<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 製錬・転換
<小項目> 粗製錬
<タイトル>
ウラン粗製錬 (04-04-01-01)

<概要>
 鉱石からウランを酸またはアルカリ溶液に浸出(溶出)し、ウランを濃集、精製させた後、強アルカリなどで沈澱させ、ウラン精鉱(いわゆるイエローケーキ)を生産する工程を一般にウラン粗製錬という。
 ウラン粗製錬の中のウラン浸出(ウラン溶出)方法には硫酸を用いた酸浸出法と炭酸ナトリウムと酸性炭酸ナトリウム(重曹)を用いたアルカリ浸出法がある。
<更新年月>
2010年09月   

<本文>
 一般にウラン粗製錬とは、採掘された鉱石を受け入れて粗砕・粉砕後、ウラン浸出(ウラン溶出)、固液分離(鉱さいとウラン浸出液との分離)、ウラン濃集・精製などの工程を経てウラン精鉱(イエローケーキ)を生産するまでをいう。なお、ウラン鉱石の鉱物学的、物理的および化学的な性質は鉱石によって異なるため、その性質に適合した粗製錬法を採っている。なお、ウラン鉱石を採掘せず、ウラン鉱石が存在する地層中にウラン浸出のための抽出液を直接注入してウランが溶け込んだ浸出液を汲み出す、インプレースリーチング(Inplace leaching)、またはインシチュリーチング(In-situ leaching)と呼ばれる採掘方法も実用化されている。
 ここでは採掘されたウラン鉱石の粗製錬法について述べる。
(1)ウラン鉱石
 ウラン粗製錬プラントは、ほとんどの場合ウラン鉱山と同じサイト内に建設されており、ウラン鉱石を長距離にわたって輸送することはない。また、サイト外へのウラン鉱石の輸送に規制を行っている国が多い。ウラン鉱石に含有するウラン量は、一般に0.02〜1%程度と少量で、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛鉱などのように数〜数10%と多量に含有するケースは少ない。
 ウラン鉱石には、ウラン以外の金属元素を含有している。モリブデン、コバルト、ニッケル、銅、砒素などは主として硫化鉱物として、バナジウム、ラジウムは主としてウラン鉱物と共に、そしてトリウム、ジルコニウムはそれらの鉱物またはウラン鉱物と共に鉱石中に存在する。これら金属元素は、経済的に有利な場合には副産物として生産される。南アの金鉱山ではウランと共に金を微量(0.05%以下)産出するので、金回収後、ウランを副産物として回収している。ウラン鉱石に含有するウラン以外の他の金属元素は、副産物として回収されることはほとんどなく、一般に固体および液体廃棄物中に移行する。固体廃棄物の堆積貯蔵および液体廃棄物の処理後の放流の際に、これら金属元素がウラン、トリウム、ラジウム、ラドンなどの放射性元素と共に環境にあたえる影響を、考慮しなければならない。
 ウランを含有する鉱物は約 200種類あるが、その中で上記に該当する鉱物は主として、閃ウラン鉱、閃ウラン鉱と同じ化学式をもつピッチブレンド、コフイン石、デービド鉱、カルノー石、リンカイウラン石、ニンギョウ石、フランセビル石、ツヤムン石およびブラネライトである。
(2)粗砕・粉砕工程
 鉱石は細かく砕いてウラン鉱物を表面に露出させ、浸出液にウランが溶出し易くなるようにする。粗砕は一般に水を用いない乾式法でおこなわれるので、鉱石粉とラドンが最も発生しやすい個所である。したがって、粗砕装置を密閉し、局所排気および全体の排気を行うなどの対策や水の散布などを行う。粉砕は一般に水を加えた湿式法で行うので、鉱石粉とラドンの発生は著しく少なくなる。一般に粗砕・粉砕工程は騒音も発生するので、別棟に設置し、その他の製錬工程と隔離している。なお、鉱石輸送始点、中継点および終点など鉱石が直接大気に接する個所では、覆いを設けて局所排気を行う。排気中の鉱石粉やラドンは湿式集塵装置などで除去される。
(3)ウラン浸出工程
 ウランの浸出法には酸(硫酸)溶液を用いた酸浸出法と炭酸ナトリウムと酸性炭酸ナトリウム(重曹)の混合溶液を用いたアルカリ浸出法がある(図1参照)。例外として、南アのパラボラでは、硝酸を用いている。酸かアルカリ溶液かの選択は、鉱石中に酸またはアルカリ溶液と反応する鉱物のどちらが多く含有しているかによって行われる。たとえば、鉱石が石灰岩質成分を多く含有していると、 表1の(1)式によって酸溶液と反応して、硫酸を消費してしまうので、アルカリ溶液が用いられる。また、鉱石に黄鉄鉱が多く含有していると、表1の(2)式によってアルカリ溶液と反応するので、酸溶液が用いられる。なお、ウラン浸出の実施例では酸浸出法が圧倒的に多い
 浸出液として用いられる酸溶液の濃度は20〜30g/リットル程度の稀硫酸であり、アルカリ溶液の濃度は30〜40g/リットル程度の炭酸ナトリウムおよび10〜20g/リットル程度の酸性炭酸ナトリウムである。
