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<概要>
 ノズル法によるウラン濃縮は、曲面壁を通過するガスに働く遠心力の差で重成分が大きな半径部を通り、軽成分は小さい半径部を通る現象によって両成分を分離する方法である。この場合にノズルを取り付け、六フッ化ウランヘリウムか水素ガスを混合させて分離係数を高める方法が取られている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 ノズル法によるウラン濃縮は初期には六フッ化ウランをノズルで吹き出すことによって、膨張するガスの質量による拡散速度の差を利用する方法であった。この方法で試験した装置は 図1 に示す通りである。供給する六フッ化ウランは約 20 トール(mmHg)の圧力で幅0.045mm のスリット状のノズルを通して低い圧力の領域へ流出し、供給ガスの約2 割は供給流ジエットから分散して広がる。この方法により分散したガスは軽い同位体すなわち235U をいくらか濃縮する結果となる。この分離特性の改良のため旧西独のベーカーらによって二つの改良法が採用され大幅な改善がなされた。
 (1) 分子量の低い気体、すなわち開発初期にはヘリウム、開発後期には水素で供給気体の六フッ化ウランを希釈することにより有利な効果が得られた。それはノズルから噴射されるガスの速度(音速となっている)が増大するのに伴い分離係数が上昇し、また拡散速度が大きくなるため分離を妨げることなく、より高い圧力およびより大きいウラン処理量での操作が可能となったからである。
 (2) 図2 に示すようなノズル形状を大幅に変更することにより、スリットを通り膨張する流れによるわずかな分離に、遠心力の加速による大きい分離(遠心力によって、重い分子ウラン238 が壁にそって流れ、軽い分子ウラン235 が手前側に流れる) 効果が付加された。
なお、水素中での六フッ化ウランの拡散係数はヘリウム中に比べ約20% 大きいから、水素の混合物に変更された。
現在(1991年)、独国での工業化が進められているが、詳細については不明である。
<図/表>
図1 ノズル法の初期の装置
図1  ノズル法の初期の装置
図2 改良型ノズル法で用いられるスリット断面
図2  改良型ノズル法で用いられるスリット断面

<参考文献>
(1)M.Benedictほか(清瀬量平訳):ウラン濃縮の化学工学、日刊工業新聞(1985)
(2)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年)
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