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<概要>
 天然に存在するウランには、同位元素として燃えるウラン(ウラン−235)が0.7 %、燃えないウラン(ウラン−238)が99.3%混在する。この燃えるウラン(ウラン−235)の比率を高めることをウラン濃縮という。原子炉の型式によるが、ウラン燃料として濃縮ウランが一般に多く使用されている。軽水型原子炉はウラン−235を3〜5%に濃縮したウランを使用して、効率的かつ経済的に発電している。
<更新年月>
2009年01月   

<本文>
 原子炉に使用されるウラン燃料は原子炉の型式によって異なっている。天然ウランであるウラン−235が 0.7%のままで燃料として使用する発電用原子炉(黒鉛減速ガス冷却のコーダーホール型原子炉、重水減速重水冷却型原子炉)もあるが、軽水炉では天然ウラン中の燃えるウラン(ウラン−235)の比率を高めて燃料とする。
 天然ウランは燃えるウラン(ウラン−235)が 0.7%と燃えないウラン(ウラン−238)が99.3%および微量の他の同位元素で構成されている。一般に数多く運転されている発電用原子炉は軽水型(軽水減速軽水冷却型)といわれ、ウラン−235の比率を3〜4%まで高めた燃料を使用して、効率よく経済的に運転している。このウラン−235の比率を高めたものを「濃縮ウラン」といい、濃縮ウランを製造することを「ウラン濃縮」という。ウラン濃縮工程で発生する天然ウランよりウラン−235が低い濃度のものを「劣化ウラン」という。ウラン濃縮の原理は同位元素が物理的にも化学的にもほとんど同じ性質であるので、わずかの質量の差を見出して分離濃縮を行うものである。すなわち、ウラン−235とウラン−238とのわずかな質量の差(原子量で3)を利用する方法、酸化還元反応における化学的なわずかの違い、或いはレーザー光線の照射によって励起される状態の差をそれぞれ利用する方法などにより分離濃縮が行われる。
 このような原理を工業的に利用するには、有効な装置の開発の他に、1段の分離作業ではわずかに濃縮したものしか得られないことから、多くの段数を重ねて(カスケード)濃縮する必要が生じる。劣化ウランに残るウラン−235濃度もできるだけ低くして、原料を有効に利用する方法がのぞましい。しかも経済的には最も安い価格で供給できるようにすることが、電力費の低減につながることになる。
 わが国では、当初濃縮ウランの製造を米国にほとんど依存していたが、米国依存を少くするために、わが国でもウラン濃縮の開発を行い、ウラン濃縮事業の会社「日本原燃産業」(平成4年7月「日本原燃」と改称)が設立され、濃縮工場の運転が平成4年3月より開始されている。
 一方、諸外国も同様な考え方で、自国又は共同でウラン濃縮事業を行うようになった。フランスを初めとした四ケ国で、また、英国、ドイツおよびオランダは三ケ国の共同で事業を行い、米国への依存体制から脱却している。
 このウラン濃縮の方法は、米国およびフランスを初めとした四ケ国共同は隔膜を使い、質量の差による透過量の違いを利用したガス拡散法である。英国、ドイツおよびオランダの三ケ国共同のものは遠心機を使った遠心分離法であり、わが国も遠心分離法である。
 その他研究開発が試みられた技術として、化学的なイオン交換法がフランスとわが国で、ノズルから吹き出す速度差(質量差)を利用するノズル法がドイツで、レーザーを利用する方法が米国、フランス、イギリス、ドイツ、日本、南アフリカ、オーストラリアなどで行われた。これらの技術の中で、オーストラリアで開発されたレーザーを用いるサイレックス法だけが現在も開発が続けられている。
<関連タイトル>
分離作業量(SWU) (04-05-01-03)
ウラン濃縮法 (04-05-01-02)
レーザー法によるウラン濃縮 (04-05-01-06)

<参考文献>
(1)三島良績 編著:『核燃料工学』、同文書院(昭和47年10月)
(2)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年6月)
(3)火力原子力発電技術協会(編):やさしい原子力発電、火力原子力発電技術協会(平成2年)
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