<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> ウラン濃縮
<小項目> ウラン濃縮施設
<タイトル>
世界のウラン濃縮施設 (04-05-02-02)

<概要>
 1970年代中頃までは、共産圏を除けば、米国だけが商業用ウラン濃縮施設を持ち、濃縮ウランの供給を行っていた。その濃縮方法はガス拡散法であり、能力は18,700tSWU/年であった。1970年代の後半に入ると英国、オランダ、ドイツの3カ国で1971年に設立したウレンコ(URENCO)が英国とオランダにおいて遠心分離法による商業ウラン濃縮を開始し、また1970年代末には1973年にフランスを中心にベルギー、スペイン、スウェーデンの4カ国で設立したユーロディフ(EURODIF)がフランスでガス拡散法の商業用ウラン濃縮施設を建設し、1982年には10,800tSWU/年の定格運転に入った。ロシアでは、1960年代前半より遠心分離法の導入を開始し、1970年代に入ると、既存のガス拡散法の遠心分離法への更新を開始し、1973年より英国、ベルギー、ドイツ、スペインなど10カ国に輸出している。世界原子力協会(WNA)や世界のウラン濃縮企業などの資料によると、現在の世界のウラン濃縮設備容量は約54,450tSWU/年である。一方、2007年における世界の濃縮役務需要は、約45,300tSWU/年で供給能力が需要を上回っているが、今後は、アジア地域(特に中国、インド)の需要増加、老朽化したガス拡散法ウラン濃縮施設の停止、およびそれに代わる遠心分離法ウラン濃縮施設の段階的な建設による生産能力の調整により、徐々に供給と需要の差は減少していくものと見られている。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
1.世界のウラン濃縮施設の経緯
 世界のウラン濃縮施設のうち商業用ウラン濃縮施設は、1970年台中頃までは米国にだけあった。自由経済圏内の原子力発電所用のウラン濃縮のすべては米国の濃縮施設によって行われ、米国は世界の需要をまかなうために1970年代にウラン濃縮施設を増設し、27,300tSWU/年までの規模にした。米国のウラン濃縮施設は、オークリッジ、ポーツマスおよびパデューカの3箇所にあり、すべてガス拡散法によるものであった。(1985年にオークリッジ工場、2001年にポーツマス工場が閉鎖し、現在はパデューカ工場のみが運転を行っている。)
 この米国だけのウラン濃縮供給体制から脱却することを考えた他の国はフランス、ドイツ、オランダおよび日本であり、1960年代後半にそれぞれ、独自のウラン濃縮法の試験開発を行うようになった。フランスは改良型のガス拡散法を、ドイツ、オランダ、および英国は遠心分離法の共同開発を行い、日本は独自の遠心分離法の開発を行うようになった。
 これらの開発からフランスでは、フランスを中心とした国際共同企業体ユーロディフ(EURODIF)がトリカスタン(TRICASTIN)に欧州共同体の資金協力で1970年代末に改良型ガス拡散法による10,800tSWU/年の商業用ウラン濃縮施設(ジョルジュ・べス工場)を建設し、現在も稼働している。またドイツ、オランダ、英国は国際共同企業体ウレンコを1971年に設立し、1970年代後半から遠心分離法による商業ウラン濃縮を開始して、1980年までに460tSWU/年、2000年末には4,800tSWU/年、2007年末には9,600tSWU/年の規模に達している。このようにして米国一国によるウラン濃縮サービスの供給体制は徐々に崩れ、ウラン濃縮は国際的な価格競争市場に移行していった。このため米国では、一部の老朽化した施設は撤去され、現在では、パデューカ工場(最大濃縮能力は約8,000tSWU/年)で年間約6,000tSWUのウラン濃縮を行っているにすぎない。一方、わが国では1979年より遠心分離法によるパイロットプラント(旧動力炉・核燃料事業団人形峠事業所)が部分稼動し、1989年5月からは200tSWU/年の原型プラントが稼動を始め、13年間にわたって商業濃縮を行った。さらに1992年には商業用ウラン濃縮施設(青森県六ヶ所村)が民間会社(日本原燃(株))によって操業を開始(150tSWU/年)し、1998年10月から1,050tSWU/年の設備規模となった。現在の計画では、開発中の新型遠心機への更新を2010年より開始し、最終的には1,500tSWU/年とする予定である。
 商業用のウラン濃縮技術としては、電力消費量がガス拡散法の約1/50と大幅に少なく、また、需要に応じて段階的に設備を拡張できる遠心分離法が主流となりつつあり、米国とフランス(ジョルジュ・べス工場は2012年頃停止の予定)も既存の老朽化したガス拡散法によるウラン濃縮施設の更新のため、遠心分離法によるウラン濃縮施設を建設中で、2010年代にはガス拡散法による既存のウラン濃縮施設は全てなくなると予想されている。
 世界の主なウラン濃縮工場を表1に示す。

2.諸外国のウラン濃縮の現状
 世界のウラン濃縮は、米国のユーセック(USEC)、ウレンコ、フランスのアレバ(AREVA:ユーロディフの親会社)、ロシアの国営企業ロスアトム(ROSATOM)の4社が世界全体の需要の約96%を賄っており、各社が10,000tSWU前後を供給している。
(1)米国
