<大項目> 核燃料リサイクル施設
<中項目> 探鉱
<小項目> ウラン等の資源
<タイトル>
劣化ウランとその利用 (04-02-01-11)

<概要>
 原子力発電の増加とともに濃縮ウラン燃料の使用は増え、必然的にウラン濃縮過程で生ずるテイルウラン、すなわち劣化ウランの発生量も増える。劣化ウランの積極的な利用を図り、消費しなければその貯蔵量はますます増加していく。しかし、現状では非原子力分野での利用は、航空機のカウンターウエイト、砲弾、使用済燃料輸送容器などに限定されており、その使用量も貯蔵量に比べればはるかに少ない。
 原子力分野における劣化ウランの使用は、天然ウランの代替や節約にもつながる。世界原子力協会では、長期間の貯蔵に耐えられるように、劣化六フッ化ウランガスを安定な状態にして管理し、将来の需要に備えるなどの対応策を報告している。
<更新年月>
2009年02月   

<本文>
1.劣化ウランとは
 原子炉燃料としての濃縮ウランを製造する際、天然ウランの濃縮工程で後に残ったウランを劣化ウランいう。テイルウランまたは減損ウランとも呼ばれる。天然ウランにはU−235が0.7%、U−238が99.3%含まれている。軽水炉燃料用の低濃縮ウランはU−235の比率が3〜5%程度に濃縮される一方で、劣化ウラン中のU−235の濃度は0.2〜0.3%で元の天然ウランにくらべて低い。一般に、低濃縮ウラン1kgを製造すると、劣化ウラン5〜10kgが濃縮プロセスの残滓として生まれる。
 劣化ウランは、通常六フッ化ウランガスの状態で高圧ボンベに詰められ、濃縮工場の近くに貯蔵される。このガスは空気中の水分に接すると極めて腐食性の高いフッ化水素を発生するので、漏洩しないように貯蔵管理には十分注意を払わねばならない。劣化ウランの一部は、酸化ウランまたは金属ウランの形でも貯蔵されている。
2.劣化ウランの発生量および累積貯蔵量
 ウラン濃縮は、現在日本のほか米国、フランス、ドイツ、オランダ、英国、ロシア、中国などで行われている。2007年の世界の濃縮工場における劣化ウラン推定貯蔵量および管理計画を表1に示す。貯蔵量の推定総計は約150万トンである。
 増大する劣化ウランに対して貯蔵管理および資源の有効利用の観点から、その利用が検討されている。以下に劣化ウランの利用について述べる。
3.劣化ウランの利用
 劣化ウランの利用は、一般産業分野と原子力分野に分けられる。前者では、ウランの物理的な特性が発揮できる分野で用いられる。金属ウランは、次のような特性を持っている。
(a)密度が高い(鉛の1.7倍)
(b)γ線X線の遮へい性能に優れている(鉄より3桁高い、鉛より2桁高い遮へい効果)
(c)融点が比較的高い(1132℃、鉛:327℃、鉄:1536℃)
(d)機械的強度が大きい(鋼と同程度、合金化により増強)
(e)加工しやすい(鋳造性、延性、切削性ともによい。同程度の密度をもつタングステンは硬く加工しにくい)
(f)熱伝導率がやや低い(25W/m・K,鉛:34W/m・K,鉄:72W/m・K)
3.1 一般産業分野での利用
(1)高密度特性に着目した利用(年間使用量:200トン台)
 ・航空機、ヘリコプターなど飛行物体のカウンターウェイト、バランサー
 ・油井切削用カウンターウエイト
 ・高慣性ローター、フライホイール、回転ボールジョイント
(2)高強度、高密度特性に着目した利用(年間使用量:100トン台)
 ・砲弾弾頭のペネトレータ
 劣化ウランは湾岸戦争でも使用された。国内では1995年12月5日、7日および1996年1月24日の3日間、沖縄県鳥島射爆撃場で米海兵隊の航空機が、訓練時に誤って1,520発の劣化ウラン弾を発射したことで話題となった。湾岸戦争で使用された劣化ウランが兵士や住民の健康に影響を与えたとの医師らの指摘があるが、国際機関等の調査報告では因果関係の有意性は認められていない。劣化ウラン含有弾の構造例を図1に示す。先端付近が円錐になっているロケット状の砲弾であり、先端近くの中心部に劣化ウランが装着されている。この砲弾は、慣性力によって戦車などの厚い鋼板を貫通する性能をもち、衝突の際ウランが微粒子化して発火するので焼夷弾としての性質があり、徹甲焼夷弾とも呼ばれている。
(3)γ線、X線遮へい性能に着目した利用(年間使用量:100トン台)
 ・RI運搬容器および放射線医療機器の遮へい
 ・加速器のコリメータおよび遮へい
 ・使用済燃料輸送容器、高レベルガラス固化体容器
 米国GA、WHなどが使用済燃料の輸送容器または輸送兼貯蔵容器の遮へい材料として利用するための技術開発を進めている。わが国でも日本製鋼所が試作品を作ったが、劣化ウランの貯蔵管理費が不要になることを評価しないと、鋼製容器にくらべて高価なものになる。図2に劣化ウランを利用した使用済燃料輸送容器の一例を示す。
(4)化学的性質に着目した利用
 ・機能材料、ガスの純化、染料・顔料
 ・水素吸蔵合金
 ウランは水素と極めて反応しやすく、水素化物をつくる。水素化物は400℃くらいに加熱すると分解して水素を放出し、低温では再び水素を吸収するので、この性質を利用して希土類元素やジルコニウム金属と同様に水素吸蔵合金材料としての技術開発が、欧米をはじめ日本で行われている。
[使用上の規制]
 以上、一般産業分野での利用を述べたが、わが国では劣化ウランはウラン濃縮工程の副産物であり、「原子炉等規制法」により核燃料物質としての規制を受ける。したがって、劣化ウランの利用にあたってはこの法律を考慮しなければならない。欧米における劣化ウランの法的位置づけは必ずしも一様ではないが、米国では天然ウランとともに原料物質に分類されており、環境保護法の10CFRpart40によれば、核燃料以外の特定の製品または機器への利用を法律で認めている。
