<大項目> 原子力安全研究
<中項目> 原子力施設などの安全研究
<小項目> 軽水炉の安全研究
<タイトル>
わが国の主な安全性試験研究施設 (06-01-01-06)

<概要>
 わが国には、原子力施設等の安全性研究を行うための大型試験(設備)施設がある。代表的なものとしては、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)の燃料試験施設、ホットラボ、大型非定常試験装置、事故時格納容器挙動試験装置、配管信頼性実証試験装置、燃料サイクル安全工学研究施設、原子炉安全性研究炉、核燃料サイクル開発機構(現日本原子力研究開発機構)の機器熱流動試験装置やプラント過渡応答試験装置、炉心融体挙動試験施設、伝熱管破損模擬試験装置、(財)原子力発電技術機構の大型高性能振動台設備、可燃性ガス燃焼試験設備、放射性物質除去効果試験(スプレイ)装置、一次冷却ポンプ試験設備、蒸気発生器試験設備、(財)発電設備技術検査協会の原子力施設の機器配管等の検査技術及び溶接技術等の試験研究設備などがある。
<更新年月>
2003年09月   

<本文>
 わが国には、原子力施設等の安全性研究を行うための大型試験(設備)施設がある。その主な施設を紹介する。
1. 水炉の安全性に関する研究施設
1.1 軽水炉燃料の高度化に関する研究を行っている施設
 軽水炉燃料の高度化に関する研究を行っている施設には、日本原子力研究所(以下、「原研」と略す(現日本原子力研究開発機構))の燃料試験施設及びホットラボ、(財)原子力発電技術機構(以下、「原機構」と略す(2007年3月に解散))の磯子工学試験所及び高砂工学試験所がある。原研の燃料試験施設は、図1に示す設備を有しており、走査型電子顕微鏡、X線マイクロアナライザー等の標準的な装備に加え、ペレット熱伝導率測定装置、微小試料密度測定装置等の試験装置の開発を行っている。原研のホットラボは、我が国初の照射後試験設備であり、HTTR燃料の開発に係わる照射後試験、原電東海炉の燃料モニタリングをはじめとして燃料・材料照射後試験等を約35年間継続してきた。最近は、照射誘起応力腐食割れ(IASCC)に関する試験研究や大強度陽子加速器ターゲット容器材料開発のための各種試験装置を開発している。
 原機構には、軽水炉の燃料集合体に対する最大熱負荷試験を行う施設が磯子工学試験所及び高砂工学試験所にある。図2は高砂工学試験所にあるPWR燃料集合体最大熱負荷試験装置を示したものである。
1.2 軽水炉の熱水力に関する試験研究施設
 軽水炉の熱水力に関する試験研究施設には、原研の大型非定常試験装置(LSTF)や図3に示す原機構の磯子工学センターにあるBWR燃料集合体管群ボイド試験装置などがあげられる。原研の大型非定常試験装置(LSTF)は、PWRにおける各種の小破断LOCA(冷却材喪失事故)、運転時の異常な過渡変化、さらにアクシデントマネージメントに伴う熱水力挙動を模擬するための総合実験装置であり、各機器の体積は、110万kw級PWR(ウエスチングハウス社型)の1/48となっている。ただし、各機器の高さや配置は、原子炉冷却材の自然循環状態における流量を正しく模擬できるように実炉とほぼ同一となるよう設計されている。
1.3 原子力施設の機器・配管等の試験研究を行う施設
 原子力施設の機器・配管等の試験研究を行う施設には、原研、原機構、(財)発電設備技術検査協会(以下、「発電技検」と略す)などがある。原研には、配管信頼性実証試験(WIND)装置があり、図4に示す配管内FP(核分裂生成物)エアロゾル挙動を明らかにするための配管内エアロゾル挙動試験装置と熱負荷を受けた配管の挙動と耐性を明らかにするための配管高温負荷試験装置から構成されている。
