<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 原子力施設による健康影響
<小項目> 健康影響調査
<タイトル>
日本の放射線技師の疫学調査 (09-03-01-03)

<概要>
 放射線技師は低線量反復被曝を受けたか、あるいは受けた可能性がある集団として、ヒトの放射線影響の調査研究のために非常に貴重である。日本における放射線技師の死亡調査の結果について数グループが死亡分析を行っている。疾患により種々の結果が報告されているが、分析に用いられた諸データの集積期間のずれや、健康に影響する放射線以外の因子などのため、結論を得るまでには更に継続調査が必要である。
<更新年月>
1998年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1 背景
 放射線技師の放射線被曝状況と健康状態、特に疾病と死亡に関する調査は、職業上のリスクを評価することとともにヒトの放射線影響を調査研究する上で注目されてきた。原爆や事故または放射線治療などのような大線量の被曝に関しては組織的に大規模な研究が行われ、多くのデータが提供されている。しかし、原子力が平和利用される今日では低線量被曝によるヒトへの放射線影響評価が必要とされる。低線量反復被曝(低LET放射線外部被曝)を受けた集団のデータとして放射線技師のデータは貴重である。

2 調査
 日本放射線技師会が行なった会員の死亡調査の結果では、1941年から1978年の間で395名であった。このデータを用いて、粟冠、北畠ら、青山らがそれぞれ1955年から1965年の期間、1966年から1972年の期間、1973年から1977年の期間について人口動態統計、疾患別年齢別死亡率により死亡分析を行った。更に、青山らは1969年から1982年までの死亡者343名について分析した( 表1 参照)。

3 データ分析結果
 1955年から1977年の期間についての粟冠、北畠ら、青山らのそれぞれの報告によれば、人口及び、平均死亡率から計算された推定の死亡数(期待死亡数)と実際にあった死亡数(観測死亡数)より大きかったこと、全悪性腫瘍でも同様であったこと、一方、皮膚がんについては観測数が期待数より有意に大きかったことが報告された。さらに青山らは395名の死亡者のうち268名の蓄積線量を推定し、がん死亡者とがん以外の死亡者の平均蓄積線量を比較した結果、有意差は認められなかったと報告した。
 青山らの1969年から1982年までの死亡者343名についての分析結果によれば( 表2 参照)、全ての悪性腫瘍による死亡は期待数103.56に対し観測数137で99%の信頼度で有意であった。しかし昭和50年度の生命表を用いて行った死亡要因の解析では全死亡要因の合計については期待数より観測死亡数の方が少ないという結果となった。これは健康作業者効果がある可能性とともに、放射線技師は医療関係者であるために悪性腫瘍以外では一般の人々より医師に掛かり易いという点で有利な立場にあるといえる可能性があるのではないかとしている。
 悪性腫瘍以外の重要な死因については貧血、心疾患、消化性潰瘍が考えられるがいずれも、期待数より観測数の方が大きかったが有意差はなかった。脳神経腫瘍では99%の信頼度で観測数の方が期待数より大きかったがこの理由は明確ではない。また大腸の悪性腫瘍では95%の信頼度で観測数の方が期待数より大きかった。大腸癌は原爆被爆者の研究からも放射線誘発であることが知られているが、生活様式、食事などが誘因になることも知られている。これらの疾患は放射線以外の種々の原因も考えられるので、今後の研究が必要であるとしている。放射線誘発の悪性腫瘍では白血病が最も注目されるところであるが昭和44年から57年までの追跡では有意となっていない。しかしこれより以前の調査では数名の白血病による死亡が確認されている。放射線誘発白血病の潜伏期間は数年で、長くとも10年と言われているので、放射線技師で高齢になった場合の白血病の出現について今後の調査が必要である。
 原爆放射線被曝(大線量の1回被曝)の白血病を除く全がんのリスクは7.49E−8/Gy/年というデータが出ているが、これとの比較のため放射線技師の発がんリスクを大ざっぱに推定した結果、追跡期間14年、平均集積線量0.44Gyとすると5.9E−8/Gy/年のリスク値が得られた。低線量でも長期反復被曝を受けて集積線量が0.4Gyを超えるとリスクがあるのではないかという事であるが、しかし、線量推定と死亡調査集団のズレなどがあり、ひき続き詳細な検討が必要であるとしている。
<図/表>
表1 診療放射線技師集団における期待死亡数と観測死亡数の比較
表2 悪性腫瘍とその他のカテゴリーに含まれた死因についての期待死亡数と観測死亡数の比較

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<関連タイトル>
米国ハンフォード原子力施設従事者の疫学調査 (09-03-01-02)
晩発性の身体的影響 (09-02-05-01)
BEIR-Vによるリスク評価 (09-02-08-03)

<参考文献>
1) Sakka,M.: Analyse de mortalite chez radiographes Japonais. Nipp. Act. Radio l.,27:611-613,1967
2)Kitabatake,T.,Watanabe,T. and Nakamura,M.: Mortality and cause of death in Japanese radiological technicians,1966 to 1972. Nipp. Act. Radiol.,34:440-443,1974
3)Kitabatake,T. and Okajima,S.: An estimation of past exposure dose to X-ray workers in Japan. Nipp. Act. Radiol.,23:1151-1158,1964
4)Aoyama,T.,et al.: Mortarity study of Japanese radiological technologists. J.Jap. Assoc. Radiol. Tech.,English issue,91-96,1987
5)Aoyama,T.,et al.;Preliminary mortality survey from 1973 to 1977 of Japanese radiological technologists and analyses of the association of mortality with cumulative doses,Nipp. Act. Radiol.,41,50-58,1981
6)Kato,T. and Schull.W.J.: Studies of the mortality of A-bomb survivors 7. Mortality,1950-1978: Part 1. Cancer mortality,Radiat. Res.,90,395-432,1982
7)Smith,P.G. and Doll,R.: Mortality among patients with ankylosing spondylit is after a sigle treatment course with X-rays,Br. Med. J.,284,449-460,1982
8)青山喬:診療放射線技師の放射線影響、放射線科学 Vol.31,No.9,235-239,1988
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