<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> ウラン濃縮
<小項目> ウラン濃縮方法
<タイトル>
レーザー法によるウラン濃縮 (04-05-01-06)

<概要>
 天然ウランから濃縮ウランを製造するウラン濃縮法には、実用化されているガス拡散法と遠心分離法の他に、現在研究開発中の方法としてレーザー法がある。レーザー法は、分離係数が極めて大きく、効率良く軽水炉用の低濃縮ウランが得られることが期待される。レーザー法には、原料として六フッ化ウランを用いる分子法と金属ウランの蒸気を用いる原子法がある。この2つの方法の原理とその現状について解説する。
<更新年月>
2005年07月   

<本文>
 レーザ法の特徴は、分離係数が極めて大きく、1段の濃縮操作で軽水炉級の低濃縮ウランが得られることである。これは、ガス拡散法や遠心分離法が統計的な分離方法であるのに対し、レーザ法がU235のみを選択的に分離し、理論的には100%に近い分離が可能なことに基づく。このようにカスケードが不要であると、濃縮システムをコンパクトにできる。また大出力で効率の良いレーザを開発できれば、電力消費量を遠心分離法なみか、それ以下にできる。これらのことから、レーザ法では高い経済性が期待される。
 わが国のレーザー法ウラン濃縮技術開発のあり方を検討していた原子力委員会ウラン濃縮懇談会のレーザー法ワーキンググループは、原子法、分子法のいずれかを採用するかについては決定しないで、当面は両方法を産業界、学会、国の研究開発機関が協同して研究開発を促進していくことを1986年4月に報告した。
 技術開発目標として、原子法は年間あたりトンSWU規模とする。分子法についても原子法と同じ規模を目標とするが、平行して理論実証を実施する。
 開発体制については、原子法は電力業界を中心としたユーザー側の研究組合により民間主導型で進めることになっている。また、分子法については、理化学研究所が六フッ化ウランの取り扱い経験の実績を有する動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)の協力を得て、研究を進めている。
 レーザー濃縮については今後、更に段階的な開発が必要であり、原子法、分子法とも、研究開発を次の段階に進むべきか否かを2000年ごろまでに判断を行うこととしている。
(1) 原子法(図1参照)
 原子法は、天然ウラン金属を加熱してウラン蒸気を発生させ、これにレーザー光をあてることにより、ウラン235 だけをプラスイオンにして、マイナスの電極に集める方法である。
 日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)は、1976年から原子法の基礎研究に取り組み、その原理実証試験も成功している。1987年4月には、科学技術庁(現文部科学省、以下同じ)と通産省(現経済産業省、以下同じ)資源エネルギー庁が,「レーザー濃縮技術研究組合」を認可した。レーザー濃縮技術研究組合は、東京、関西などの9電力会社と、日本原子力発電、日本原燃産業(現、日本原燃)及び電力中央研究所で構成されている。組合の開発計画では、1987年度を予備試験段階として濃縮装置を製作し、実験データの集積を行う。1987〜1992年に1〜5トンSWU/年を目標とする実験機を製作してシステム試験を行い、総合的な評価をするとしていた。しかし、1989年3月に電力業界は、組合の原子法によるウラン濃縮技術開発計画を見直した。
 それによると、
(a) 実証試験を1991年度まで一年間延長する。原子力委員会の評価は、その後に行う。評価の時期は、実証試験の成果をみて改めて決定する。分子法も同じとする。
(b) 実証試験に使用する実験装置は、茨城県東海村の日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)の構内に建設する。
 組合は1989年2月に茨城県と東海村との間に「レーザー濃縮技術開発試験に関する安全協定」を結んだ。一方、科学技術庁は組合に1トンSWU/年規模の実験機建設のための使用許可を交付した。1989年6月には実験建家「原子レーザー法実験施設」の建設工事に入った。
 原子法は、これまで日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)が実施してきた研究開発の成果を引き継ぎ、研究組合が開発を進めることになるが、1991年までに原子レーザー法ウラン濃縮技術が実用化できるかどうかをはっきりさせる計画である。
 この実験施設での試験は1990年7月から開始され、基礎的なデータ収集がなされ、1991年10月から装置全体の運転試験特性やウラン濃縮実証試験が行われ、目標をほぼ達成した。
