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<概要>
 ウラン鉱物およびトリウム鉱物より構成される鉱石鉱物は多数存在し、それらは放射性核種を含む。
 ウランはα線放射体であり、天然ウランの出すγ線やβ線はウランの壊変生成物から放出されている。ラドンは天然に存在する唯一のα線を放出する気体である。ラドンの娘核種ポロニウムはα線放射体であり、呼吸とともに摂取され呼吸器官内に付着する。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
  ウラン鉱物およびトリウム鉱物は、いずれも放射性を有し、これによって他の鉱物から容易に区別される。
ウランおよびトリウム鉱物に存在する放射性核種について、人形峠鉱山のような堆積型鉱床については、ウラン系列のみを考えれば良いが、センウラン鉱を産出する鉱脈型鉱床についてはトリウム系列を考える必要があり、天然トリウム、天然ウランおよびラドン、トロンとその娘核種について考える必要がある。
ウラン:
  92番目の元素で比重18.7の金属である。天然に存する元素のうち一番重い。天然には質量 238、 235、 234の3種の同位元素が存在する(表1参照)。いずれもα線を放出する。従来からの習慣で天然ウラン1キュリー(Ci)というのは、その中にふくまれるウラン 238が1Ciである場合をいう。ウランはα線放射体であるが、放射線による障害よりも、化学毒(不溶性の場合は除く)の方が問題である。可溶性ウランは腎臓に沈着すると言われている。天然ウランの出すγ線の大部分やβ線は、ウランの壊変生成物から放出されているが、γ線のエネルギーは比較的低く、またウラン自身の自己吸収も大きいので、外部からの被曝による危険は少ない。
トリウム:
  90番目の元素で重い(比重11.5)灰色の金属である。天然トリウムの大部分はトリウム232である。トリウムは摂取されると骨に沈着し、α線を放出する。
ラドン:
  86番目の元素で、天然に存在する唯一のα線を放出する気体である。ラドンという呼び名は、86番目の元素の名であることもあり、またラドン222(ウラン系列のラドン)のみを意味することもある。ラドンは空気の約7.7 倍(9.96g/1) の重さの気体で、15℃で水1容に対し 1/4容溶解し、油脂やトルエンに大変溶解し易い。ラドンは不活性の元素であるので、一般に化合物は作らない。ラドンは空気と共に体内に摂取されても、ラドンのみで娘核種(ドータと略称) を伴わなければ相当多量でない限り、障害の原因とはなりにくい。しかし、ドータと共存し、ドータが呼吸気管内面に付着するため危険であると言われている。呼吸気管に付着するラドンのドータの危険性は、ドータの存在状態によって変わるものとされている。
ラドンの娘核種(ドータ):
  ラドン222から壊変したばかりのポロニウム218は原子的な状態にあるが、直ちに相互に付着するか、水の分子などに付着して、やや大きな状態の粒子を作る。このような粒子を一次粒子と呼んでおり、この粒子の大部分はラジウムA(RaA)であるが、ときとしてこの状態の214Pb(RaB)が多量に存在することもある。これらの粒子は拡散速度が大きく壁などに容易に付着し、また呼吸とともに摂取されると呼吸気管内壁に付着する。 RaAはα線放射体であるため、付着している部分に、比較的高い被曝を与える。一次粒子は短時間のうちに空気中に浮遊している微粒子に付着するが、空気中の粉塵量が多い程付着する割合は大きい。一次粒子の多くはプラスイオンの状態にあり、フリーイオンと呼ばれることもある。一次粒子である RaA濃度とラドン222と平衡していると仮定したときのRaA 濃度の比をf またはf 値と呼ぶ(表2参照)。一般にその値は6〜15%である。
  ラドンのドータはPo、Pb、Biであるから、空気中、水中のドータはそれぞれの元素の性質を表わす。ポロニウムはテルルに似た金属状の元素で、その天然に存在する同位体はすべてα線放射体で、加熱すれば容易に蒸発してしまうので取扱い上危険を伴い、体内に摂取されると肝臓、腎臓に蓄積され、一部は体外に放出される。
<図/表>
表1 天然ウランの存在状況
表1  天然ウランの存在状況
表2 ラジウムA(RaA)の濃度比
表2  ラジウムA(RaA)の濃度比

<関連タイトル>
ウランの地殻中での挙動とその分布 (04-02-01-01)
坑内の放射線 (04-03-02-01)
ウラン・トリウムを主成分とする鉱石鉱物と種類 (04-02-01-04)

<参考文献>
『ウランその資源と鉱物』。編集、日本学術振興会ウラン・トリウム鉱物研究委員会。朝倉書店(昭和36年3月)。
 『ウラン鉱業技術集』。編集、動力炉・核燃料開発事業団(1968年7月)。
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