<大項目> 原子力の行政・制度・政策
<中項目> 原子力関係法規・法令
<小項目> 原子力関係法令
<タイトル>
放射線障害防止に関する関連法規 (10-07-01-07)

<概要>
 放射線障害防止に関する関連法規は、民主・自主・公開の原子力基本法の三原則に基づいて制定されており、中心となる法規は「放射性同性元素等による放射線障害の防止に関する法律(略して放射線障害防止法)」である。放射線障害防止法は、政令、規則、告示等により更に細かく規定されている。関連法規としては、労働安全衛生法、国家公務員法、医療法薬事法、建築基準法等の法律及びそれに関連した政令、規則等がある。放射線障害防止法に関する政令、規則、告示等は、放射性同位元素等の取扱い数量の増加、利用形態の多様化等の実態に合わせ、かつ、また、国内外の放射線障害に対する知識の蓄積及び放射線防護技術の発展と、それらに基づいた国際放射線防護委員会ICRP)の勧告を取り入れ、逐次、改正を行っている。そして、基本は放射線業務従事者の放射線障害を防止することであるが、それだけでなく、放射線施設外に放射線を漏洩させ、或いは事業所内外の環境を汚染させ、一般の人に放射線障害が及ばぬよう公共の安全を確保することにしている。
<更新年月>
2001年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.放射線障害防止に関する法律の精神
 放射線障害防止に関する関連法規は、「原子力基本法、昭和30年12月19日、法律第186号」の精神(基本方針)に基づいた法体系をなしている。原子力基本法の基本方針とは、すなわち「原子力の研究開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨とし、(1)民主的な運営の下に、(2)自主的に行い、(3)成果を公開し、進んで国際協力に資する」というものである。

2.放射線障害防止法令(法律と命令)
 中心となる法規は「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律、昭和32年6月10日、法律第167号、(略して放射線障害防止法)」である。この法律で、「放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用及び放射性同位元素で汚染された物の廃棄、その他の取扱い」を規制している。その目的は、原子力基本法の精神に則り、(1)放射線障害を防止し、(2)公共の安生を確保することである。放射線障害防止法の目的が実際の放射線防護・管理において実現されるように、関連する政令、規則、告示等で、その趣旨が更に細かく規定されている。
 法律は立法府である国会が定めるが、政令、規則、告示等は、行政の「命令」であり、行政府である政府が定める。これらの命令は、法律で定められた原則、精神を、具体的な事例に対して適用できるようにしたものである。政令はここでは「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令、昭和35年9月30日、政令第259号、(略して放射線障害防止法施行令)」であり、政府(内閣)が決めるものである。また、規則は、ここでは「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則、昭和35年9月30日、総理府令第56号、(略して放射線障害防止規則)」を指す。放射線障害防止法を含めた関連の法規で、放射線障害防止に関連する規則には、内閣総理大臣が定める府令(総理府令)(科学技術庁(当時)の場合は総理府令)と各省大臣が決める省令(例えば「労働安全衛生法」の労働大臣(現厚生労働大臣)が決める「電離放射線障害防止規則」)とがある。規制に必要な細則(数値等)は、告示として主務官庁名を付して、例えば、科学技術庁告示として定められている。科学技術庁告示には複数あるが、規則(放射線障害防止規則)との関連で、特に重要な告示は「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(略して数量告示)」である。
 ただし、中央省庁等改革関係法施行法(平成11年12月22日、法律第160号)平成13年1月6日施行、中央省庁等改革のための文部科学省関係政令の整備等に関する政令(平成12年6月7日、政令第308号)及び中央省庁等改革のための科学技術庁関係総理府令の整備等に関する総理府令(平成12年10月20日、総理府令第118号)により、以前から制定されていた「放射線障害防止法」の法律及びそれに係る政令、規則、告示の名称、法令番号、及び制定公布日に変更はないが、法律は平成11年12月22日改正、政令は平成12年6月7日改正で、それぞれ平成13年1月6日施行、規則は平成12年10月20日に改正されている。更に規則及び告示(数量告示)については、それぞれ後述するように、国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告の国内法令への導入により平成12年10月23日に一部改正(規則)或いは全面改正(数量告示)され、平成13年4月1日に施行されている。これらの改正により法律、政令、規則及び告示の法令の文中に現れる省令名及び大臣名が変更になっている。例えば、総理府令は文部科学省令に、運輸省令は国土交通省令に、科学技術庁は文部科学省に、科学技術庁長官は文部科学大臣に、それぞれ名称が変更されている。また、総理府令は文部科学省令に一本化されている(規則の名称は総理府令として残る)。