 ウラン濃縮事業はエネルギー省(DOE)の所管であったが、1992年10月に成立したエネルギー政策法によって公社化されることとなり、1993年7月に合衆国濃縮公社(United State Enrichment Corporation:USEC)が発足、1994年7月に米国政府が民営化の実施を承認し、1998年7月28日までに株式を公開し完全に民営化(ユーセック:USEC Inc.)された。オハイオ州ポーツマス、ケンタッキー州パデューカのガス拡散法による2工場のうち、2001年5月に老朽化によって生産性の低下したポーツマス工場の操業を停止し、現在パデューカ工場のみが稼働していて、年間約6,000tSWU/年のウラン濃縮を行っている。(図1参照)また、ユーセックは、ロシアと米国の政府間協定によって進められているロシアの核兵器解体で発生する高濃縮ウランの希釈低濃縮ウランの買い取りおよび販売の実施機関として、2013年まで(1995年より開始)年間約5,500tSWU相当の取引を行うことになっている。
 ユーセックは、パデューカ工場の老朽化による生産停止と、2013年末でのロシアからの濃縮ウラン供給停止に備えて遠心分離法を用いた新たなウラン濃縮工場(ACP:American Centrifuge Plant)をポーツマス工場敷地内に建設中であり、2009年末に部分運転を開始、2012年には3,800tSWU/年の規模とし、需要に応じてさらに設備を拡張する計画である。
 また、米国電力会社とウレンコとの合弁会社であるルイジアナ・エネルギー・サービシズ(LES:Louisiana Energy Services)も、ニューメキシコ州リー郡に遠心分離法による新たなウラン濃縮工場を建設中で、2009年に一部運転を開始し、2013年には3,000tSWU/年に、2015年には5,900tSWU/年に達する予定である。さらに、フランスのアレバは、アイダホ州イーグル・ロックに遠心分離法による新たなウラン濃縮工場の建設計画を進めていて、2008年12月30日に米国原子力規制委員会(NRC)へウラン濃縮工場の建設許可申請を行った。運転開始は2014年、2019年には3,000tSWU/年に達する計画である。
 その他の動きとしては、米国のGEと日立の共同出資会社GEH(GE Hitachi Nuclear Energy)とカナダの資源会社カメコ(Cameco)が、オーストラリアのサイレックス・システムズ(Silex Systems)が開発したレーザー濃縮技術、サイレックス(SILEX:Separation of Isotopses by Laser Excitation)法の使用権を取得し、実用化のための実証試験の準備を行っていて、2009年中頃には試験を終了し、試験結果が良ければ、ノースカロライナ州ウィルミングトンにウラン濃縮工場(最終目標は3,500tSWU/年〜6,000tSWU/年の規模)を建設し、2012年から運転を開始する計画がある。なお、原子レーザー法による濃縮技術(AVLIS)については、1994年7月、ユーセック理事会において承認され、商業化するために必要な措置を採り始める方針が決定され、ローレンス・リバモア国立研究所において技術開発が進められてきたが、1999年6月9日に計画中止を発表し、代わって1985年に開発を中止した大型遠心機の改良研究を再開して、現在建設中のウラン濃縮工場に導入することになった。
(2)フランス
 ユーロディフ(EURODIF:フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、およびイランの合弁会社でフランスのアレバが約60%の株を所有)が、トリカスタンにおいてガス拡散法によるジョルジュ・べス工場(公称能力10,800tSWU/年)を操業しているが、老朽化が進んでいて2012年頃には停止する予定である。これに代わるものとしてアレバはウレンコの遠心分離法技術を導入したジョルジュ・ベスII工場をジョルジュ・ベス工場の隣接地に建設中で、第一施設は2009年に一部運転開始の後、2014年に完成して4,000tSWU/年に達し、第二施設は2016年末までに完成し、3,500tSWU/年の規模に達する予定である。なお、原子レーザー法の研究開発がフランス原子力庁(CEA)を中心に進められていたが、ガス拡散法に代わる濃縮技術として遠心分離法が2000年に選択され、原子レーザー法については工業規模での実証試験を2003年まで行い、開発を終了した。
(3)英国、オランダ、ドイツ
 英国、ドイツ、オランダの国際共同企業体であるウレンコが、カーペンハースト(Capenhurst:英国)、アルメロ(Almelo:オランダ)、グロナウ(Gronau:ドイツ)において遠心分離法による濃縮工場の操業を行っていて、2007年末における濃縮能力はそれぞれ、4,200tSWU/年、3,600tSWU/年、1,800tSWU/年で、合計で9,600tSWU/年である。ウレンコは2003年に組織改革を行い、濃縮ウランの生産、販売等を担当するUEC(Urenco Enrichment Company Limited)と遠心分離機の開発、製造、プラントエンジニアリング等を担当するETC(Enrichment Technology Company Limited)の二つの子会社で運営するようになった。アレバは、ジョルジュ・ベスII工場にウレンコの遠心機を導入するために2006年7月にETCに50%の資本参加をしている。
(4)ロシア
 旧ソ連時代に、1949年から1960年代前半にかけて4つの軍事用のガス拡散法ウラン濃縮工場が建設されたが、1980年代後半から1990年代にかけて全て遠心分離法ウラン濃縮工場に置き換えられた。1980年代末には濃縮能力は20,000tSWU/年に達している。現在は、ロシア政府の原子力関連企業ロスアトム(ROSATOM)の傘下の4つの企業がそれぞれウラン濃縮工場を所有していて、ノボウラルスク(Novouralsk)、ゼレノゴルスク(Zelenogorsk)、セベルスク(Seversk)、アンガルスク(Angarsk)に立地している。合計の濃縮能力は24,000tSWU/年と推定されていて世界一の濃縮能力を所有している。新型の遠心機の開発にも力を注いでおり、計画的に遠心機の更新を行っていて、将来さらに濃縮能力を増強する計画である。
