<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設に係わる放射線防護
<小項目> 放射線防護用の測定
<タイトル>
プルトニウムの放射能濃度測定 (09-04-03-23)

<概要>
 プルトニウムの放射能濃度測定は、燃料の基礎研究を行う施設、燃料加工施設、再処理施設等プルトニウムを取扱う施設において行われている。これらの施設では放射線業務従事者及び周辺公衆の被ばくを防護し、合理的に達成可能な限り低減するために、施設内の放射能レベル、施設から放出される放射性物質及び個人の内部被ばくモニタリングにおいて、プルトニウムの放射能濃度等を測定している。
<更新年月>
2002年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.プルトニウムの概要
1)プルトニウムは、核燃料として利用できる重要な核分裂物質であり、ウラン資源の有効活用を図るため、高速増殖炉での利用のほか軽水炉でも使われる。このため、主に燃料の基礎研究を行う施設、燃料加工施設、再処理施設等で取扱われている。
2)プルトニウムは、アルファ線を放出する核種が多く、体内に入ると骨髄に集まるといわれる。中でもプルトニウム239は、 表1 に示すように、物理的半減期が長く、その年摂取限度(ALI)は420Bq、空気中濃度限度は8.0×10−8Bq/cm3と低く、最も毒性の強い放射性物質の一つである。このため、プルトニウムが身体内に侵入する可能性をできるだけ少なくするため、プルトニウムはグローブボックス等の閉込め設備内で取扱われている。
2.施設及び作業環境モニタリングのための測定
1)非密封の放射性物質を取り扱う施設では、管理区域内において、空気汚染、表面密度、及び施設外に放出される気体、液体の放射能濃度の測定が行われている。プルトニウムを取扱う施設では、これらの各測定においてプルトニウムの測定が行われている。
2)管理区域内の空気中および施設外に放出される気体に含まれるプルトニウムは、その濃度を測定するために、空気の一部をフィルタを用いて捕集する。空気中あるいは施設外に放出される気体中のプルトニウム濃度は、このフィルタ中に含まれるプルトニウムから放出されるアルファ線を空気汚染モニタあるいは放射能測定装置を用いて測定することにより算定する。
3)空気汚染モニタとは、空気の捕集期間中連続して放射能濃度を監視するものである。プルトニウム用のものとしては、ZnS(Ag)シンチレーション検出器半導体検出器を用いたものがあり、集塵部、検出部、指示記録部及び吸引部から構成されている。
 プルトニウム用空気汚染モニタの例を 図1 に、プルトニウム測定に用いる空気汚染モニタの種類と概要を 表2 に示す。
4)放射能測定装置は一定期間(1週間)空気を捕集した後のフィルタを測定する場合に用いられる。プルトニウム用のものとしては、ZnS(Ag)シンチレーション検出器あるいは比例計数管を用いたものがある。(エアスニッファーシステム)
 放射能測定装置の概略を 図2 に、種類と概要を表2に示す。
5)施設内の手洗い等からの廃液に含まれるプルトニウムの濃度は、排水前に廃液の一部を採取し、これを試料皿で蒸発乾固した後、表2の放射能測定装置(モニター)を用いて測定する。
6)プルトニウムを取扱う施設の管理区域内の床等の表面密度は、通常、サーベイメータを用いた直接測定法かスミアろ紙による間接測定法のいづれか、あるいは両方を併用して測定する。プルトニウムを取扱う施設では、表2に示すZnS(Ag)シンチレーション型あるいは比例計数管型のサーベイメータが直接法の測定器として使われている。一方、スミアろ紙の測定には、表2に示す放射能測定装置(モニター)が使われている。
3.個人内部被ばくモニタリングのための測定
1)作業者の個人内部被ばくモニタリングのために行われるプルトニウムの測定法としては、以下に述べるバイオアッセイ法及び体外計測法が用いられている。
 個人内部被ばくモニタリングのための測定法の比較を 表3 に示す。
2)バイオアッセイ法は、作業者の尿、糞等の排泄物を放射化学的に分析して身体内のプルトニウム量を測定する方法である。排泄物試料からのプルトニウムの測定法は、共沈法、溶媒抽出法、イオン交換法などの手法を用いて、尿からプルトニウムを放射化学的に分離し、低バックグラウンドのZnS(Ag)シンチレーション検出器、比例計数管型あるいはα線スペクトロメータによって測定する。排泄物のうち尿の分析は、蓄積された摂取量を長期間にわたって評価できることから、プルトニウムの内部被ばくモニタリングの常套手段として採用されている。作業空間での相互汚染を避けるため、採取用の容器で24時間尿を採取する。検出限界は、239Puに対して尿1リットル当り0.001〜0.01Bq程度である。
 しかしながら、プルトニウムの年摂取限度は、例えば、239Puの硝酸塩などでは表1に示すように420Bqと小さく、またプルトニウムの尿中への排泄率は体内量の1/1000〜1/10000程度であることから、尿分析は年摂取限度の検出はできるが、調査レベルもしくはそれ以下の摂取量を検出するためには充分な感度を持っていない。
 糞分析はプルトニウムを吸入摂取した場合に有用な測定法である。吸入摂取されたプルトニウムは、摂取後1週間以内の糞中に吸入摂取した量の40%程度が排泄されるので、効果的にプルトニウムを測定することができる。検出限界は1試料当り0.01Bq程度である。
3)体外計測法としては、肺モニタが肺中に沈着しているプルトニウムを測定するために用いられる。肺モニタ用の検出器としては、239Puはγ線をほとんど放出しないので、α崩壊に伴う235UからのLX線(17〜20keV)を計測することによって、あるいはPuと共存する241Amの放出する60keVのγ線を計測する。プルトニウムなどから放出される低エネルギーのX・γ線を効率良く測定するために、最近ではNaI(Tl)/CsI(Tl)ホスウィッチ型シンチレーション検出器が標準的な検出器として広く用いられている。また新しく半導体検出器の利用が試されている。検出限界は、400Bq〜2000Bqの範囲内にあるが、胸壁の厚さと組成、肺内におけるプルトニウム粒子の分布、プルトニウム以外の放射性核種の存在などによって大きく左右される。この検出限界は、プルトニウムの年摂取限度に相当する肺内沈着量を検出できる充分な感度を持っていない。
4)バイオアッセイ法および体外計測法は、摂取量に換算して結果を解釈することが困難である場合が多いことなどから、これらの測定に先立って、摂取量の初期の推定値を得たいときに個人用空気サンプラが用いられることもある。

