海洋投棄に関する我が国の対応 (11-02-05-04)

<概要>
 旧ソ連の放射性物質の日本海での海洋投棄が1993年4月に大々的に報じられて以来、我国においては、科学技術庁(現文部科学省)を中心として関係省庁等の協力を得て日本周辺における放射能調査を実施している。海洋の放射能調査については海上保安庁において実施しているが、1986年にチェルノブイル原子力発電所事故の影響が見られた以外は現在では特段の異常は認められてはいない。しかしながら、政府の放射能対策本部が中心となって関係省庁と相互の連絡、調整を緊密にその対応を図っている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.問題の発端
 平成4年12月末以来、旧ソ連・ロシアが極東海域において放射性廃棄物の投棄をしていた、との報道がなされていた。これに対して、外交ルートを通じて、事実関係について、ロシア側に詳細な情報提供方要請してきたところ、4月2日に至って、ロシア側は、旧ソ連の放射性廃棄物の海洋投棄の問題に関する政府委員会(Yablokov委員会)の調査結果を取りまとめた白書を公表した。

2.旧ソ連及びロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄の実態
 旧ソ連及びロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄は、北洋海域(バルト海、白海、バレンツ海及びカラ海)( 図1 参照)及び極東海域(日本海及びカムチャッカ半島南東岸沖)( 図2 参照)で実施されてきた。北洋海域の投棄物質の発生源は北洋艦隊及びムルマンスク船舶公社の原子力艦船であり、極東海域の投棄物質の発生源は太平洋艦隊の原子力艦艇である。
 北洋においては、1959年から1992年にかけて水深12mから380mの海域に、液体放射性廃棄物23,768Ci(879TBq)、および固体放射性廃棄物15,502Ci(573TBq)が投棄された( 表1 参照)。
 極東海域においては、1966年から1992年にかけて水深 1,100mから 3,700mの海域に液体放射性廃棄物12,337Ci(455TBq)、固体放射性廃棄物 6,812Ci(252TBq)が投棄された(表1参照)。
 これらの放射性廃棄物の核種構成、固体放射性廃棄物のパッケージ方法については、Yablokov委員会の調査においても詳細は判明していない。
 廃棄物体積については、報告があるのでこれから計算すると北洋海域の海域毎における液体放射性廃棄物の放射能濃度は 0.6E−2μCi/cm3〜 0.4μCi/cm3、極東海域においては 0.4E−4μCi/cm3〜 0.3μCi/cm3となっている。
 投棄された固体放射性廃棄物で注目に値するのは、北洋海域に投棄された、核燃料が入ったままの原子力潜水艦の原子炉6基と一部の燃料を抜き取ったものの 125体の燃料集合体が入ったままの原子力砕氷船「レーニン」の原子炉である。
 また、核燃料を抜き取った原子炉が北洋海域に10基、極東海域に2基投棄されている。なお、海洋投棄とは言いがたいが、1989年4月ノルウェー沿岸から約300km の地点において核弾頭を装備したソ連原子力潜水艦が沈没している。

3.これまでの我が国における対応状況
(1) 政府においては、これまでも放射能に関する重要な案件が発生した場合(チェルノブイル原子力発電所事故等)においては、放射能対策本部(本部長:科学技術庁(現文部科学省)長官)を中心に対応されてきた。今回の事態についても、関係省庁相互の連絡、調整を緊密に行うため、放射能対策本部幹事会を開催(4月5日及び4月13日) し、その後の対応について、以下の点を申し合わせが行われた。
a) ロシア政府に対してさらに詳細な情報提供を要請する。
b) 科学技術庁(現文部科学省)に、本件海洋投棄について専門家により技術的評価検討を行う「海洋環境放射能データ評価検討会」を設置する。
c) 日本海において科学技術庁(現文部科学省)、水産庁、海上保安庁、気象庁の調査船等による海洋環境放射能調査を実施する( 表2 および 図3 参照)。
(2) 4月15日に行われた日ロ外相会談において、放射性廃棄物の海洋投棄問題に関する日ロ合同作業部会の設置の合意がなされた。
(3) 日本海における海洋環境放射能調査の結果、異常なデータは検出されず、調査結果の最終取りまとめに基づき、8月30日の放射能対策本部幹事会において、「現在までの調査結果によれば、我が国国民の健康に対して影響が及んでいるものではない」との見解が発表された。
(4) 10月16日、ロシアは液体放射性廃棄物 900m3 (1.08Ci 、平均濃度1.28μCi/l )を投棄した。我が国の政府においては、10月20日に放射能対策本部幹事会を開催し、再度日本海における海洋環境放射能調査の実施を決定、即日実施開始された。
  その後、ロシアは予定していた2回目の投棄を中止した。
(5) 日本周辺における放射能調査については、我が国では科学技術庁(現文部科学省)を中心として関係省庁等の協力を得て実施している。海洋の放射能調査については、海上保安庁等によって実施しているが、1986年にチェルノブイル原子力発電所事故の影響が見られる以外は、特段の異常は認められない。

4.現在の対応
(1) 日ロ共同海洋調査の早期実施に向けての努力を続ける。
(2) 我が国国民への健康への影響を継続的に監視するため、平成5年度以降、日本周辺海域の海洋環境放射能調査の充実を図る。
<図/表>
表1 旧ソ連による放射性廃棄物海洋投棄の実態
表2 日本海海洋環境放射能調査概要
図1 旧ソ連・ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄場所(その1)
図2 旧ソ連・ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄場所(その2)
図3 旧ソ連・ロシアによる放射性物質の海洋投棄に係わる海洋環境調査海域

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<関連タイトル>
海洋投棄規制と実績 (05-01-03-10)
放射性廃棄物 (09-01-02-01)
海洋投棄規制と実績 (05-01-03-10)
廃棄物投棄に係わる海洋汚染防止条約(ロンドン条約) (13-04-01-03)
ロシア連邦による隣接海への放射性廃棄物の海洋投棄 (14-06-01-16)

<参考文献>
(1) ロシア連邦大統領府:ロシア連邦領土に隣接する海洋への放射性廃棄物の投棄に関する事実と問題(仮訳)、モスクワ、1993年
(2) 行松泰弘:旧ソ連・ロシアによる放射性物質の海洋投棄に関する我が国の対応、日本物理学会シンポジウム「旧ソ連による放射性物質の海洋投棄と我が国の対応」平成5年11月22日(東京大学山上会館);保健物理、29,129-131(1994)
(3) 原子力安全委員会:平成6年版原子力安全白書、大蔵省印刷局(平成7年2月)
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