<大項目> 原子力の行政・制度・政策
<中項目> 世論・訴訟
<小項目> 原子力産業実態調査報告
<タイトル>
原子力産業実態調査報告(平成8年度) (10-05-03-01)

<概要>
 日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)は、毎年度、電気事業・鉱工業・商社における原子力関係の支出・売上・受注残高・人員等の実態並びに将来見通しに関する調査分析を行って、「原子力産業実態調査報告」という独立冊子の型で結果を発表している。ここでは、その平成8年度(1997年度)を対象期間とした第38回調査の結果の概要を紹介する。この調査・分析は、民間分野に限られるとはいえ、わが国の原子力界の実態に係る最大規模のものであり、原子力界の人にとって貴重な数値等の内容を含んでいる。ここで概要を記すのは、電気事業と鉱工業における原子力関係年間支出高と同見込み額、原子力関係従事者数と同見込み数、鉱工業の原子力関係年間売上高、受注残高、生産設備投資高、研究支出高(含、研究投資率)、商社の原子力関係年間取扱高などである。なお、上記調査に併せて実施された「鉱工業についてのアンケート調査」の概略結果についても紹介する。
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
 日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)は、原子力開発の当初から毎年度、電気事業・鉱工業・商社における原子力関係の支出・売上・受注残高・人員等の実態並びに将来見通しに関する調査・分析を行って、「原子力産業実態調査報告」という独立冊子の型で結果をとりまとめて発表している。趣旨は、原子力は「エネルギー技術」であり、原子力産業は常に技術力の維持・向上を図っていかなければならないので、適切な市場を確保しつつ、技術開発投資を続けて行く必要があり、このことが原子力産業の健全な発展にとって不可欠であるという認識に基づいている。
 1997年12月に発行された第38回調査の報告(文献1)は、平成8年度(1996年4月〜1997年 3月)を対象としたものである。調査表による回答社数は555社(内、原子力関係に実績を持つもの 419社)、「アンケート」への有効回答社数は200社前後(設問により異なる)であり、日本における原子力企業に係る調査としては最大規模のものである。ただし、「産業実態調査」であるので、政府・特殊法人・公益法人等の関連する実態は、この報告書中には含まれていない。

2.調査対象の分類と調査内容
 調査対象の企業を、電気事業(11社)、鉱工業( 385社)、商社(23社)に分類している。( )内の数は、調査回答社中、原子力関係に実績を持つもの 419社の内訳である。 調査事項は、電気事業については・原子力関係年間支出高・同見込み額(1、2、5年後を対象)・原子力関係従事者数(1997年 3月31日現在)・同見込み数(1、2、5年後)であり、鉱工業については・原子力関係年間売上高・受注残高(1997年 3月31日現在)・原子力関係年間支出高・同見込み額・原子力関係従事者数・同見込み数・原子力関係生産設備投資高・原子力関係研究支出高、商社については・原子力関係取扱高である。

3.電気事業
 原子力発電所の動向については、「原子力ポケットブック」(文献2)、「原子力年鑑」(文献3)等の別文献によった方が詳しい。
 電気事業の原子力関係支出高(平成8年度実績)は、前年度比−2.8%の1兆6218億円であった。その内訳比率は、建設費23%、核燃料費20%、運転維持費52%、準備費(試験研究開発費等)4%、その他 1%である( 図1 参照)。これらの金額については、今後の見込み額と共に 表1 に示した。また平成8年度と平成7年度の比を 表2 に示した。内訳のうち対前年度比で伸びたものは核燃料費(+16%)のみである。建設費の減少(−8%)は、建設中の炉の減少の反映であり、運転維持費の減少(−5%)は、プラント高経年化対策が実って来たためと考えられ、1kWh 当りの運転維持費は約 2.8円にとどまった。もともと構成比率は小さいが、試験研究開発費が−21%となったのもやゝ目を引く。
 電気事業の原子力関係従事者10,257人、うち技術系従事者(研究者および技術者)は 7,674人で、対前年比伸び率それぞれ+0.5%、+2.2%である。技術系従事者の内訳比率は、運転・保守部門が63%、調査・計画・管理部門12%、設計・建設工事部門11%、保健安全管理部門6%、核燃料部門4%、その他(廃棄物、RI、放射線利用等)2%である。なお、電気事業全体の総事業者中に占める原子力関係従事者数の割合は6.7%である。

