<大項目> 原子力の行政・制度・政策
<中項目> 世論・訴訟
<小項目> 訴訟関係情報
<タイトル>
四国電力伊方2号炉訴訟の経緯 (10-05-02-04)

<概要>
 本訴訟は、四国電力(株)伊方発電所2号炉の増設に係る原子炉設置許可処分(昭和52年(1977年)3月30日)の取消しを求めた行政訴訟(昭和53年(1978年)6月提訴)である。
 平成12年(2000年)12月15日、松山地方裁判所は住民の請求を棄却する判決を言い渡した。これに対し原告住民の控訴がなく判決が確定した。
<更新年月>
2002年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.訴訟の概要と判決
 本訴訟は、伊方発電所2号炉(四国電力(株)、PWR、認可出力56.6万kW)の増設に際して、内閣総理大臣が行った原子炉等規制法第23条に基づく原子炉設置変更許可処分(昭和52年3月30日)に対し、周辺住民33名(その後21名)が許可処分の取消しを求めて内閣総理大臣を被告として昭和53年6月9日に松山地方裁判所に提訴した行政訴訟である。
 わが国の原子力発電に関する行政訴訟としては、4番目の訴訟である。
 平成12年(2000年)12月15日、松山地方裁判所(松山地裁、裁判長:豊永多門)は住民の請求を棄却する判決を言い渡した。これに対し原告住民の控訴がなく、判決が確定した。四国電力伊方2号炉訴訟の主な経緯を 表1 に示す。

2.原告・被告の主張と判決理由(概要)
(1)原告[住民]
 高知大などの研究グループが平成8年に発表した「伊方沖約5−8キロに最も活動度の高いマグニチュード(M)6.8−7.2(最大マグニチュード7.6)の地震が起り得る」とする研究結果を根拠に、伊方沖の活断層を「規模は小さく、活動性も低い」と評価した国の安全審査は不十分である。また、昭和63年(1988年)6月に同原子力発電所から約1キロの山中に米軍のヘリコプターが墜落した事故を例に挙げ、立地、安全審査の不備を指摘した。
(2)被告[国]
 過去の地震歴の調査や活断層の調査を適切に行い、耐震設計に反映させている。また、2号機設置許可後に新しい知見が現れたが、それらを踏まえも耐震安全性は十分確保されている。また、航空機の墜落事故の危険性については、航空機が墜落し衝突する確率は極めて小さく無視しうる、とした。
(3)判決理由等
 最大の争点となった原子力発電所周辺のA級活断層の有無について、原告が主張した伊方沖の瀬戸内海でのA級活断層の存在と最大マグニチュード7.6の地震発生の可能性を示唆した岡村真・高知大学理学部教授(地震地理学)の調査結果を認め、「活断層については、現在では安全審査の判断は結果的に誤りであったことは否定できない」とした。しかし、原子力発電所自体の安全性については、「兵庫県南部地震(阪神大震災)を踏まえ、同海域の断層を考慮した解析でも、原子炉には安全性があることが認められる」などとして、「安全審査全体が不合理であり許可処分が違法とはいえない」とした。
 また、航空機の墜落事故の危険性などについては、「原子炉の異常発生、異常防止対策などからみて、安全審査の判断に見過ごせない誤りや欠落があるとはいえない」とし、退けた。
 上記判決言い渡し後、裁判長は「原子炉事故等による深刻な災害が引き起こされる確率がいかに小さいといえども、重大かつ致命的な人為ミスが重なるなどして、ひとたび災害が起こった場合、直接的かつ重大な被害を受けるのは、原告らをはじめとする原子炉施設の周辺住民である。原告らの指摘する国内外の原子炉施設における事故・事象等の発生それ自体が、周辺住民に不安を抱かせる原因となっていることは否定できない事実であり、これらの不安に誠実に対応し、安全を確保するため、国や電気事業者等に対しては、今後とも厳重な安全規制と万全の運転管理の実施を図ることが強く求められる。」と付言した。

3.本訴訟参考メモ
 四国電力伊方原子力発電所2号機(2号炉)[愛媛県西宇和郡伊方町九町越]について、国(設置許可当時は内閣総理大臣、判決当時は通商産業大臣(現経済産業大臣))の原子炉設置許可処分の取り消しを求め、周辺住民33人(原告)が昭和53年(1978年)6月9日に国(被告)を相手として松山地裁に提訴した。その後、提訴取り下げや死亡で原告は21人になった。施設の耐震性や地盤に関する安全審査の妥当性が主な争点であるが、住民側が弁護士に代理人を依頼しない「本人訴訟」であったことから、審理が長期化し提訴から22年6か月が経過した。
 この間、阪神大震災(平成7年(1995年))の発生で、耐震設計に関する安全審査の適否も争われた。また、茨城県那珂郡東海村にある(株)ジェー・シー・オー(JCO)ウラン加工工場臨界事故(平成11年(1999年))により、原子力施設への不信感が強まるなか、原子力発電所の安全性について、69回の口頭弁論が行われ、2000年3月に結審した。
<図/表>
表1 四国電力伊方2号炉訴訟の主な経緯

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<関連タイトル>
日本の原子力発電所の分布地図(2001年) (02-05-01-05)
東京電力柏崎・刈羽1号炉訴訟の経緯 (10-05-02-05)
発電用原子炉の安全規制の概要(原子力規制委員会発足まで) (11-02-01-01)

<参考文献>
(1) 原産新聞編集グループ(編):伊方に続き「志賀、女川は合法」との判断相次ぐ、原告の請求退ける、原子力産業新聞(2000年12月21日付け)第2068号、(社)日本原子力産業会議(2000年12月21日)2面
(2) 日本原子力産業会議:原子力施設に係る主な訴訟の状況、原子力ポッケットブック2001年版、p.176-177
(3) 産経新聞夕刊(2000年12月15日)11面:伊方原発増設訴訟/松山地裁「国の安全審査不十分、取り消し請求は棄却」、同新聞朝刊(2000年12月16日)26面:伊方原発増設訴訟/松山地裁「安全審査に一部誤り、許可取り消しは棄却」
(4) 朝日新聞夕刊(2000年12月15日)23面:伊方原発訴訟で松山地裁「国の当時の判断誤り、住民訴えは棄却」
(5) 松山大学のホームページ、田村の判決集(等)「松山地裁の伊方原発訴訟判決<要旨>」http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/^tamura/ikatagennpatuyousi.htm(2002年2月)
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