 一方、今後の長期的な濃縮技術開発のあり方等について、原子力委員会のウラン濃縮懇談会で審議され、1992年8月、原子レーザー法については、研究開発を継続することが必要であると報告された。これを受け、研究組合は引き続き、1993年よりさらに各機器の能力を商業規模まで高める要素開発等を行う研究開発に取り組んでいる。同研究組合は、ウラン濃縮試験でほぼ想定どおりの性能を得たことから、研究開発を全て終了し、2005年3月に解散した。
 東京・関西及び中部電力三社と日立・東芝・三菱重工など重電メーカー6社は、レーザー法によるウラン濃縮技術の開発を促進するため、文部省及び通産省、科学技術庁と協力して財団法人「レーザー総合研究所」を1987年10月に発足させた。
 この研究所は、1987年4月に発足したレーザー濃縮技術研究組合と協力体制をとり、大阪大学レーザー核融合センターの装置や技術を活用する予定になっており、研究組合を技術面で支援しレーザー法ウラン濃縮技術開発をさらに促進させることができると期待されている。
(2)分子法(図2参照)
 分子法は、六フッ化ウランに赤外線レーザーをあてた場合、ウラン235 とウラン238 のフッ素化合物のうち、ウラン235 の方が化学変化をおこして五フッ化ウランになりやすいことを利用し、六フッ化ウラン(気体)と五フッ化ウラン(固体)とを分離してウランを濃縮する方法である。
 分子法は、わが国では理化学研究所が原理実証のための研究開発にとりくんでいる。理化学研究所はレーザーを六フッ化ウランに効率よく照射して化学反応をおこさせる高出力レーザーの開発を進めている。赤外レーザーの発生源として高いパルスで発振する「高繰返し炭酸ガスレーザー」の開発を進めていて、1989年10月、数年後の実用化に必要な数百ヘルツの炭酸ガスレーザーの要素開発目標を達成できる見通しを得たと発表した。
 科学技術庁は、1991年の比較評価のため分子法の開発を加速させるために、1988年度から開発の主体を動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)へ移行させる方針を定めた。動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)は、六フッ化ウランにレーザー照射一回で、3%ウラン235 程度の濃縮ウラン、五フッ化ウラン粉末をグラムオーダで回収することを目標にしている。1990年11月、動燃(現日本原子力研究開発機構)は大型の試験装置を東海事業所内に完成させ、同年12月から工学的な試験を実施し、実用化のための最適条件の調査研究を行っている。
 理化学研究所では、実用化に必要な炭酸ガスのレーザーの高繰返し化や長寿命化をめざした開発を担当していくことになった。
 分子法によるウラン濃縮は、超高速ノズルからとびだす六フッ化ウランガスにレーザーを照射するため化学変化をむだなくおこす高パルス、高出力のレーザーが必要になる。プラント規模でウランを濃縮するには、約 100kWの出力をもつレーザーが必要となるため、高出力が要求されている。
 分子法は、分離係数を高くする方法及び選択的に分離した同位体を含む生成物を効率よく回収する方法を見つけることができれば原理的にすぐれた方法となる。
 原子法に比べて分子法は、工学実証試験に入ったばかりで、要素開発、プロセス開発等に開発を要する課題を多く残しているのが現状である。このため、基礎的な研究成果や工学実証試験施設等を活用して、実用プラントの具体的な設計ができるだけの技術的蓄積をしていくことが必要とされている。
 なお、その後ウラン濃縮懇談会において研究開発計画の見直しが行われ、新しい計画が1992年8月にまとめられた。
<図/表>
図1 原子レーザー法ウラン濃縮プロセス概念図
図2 分子レーザー法ウラン濃縮プロセス概念図

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<関連タイトル>
原子法レーザーウラン濃縮 (04-05-01-13)
分子法レーザーウラン濃縮 (04-05-01-14)

<参考文献>
(1)M.Benedictほか(清瀬量平訳):ウラン濃縮の化学工学、日刊工業新聞(1985)
(2)日本原子力産業会議(編):原子力年鑑1994年版、平成6年11月
(3)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版、大蔵省印刷局、平成7年2月
(4)火力原子力発電協会(編):やさしい原子力発電、平成2年6月
(5)火力原子力発電協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、昭和61年6月
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