<大項目> 放射線影響と放射線防護
<中項目> 放射線による生物影響
<小項目> 自然放射線と健康
<タイトル>
米国自然放射線の疫学調査(フリゲリオら) (09-02-07-06)

<概要>
 米国は東海岸(大西洋岸)、メキシコ湾岸から西海岸(太平洋岸)に至る広大な地域を占め、地域により大地からの放射線および宇宙線線量当量率に平均値で数倍の差がある。フリゲリオ等は米国50州についてその自然放射線バックグラウンド線量当量率とがん死亡率との関係を健康統計資料に基づいて調査し、線量が高い程、がん死亡率が低くなっていることを見いだした。この逆の相関関係は全てのがんの合計、消化管、肺、乳がんについて明かである。しかし、この現象から自然放射線が有益であるとは結論出来ない。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.米国における自然放射線の線量分布
 米国本土における大地からの放射線の線量は大西洋およびメキシコ湾の沿岸平野では15〜35mrem/年(平均23mrem/年)、北東部、東部、中央部及び西部地方では35〜75mrem/年(平均46mrem/年) 、コロラドの高原地域では75−140mrem/年(平均90mrem/年)と、地域によってかなりの変動がある( 図1 )。

2.自然放射線による発がんの検討
 米国のがん死亡数のうち年当り3000〜10万人(1〜30%)は自然放射線によって生じているという推定が自然放射線の線量と単位線量当りの発がんリスクとから算出されている。しかしながら、自然放射線が、実際に発がんの原因になっているかどうかについては確証はない。
 自然放射線が発がんの原因となっているかどうか疫学的に確かめる一つの手段としてアルゴンヌ国立研究所の研究者フリゲリオ(Frigerio) 等は、米国50州の各州毎の自然放射線線量当量率と、がん(悪性腫瘍)や先天性異常などの健康障害との関係を白人に限定して、部位別及び、全がんについての年齢訂正がん死亡率並びに胎児死亡率統計に基づいて検討した。
 州毎のがん死亡率と自然バックグラウンド放射線とは逆の相関関係を示し、線量が高い程がん死亡率は有意に低くなっている( 図2 )。また、165 mrem/年以上(Aグループ、7州)、165〜140 mrem/年(Bグループ、14州)、125 mrem/年以下(Cグループ、14州)の3グループを50州と比較すると、全がん、消火器がん(胃がんを除く)、肺がん、乳がん死亡率、胎児死亡率はいずれも自然バックグラウンド放射線が高いグループ程、低くなっている( 表1 )。

3.「自然バックグラウンド放射線が高いところでがん死亡率等が低い」ことの解釈
 2.に述べた結果から一見、「自然放射線は多い程、健康に良い」という結論が示唆されるが、それは早計であってむしろ(1) がんの誘発に関してバックグラウンド放射線線量の差異による影響は非常に小さいこと、(2) 発がんに関係する放射線以外の他の要因、例えば空気汚染、食物、生活習慣などの方が圧倒的に大きく利いているのがこのような現象の原因であろうと考えられる。この点に関して米国のワインベルグらは高度が増すと空気が希簿になり酸素分圧が低くなること、酸素分圧が低いことは発がん率の低下の原因と考えられると述べている。
<図/表>
表1 米国白人集団のがん死亡率および胎児死亡率
図1 米国における自然放射線のレベル
図2 米国における州別のがん死亡率と自然バックグラウンド放射線との関係

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<関連タイトル>
米国自然放射線の疫学調査(アーチャーら) (09-02-07-07)
中国の高自然放射線地域における住民の健康調査 (09-02-07-01)
インドの高自然放射線地域における住民の健康調査 (09-02-07-02)
ブラジルの高自然放射線地域における住民の健康調査 (09-02-07-03)

<参考文献>
1)BEIR−・報告書;米国科学アカデミー(1980)
2)IAEA-SM-202/805 (1976), ”Biological and Environmental Effects of Low-Level Radiation” Vol.II N. A. FRIGERIO,R. S. STOWE ”Carcinogenic and Genetic Hazard from Background Radiation”
3)Radiation Research 112,381-390,1987 C.R.Weinberg ら
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