3.放射線障害防止法の成立とその後の改正
 歴史的には、わが国の放射線障害防止に関する法規は、昭和23年の医療法施行規則(昭和23年11月5日、厚生省令第50号)がその始まりであり、X線 診療施設の遮蔽設計基準がまず最初に設定きれた。その後、海外からの放射性同位元素の輸入が行われ、放射線の利用が進むにつれて、放射性物質の取扱いに基準を設けて規制し、利用による放射線障害を防止する必要が生じたため、放射線障害防止法が昭和32年6月10日に制定公布、昭和33年4月1日に施行された。政令、規則、告示等も整備された(制定公布は、政令:昭和33年1月24日、規則及び告示:同年3月31日、施行は、政令、規則、告示のいずれも昭和33年4月1日)。以後、規制対象施設・事業所の増加、利用形態の多様化に伴う規制方法と実態とのずれを正し、より合理的なものにするため、関係法令の一部改正、全面改正が現在までしばしば行われている。これらの改正に当たっては、国内の事情とは別に、その時々のICRP勧告を検討しその趣旨を法令に取り入れ、国際的な基準及び規制に合致させるべく努力されている。
 国内の状況に対応するために行った法律改正(一部改正)は、昭和35年5月から平成11年12月まで数次にわたっている。一方、国外との関係では、政令、規則、告示等の改正に当たって、ICRP勧告を検討し、順次、取り入れているが、その主なものは以下のようである。最初の制定時[政令、規則、数量告示](1954年勧告)、昭和35年(1958年勧告)、昭和41年(1962年勧告)、昭和63年(1977年勧告)、平成12年(1990年勧告)。ここで年(和暦)は改正年、括弧内は取り入れたICRP勧告である。
 現行の放射線障害防止法、放射線障害防止法施行令、放射線障害防止規則の目次を、それぞれ 表1表2表3 に示す。

4.放射線障害防止に関する関連法規
 関連法規に「労働安生衛生法」、「国家公務員法」、「医療法」等がある。それぞれ、労働安全衛生法の電離放射線障害防止規則、国家公務員法の職員の放射線障害の防止に関する人事院規則、医療法の施行規則、等の細かい政令、規則、告示によって構成されている。さらに放射線医薬品に関する「薬事法」、放射線使用施設の設計に関する「建築基準法」、「道路運送車両法」の放射性同位元素等車両運搬規則等も関連法規である。放射性同位元素等の取扱いを規制することによって、放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的とした放射線障害防止法に対し、これらの関連法規はそれぞれの法がカバーする分野でそれぞれの立場で規制し、放射線障害を防止しようとするものである。関連法規では、対象は基本的には放射線業務従事者(放射線診療従事者も含む)の放射線障害防止であるが、例えば「放射性同位元素等車両運搬規則」のように、事業所施設内外に放射線を漏洩させ或いは環境を汚染させて、一般の人に放射線障害が及ばぬよう、一般住民も視野に入れた安全確保を図っている。
 これらの放射線障害の防止に関する諸法令の体系を、 図1 にまとめて示す。

5.放射線障害防止関連法令の改正と放射線審議会との関連
 放射線審議会は、文部科学省に設置されている審議会で、「放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年5月21日、法律第162号、平成11年12月22日改正)」に基づいて設置されたものである。この法律の目的は放射線障害防止の技術的基準を策定する上での基本方針を明確にし、かつ技術的基準の斉一化を図ることである。基本方針とは「放射線を発生する物を取り扱う従事者と一般国民の受ける放射線の線量を放射線障害を及ぼすおそれのない線量以下にすること」と定めている。放射線審議会は、所掌事務として、この法律によって委ねられた権限下にある事項を処理する。具体的には、法律の目的に従い、(1)放射線障害防止に関する技術的基準、(2)放射線の線量または放射能の測定方法について審議することができ、その審議事項について関係行政機関の長に意見を述べることができる。一方、関係する行政機関の長は、放射線障害防止に関する技術的規準を定める際には、放射線審議会に諮問し答申を受けなければならないと定められている。ICRP勧告を放射線障害防止法等の改正によって取り入れるような場合にも関係省庁からの放射線審議会への諮問が必要である。放射線審議会は学識経験者等からなる非常勤の委員(20人以内)によつて構成されている。そして実際の事務は、文部科学省 科学技術・学術政策局 原子力安全課 放射線規制室が担当する。
 なお、法規に関する以上の記述は平成13年8月末におけるものである。
<図/表>
表1 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(目次)
表2 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令(目次)
表3 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則(目次)
図1 わが国の放射線障害防止に関する法令体系

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<関連タイトル>
放射線防護の歴史 (09-04-01-01)
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作業者と一般公衆の防護 (09-04-01-11)

<参考文献>
(1) 放射線障害防止規則(一部改正)、数量告示(全面改正)、官報号外、第217号、(2000年10月23日)
(2) (社)日本アイソトープ協会(編集発行):、アイソトープ法令集(I)放射線障害防止関係法令 2001年版、(社)日本アイソトープ協会(2001)
(3) 中島 篤之助:「原子力三原則」、世界大百科事典第2版 プロフェッショナル版(株)日立デジタル平凡社(1998)
(4) 辻本 忠、草間 朋子(著):放射線防護の基礎、第2版、日刊工業新聞社(1992)
(5) (社)日本原子力産業会議(編集発行):放射線障害防止法規の解説、改訂版、(1974)
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