 原機構では、原子力発電施設のポンプ、バルブ、配管材料、蒸気発生器、電気計装品等を対象に試験を実施している。原子炉冷却材ポンプの信頼性試験施設については、BWR用再循環ポンプ及び原子炉内蔵型再循環ポンプ(インターナルポンプ)が勝田工学試験所に、PWR用一次冷却材ポンプ試験施設が高砂工学試験所ポンプ試験場にある。蒸気発生器については、大型の蒸気発生器モデルを使用した高砂試験所の試験設備がある。また、発電技検では、鶴見試験研究センター及び足崎試験研究センターで、原子力施設の機器配管等の検査技術及び溶接技術等の試験研究を行っている。
1.4 格納容器等の健全性に関する試験を行っている施設
 格納容器等の健全性に関する試験を行っている施設には、原研の事故時原子炉格納容器挙動試験ALPHA)装置や原機構の勝田工学試験所の放射性物質除去効果試験(スプレイ)装置などがあげられる。事故時原子炉格納容器挙動試験(ALPHA)装置は、模擬原子炉格納容器、大小2つのリーク試験容器、溶融炉心コンクリート相互作用試験容器と、実験条件の設定や運転保守等に必要な補助設備から構成されている。図5には、ALPHA装置の概観を示す。ALPHA装置を用い、溶融炉心の冷却性や水蒸気爆発など不確かさの大きいシビアアクシデント現象の解明等を行っている。また、放射性物質除去効果試験(スプレイ)装置は、シビアアクシデント時に原子炉格納容器の温度、圧力が設計条件を超えて上昇した場合でも原子炉格納容器スプレイの放射性物質の除去効果等を確認するための施設である。図6は放射性物質除去効果試験(スプレイ)装置の概観を示したものである。
 また、原機構には、模擬格納容器により原子炉格納容器スプレイ、放出蒸気、窒素等による水素燃焼抑制因子の効果を踏まえた水素ガスの燃焼挙動を把握するための可燃性ガス燃焼試験設備が高砂工学試験所にあり、多度津工学試験所では、PWR原子炉格納容器耐震信頼性実証試験で使用したものを利用して、可燃性ガス濃度分布、燃焼挙動試験が行われた。
2. 高速増殖炉の安全性に関する研究施設
 高速増殖炉の安全性研究の大型試験施設は、主に核燃料サイクル開発機構(以下、「サイクル機構」と略す(現日本原子力研究開発機構))の大洗工学センターにある。高速増殖炉の安全性研究では、ナトリウム機器、蒸気発生器、燃料材料、構造健全性等の研究が行われている。
 高速増殖炉のナトリウムの原子炉内の熱流動試験については、サイクル機構大洗工学センターにある炉心・機器熱流動試験装置(CCTL)やプラント過渡応答試験装置(PLANDTL)などが使用されている。PLANDTLは、高速炉のナトリウム伝熱流動現象、特に原子炉容器内の現象を解明するための実験を行う施設である。また、大規模ナトリウム漏洩火災試験施設(SAPFIRE)は、「もんじゅ」を対象として大規模なナトリウム漏洩試験を実施し、格納容器内のナトリウム機器を有するセルや補助建屋内設備の健全性を実証するために使用されている。 シビアアクシデント時に想定される溶融物質と原子炉冷却材との熱的相互作用を解明するために、炉心融体挙動試験施設(MELT-II)が用いられている。
 大型蒸気発生器の安全研究では、高周波誘導加熱による伝熱管破損模擬試験装置(TRUST)やナトリウム-水反応基礎試験装置 (SWAT-1)を用いた蒸気発生器の伝熱管の高温ラプチャ・パラメータ試験等を行っている。
 構造物強度確性試験装置 (TTS)は、原子炉を構成する機器などの部分にナトリウムを温度を変えて流し、その変化をみる試験を行う施設である。
 照射後試験施設では、「常陽」などから取り出された照射試験用燃料・材料などを分析し、高速炉燃料の製造技術の検証と燃料設計の妥当性を研究している。
 図7にPLANDTL、SAPFIRE、TTSの写真を示す。
3. 核燃料サイクル施設の安全性に関する研究施設
 原研の燃料サイクル安全工学研究施設(NUCEF)は、再処理施設の臨界安全、再処理プロセス、TRU廃棄物に関する試験を行う研究施設である。設備は地上3階、地下1階の2つの実験棟がある。表1はNUCEFの主要な設備を示したものである。
