<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> プルトニウム燃料
<小項目> プルトニウム燃料の製造
<タイトル>
ウラン燃料とプルトニウム燃料の相違 (04-09-01-04)

<概要>
 現在プルトニウム燃料の主流であるMOX燃料を採り上げ、軽水炉燃料のウラン酸化物燃料との相違を述べる。
プルトニウム混合ウラン燃料、いわゆるMOX燃料の物性値、燃料挙動は、軽水炉用の場合はプルトニウム量の少ないことから、ほぼウラン酸化物燃料と類似している。プルトニウムを含むことから、プルトニウムスポットの影響が特有の問題としてあるが、実用上の問題はない。MOX燃料の製造においては、プルトニウム混合工程が追加される以外は、ウラン酸化物燃料と同じである。必然的にプルトニウムスポットをチェックする検査工程もまた追加される。プルトニウムがウランより強いα放射体であること、臨界量が小さいことから、その取扱いにおいてウラン施設よりも厳しい安全上および保障措置上の規制が課せられている。
<更新年月>
1998年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 MOX燃料は天然ウランまたは回収ウランの二酸化物に、プルトニウム二酸化物を混ぜて焼き固めたペレット燃料である。軽水炉に用いるMOXのプルトニウムの含有量(富化度)は数% 以下であり、高速増殖炉用のMOX燃料では約20% である。大まかに見ると、プルトニウム含有量の少ない軽水炉用MOXは、ウラン酸化物燃料の性質と類似している。それがウラン酸化物燃料の代替えとして軽水炉に用いられる理由でもある。しかし燃料製造工程では純粋なウラン酸化物に比し、その取扱を含めて相違がある。
1.燃料物性と燃料挙動
 1.1 燃料物性
(1) 融点
 MOX燃料の原料であるプルトニウム二酸化物とウラン二酸化物は、共に蛍石型の面心立方格子の結晶系を有し、室温から融点迄相変態を起こさず、何れの混合割合においても固溶しあって、全率固溶体を形成する( 図1 参照)。MOXの融点は二酸化ウランペレット(UO2ペレット) の融点約2,800 ℃と二酸化プルトニウムペレット(PuO2 ペレット) の融点約2,400 ℃の間にあるが、プルトニウム量が数% の軽水炉用MOXは、UO2 ペレットの融点より若干下回る程度で、この範囲ではUO2 の融点と殆ど同じと言える。
(2) 熱伝導度
 UO2 ペレットの熱伝導度へのPuO2の寄与は、プルトニウムの低含有率領域において、プルトニウムは不純物として熱伝導因子たる格子振動に影響し、熱伝導を低下させる。プルトニウムが数%の含有量ではその低下はせいぜい2%未満とされており、UO2 ペレットと同程度である。
(3) 熱膨張
 MOXペレットの熱膨張も、プルトニウム含有量の少ない数% 以下では他のUO2 ペレットの熱膨張に支配され、UO2 ペレットとの差は無い。
(4) クリープ
 セラミック燃料であるMOXは、融点を絶対温度で示した数字の1/2 以上の温度範囲で延性を示しクリープする。プルトニウムを含有すると拡散速度が増加してクリープ速度が大きくなるとされている。この性質は運転中の燃料被覆管を内側から押す力を緩和し、MOX燃料の安全上の利点である。
 以上によって軽水炉MOXの種々の物性は、ウラン酸化物燃料のそれとほぼ同じといえるが、燃料設計には精密な物性値の考慮が払われている。
1.2 燃料挙動
(1) FPガス放出
 UO2 ペレットからのFPガスの放出は、これまでの試験より、放出される温度と燃焼度に一定の関係が解明されている。この関係カーブを超えると1%以上のガス放出があるといわれている。動燃(現日本原子力研究開発機構)で製造されたATR用MOXペレットの照射試験においても、この関係が立証され放出メカニズムと放出率がUO2 ペレットのそれと変わりないことを示している( 図2 参照)。しかし、ヨーロッパにおいて製造工程により放出率の増大も認められているので、原因解明が待たれているが、多少の放出率増大も燃料内プレナムの設計で対処し得る。
(2) スウェリング( 膨潤 : ふくれ )
 FPガスおよび固体FPがペレット内に溜まることによるペレットのスウェリングは、MOXペレットとUO2 ペレットの間に差があるといわれているが、照射試験によれば、この差もUO2 製造ロット間のバラツキの範囲内で、特に有為差は認められていない。
(3) プルトニウムスポット
 PuO2とUO2 は固溶体を作るが、混合条件、焼結条件で、UO2 の地の中のプルトニウムの微細な粒がミクロ的に存在する。これをプルトニウムスポットと称するが、完全に均一固溶させることは不可能である。この粒が大きく数が多いと、この部分が局部的に発熱し、もしこれがペレット表面にあれば、被覆管内側を局部的に加熱することになる。ウラン酸化物燃料にない課題の一つであった。