(5)その他
 中国は、ロシアより遠心分離法を導入し、公称濃縮能力500tSWU/年のウラン濃縮工場を2つ所有していて、さらにロシアとの間で、500tSWU/年のウラン濃縮工場の建設契約を結んでいる。
 また、わが国では、日本原燃(株)が青森県六ケ所村に公称濃縮能力1,050tSWU/年の濃縮工場を所有していて、2010年より10年程度をかけて新型遠心機への更新を図り1,500tSWU/年規模まで増強する計画である。
(前回更新:2005年8月)
<図/表>
表1 世界の主な濃縮工場
図1 アメリカUSEC社の濃縮プラント

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
ウラン濃縮法 (04-05-01-02)
原子法レーザーウラン濃縮 (04-05-01-13)
分子法レーザーウラン濃縮 (04-05-01-14)
中国の核燃料サイクル (14-02-03-04)
ロシアの核燃料サイクル (14-06-01-05)
ブラジルの核燃料サイクル (14-08-03-03)

<参考文献>
(1)動力炉・核燃料開発事業団:パンフレット「ウラン濃縮」(1997年)
(2)原子力委員会(編集):原子力白書 平成16年版(2005年3月)、p.129、131
(3)USEC:http://www.usec.com/
(4)USEC 2007 Annual Report:http://library.corporate−ir.net/library/93/936/93662/items/284277/USEC07AR.pdf,13/156−28/156
(5)URENCO:http://www.urenco.com/
(6)URENCO Annual Report & Account 2007:http://www.urenco.com/Content/117/Reports.aspx,7/64−17/64
(7)AREVA:http://www.areva.com/
(8)AREVA:Reference Document 2007,http://www.areva.com/servlet/ContentServer?pagename=arevagroup_en/common/gotopage&assetid=1033542611878&type=Page&callingpage=1028798800664?xtor=EPR−15,89/425−92/425
(9)SILEX:http://www.silex.com.au/
(10)SILEX:Annual Report 2008,http://www.silex.com.au/SilexAR2008.pdf
(11)Nuclear Information World Nuclear Association:http://www.world−nuclear.org/info/info.html
(12)DOE Congressional Report:Report on the Effect the Low Enriched Uranium Delivered Under the Highly Enriched Uranium Agreement Between the Government of the United States of America and the Government of the Russian Federation has on the Domestic Uranium Mining, Conversion, and Enrichment Industries and the Operation of the Gaseous Diffusion Plant 2007、http://www.ne.doe.gov/pdfFiles/2007_HeuReport.pdf
(13)Oleg Bukharin:“Understanding Russia’s Uranium enrichment Complex”,Science and Global Security,Princeton University(January 12,2004)
(14)Martin J.Virgilio:“Foreign Trip Meeting Summary:Louisiana Energy Services Technical Meeting And Site Visits”,NRC(July 26,2002)
(15)Maurice Lenders:“Uranium Enrichment by Gaseous Centrifuge”,Annual Meeting on Nuclear Technology 2001(May 16,2001),Dresden
(16)World Nuclear Association: The Global Nuclear Fuel Market Supply and Demand 2007−2030
(17)日本原燃(株):新型遠心機の開発状況について、http://www.jnfl.co.jp/cycle−noshuku/dev−centrifuge.html
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