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<概要>
 経済協力開発機構(OECD)が主催するRASPLAV計画は、シビアアクシデント時の圧力容器下部ヘッドにおけるコリウム(酸化ウランとジルコニウム、鉄などの溶融物)の自然対流、コリウムと鋼材との化学的・熱的反応、圧力容器外部冷却の有効性に関する実験と解析コードの開発を実施した。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.はじめに
 シビアアクシデントの影響を限定するため、シビアアクシデント時に溶融炉心を圧力容器内に保持することは重要である。経済協力開発機構(OECD)が主催するRASPLAV(ロシア語で「溶融」の意)計画は、ロシア・クルチャトフ研究所で実施する大規模実験を中心として、コリウム(酸化ウラン、酸化ジルコニウム、ジルコニウム、鉄などより構成される溶融炉心を模擬した混合物)の自然対流、コリウムと鋼材との化学的・熱的反応、圧力容器外部冷却の有効性に関する実験と解析コードの開発を1994年7月より実施した。本計画には18ケ国から26機関(わが国からは日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)と原子力発電技術機構(2007年3月に解散))が参加した。
2.計画内容と主な成果
 原子炉圧力容器内における溶融炉心の挙動を調べるためのコリウムを用いた大規模実験装置(最高温度2800℃,最大重量200kg)の設計・製作を行った。図1にRASPLAV実験装置の概要を示す。これと並行して、コリウムの高温溶融制御技術および計測技術を確立した。重量200kgのコリウムを用いた大規模実験を2回実施し、溶融炉心の圧力容器内保持性について検討した。2回の大規模実験で、いずれも溶融炉心が密度の小さい層と大きい層に分離する成層化現象が観測された(図2参照)。
 実際の原子炉へ適用するため、物性値の違う溶融塩を用いた外部冷却実験を実施した。実験の結果、実炉条件における圧力容器外部熱伝達に関する知見を得た。
 小規模支援実験により、これまでにない2800℃近くの高温までの広い範囲におけるコリウム物性値(熱電導率、粘性率、電気伝導度)を測定した。また、コリウムと下部ヘッド材料との相互作用に関する基礎的なデータを得た。
 さらに、圧力容器内溶融炉心挙動に関する2次元および3次元解析コードを開発し、実験結果に基づき検証するとともに、成層化等の現象理解に利用した。
 RASPLAV計画で得られた知見は、わが国における圧力容器内溶融炉心挙動解析コードの開発と検証、産業界における「次世代型軽水炉の原子炉格納容器設計におけるシビアアクシデントの考慮に関するガイドライン」(民間自主基準)の検討等に役立てられた。
<図/表>
図1 RASPLAV実験装置の概要
図1  RASPLAV実験装置の概要
図2 実験後のコリウムで観測された成層化現象
図2  実験後のコリウムで観測された成層化現象

<関連タイトル>
PSF計画 (06-01-01-18)
CSARP計画 (06-01-01-20)
ACE計画 (06-01-01-21)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所:原子力安全研究の現状 平成9年(1997年11月)
(2)日本原子力研究所:原子力安全研究の現状 平成8年(1996年11月)
(3)OECD:Behavior of Corium Melt Pool under External Cooling,Final Report of the first phase of RASPLAV project(1998)
(4)Proc. OECD/CSNI Workshop on In-Vessel Core Debris Retention and Coolability, March 1998,Garching, Germany(to be published)
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