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<概要>
 わが国の関係法令では、放射線業務従事者が常時立ち入る場所において、人が呼吸する空気中の放射性核種の1週間についての平均濃度の濃度限度として空気中濃度限度を定めている。放射線施設の排気設備については、排気口における排気中の放射性核種の濃度を3月間についての平均濃度について、「排気中又は空気中の濃度限度」以下とすることと定められている。
<更新年月>
2002年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.空気中濃度限度
 空気中濃度限度は、放射線業務従事者が常時立ち入る場所において、人が呼吸する空気中の放射性核種の1週間についての平均濃度に対して、わが国の関係法令(例えば、放射線障害防止法施行規則第1条の(12))が定めている濃度限度である。放射線審議会は、平成10年6月「ICRP 1990年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入について(意見具申)」で、「施設を設計する際の基準として、管理区域内の人が常時立ち入る場所における外部被ばくに係る実効線量は、1週間につき1mSv以下とする。また、人が呼吸する空気中の放射性物質の濃度は、1週間につき1mSvの実効線量に相当する濃度以下とする。外部被ばく及び内部被ばくの両方の可能性がある場合は、両方の合計が1週間につき1mSv以下とする」と述べている。
 これを受けて、放射線審議会基本部会では、空気中濃度限度を定める指標を1週間につき1mSvの実効線量に相当する濃度以下として、次の算出式を採用した。
  空気中濃度限度(Bq/cm3)=
   1(mSv/週)/{線量係数(mSv/Bq)×呼吸量(cm3/時間)×作業時間(時間/週)}

 作業者の呼吸量は、ICRP Publication 68に準拠して1.26cm3/時間とした。また、作業時間は週40時間である。

2.排気中濃度限度
 排気中又は空気中濃度限度は、排気口における放射性核種の3月間についての平均濃度に対して、わが国の関係法令が定めている濃度限度である(例えば、放射線障害防止法施行規則第14条の11)。放射性核種を扱う事業所または施設が排気監視設備を設けて排気中の放射性核種の濃度を監視する場合は、事業所等の外の空気中放射性核種の濃度を「排気中又は空気中濃度限度」以下にすることに定められている。(事業所等の境界に隣接する区域に人がみだりに立ち入らないような措置を講じた場合には、事業所等及びこの区域からなる区域の境界)。
 放射線審議会基本部会は、排気中濃度の算出に際して、年齢依存性を考慮し、同一人が0歳児から70歳になるまでの期間について年平均1mSvの被ばく線量に基づくものとするとともに、各年齢層に依存した線量係数を用い、更に各年齢層に依存した呼吸量を設定した( 図1 )。公衆が呼吸する空気中の粒子の空気力学的放射能中央径(AMAD)は、ICRP Publication 66に準拠して1μmとした。排気口から公衆への被ばく経路については、排気口の空気を直接摂取するとの安全側の仮定をとり、次の算出式を用いた:
  排気中又は空気中の濃度限度(Bq/cm3)=
   1(mSv/年)×70(年)/[3月児から成人までの年齢層についてΣ{各年齢層の線量係数(mSv/Bq)×各年齢層の呼吸量(cm3/年)×適用年数(年)}]

 参考までにわが国の法律で定められている値の一部を 表1 に示す。詳細は法令集または文献を参照されたい。
<図/表>
表1 放射性核種の空気中濃度限度及び排気中濃度限度
表1  放射性核種の空気中濃度限度及び排気中濃度限度
図1 年齢別の呼吸量
図1  年齢別の呼吸量

<関連タイトル>
限度とレベル (09-04-02-12)
線量限度 (09-04-02-13)

<参考文献>
(1) (社)日本アイソトープ協会:“2001年版アイソトープ法令集I−放射線障害防止関係法令”、丸善、(2001)
(2) 放射線審議会:“ICRP 1990年勧告(Pub.60)の国内制度等への取入れについて(意見具申)”、(1998年6月)p.31
(3) 放射線審議会基本部会:“外部被ばく及び内部被ばくの評価法に係る技術的指針”、(1999年4月)p.14.
(4) ICRP Publication 68, ”Dose Coefficients for Intakes of Radionuclides by Workers.” Annals of the ICRP, Vol.28, No.4; Pergamon; 1994; p.4.
(5) ICRP Publication 71, ”Age-dependent Doses to Members of the Public grom Intake of Radionuclides: Part 4 Inhalation Dose Coefficient.” Annals of the ICRP, Vol.25, Nos.3-4, Pergamon, 1995; p.11.
(6) ICRP Publication 66, ”Human Respiratory Tract Model for Radiological Protection.” Annals of the ICRP, Vol.24,No.1-3; Pergamon; 1994; p.110.
(7) 河合勝雄、遠藤章、桑原潤、山口武憲、水下誠一:“ICRPの内部被ばく線量評価法に基づく空気中濃度等の試算”、JAERI-Data/Code 2000-001; (2000)
(8) 河合勝雄、遠藤章:“現行法令及びICRP Publ.68,72に掲載されていない核種の空気中濃度等の試算−JAERI-Data/Code 2000-001補遺”、JAERI-Data/Code 2000-033;(2000)
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