用語解説(エアスニッファーシステム)
先端にフィルタを装着した吸引装置で室内の空気を60リットル/分程度の流量で一定時間(1週間)吸引し、フィルタ上に汚染粒子を採取する。その後、フィルタをはずして自然放射能としてRnおよびその娘核種を減衰させるため、1週間程度待ってα線計測することによってPuの空気中濃度を評価する。
<図/表>
表1 主なプルトニウム同位体の年摂取限度、空気中濃度限度等
表2 プルトニウムの測定に用いる空気汚染モニタ、放射能測定装置及び表面汚染検査用サーベイメータ
表3 個人内部被ばくモニタリングのためのプルトニウム測定法の比較
図1 空気汚染モニタ(プルトニウムダストモニタの例)
図2 放射能測定装置(比例計数管型の例)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
年摂取限度(ALI) (09-04-02-14)
空気中濃度限度 (09-04-02-15)
空気汚染モニタ (09-04-03-09)
甲状腺・肺モニタ (09-04-03-12)
バイオアッセイ(排泄物等分析による体内放射能評価) (09-04-03-13)
スペクトロメトリ(α線、β線、γ線、中性子) (09-04-03-19)
空気汚染モニタリング (09-04-06-03)
再処理施設からの放射線(能) (09-01-02-06)

<参考文献>
(1) 原子力安全研究協会(編):プルトニウム安全取扱指針、昭和43年
(2) 科学技術庁原子力局、通商産業省資源エネルギー庁:原子力発電の疑問に答えて、昭和63年
(3) 電気事業連合会:原子力発電に関する疑問に答えて、昭和63年
(4) Minami K.: A Plutonium air monitor with a background compensation system,Health Phys. Vol.37 (1979)
(5) フランスにおけるプルトニウムの取扱技術,JAERI−4036 (1966)
(6) プルトニウム安全取扱いに関する問題点、日本原子力学会誌、Vol.7,No.9 (1965)
(7) プルトニウムの保健物理的問題についての特集、日本保健物理協議会ニュース、No.10-11-12 (1964)
(8) Volchok H. L. and G. De Planque(eds):EML Procedures Manual, HASL-300-ED.25,U. S. Department of Energy, New York (1982)
(9) 日本アイソトープ協会:作業者による放射性核種の摂取に関する個人モニタリング−立案と計画(ICRP Pub.54)、1991年
(10) 松岡 理:プルトニウムの安全性評価、日刊工業新聞社(1993.6)
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