4.鉱工業
 鉱工業の原子力関係支出高・売上高・研究支出高・研究投資率等を 表3 に示した。また鉱工業の原子力関係最終需要者への売上高構成を 図2 に示した。
 鉱工業の原子力関係年度間売上高は、前年度比+0.02%の、2兆0,391億円である。このうち鉱工業間の中間取引的な売上を除いた最終需要者(電気事業、政府など)への売上高でみると、前年度比−0.4%の1兆8,955億円である。全売上高についての内訳比率は原子炉機材部門34%、燃料サイクル部門15%、建設・土木部門9%、RI・放射線機器部門 8%、発変電機器部門 5%、その他製造部門(保守・メンテナンスが中心)29%である。これらのうち対前年度比で伸びたものは、燃料サイクル(+25%)、その他製造(+15%)、建設・土木(+6%)、RI・放射線機器(+4%)で、原子炉機材(−16%)と発変電機器(−18%)は大巾に減少した。燃料サイクル部門の伸びは再処理・廃棄物処理、濃縮機器の増加によるもので、核燃料集合体は減少した。原子炉機材は更に、原子炉機器・関係設備、原子力材料、機器据え付け等に分れるが、建設中の原子力発電所が少なくなっていることを反映して、そのいずれもが落ち込んでいる。全売上高の長期的な経年変化については、他の数値と共に 図3 に示した。
 原子力関係受注残高について図3に示されるように、傾向的には6年前から大巾な落ち込みを見せている。ただし、平成8年度に限れば、前年度比+ 3%の、 2兆 4,563億円となっているが、これは年間売上高の約 1.2年分でしかない。過去の調査によれば、受注残高の増減は通常2〜3年後の売上高に反映して来るといわれるので、今後少なくとも2〜3年後迄は売上高の低迷は避けられない見通しといえよう。
 原子力関係年間支出高は、前年度比−7%の 1兆6,894億円であった(表3)。その内訳比率は、生産支出高95%、研究支出高5%、その他原子力関係機関への出資金となっている。このうち生産支出高と、研究支出高中の海外技術導入費は対前年度で減っているが、研究支出高全体および原子力関係機関への出資金は、額は大きくないが相当伸びている。なお、今後の支出見込み額については、総額でいって、平成8年度に比して、1年後は−1%、2年後は−4%、5年後は+14%という数字が示されている。
 研究支出高は全支出高の中では 5%であった(表3)。研究投資率で、原子炉機材2.3%、RI・放射線機器3.6%などが、全体平均の3.9%より低いことは、商業化・実用化が早くから進んで来たことの反映であり、燃料サイクルが8.0%と高いのは、バックエンド部門などの研究開発投資が活発化して来ていることの反映であろう。
 なお、一般産業の研究投資率は平成7年度の値であるが2.7%といわれ、同年度の原子力関係の研究投資率(上記3.4%)は、依然としてやゝ平均より高いことが分る。
 原子力関係従事者数は48,938人、内技術系従事者は27,397人で、対前年度比では、共に−3%となった。長期的傾向としては、総従事者は昭和57年度以降、工員その他(8年度で14,477人)を中心に減少気味であるが、技術系従事者は(電気事業との和であるが)図3で見られるように、増加後頭打ちという傾向となっている。
 技術系従事者数の鉱工業と電気事業と合わせた合計数35,071人を、専門分野別に 表4 に示した。なお技術系以外も含めた民間企業の原子力関係総従事者は59,195人で対前年度−2%である。

5.商社
 商社については、実績があると回答して来た23社について、原子力関係取扱高が調査されたが、前年比+22%の 6,670億円、内、輸入取扱高が 3,631億円(+70%)、輸出取扱高78億円(+37%)は伸びているが、国内取扱高 2,962億円(−9%)は減少した。商社の年間取扱高は年度毎の変動が大きく、傾向は把握しにくいと云われるが、昭和58〜60年度頃をピークとして概して減り気味で、特に輸入取扱高はその頃の半分位である。
 以上の、電気事業、鉱工業、商社などの調査結果を総合して、 図4 に示した8年度の原子力産業の財・サービス・フローチャートが作られている。ここでは、最終需要者を電気事業、政府、公私立大・病院等、鉱工業設備投資、海外市場(輸出)の5つにまとめ、これらに対して、国内企業および海外からの財・サービスがどのように流れたかを示している。鉱工業相互間の中間取引は最終需要には入れられない。これによると平成8年度の国内原子力市場規模(最終需要者のうちの海外市場を除いたもの)は1兆9,534億円ということになり、その国内調達率は92%となる。なお、海外からの輸入総額は1,491億円(その多くは核原料・核燃料)で、輸出総額は455億円と輸入超過になっている。

