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<概要>
 原子力委員会は、原子力基本法に基づき、原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的運営を図る目的をもって、1956年(昭和31年)1月1日、総理府に設置された。その後、1978年(昭和53年)10月4日に原子力基本法等の一部改正法が施行され、原子力委員会が有していた機能のうち、安全確保に係る事項を所掌する原子力安全委員会が新たに設置された。2001年(平成13年)1月6日の中央省庁再編成により、原子力委員会は内閣府に設置されることとなった。
 2012年(平成24年)6月、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえて、原子力規制委員会が設置され、核物質防護に関する事務が同委員会に移管された。2014年(平成26年)12月、原子力委員会の所掌事項を、原子力利用に関する政策の重要事項に重点化する趣旨の原子力委員会設置法が改正され、委員長及び委員2名から成る委員会が発足した。
<更新年月>
2015年10月   

<本文>
1.設置の経緯等
 原子力委員会は、原子力基本法に基づき、原子力の研究、開発及び利用に関する国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的運営を図る目的をもって、1956年(昭和31年)1月1日、総理府に設置された。
 1978年(昭和53年)10月4日に原子力基本法等の一部改正法が施行され、従来の原子力委員会が有していた機能のうち、安全確保に関する事項を所掌する原子力安全委員会が新たに設置された。
 また、2001年(平成13年)1月6日の中央省庁等改革により、原子力委員会は内閣府に設置されるとともに、これまで科学技術庁長官である国務大臣を充てていた委員長については、学識経験者が委員長として就任することとなった。
 2012年(平成24年)6月、2011年(平成23年)3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故(以下、「東電福島事故」という。)を踏まえて原子力規制委員会が設置され、核物質防護に関する事務が同委員会に移管された。その後、東電福島事故等による原子力をめぐる大きな環境の変化を踏まえて原子力委員会の在り方について抜本的な見直しが行われ、2014年(平成26年)12月、原子力委員会の所掌事項は、原子力利用に関する政策の重要事項に重点化された(原子力委員会設置法(昭和三十年十二月十九日法律第百八十八号)の一部を改正( 最終改正:平成 二六年六月二七日法律第八七号))。新たに国会の同意を受けた委員長及び委員2名から成る委員会が発足した。
2.役割
 原子力委員会は、内閣府に設置され、内閣府に置かれた原子力政策担当室が原子力委員会の庶務を担当し、関係行政機関との事務の調整を行っている。関係行政機関には、外務省、総務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省、文部科学省、経済産業省等があり、原子力委員会の所掌事項に関する決定を尊重しつつ、原子力行政事務が行われている。
 原子力委員会では、将来を展望し、原子力利用の在り方、そのための研究活動、人材の養成・確保等について基本的考え方を策定し、この考え方に基づき、必要に応じて今後の取組等に関する提言等を示し、具体的な政策の実施を促すとしている。
 基本的考え方に基づく重点項目として、1)東電福島事故に係る対応、2)再生可能エネルギーや原子力等の各エネルギー源の位置づけの検討、3)原子力分野における研究開発と人材育成、4)原子力に対する国民の理解と協力のための活動等が挙げられている。
 原子力委員会は定例会議及び臨時会議において、審議した結果について声明や見解を発出するとともに、2015年(平成27年)5月に原子力損害賠償制度専門部会を設置し、今後発生し得る原子力事故に適切に備えるための原子力損害賠償制度の在り方について専門的かつ総合的な観点から検討を行っている。
3.活動
 以下、2001年(平成13年)以降に行われた活動について示す。
3.1 2001年1月〜2007年3月における活動
(1)原子力委員会の検討体制の整備(2001年1月〜7月)
 2001年(平成13年)1月に中央省庁の再編が行われ、わが国の原子力行政体制も一新された。再編後も原子力委員会は原子力利用に関する企画、審議、決定を行う機関として、内閣府に設置されることとなったが、原子力委員会は、省庁再編後の自らの役割について検討を行った。まず、2001年(平成13年)1月にまとめられた「21世紀の原子力委員会の発足に当たって」においては、2000年(平成12年)11月に策定した「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」を具体化し、着実に進めていくこと、及び柔軟かつ機動的な組織として、国民や各地域の方々と常に接し、さまざまな意見を十分に反映していく努力を行うこととしている。そのため、原子力に関するすべてについて、国内外を問わず、「いつでも、どこでも、だれとでも」対話することを表明している。 また、2001年(平成13年)4月には、「原子力委員会からの緊急メッセージ」を公表し、「プルサーマル計画」を含む原子力政策全般について説明するとともに、原子力施設立地地域の住民と、率直な話合いをしていくことを明らかにした。このような方針に基づき、原子力委員会は、(イ)原子力長期計画の着実な具体化及び推進、(ロ)原子力政策における市民参加及び国民理解の推進、の2つの事項に重点を置いて検討を行うこととし、7月に、総合企画・評価部会、市民参加懇談会及び5つの専門部会を設置し、所要の調査審議を行うこととした。なお、専門部会等は、適宜適切に必要なときに設置し、調査審議が終了すれば廃止することとなった。
(2)重要課題に関する委員会決定等(2001年1月〜2003年9月)