 定常臨界実験装置(STACY)は、ウラン硝酸水溶液およびそれらの混合燃料の密度、容器の形、大きさ、周囲の条件などを変化させた場合の臨界量を明らかにする。過渡臨界実験装置(TRACY)では、万一、臨界を超えるような現象が生じた場合を想定して、ウラン硝酸水溶液燃料を用いて、この現象を支配するいろいろな因子を明らかにする。
 高速増殖炉燃料の再処理については、サイクル機構東海事業所の高レベル放射性物質研究施設(CPF)で実際の使用済燃料を用いた「ホット試験」が行われ、再処理関連機器実規模開発試験施設では、「コールド・モックアップ試験」が行われている。
4.原子力施設の耐震等の安全性に関する研究施設
 原機構の多度津工学試験所には、1982年に完成した世界最大の大型高性能振動台設備があり、国の委託による原子力発電用機器等のほかに高圧ガスタンク、原子炉建屋の耐震試験等を実施している。図8は、大型高性能振動台設備の鳥瞰図を示したものである。最近は、振動台の上に、さらに小型振動台を付加し、最大6Gまでの加速度試験を実施している。
 高速増殖炉の耐震の安全性については、主にサイクル機構大洗工学センターの構造物動的試験装置で行われ、現在、原子炉施設の免震工法の適用を行うことに備えた検討のための試験を行っている。
5. 原子炉安全性研究炉
 発電用原子炉における反応度事故時の厳しい過渡挙動を模擬した運転を行って、原子炉燃料の安全性研究を行っている研究炉に、原研の原子炉安全性研究炉(NSRR)がある。NSRRは、炉心が水深9mのスイミングプール底部に設置されたTRIGA(Training Research and Isotope Production Reactor of GAの略)型原子炉を改良したパルス炉である。1975年6月の初臨界以来、2003年9月までに約3000回のパルス運転と約2000回の燃料破損実験を行った。実験結果は、発電用原子炉設置のための反応度事故に対する安全評価指針に用いられている。最近は、燃料の高燃焼度化やMOX燃料に関する実験を中心に進めている。
 安全性試験研究施設を表2に示す。
<図/表>
表1 NUCEFの主要設備
表2 安全性試験研究施設一覧表
図1 原研の燃料試験施設の鳥瞰図
図2 PWR燃料集合体最大熱負荷試験装置
図3 BWR燃料集合体熱水力試験装置
図4 配管内エアロゾル挙動試験装置
図5 ALPHA装置の概観図
図6 放射性物質除去効果試験(スプレイ)装置
図7 PLANDTL、APFIRE、TTSの写真
図8 多度津工学試験所大型振動台鳥瞰図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
原子炉安全性研究炉(NSRR) (03-04-02-05)
NUCEF (03-04-02-06)
燃料集合体信頼性実証試験 (06-01-01-07)
蒸気発生器信頼性実証試験 (06-01-01-08)
原子力発電用機器の工学試験(1)(機器・システムに関する信頼性実証試験・確証試験) (06-01-01-13)

<参考文献>
(1)日本原子力研究所:原子力安全性研究の現状−平成9年、1997年10月
(2)(財)原子力発電技術機構:原子力発電施設 信頼性実証試験について−平成8年、1996年9月
(3)(財)原子力発電技術機構:原子力発電技術機構の概要、1996年1月
(4)動力炉・核燃料開発事業団:大洗工学センター(パンフレット)、1996年10月
(5)動力炉・核燃料開発事業団:動燃技報、No.100−100号記念特集号、1996年12月
(6)日本原子力研究所:原子力安全性研究の現状(平成14年)、JAERI−Review 2002−030 (2002年11月)
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