6.鉱工業についてのアンケート調査
 日本原子力産業会議(現日本原子力産業協会)は、「鉱工業についてのアンケート調査」というものを実施した。このアンケートの設問は、設備の平均操業率、売上げ見通し、新規原子力発電所の建設基数減少の影響と対策、原子力技術者の現状と見通し、輸出状況の5項目で、有効回答社数は各( )内に示す 200前後であったが、設問により、違っている。
 平成8年度中の原子力関係主力製品製造設備の平均操業率(217社)は、60.2%で、前年度の63.3%より下った。採算可能ラインも併せて聞いたところ69.9%ということであったから、採算ベースに達していない。
 平成8年度の売上実績を100とした場合の1年後、2年後、5年後の売上見通し額(220社)は、平均して90.8、88.3、111.0となり、5年後には全体の2/3の企業が上ると見ているが、1、2年後は、下る又は変らないと見ている企業の方が多い。
 原子力発電所の建設中基数の減少により過去5年間売上高に影響があったとする企業( 152社)に、対策としての「組織改革」、「新規市場開拓」、「従事者等の配置」について聞いてみた。「組織改革」を行わなかったという企業は32%で、原子力部門の縮小・分離・他部門との統合を実施したという企業が37%、業務多角化等による(他の)原子力関連分野への参入・業務範囲拡大を図ったという企業が27%であった。「新規市場開拓」については、国内外の原子力関係分野以外における市場の開拓を行ったという企業が46%、国内原子力関係新規市場の開拓を行ったという企業が26%、海外原子力関係新規市場開拓を行ったという企業が 5%あった。「従事者等の配置」については、エネルギー分野等関連ある他部門へ変更又は配置転換を実施したという企業が32%、ほとんど関連のない他部門へ変更又は配置転換を実施したという企業が20%、運転中のプラントの関係業務へ変更又は配置転換を実施したという企業が12%であった。
 原子力技術者の現状と見通しについては、原子力関係技術者の確保状況(268社)では( 図5 参照)、質・量ともに十分と答えた企業が24%、量はよいが質が困難とした企業が41%、質・量ともに困難と答えた企業が27%で、一般的雇用環境の状況を反映して、量的な人材不足は改善傾向にあるが、質的需要に対してはなお不十分という状況は続いている。
 輸出状況については、輸出実績に係る回答(251社)では、平成8年度を含め過去に輸出実績がないという企業が79%もあり、過去に輸出実績があったが13%で、平成8年度に輸出実績があったとした企業は 8%(20社)しかなかった。今後の輸出計画に係る回答( 228社)では、平成9年度以降輸出計画があるという企業は15社しかなく、 134社は輸出を希望しないとしている。
<図/表>
表1 電気事業の原子力関係支出高実績と同見込み
表2 電気事業の原子力関係支出高(平成8年度実績)
表3 鉱工業の原子力関係支出高・売上高・研究支出高・研究投資率等
表4 民間の原子力関係技術系従事者数とその分類等
図1 電気事業の原子力関係支出高構成比(平成8年度実績)
図2 鉱工業の原子力関係最終需要者(電気事業、政府など)への売上高構成
図3 主な原子力関係指標の動向(昭和57年度〜平成8年度)
図4 原子力産業の財・サービス・フローチャート
図5 原子力技術者等の確保の現状

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<関連タイトル>
平成8年度電力供給計画(「電源開発の概要」から) (01-09-05-01)
平成8年度電力供給計画(資源エネルギー庁発表) (01-09-05-04)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議:原子力産業実態調査報告 第38回調査 平成8年度、日本原子力産業会議(1997年12月)
(2)科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック1997年版、日本原子力産業会議(1997年5月)
(3)日本原子力産業会議:原子力年鑑´97、日本原子力産業会議(1997年10月)
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