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<概要>
 わが国が必要としている軽水炉用の核燃料に使用される燃料被覆管は、ほぼ国産化が達成されている。被覆管製造技術開発の経過と現状について述べる。
<更新年月>
2008年12月   

<本文>
 (1)国内における生産体制
 燃料材料としての核燃料被覆管成型加工の国内需要は、現在、ジルコプロダクツ(株)((株)神戸製鋼所より分社した神鋼特殊鋼管(株)と住友金属工業(株)との共同出資、2000年)および三菱マテリアル(株)(旧三菱金属(株)と三菱鉱業セメント(株)が合併、1990年)の製造メーカにより、その国産化が達成されている。しかし、全工程の製造技術は確立されているが、現在は製錬加工から素管まであるいは多くの場合初回の冷間圧延と焼鈍までについては、わが国では行っておらず、主に米国またはヨーロッパで製造した半製品を輸入している。
 被覆管の原材料としてのジルコニウムについては一貫した国産体制の確立をはかるため、日本鉱業(株)、石塚研究所、三井物産(株)が技術開発を実施した。三井物産と石塚研究所は、新製造技術によるジルコニウムの一貫生産工場を建設し、1986年度には、国内の全需要をみたす年産約1,000トン規模の工場を完成させた。
 被覆管成型加工の分野では、神戸製鋼が、1982年秋に年産50万メートルの新工場の試験操業を終了し、フル運転を行っている。この工場は、わが国最大の規模を有し、ジルカロイ被覆管に要求される高品質を実現するために製造工程で多くの新技術を導入している。このように、わが国の被覆管の製造技術はすぐれており、ジルコニウム鉱石から被覆管などの製品にいたる一貫した国産化体制の確立に成功している。
(2)ジルカロイ被覆管の製造工程
 軽水炉燃料は、高温高圧の炉水中で数年間、破損することなく、その性能を発揮し続けなければならない。ジルカロイ合金は、このような要求に応えるためアメリカで開発された材料で、中性子吸収が少なく優れた耐食性と機械的性質を有する。現在、BWR燃料にはジルカロイ−2が、PWR燃料にはジルカロイ−4が、それぞれ燃料棒被覆管として使用されてきている。合金成分を表1に示す。
 ジルカロイ合金の製法は、図1に示すように、まず、原料のジルコンサンドを、クロール法や蒸溜抽出法により、中性子吸収能の高いハフニウムを除去して、純ジルコニウムとする。これに、耐食性と機械的強度を与えるため、少量の鉄・クロム・スズを添加したものがジルカロイ−4である。また、ニッケルも加えたものがジルカロイ−2である。
 これらの合金を、被覆管・板材や棒材に加工する工程は、図1のとおりである。ジルカロイ合金は六方稠密構造の結晶系であるため、種々独特の加工技術を駆使する必要があり、合金の中でも極めて加工が困難な材料であるが、国産被覆管(旧三菱金属(株)・(株)神戸製鋼所および住友金属工業(株)の3社が製造している)の品質は、既に世界の最高水準にある。
 なお、被覆管以外の構造材としては、タイプレートやノズル等にはステンレス系合金が、またスペーサや支持格子にはインコネル系合金が使用される。これらは、いずれも耐食性や機械的・熱的性質等を考慮し、各部材の用途に応じて、選択的に使用されている。
<図/表>
表1 ジルカロイ合金の標準組成
表1  ジルカロイ合金の標準組成
図1 ジルカロイ部材の主要加工工程
図1  ジルカロイ部材の主要加工工程

<関連タイトル>
原子炉型別ウラン燃料 (04-06-01-03)
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集合体組立工程 (04-06-02-05)
燃料加工における検査工程及び品質保証 (04-06-02-06)
回収ウランの利用 (04-06-02-07)

<参考文献>
(1)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年6月)
(2)原子力安全研究協会(編):軽水炉燃料のふるまい(改定新版)、原子力安全研究協会(平成2年7月)
(3)萩茂樹,山本章夫,松浦敬三:連載講座「核燃料工学の基礎—軽水炉燃料」を中心に第8回軽水炉燃料の加工,軽水炉燃料の核・熱水力設計、原子力学会誌、Vol.47No.1(2005)
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