 原子力委員会は、原子力に関する重要な課題について調査審議を行い、その結果を委員会決定、声明、見解等として取りまとめ、公表している。2001年(平成13年)6月には、ITER計画懇談会報告書の取りまとめに際して、「国際熱核融合実験炉(ITER)計画の推進について」を決定した。2001年(平成13年)5月に公表された米国の国家エネルギー政策を受けて、6月に「わが国の原子力政策と米国との協力について」を公表した。8月には、日本原燃株式会社から青森県及び六ヶ所村に対するMOX燃料加工工場の立地協力要請に関し、「日本原燃株式会社によるMOX燃料加工工場の立地協力要請について」を取りまとめた。12月には、「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定され、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の両法人を廃止・統合し、新たに独立行政法人を設置することとなったことを受け、「日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の廃止、統合等について」との見解を取りまとめるとともに、参与からのヒアリング等による調査審議を行い、2002年(平成14年)4月には、「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての基本的な考え方」を決定した。
 2002年(平成14年)9月には、原子力発電所における自主点検作業記録に係る不正等に対し、「核燃料サイクルの推進について」を公表した。10月には、北朝鮮の核開発に関する米国国務省の発表を受け、「北朝鮮の核開発について(緊急声明)」を公表した。12月には、「もんじゅ」について、原子炉等規制法に基づく審査を行い、答申を出すに当たり、「高速増殖炉サイクル技術の研究開発についてのメッセージ」を公表した。
 また、同月に、4月に公表した「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての基本的な考え方」をより具体化した「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての各事業の重点化及び運営等に関する方針」を公表した。
 2003年(平成15年)1月には、北朝鮮の「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)」からの脱退声明を受け、「北朝鮮の核兵器の不拡散に関する条約(NPT)からの脱退声明について(緊急声明)」を公表した。5月には、2002年(平成14年)4月に決定した「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての基本的な考え方」に示した「横断的事項」についてより具体化した方針を示した「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合と独立行政法人化に向けての横断的事項に関する方針」を公表するとともに、「日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構の廃止・統合する独立行政法人化への原子力委員会の関与について」を公表した。8月には、プルトニウム利用を進めるにあたり、平和利用に係る透明性向上の観点から「わが国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」を公表した。
 また、同月には、2002年(平成14年)11月より開催した「核燃料サイクルのあり方を考える検討会」で提起された意見などを踏まえ、核燃料サイクル政策に対する議論を整理し、原子力委員会の考え方を示した「核燃料サイクルについて」(文献3)を公表した。9月には、日本原燃(株)六ヶ所再処理工場の竣工時期等の変更を受けて、「六ヶ所再処理工場の竣工時期等の変更についてのメッセージ」を公表した。
 なお、1998年(平成10年)4月から2003年(平成15年)9月までに行われた原子力委員会決定等の一覧を表1−1表1−2 および 表1−3 に示す。
(3)重要課題に関する委員会決定等(2003年10月〜2007年3月)
 2004年(平成16年)1月に委員長及び委員3名が交代し、新たな体制の下での活動を開始した(「年頭に当たっての所信」の公表)。同月より「長計についてのご意見を聴く会」を開催するなど原子力長期計画のあり方やその策定に関して幅広く国民の意見を伺い、その結果と計画の進展や情勢の変化などを踏まえ、今後10年程度の期間を一つの目安として、新たな計画を策定するために、2004年(平成16年)6月に新計画策定会議を設置し、審議を重ねてきた。このようにして策定された「原子力政策大綱」は、2005年(平成17年)10月に原子力委員会決定し、これに関する閣議決定が行われた。
 専門部会等で取りまとめられた報告書について、原子力委員会としての考え方が示された。内容は、2004年(平成16年)7月「加速器の現状と将来」について、2005年(平成17年)11月「第三段階核融合研究開発基本計画における今後の核融合研究開発の推進方策」について、2006年(平成18年)4月「長半減期低発熱放射性廃棄物地層処分」について、2006年(平成18年)5月「高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究フェーズII最終報告書」に関する原子力委員会の対応について、2006年(平成18年)8月「原子力に関する研究開発の推進方策について」、2006年(平成18年)8月 原子力部会報告書〜「原子力立国計画」〜について、2006年(平成18年)10月「食品への放射線照射について」、2006年(平成18年)12月「RI・研究所等廃棄物(浅地中処分相当)処分の実現に向けた取り組みについて」である。
 2006年(平成18年)10月、北朝鮮による核実験に対し、「北朝鮮による核実験は、わが国のみならず、東アジア及び国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であり、今回の北朝鮮の発表は、このような国際社会の核不拡散に関する取組に打撃を与えるもので兵器開発計画を即時に放棄し、国際的な核不拡散体制に速やかに復帰することを強く求める」旨声明を発表した。また、2006年(平成18年)12月に、文部科学省が取りまとめた「ナトリウム冷却高速増殖炉(MOX燃料)、先進湿式法再処理及び簡素化ペレット法燃料製造」の組合せによるシステム概念を選定し、その実現可能性に寄与する革新的な要素技術の成立性を見極めること等を目指す「高速増殖炉サイクルの研究開発方針について」、経済産業省が取りまとめた「原子力立国計画」等これまでに国の関係各機関が示した今後の高速増殖炉サイクル技術の研究開発の在り方に関する検討結果に基づき、今後10年程度の間におけるわが国の高速増殖炉サイクル技術の研究開発に関する基本方針と配慮すべき事項を決定した。