 浸出には、粉砕鉱石と浸出液と多くの場合には酸化剤も加えて、温度、浸出時間、圧力などの条件を調整しながら、鉱石からなるべく多くのウランを溶出させるようにする。これら条件は鉱石の性質によって、かなり異なってくる。ウラン鉱石に含有するウラン以外の金属元素は、それら元素を含む鉱物の化学的性質、粒度および浸出条件などにもよるが、一般の硫酸浸出法の場合では、モリブデン、ニッケル、コバルト、銅および砒素は鉱さいと浸出液の両方に分配され、バナジウムは主として液中に、そしてラジウムは主として鉱さい中に分配される。
(4) 固液分離工程
 ウラン浸出後の鉱さいと浸出液は分離され、鉱さい中にウランを含む浸出液が残らないようによく洗われる。両者をよく分離することは、ウラン回収率に影響すると共に鉱さいの堆積貯蔵の際の環境にも影響をおよぼす。
 鉱石の性質や粉砕粒度によって、固液分離の難易が生じる。鉱さいの沈降性をよくするために凝集剤を加えて分離性をよくしたり、フィルターを用いて濾過したりして、微細な鉱粒をほとんど含有しない透明なウラン浸出液とする。この液は水溶液中のウラン含有量を増すために精製の工程に送られる。
 分離された鉱さいは、鉱さいダムに送られる。
(5)ウラン濃集・精製工程
 硫酸浸出液は、約0.5〜1.5g/リットルのウランのほかに、鉱石によって異なるが種々の金属成分を溶出しているので、この工程でウラン濃度を高くし、そして不純物であるウラン以外の金属成分を除去し、さらに溶液中のウラン含有量を増すためのウラン分の濃集と精製を行う。
 アルカリ浸出液は、ウランとバナジウム以外の金属成分をほとんど溶出しないので、一般では濃集と精製の工程を省略して、すぐウラン沈澱工程に導くことができる。
 ウランを含む硫酸浸出液の濃集と精製は、イオン交換樹脂法か溶媒抽出法で行う。イオン交換樹脂法では、イオン交換樹脂に浸出液中の主としてウランだけを吸着させ、その後、硫酸アンモニウム溶液や塩化ナトリウム溶液などを用いてイオン交換樹脂中のウランを溶離し高い濃度で取り出す。溶媒抽出法は、3級アミンをケロシン(炭化水素)に溶出した有機相とウランを含む硫酸浸出液とを混合させて、浸出液中のウランを有機相に移し、その後、有機相から塩化ナトリウムや硫酸アンモニウム溶液を用いてウランを溶離し濃集、精製して取り出す。
 両法ともウランが取り出された後の浸出液が多量に排出される。その量は、処理鉱石量の2〜4倍である。この廃液は消石灰で中和後、鉱さいダムへ送られる。中和によって、廃液中に含有する金属成分の大部分は水酸化物などになり沈澱する。
(6)ウラン精鉱(イエローケーキ)工程
 硫酸浸出液から濃集・精製により溶離された含ウラン溶液は無処理のまま、またウランを含むアルカリ浸出液は硫酸を加えて残留する炭酸塩を分解した後、アンモニアや水酸化ナトリウムなどの強アルカリを加えてウランを重ウラン酸塩とし、または過酸化水素を加えて過酸化ウランとして沈澱させる。これまでの処理でウラン含有率は80%程度に高められ、乾燥後ドラム缶に詰めて出荷する。ドラム缶には普通350〜380kg程度のウラン精鉱が詰められる。
 アルカリ浸出液からウランを沈澱させる時に、水酸化ナトリウムを使用すると、廃液中には水酸化ナトリウムがかなり残留する。この液に自家発電などの際に生じる廃ガス(炭酸ガスを含む)を反応させると、表1(3)式のように炭酸ナトリウムおよび酸性炭酸ナトリウム溶液が作られる。この液をウラン浸出液として再使用することが多い。
 この工程でウラン精鉱粉末が飛散しやすい個所では、局所および全体の排気を行い、高効率の湿式集塵装置などで排気中の粉末を除去している。
 以上述べたウランの粗製錬法について補足を行い表2に示す。
<図/表>
表1 ウラン粗製錬反応式
表2 ウラン粗製錬法
図1 硫酸およびアルカリ浸出によるウラン粗製錬

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<関連タイトル>
ウラン鉱床の分布および主要生産国と生産量(レッドブック2007) (04-02-01-02)
ウラン採鉱法とその特色 (04-03-01-01)
インシチュリーチング法の実際例 (04-03-01-02)
ヒープリーチング法 (04-03-01-04)
その他のウラン粗製錬 (04-04-01-02)
イエローケーキ(ウラン精鉱)の性質 (04-04-01-03)
世界のウラン製錬施設 (04-04-01-05)

<参考文献>
(1)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、火力原子力発電技術協会(昭和61年)
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