 国際原子力機関(IAEA)の放射線防護基準では、放射性核種の危険度を4群に分類し、U−235,U−238および天然ウランは、危険度の最も低い第4群に属する。劣化ウランの放射線障害は主として透過力の小さいα線によるものであり、外部被ばくはほとんど問題にならない。経口または吸入摂取した場合には内部被ばくを受ける。
 ウランは他の重金属と同様に化学毒性を持っているが、たとえば空気中の許容濃度限界は、U:0.2mg/m3,As:0.2mg/m3,Pb:0.15mg/m3,Hg:0.05mg/m3で、化学毒性は砒素と同程度、鉛や水銀よりも低い。
 このような放射性、化学毒性に加え、わが国では上記のとおり核燃料物質としての規制を受けることが、一般産業分野で利用する上での大きな障害になっている。
3.2 原子力分野での利用
 世界原子力協会(WNA:旧ウラン協会:The Uranium Institute)の劣化ウラン作業部会の報告(文献3)によれば、次のような5つの利用方法があり、実施されている。
(a)軽水炉プルサーマル燃料としてPuとの混合酸化物燃料
(b)高速炉のブランケット燃料
(c)軽水炉、CANDU炉燃料棒の一部
(d)軍事用高濃縮ウランを軽水炉燃料用低濃縮ウランに希釈するための希釈原料
(e)低濃縮ウラン製造のための再濃縮用原料
4.今後の動向
 世界原子力協会は劣化ウランの貯蔵量(1999年時点で約120万トン、2007年時点では150万トン)は、2015年には約210万トンになると予想している。この問題を解決するための長期的な対策としてはいくつかの方法がある。
(a)低濃縮ウランを生産するための再濃縮用原料とする
(b)安全に管理された状態で長期間貯蔵する
(c)高速炉または加速器を基にした核変換装置で使用する
(d)最終処分の廃棄物とする
 (a)については、レーザー濃縮や改良遠心分離濃縮のような新技術が確立すれば経済的に魅力あるオプションである。
 (b)については、再濃縮あるいは他の用途を考慮すれば六フッ化ウラン(UF6)の形態が望ましいが、安定さに欠ける。八酸化三ウラン(U3O8)の形は最も安定であるが、用途によってはUF6への転換にコストがかかる。米国、ドイツ、オランダ、英国およびロシアは、大部分の劣化ウランをUF6として貯蔵、フランスは、長期貯蔵する劣化ウランについてはU3O8の形で鋼製容器に貯蔵している(表1参照)。
 (c)については、将来高速炉、加速器あるいは両者合体の装置のいずれが実用化されるか判断は困難であるが、これらの技術が大規模に利用されれば、210万トンの劣化ウランは膨大なエネルギー源となる。すなわち、劣化ウランの利用は約3百万TWhの電気を産み出し、これは現在の世界全体の電気需要量の250年分に相当する。このような可能性は、劣化ウランの長期貯蔵という解決策に比べ魅力的である。
 (d)については、劣化ウランの最終処分に関する研究がかなり実施され、U3O8のような安定な形態への転換が必要といわれている。カナダのシガーレイクウラン鉱床は、劣化ウランの処分方法について貴重な自然界における実証例となっている。シガーレイク鉱床の地下400メートルにある高品位のウラン鉱石は、粘土質のバリアー層によって地表の環境の影響を遮断され、化学的変化を最小限に保ち、13億年を超えて安定な状態を維持し続けているという証拠を示している。
(前回更新:2002年1月)
<図/表>
表1 劣化ウラン推定貯蔵量および管理計画
図1 劣化ウラン含有弾
図2 米国WH型劣化ウランキャスク

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
使用済燃料の貯蔵施設 (04-07-03-15)
使用済燃料の乾式貯蔵に関する研究 (06-01-05-08)

<参考文献>
(1)WNA(World Nuclear Association):The Global Nuclear Fuel Market−Supply and Demand 2007−2030(2007),p.134
(2)OECD/NEA−IAEA:Management of Depleted Uranium(2000年)
(3)I.Lindholm:Depleted Uranium;Valuable Energy Source or Waste for Disposal,21回ウラン協会年次シンポジウム、ロンドン、1996年9月、Uranium and Nuclear Energy,1996、ウラン協会、Vol.21,p.91−97(1996)
(4)市川龍資:鳥島で米軍が誤使用した劣化ウラン弾について、エネルギーレビュー、p.38−39(1997)
(5)劣化ウラン経済性調査委員会:特集 劣化ウランとその有効利用(3)劣化ウランの利用とその現状、原子力EYE、44(4),p.64−67(1998)
(6)津田一明ほか:次世代キャスク−使用済燃料等の輸送・貯蔵・処分容器−、原子力工業、36(11),p.51−57(1990)
(7)More on depleted uranium,Nuclear Energy Vol.40,No.3,p.143−144(2000年6月)
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