 原子力政策大綱において示された基本的な考え方に基づき、食品照射専門部会、政策評価部会、国際問題懇談会、原子力防護専門部会などが設置された。
 2003年(平成15年)10月から2007年(平成19年)3月までに行われた原子力委員会決定等の一覧を表2−1表2−2および表2−3に示す。
3.2 2007年4月〜2015年10月における活動
 2007年(平成19年)4月から2015年(平成27年)10月までに行われた原子力委員会による答申・決定等の一覧を表3−1表3−2表3−3表3−4表3−5および表3−6に、声明・見解等の一覧を表4−1および表4−2に示す。
(前回更新:2007年7月)
<図/表>
表1−1 原子力委員会決定等の一覧(1998年4月〜2003年9月)(1/3)
表1−1  原子力委員会決定等の一覧(1998年4月〜2003年9月)(1/3)
表1−2 原子力委員会決定等の一覧(1998年4月〜2003年9月)(2/3)
表1−2  原子力委員会決定等の一覧(1998年4月〜2003年9月)(2/3)
表1−3 原子力委員会決定等の一覧(1998年4月〜2003年9月)(3/3)
表1−3  原子力委員会決定等の一覧(1998年4月〜2003年9月)(3/3)
表2−1 原子力委員会決定等の一覧(2003年10月〜2007年3月)(1/3)
表2−1  原子力委員会決定等の一覧(2003年10月〜2007年3月)(1/3)
表2−2 原子力委員会決定等の一覧(2003年10月〜2007年3月)(2/3)
表2−2  原子力委員会決定等の一覧(2003年10月〜2007年3月)(2/3)
表2−3 原子力委員会決定等の一覧(2003年10月〜2007年3月)(3/3)
表2−3  原子力委員会決定等の一覧(2003年10月〜2007年3月)(3/3)
表3−1 原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(1/6)
表3−1  原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(1/6)
表3−2 原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(2/6)
表3−2  原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(2/6)
表3−3 原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(3/6)
表3−3  原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(3/6)
表3−4 原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(4/6)
表3−4  原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(4/6)
表3−5 原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(5/6)
表3−5  原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(5/6)
表3−6 原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(6/6)
表3−6  原子力委員会による答申・決定等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(6/6)
表4−1 原子力委員会による声明・見解等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(1/2)
表4−1  原子力委員会による声明・見解等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(1/2)
表4−2 原子力委員会による声明・見解等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(2/2)
表4−2  原子力委員会による声明・見解等の一覧(2007年4月〜2015年10月)(2/2)

<関連タイトル>
エネルギー基本計画 (01-09-01-07)
新・国家エネルギー戦略 (01-09-09-09)
原子力開発利用長期計画(平成12年策定)総論 (10-01-05-03)
原子力開発利用長期計画(平成12年策定)各論 (10-01-05-04)
平成18年度原子力研究開発利用基本計画(1) (10-02-01-16)
平成18年度原子力研究開発利用基本計画(2) (10-02-01-17)
核燃料サイクルの進め方について(2003年8月) (10-02-02-13)
原子力立国計画(2006年8月、総合資源エネルギー調査会原子力部会報告) (10-02-02-15)
日本における原子力行政の新体制(2001年) (10-04-01-01)
原子力安全委員会 (10-04-03-01)
原子力規制委員会 (10-04-03-02)

<参考文献>
(1)原子力委員会:http://www.aec.go.jp/
(2)原子力委員会(編):平成15年版原子力白書、国立印刷局(2003年12月)
p.85-87、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/hakusho2003/index.htm
(3)原子力委員会:核燃料サイクルについて(平成15年8月)、
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2003/kettei/kettei030819/cycle0-36.pdf
(4)原子力委員会:専門部会・懇談会について、
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/index.htm
(5)原子力委員会:原子力委員会の決定、声明・見解、報告書、講演会での委員
発言等、http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/ugoki2009/ugoki05.htm
(6)原子力委員会設置法:
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