 しかしスポットサイズに規定を設け、現在は直径を400 μm 以下(熱中性子炉使用の場合)に抑えれば特に問題なく使用できることが分かった。またこのスポットが大きいと再処理の酸溶解工程で不溶解残渣となり、溶解性を害するというウラン酸化物燃料にはない課題を提供している。
2.製造工程
 UO2 ペレット製造のセラミック技術の延長としてMOXペレットは製造され、その製造工程は粉末混合、粉末成型、焼結によるペレット製造、ペレットの被覆管への挿入による燃料要素製造、燃料要素の組み込みによる集合体の完成と、ほぼ同じ工程の流れである。特に燃料要素以降の工程は全く同じものである( 図3 参照)。ただ、二酸化プルトニウム粉末と二酸化ウラン粉末を混ぜるというMOXに特有な工程が最初に追加されている。この混合方法には粉末状態で混ぜる方法、ウラン・プルトニウムの硝酸溶液からの同時析出による方法などあるが、何れも均一な分散と焼結後におけるプルトニウムスポットを小さくするよう努力が払われている。必然的にペレット検査工程において、プルトニウムスポットの均一性、大きさをチェックする試験が行われることが、ウラン酸化物燃料との違いである。試験方法には、ペレットの表面を磨きα線に感じるフィルムを置いてプルトニウムからのα線を写真に捉えて、大きさや均一性を検知するαオートラジオグラフィーが用いられている。
3.施設における取扱い
3.1 臨界管理
 製造工程における取扱い上の相違点として、MOXにおいてはより厳しい臨界管理がなされている。臨界量において239Puは金属状態で235U の25% 、水溶液で62% と少ない( 表1 参照)。したがって各工程では取り扱うプルトニウム酸化物やMOXの秤量を厳重に行い、誤って臨界量になるのを防いでいる。また臨界量にならぬように容積制限された装置や、臨界反応防止のため形状管理を考慮した装置を用いている。
3.2 安全管理
 プルトニウムはウランに比し放射能が高く約3万倍である(表1参照)。241Puを除く同位元素はα線放射体であるので、α粒子の摂取による内部被曝防止のため、プルトニウムを含む物質の閉じ込めが必要で、グローブボックスの中での行われることが、ウラン酸化物燃料の製造と異なる。また燃焼度の高い燃料から抽出されるプルトニウムはその娘核種よりγ線、中性子線を放出するので、それによる外部被曝低減のために、製造工程の遮蔽及び装置の遠隔操作化、自動化がウラン酸化物施設よりも一層強く要請される。
3.3 保障措置、核物質防護
 先の臨界量が小さいことは、核爆発装置への転用がウランよりも容易であることを意味する。またプルトニウムを不法盗取してテロ行為への利用の恐れもある。それ故MOXの取扱い施設においては、在庫管理を含む保障措置および核物質防護が、ウラン施設以上に厳しく要求される。そのため各工程の秤量記録を厳正に行う計量管理の徹底、プルトニウムの施設内外の移動、盗難を防ぐための閉じ込め、監視など核物質防護が行われる。在庫チェックの計量管理には計算機による計量システム、放射能を検知し定量および移動を監視するモニター等が用いられ、核物質防護には施設外周りの二重柵、施設内外の侵入検知器、監視カメラ等が装備され、その厳重さはウラン施設には見られないものである。そしてこれらの取扱い管理の遂行状況をチェックするために、IAEA保障措置査察が行われ、ウラン取扱い施設に較べてその頻度も高い。
<図/表>
表1 235Uと239Puとの相違:比放射能および最小臨界量
図1 UO2−PuO2系状態図
図2 MOX燃料とUO2燃料のFPガス放出挙動比較
図3 動燃事業団におけるMOX燃料の製造プロセス

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<関連タイトル>
プルトニウム核種の生成 (04-09-01-01)
プルトニウム燃料施設の安全管理 (04-09-01-02)
プルトニウム混合転換技術 (04-09-01-03)
混合酸化物(MOX)燃料とその軽水炉への利用 (04-09-02-03)

<参考文献>
(1)原子力安全研究恊会(編):軽水炉燃料のふるまい(改訂新版)、平成2年7月
(2)原子力情報センター:軽水炉燃料高度化。
(3)W・マーシャル(内藤奎爾訳):原子力の技術3、燃料サイクル(上),筑摩書房(1987)
(4)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年)
(5)エネルギーレビュー、第6巻、第9号
(6)MOX燃料−最近の技術動向,原子力工業、第36巻、第10号(1990)。
(7)MOX燃料−最近の技術動向を探る,原子力工業、第37巻、第8号(1991)。
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