<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> ウラン濃縮
<小項目> ウラン濃縮方法
<タイトル>
ガス拡散法によるウラン濃縮 (04-05-01-05)

<概要>
 濃縮ウランを造る場合、細孔(80〜100オングストローム)を有する隔膜を使い、細孔を通すことによって濃縮度を上げる方法をガス拡散法という。原料としては六フッ化ウランを使用して、隔膜の前後の圧力差で透過させ、透過するガスと透過しないガスとに分け、透過するガスはわずかにウラン−235濃縮度が高くなり、透過しないガスはわずかにウラン−235濃縮度が低くなる。この分離係数は理論上、最大で1.004である。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
 ガス拡散法によるウラン濃縮は、細孔(80〜100オングストローム)を有する隔膜を利用して、この隔膜を透過させることによりウラン−235濃縮度を高める方法である。(図1参照)
 この際、使用するウランは、ガス化した六フッ化ウランであり、隔膜の前後に圧力の差をつけて、細孔を通すことになる。この場合、気体分子の運動エネルギーは(1/2)・MV2(Mは質量、Vは速度)であり、軽い分子の方が平均運動速度は大きくなるため、ウラン−238とウラン−235とを比べると、ウラン−235の方が大きくなる。このことから、理論分離係数は(ウラン−238の質量/ウラン−235の質量)の1/2乗となり、1.004となる。したがって、この理論上では、細孔はできるだけ細い方がよいが、50〜100オングストロームの範囲が適した条件といわれている。
 この細孔が均一でかつ多量に製造できるか否かが重要な問題点であり、材質としては耐蝕性のあるニッケル、アルミナまたはポリフッ化エチレンが用いられている。その製造法は各国の機密事項となっている。この隔膜は円筒状の長いパイプ状に造られ、それらを何本も組み合わせて、タンク内に納めて、ポンプにより、加圧、吸引が行えるようにしたものが拡散筒といわれている。この拡散筒(図2参照)とその加圧、吸引ポンプが組み合わされ、カスケードに組み立てられるが(図3参照)、分離係数が小さいので、例えばウラン−235を3%含む濃縮ウランを製造するためには数百段の段数が必要となる。拡散筒とポンプの種類を多くすると製造の標準、規格化のための経費がかかり、種類をある程度に抑えて、濃縮価格の低下を行っている。カスケードはステップカスケードにし、配管を単純化している。
 六フッ化ウランは、固体、液体、気体の3重点が1,137 Torr、64℃にあるので1気圧よりも低く、やや高温のガス状態で使用されるので、その範囲内の隔膜間の差圧を生じさせるため、加圧ポンプ、吸引ポンプにより圧縮、膨張を繰り返し行うことになる。この際に、ポンプの効率も1つの問題点となるが、圧縮、膨張により発生する熱を除去する必要があり、冷却系の設備が必要となる。これらの熱収支による電力消費が非常に大きく、設備の償却費より運転時の電気料金が大きくなり、濃縮コストの大部分を占めることになる。
 この方法は米国で開発された方法である。米国では1950年代に3つの軍事用ガス拡散法ウラン濃縮工場が建設され、1960年代からは原子力発電用の商業ウラン濃縮工場となったが、現在稼働しているのは1箇所(ケンタッキー州パデューカ)だけで、年当たり約8,000tSWUの最大濃縮役務能力がある。1970年代までの原子力発電用の濃縮ウラン核燃料はすべて米国一国でまかなわれていたが、フランスを初めとした四ケ国共同による商業用ガス拡散法ウラン濃縮工場が1979年に運転を開始し(1982年に10,800tSWU/年の定格濃縮役務能力に到達)、また、英国、オランダおよびドイツの三国共同による遠心分離法ウラン濃縮工場が1970年代後半より英国とオランダで商業運転を開始するに至り、以後アメリカの商業ウラン濃縮市場の独占はなくなった。ソ連においても1949年から1960年代前半にかけて4つの軍事用のガス拡散法ウラン濃縮工場が建設されたが、1980年代後半から1990年代にかけて全て遠心分離法ウラン濃縮工場に置き換えられた。米国及びフランスにおいても、電力消費量がガス拡散法の約1/50と大幅に少ない遠心分離法ウラン濃縮工場を建設中で、2010年代にはガス拡散法による既存のウラン濃縮工場は全てなくなると予想されている。
なお、アルゼンチンにおいて、1980年代に開発を実施していたガス拡散法の改良(Sigma法)を目指した研究開発が推進されていて、パイロットプラントスケールでの試験計画がある。
 図にガス拡散法の原理、拡散筒、ガス拡散カスケードの構成を示す。
<図/表>
図1 ガス拡散法の原理
図2 拡散筒
図3 ガス拡散カスケードの構成

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
濃縮ウラン (04-05-01-01)

<参考文献>
(1)三島良績(編著):核燃料工学、同文書院(昭和47年10月)
(2)火力原子力発電協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、昭和61年6月
(3)火力原子力発電協会(編):やさしい原子力発電、平成2年6月
(4)USEC,http://www.usec.com/
(5)URENCO,http://www.urenco.com/
(6)AREVA,http://www.areva.com/
(7)AREVA Reference Document 2007,http://www.areva.com/servlet/ContentServer?pagename=arevagroup_en/common/gotopage&assetid=1033542611878&type=Page&callingpage=1028798800664?xtor=EPR−15、89/425−92/425
(8)AREVA:”Expanding the U.S. Nuclear Infrastructure by Building a New Uranium Enrichment Facility”,http://adamswebsearch2.nrc.gov/idmws/doccontent.dll?library=PU_ADAMS^PBNTAD01&ID=071720251、18/68−20/68
(9)Nuclear Information World Nuclear Association,http://www.world−nuclear.org/info/info.html
(10)Nuclear Information World Nuclear Association、Argentina,http://www.world−nuclear.org/info/inf96.html
(11)Oleg Bukharin,“Understanding Russia’s Uranium enrichment Complex”,Science and Global Security,Princeton University,January 12,2004
RIST RISTトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